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通達:労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について

 

労災補償業務の運営に当たって留意すべき事項について

令和7年2月20日労災発0220第1号

(都道府県労働局長あて厚生労働省大臣官房審議官(労災、賃金担当)通知)

 

令和7年度における労災補償業務の運営に当たっては、特に下記に示したところに留意の上、実効ある行政の展開に遺憾なきを期されたい。

第1 労災補償行政をめぐる状況への対応

近年、労災保険の新規受給者数は年間78万人を超える状況にある中、労災補償行政の使命は、被災労働者等に対して迅速かつ公正な保護をするため、必要な保険給付等を行うことにより、セーフティネットとしての役割を担うことにある。この使命を果たすためには、業務に従事する職員一人ひとりがこの役割を自覚するとともに、それに応えるべく、社会情勢に応じた業務運営の改善を実施していくことが必要不可欠である。

特に過労死等や石綿関連疾患など業務上疾病に対する国民の関心は高く、令和5年度における過労死等に係る労災請求件数は4,500件以上に上るほか、石綿関連疾患に係る労災請求件数は1,300件以上、特別遺族給付金に係る請求件数も300件以上に上るなど、多くの複雑困難事案の処理を求められている状況にあるところ、引き続きこれらの労災請求事案に迅速かつ公正に対応していく必要がある。

以上を踏まえ、令和7年度においては、特に次の事項に留意しつつ、労災補償行政を推進することとする。

① 長期未決事案の早期解消と発生防止

② 業務上疾病事案に係る的確な労災認定

③ 業務実施体制の確保及び人材育成

 

第2 長期未決事案の早期解消と発生防止

請求書受付後6か月を経過して未決定となっている事案(以下「長期未決事案」という。)については、令和7年1月末時点において、前年同期比で僅かに減少しているものの、依然として高い水準で推移している。長期未決事案の早期解消及び発生防止については、従前から、平成30年10月9日付け基補発1009第2号「今後の保険給付の迅速処理に当たって留意すべき事項について」に基づき、組織的な進行管理と効率的な調査の実施を指示しているところであるが、引き続き、労働基準監督署(以下「署」という。)管理者(署長及び労災担当課長等をいう。以下同じ。)は、長期未決事案の発生防止に向け、効率的な調査計画の策定、初動調査の早期着手の指導等を徹底するとともに、長期未決事案の解消に向け、定期的に開催する事案検討会等を通じ、長期未決の原因を把握した上で、各調査項目について期限を付して具体的な指示を行うこと。併せて、都道府県労働局(以下「局」という。)管理者(労働基準部長、労災補償課長及び労災補償監察官等をいう。以下同じ。)は署長管理事案及び局管理事案を的確に把握し、局事案検討会を開催する等により、問題点の解消等に係る必要な指示や支援を行うこと。

また、長期未決事案はその多くが過労死等の複雑困難事案であることを踏まえ、各局においては効率的な調査を実施するため主体的能力に応じた処理体制を構築し、局業務実施計画等に具体的な処理手順や局署の連携方法を盛り込むこととなっているが、長期未決の解消が進展しない局にあっては、その原因を分析・検証し、必要に応じ処理体制、具体的な処理手順、局署の連携方法について、改善すること。

さらに、過労死等事案の進行管理に当たっては、後掲の監督部署との連携が円滑に進むよう署管理者が労災部署と監督部署の調整を確実に行うこと。

 

第3 業務上疾病事案(複数業務要因災害含む。)に係る的確な労災認定

1 過労死等事案に係る的確な労災認定等

(1)労災認定基準の適切な運用

過労死等事案については、脳・心臓疾患の労災認定基準又は精神障害の労災認定基準に基づき、適切に労災認定を行うこと。労働時間は、脳・心臓疾患における業務の過重性や精神障害における業務による心理的負荷の強度の評価に係る重要な要因であって、その的確な把握・特定は、適正な労災認定に当たり必要不可欠なものである。労災認定における労働時間は、労働基準法上の労働時間と同義であり、労働者が使用者の指揮命令下に置かれていたものと評価することができるか否かにより客観的に定まるものであることに留意しつつ、令和3年3月30日付け基補発0330第1号「労働時間の認定に係る質疑応答・参考事例集」(以下「労働時間質疑応答事例集」という。)を参考に、業務による負荷の評価の観点から労働時間を認定すること。

