あなたの権利、守られていますか?
ここでは、働く私達がどんな権利をもっているのか紹介します。パートでもアルバイトでも契約社員でも労働者を守るさまざまな法律が適用されます。
今、ブラック企業、ブラックバイトが社会問題になっています。「毎日残業でクタクタ」「給料が安い」「正規採用でないから不安」など、将来に希望が持ちにくく、悩むことも多いと思います。
でも、あなたは決して一人ではありません。働く権利を守ってがんばっている仲間が全国にいます。不当なこととたたかっている労働組合・ユニオンがあります。あなたが困ったときには、気軽に相談にのってくれる専門家もいます。
私たちは、働くあなたを応援します。 パート・アルバイト・契約社員でも労働者としての権利があります。正規・非正規を問わず、すべての労働者に労働法は適用されます。労働組合への加入は憲法上の権利です。
(引用:2022全労連発行「権利手帳」より)
あなたの権利・・・
- ●労働条件でトラブルに
- ●自分の給与って低いのでは?
- ●働く時間が長すぎる
- ●休みをとりたい
- ●突然クビって言われた
- ●正規と非正規で待遇に違いが・・
- ●パート、有期雇用で雇い止めになった
- ●こどもを産んだら働き続けられない?
- ●セクハラを受けてつらい
- ●社会保険・労働保険ってなに?
- ●働くルールの基本ってなに?
- ●労働組合(ユニオン)とは
- ●共済って?
労働条件でトラブルに!~労働条件は文書で確認を
採用面接時に労働条件をよく確認しなかったことで、思わぬトラブルになることがあります。求人広告をうのみにせず、労働条件をしっかりと尋ね、採用時に「労働条件通知書」の交付を求めましょう。
労働条件の内容は、あなたが合意して初めて成立します。労働基準法は、採用時に口頭ではなく文書で下表の事項を明示することを義務付けています。また、事業主はパートを含め10人以上の労働者を雇っている 場合、労働条件を規定した就業規則を事業所ごとに作成し、労働基準監督署長に届け、労働者が自由に閲覧できる状態にしておくことが義務付けられています。(労基法第89条・106条)
<書面で明示しなければならない事項>
①契約期間(期間に定めのある場合は更新に関する基準) ②仕事をする場所・内容
③始業・終業時刻、休日・休憩・休暇、残業の有無
④賃金の決定・計算・支払い方法、賃金の締切・支払日、割増賃金率
⑤解雇事由など退職に関する事項
Point ⇒ 事業主には書面明示の義務がある
自分の給与って低いのでは?~給料明細をチェック!
給料明細をチェックしましょう。給料が契約どおり払われていない。知らない間にカットされている。残 業代が出ない…こんなことはありませんか。
賃金を労働契約どおりに支給しないのは、賃金支払の原則に違反しています。賃金の一方的な引き下げも原則として許されません。(労働契約法第9条・10条)
さらに「これ以下の賃金で働かせてはいけない」という法律(最低賃金法)があり、それを下回る契約は無効とされ経営者は罰せられます。もちろん、パートやアルバイトにも適用されます。
必ず給料明細をもらうとともに、源泉徴収票などもいっしょに保管しておきましょう。
<あなたの地域の最低賃金はこちら>
※最低賃金は毎年改定されます。
月給の場合は残業代や通勤手当、家族手当、一時金を除いた時間当たり賃金で計算します。
<賃金支払の5原則>(労基法第24条)
①通貨払い ②直接払い ③全額払い ④毎月払い ⑤一定期日払い
Point ⇒ 最低賃金を下回るのは違法
働く時間が長すぎる!~1日8時間・週40時間労働が原則
1日8時間、週40時間以上働いた分は、割増賃金の支払いを求めましょう。2019年から残業時間の上限が設定されました。
また、労基法第36条にもとづく労使協定(36協定)なしに残業させることはできません。残業、休日・深夜労働には割増料金の支払いが必要です。
労働時間は1日8時間・週40時間以下、休日は週1回以上が原則です(労基法第32条・35条)。仕事前のミーティングや準備作業時間、作業前後の清掃時間も労働時間です。36協定で定めることができるのは「1カ月45時間、1年360時間」までです。特別条項のある36協定を結ぶとそれを超えた残業も法令上は可能となりますが、脳・心臓疾患の危険があると指摘されています。
<休憩時間>(労基法第34条)
<休日>
毎週1回以上 もしくは4週間4回以上(労基法第35条)
<時間外、休日および深夜の割増賃金表>
Point ⇒ 残業手当(割増賃金)は権利
休をとりたい!~パートやアルバイトも有給はとれる
年次有給休暇(有休)はパートやアルバイトなどどんな雇用形態でも取得できます。会社は有休をとったからといって賃金カットや解雇はできません2019年から有休が10日以上の労働者に対し、有休の5日付与が義務化されました。
有給休暇は6カ月以上働いてそのうち8割以上勤務していたら取得できます。(労基法第39条及び附則136条)
Point ⇒ 有休付与は事業主の義務です
突然クビ!これって違法です~あきらめないですぐユニオンに相談しよう
あなたは解雇・雇止めされても仕方ないと思っていませんか。そんなことはありません。解雇には制限があります。一方で退職することは自由です。
「気に入らない」とか「能力がない」など抽象的な理由でクビにすることはできません。会社が経営難で整理解雇する場合も、以下の4要件すべてを満たさなければ無効です。労災休業中や産休中の解雇もできません。法律上少なくとも30日前に予告するか、解雇予告手当の支払いが必要です(労基法20条)。解雇には、「客観的に合理的な理由」が必要です(労働契約法16条)。
<整理解雇の4要件>
1.整理解雇の必要性
2.解雇回避努力
3.人選基準の合理的性
4.解雇の必要性等について労働者や労働組合に説明する努力(民主的手続き)
<解雇の制限>
1.業務上の疾病による休業期間およびその後30日間(労基法第19条)
2.産前産後休暇およびその後30日間(労基法第19条)
3.退職の勧奨にあたって、対象を男女のいずれかのみとすること(男女雇用機会均等法第5条~7条・9条)
Point ⇒ あきらめないですぐユニオンに相談を!