なお、個々の事案における労働時間の特定に当たっては、平成30年3月30日付け基監発0330第6号、基補発0330第5号(最終改正:令和3年9月15日)「過労死等事案に係る監督担当部署と労災担当部署間の連携について」(以下「連携通達」という。)に基づき、タイムカード、事業場への入退場記録、パソコンの使用時間の記録等の客観的な資料を可能な限り収集するとともに、上司・同僚等事業場関係者からの聴取等の必要な調査を行い、監督部署と協議を行った上で、労災部署において的確に労働時間を特定すること。その際、客観的な資料が存在しない場合であっても、聴取内容等から労働者が使用者の指揮命令下において実際に労働していたと合理的に推認される場合には、監督部署と協議の上、当該時間を労働時間として特定すること。

また、精神障害の業務上外が争われた訴訟において、人間関係のトラブルについて客観的な事実認定が出来ていない事案も見受けられたところ、精神障害事案における業務による心理的負荷の評価に当たっては、令和5年11月10日付け基補発1110第3号「精神障害の労災認定実務要領について」に基づき、必要な調査を行い、客観的な事実認定を徹底すること。

(2)過労死等事案に係る関係部署との連携

過労死等事案については、被災労働者等の迅速かつ公正な保護のみならず、その発生・再発を防止するための対策が労働基準行政における重要な課題となっている。

このため、署管理者は、上記第2で示した事項に加え、連携通達及び平成29年3月31日付け基発0331第78号(最終改正:令和5年12月28日)「『過労死等ゼロ』緊急対策を踏まえたメンタルヘルス対策の推進について」等を踏まえ、労災部署において把握した情報や決定を行う見込みの時期を含む決定に関する情報が監督・安全衛生部署に共有されるよう、監督・安全衛生部署と密接な連携を図ること。

また、局管理者は、過労死等事案に係る調査の進捗及び労災部署と監督・安全衛生部署における情報共有等の状況について的確に把握し、労災部署と監督・安全衛生部署における情報共有や協議が確実になされるよう署管理者に対し必要な指示を行うとともに、社会的に注目を集める可能性の高い事案については、時機を逸することなく本省への所要の報告を徹底すること。

さらに、過労死等の支給決定事案については、令和5年12月28日付け基監発1228第1号、基補発1228第1号、基安労発1228第2号「過労死等防止計画指導の実施等を踏まえた過労死等の労災保険給付支給決定事案に係る請求人への説明について」に基づき、再発防止の指導のため支給決定の事実を当該企業に対して説明することがあること等について、請求人への説明を確実に行うこと。

あわせて、精神障害に関し「上司等から、身体的攻撃、精神的攻撃等のパワーハラスメントを受けた」を主な具体的出来事として心理的負荷の強度の評価を行った支給決定事案については、令和3年9月10日付け事務連絡「心理的負荷による精神障害に係る労災支給決定事案の情報提供について」に基づき局雇用環境・均等部(室)に適切に情報提供すること。

(3)精神障害の長期療養者に係る社会復帰支援

令和5年7月に取りまとめられた「精神障害の労災認定の基準に関する専門検討会報告書」において、療養を継続しながら就労することが可能と医師が認める被災労働者の社会復帰を促進する体制整備が重要との見解が示された。

これを受けて、令和6年12月26日付け基補発1226第2号「精神障害の長期療養者に係る社会復帰支援について」において、精神障害による療養開始後1年以上継続している長期療養者を対象とし、市町村(東京都特別区を含む。)や公共職業安定所と連携した社会復帰支援の手法を示したところであり、これに基づき適切に対応すること。

特に、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」(平成17年法律第123号)第5条第13項の就労移行支援を活用した社会復帰支援を実施する場合には、長期療養者が就労移行支援の利用を開始した後における休業(補償)等給付の取扱いに留意すること。

2 石綿関連疾患に係る的確な労災認定

(1)調査上の留意点

ア 石綿関連疾患に係る医学的意見の的確な徴取

石綿関連疾患において、認定基準の対象疾病に該当するか否か、胸膜プラーク等の医学的所見が認められるか否かについては、労災認定の重要な要件であることから、その判断に当たっては、主治医の意見だけでなく、地方労災医員等の意見を徴すること。

また、平成23年3月31日付け基安労発0331第1号・基労補発0331第2号「石綿ばく露作業による労災認定等事業場の公表に係る石綿肺の取扱い等について」の記の第2に基づき、石綿肺か否かの地方労災医員等からの意見聴取等の調査を的確に実施するとともに、その結果を調査結果復命書等に記載すること。

さらに、主治医と地方労災医員等の見解が異なる場合等については、令和2年3月27日付け基補発0327第2号「石綿確定診断等事業について」に基づき、速やかに、石綿確定診断委員会に対して確定診断の依頼を行うこと。

イ 石綿ばく露作業の的確な把握

石綿ばく露作業従事歴は、労災認定を行う上で重要な調査事項であるとともに、その的確な把握は、迅速な認定にも資するものである。このため、石綿ばく露作業の調査に当たっては、平成17年7月27日付け基労補発第0727001号「石綿による疾病に係る事務処理の迅速化等について」及び平成24年9月20日付け基労補発0920第1号「石綿による疾病の業務上外の認定のための調査実施要領について」に基づき、被災労働者の雇用等の事実を確認の上、石綿ばく露作業に係る従事歴や作業内容(平成24年3月29日付け基発0329第2号「石綿による疾病の認定基準について」の記の第1の2に定める「石綿ばく露作業」のいずれに該当するかを含む。)について、事業場関係者等から調査する等により、可能な限り詳細に把握すること。その際、調査実施要領の別添の調査票における情報については、石綿ばく露作業の有無にかかわらず、全ての職歴を記載した上で、調査で把握した石綿ばく露状況等を調査票に漏れなく記載することとし、労働者ではない一人親方等の期間の作業歴や作業内容、職種、喫煙歴等についても、調査において把握した場合には調査票に記載すること。

また、調査に当たっては、最終ばく露事業場が不明となるのは例外的な場合であること等を踏まえ、最終石綿ばく露事業場の確認は慎重に行うこととし、最終ばく露事業場であるか否かの判断、石綿ばく露作業の有無及び従事期間等に疑義が生じたものについては、必ず本省に協議又は相談すること。

なお、上記の調査等は、「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」(令和3年法律第74号)に基づく給付金等の迅速な支給を図るため、令和3年2月1日付け基管発1201第1号・基補発1201第1号「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律に係る情報の提供について」により実施している「労災支給決定等情報提供サービス」の際、重要な情報となるものであることを踏まえ、適切に対応すること。

また、局においては、本省への協議又は相談に当たり、医学的資料の収集及び石綿ばく露作業従事歴等の調査が、調査実施要領に基づいて適切に実施されているか確認し、不足が認められる場合には署に対して適切な指導を行い、必要な調査を実施させた上で、協議又は相談を行うよう徹底すること。

(2)石綿関連疾患に関する労災補償制度等の周知

ア 石綿労災認定等事業場の公表

石 綿労災認定等事業場の公表は、国民に対し石綿による健康被害の救済に必要な情報を十分かつ速やかに提供するため、石綿による健康被害の救済に関する法律(平成18年法律第4号)第79条の2第1項に基づき、毎年実施しているものであり、正確な情報の公表が重要であることに留意するとともに、公表対象事業場に対しては、業務上外の調査又は支給決定後に、公表の趣旨について丁寧に説明し、公表の理解が得られるよう努めること。