正規と非正規で待遇に違いが!~不合理な待遇格差は禁止
同一企業内で、正社員と非正規労働者との間で、「不合理な格差」を設けることは許されません(パート・有期労働法8条)。
賃金や一時金などの「あらゆる待遇」について点検してみましょう。労働条件(労働時間、休日、賃金など)の最低基準を定めた労働基準法は、正社員はもちろん、パート・アルバイト、契約・派遣労働者など、すべての労働者に適用されます。
労働者は正社員との待遇差の内容や理由などについて、事業主に説明を求めることができ、説明を求めたことによる不利益取り扱いは禁止です(パート・有期労働法14条)。厚生労働省「同一労働同一賃金ガイドライン」によれば、
①役職手当、時間外労働の割増率、通勤手当・出張手当、食事手当
②慶弔休暇、病気休暇
③食堂・休憩室・更衣室といった福利厚生施設の利用
④教育訓練や安全管理の差別的取り扱いは許されません。
派遣労働者の賃金・労働条件・社会保険・安全衛生などは派遣元に責任があり、必要な教育訓練を行い、均衡待遇を推進する義務があります。(労働者派遣法)
Point ⇒ 「不合理な格差」をチェック
パート、有期雇用で雇止めになった!~簡単に雇止めはできない
パートやアルバイトなど、有期雇用でも、反復更新された有期雇用や更新されるものと期待できる場合、雇止めするには「客観的に合理的な理由」が必要です(労働契約法19条)。5年を超えて働けば「無期雇用」への転換の申し入れができます。
3回以上更新または1年を超えて継続雇用されている場合には、契約満了の30日前にまでに予告が必要です。雇止めの理由を明示しなければなりません(労基法第14条2項・3項)。
同じ事業者の下で、有期雇用契約が5年を超えて反復更新されたときに、労働者が申し込めば期間の定めのない労働契約に転換することができます。
~無期雇用転換5年ルール~
Point ⇒ 5年を超えたら無期雇用の申し入れを
こどもを産んだら働き続けられない?~育児休業の制度がある
産前・産後休業や育児・介護休業の申出・取得を理由とした解雇や賃下げ、降格などの不利益取扱いは禁止されています。男女雇用機会均等法、育児・介護休業法には、子育てや介護のための休暇や労働時間制限などが定められています。
①産前6週間(多胎14週間)、産後8週間の出産休暇(6週間は強制休業) (労基法第61条1項・2項)
②生理日の就業が著しく困難な女性は、生理休暇をとれます(労基法第68条)
③.男女ともに子が1歳まで育児休業をとれます(育児・介護休業法)
※保育園に入れないなどの場合は、最長2歳まで可能
【休業前賃金の50%の育児休業給付金(180日までは67%)が雇用保険から支給】
④.男女ともに介護休業の取得が可能【介護休業給付金は67%、限度93日分】
⑤産・育休中の社会保険料は免除されます(事業主・労働者負担分とも)
【免除期間は納めた期間として扱われます】
⑥有期契約労働者も一定の条件を満たせば育児・介護休暇を取得できます
⑦子の看護休暇や介護休暇は年に5日(2人以上は10日)取得できます
Point ⇒ 育児・介護休業は男性も女性もとれます
セクハラをうけてつらい!~事業主に防止措置義務が
セクハラは事業主の責任
労働基準法や男女雇用機会均等法などで男女差別は禁止されています。セクハラ・パワハラ・マタハラ防止は事業者の責任です。(労働施策総合推進法30条の2、男女雇用機会均等法11条)
男女雇用機会均等法では、募集・採用、配置・昇進、教育訓練、福利厚生、定年などにおける男女差別を禁止しています。パワハラについては労働施策総合推進法で、セクハラ・マタハラについては男女雇用機会均等法で、「事業主は雇用管理上必要な措置を講じなければならない」と義務付けています。
ひとりで悩まずに労働組合に相談しましょう。最寄りの都道府県労働局に調停など個別紛争解決援助の申出を行うことができます。
パワハラは、労働者の人格や尊厳を否定し人権を侵害する絶対に許されない行為!
ハラスメントにあったら、「いつ」「どこで」「誰に」「どのようなことをされた(言われた)」かを、メモや録音などに残しておくことが重要です。
Point ⇒ ハラスメント防止は事業主の責任
社会保険・労働保険ってなに?~働く人の安心のための制度
働く人の保険って何?
事業主は労働者を雇い入れる場合、労働者に原則として社会保険(健康保険、厚生年金)や労働保険(雇用保険、労災保険)に加入させることを義務付けられています。
<社会保険>
事業主が法人の場合、または常時5人以上の労働者を雇っていれば、加入が義務付けられ、5人未満でも任意加入できます。パートやアルバイトでも一般労働者の4分の3以上の労働時間または労働日数で加入でき、さらに4分の3未満でも法令改正により加入できるよう変化しています。
<雇用保険>
1人でも雇っていれば加入が義務付けられています。パートでも週の所定労働時間が20時間以上、31日以上の雇用の見込みがあれば雇用保険に加入できます。加入していれば、失業した場合、加入期間に応じて失業手当が受けられます。倒産や解雇など退職理由によっては加入期間が6か月以上あれば失業手当の対象になります。
<労災保険>
事業主が保険料を全額負担する強制加入保険です。パート・アルバイトも含め労働者を1人でも使用する事業主は、労災保険に加入しなければなりません。業務上や通勤途中の負傷・疾病で仕事を休む場合、労災保険から医療費や休業補償が支払われます。
Point ⇒ 社会保険・労働保険は事業主の責任
働くルールの基本ってなに?~ズバリ日本国憲法
働くルールの基本は憲法です。憲法では国民の幸福追求権(13条)、生存権(25条)、働く権利(27条)、労働基本権(28条)が保障されています。
日本国憲法は ①国民主権 ②戦争の放棄 ③基本的人権の尊重 の3つを基本原理としています。
憲法は、すべての労働者が人間らしく生き、働くことを基本的人権として保障しています。こうした趣旨に沿って、労働基準法や最低賃金法、労働安全衛生法などの労働者保護法が定められています。労働基準法は「労働条件は人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない」(労働基準法第1条)としています。
=効力の順序=
憲法>法令>労働協約>就業規則や労働契約>業務命令
左の方が効力が強い(ex.労働協約を下回る労働契約は無効)
①労働協約…労働条件等を労使で取り決め、記名・押印したもの
②就業規則…使用者が労働条件等を定めた規則
③労働契約…使用者と個々の労働者との契約(就業規則の定める労働条件を下回ってはいけません)
Point ⇒ 日本国憲法は働く労働者の強い味方です!
労働組合(ユニオン)とは~働く人の権利を守る組織!
労働組合は働く者の権利を守るために、会社と対等の立場で団体交渉をすることができます。労働組合の結成・加入は憲法や労働組合法で保障されています。
憲法では、働く人の権利を守るために、また労働条件をさらに良いものにしていくために、労働組合をつくって団体交渉やストライキを行う権利を保障しています。1人では心細くても、みんなで力を合わせれば働きがいのある職場を作ることができます。そしてあなたの地域にも、1人でも入れる労働組合があります。
=ユニオンに入って雇用の安定と大幅賃上げ実現!=
ある立ち食いそばチェーンで、コロナ禍で勤務時間が減らされ賃金が4割もカット。削減された労働時間・シフト分の全額補償を求め組合に加入し交渉。その結果、組合員だけでなくパート・アルバイトを含む全従業員への給与全額を補償させました。
Point ⇒ 労働組合に入るのも作るのも憲法が保障
共済って?~仲間どうしの助け合い
労働共済
家族や自分の「もしも」に備えて、生命や医療保険に入りますが、労働組合には、営利を目的とせず、組合員同士の助け合いだからできる「安価で保障も優位」な共済があります。
労働組合は、賃上げや労働条件の改善などとともに、組合員の福利厚生を充実していくことも大きな役割としています。労働組合法(第2条・第9条)も認める助け合いの共済運動はその重要な柱です。
生命、医療、火災、自動車など各労働組合によって様々な共済をそろえています。民間保険と違い儲けを追求する必要のない共済には、暮らしの負担を軽くし、可処分所得を増やす効果もあります。
<生命共済>
病気による「死亡・重度障害」や不慮の事故による「死亡・障害」への保障
<医療共済>
病気や不慮の事故による入院・通院・安静休業への保障
<火災共済>
火災、風水害などによる住宅・家財への保障
<自動車共済>
対人賠償、対物賠償、人身傷害、車両補償など
*ご加入の労働組合により共済、保障の内容は異なります。
Point ⇒ 労働組合法で認められた共済活動