イ 労災保険指定医療機関等への周知

石綿関連疾患については、がん診療連携拠点病院をはじめとした労災保険指定医療機関等に対して、労災補償制度等に関するパンフレットや石綿ばく露歴などのチェック表(以下「周知用資料」という。)を配付し、医療機関を通じた制度の周知を行うことが重要であるので、引き続き、周知の徹底を図ること。

特に、新規の労災保険指定医療機関に対しては、周知用資料等を活用することにより、制度周知を確実に行うとともに、石綿労災認定等事業場に対しては、引き続き、退職労働者等への労災補償制度の周知を実施するよう依頼すること。

下記(2)ウの建設アスベスト給付金制度に関するパンフレット、リーフレットを併せて配布し周知を行うこと。

ウ 建設アスベスト給付金制度の周知等

建設アスベスト給付金(以下「給付金」という。)制度の周知については、令和4年1月19日付け基発0119第1号(最終改正:令和6年8月29日)「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等支給要領について」及び同日付け基発0119第3号「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律等の施行について」に基づき、給付金制度の対象となる可能性がある者等に対するパンフレットの交付などにより給付金制度に関する周知、相談対応等を適切に実施すること。

併せて、給付金の請求に先んじて労災の請求を行うよう勧奨するとともに、令和3年12月1日付け基管発1201第1号・基補発1201第1号「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律に係る情報の提供について」及び令和6年10月2日付け事務連絡「「労災支給決定等情報提供サービス」の実施に係る労災認定等資料の本省報告等について」に基づき、適切に実施すること。

3 その他の業務上疾病事案に係る的確な労災認定等

(1)新型コロナウイルス感染症への対応

新型コロナウイルス感染症(以下「本感染症」という。)については、令和2年4月28日付け基補発0428第1号(最終改正:令和5年2月17日)「新型コロナウイルス感染症の労災補償における取扱いについて」に基づき、的確に対応すること。

また、本感染症の罹患後症状についても、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症診療の手引き別冊罹患後症状のマネジメント」等を参考に医師の意見を確認し、療養や休業が必要と認められる場合には、労災保険給付の対象となることから、令和4年5月12日付け基補発0512第1号「新型コロナウイルス感染症による罹患後症状の労災補償における取扱い等について」に基づき、適切に対応すること。

なお、主治医等から意見を徴した結果、治ゆの判断がなされた事案について、障害補償給付の請求があった場合は、本省に協議すること。

本感染症(罹患後症状を含む。)にり患したと思われる労働者への労災請求に関する説明や手続き等の支援に万全を期するため、事業場等に対する適切な請求勧奨をはじめとしたきめ細かな対応を図ること。

(2)電離放射線障害事案に係る調査上の留意点

認定基準において本省にりん伺することとされている事案については、認定基準別添の調査実施要領に基づき調査することとされているところであるが、本省にりん伺する際には、特に、当該労働者の全ての業務経歴における放射線業務の有無、被ばく線量及び安全防護の状況等も含め、調査実施要領に基づいた調査が行われているかを確認し、不足がある場合は署に対して適切に指導を行うこと。

また、白内障に係る労災保険給付の請求事案については、令和4年6月8日付け事務連絡「電離放射線による白内障に係る労災保険給付請求事案の取扱いについて」に基づき適切に対応すること。

(3)関係部署との連携

職業がんや化学物質による疾病等の労災認定に当たっては、原因物質の特定、当該物質のばく露量やばく露作業の態様等のばく露状況等を詳細に把握する必要があることから、より一層効率的かつ的確な調査を行うため、監督・安全衛生部署と情報共有するなど緊密な連携を図ること。

また、労働者性の判断や被災者に適用される労働時間制度に疑義が生じる場合には、適宜、監督部署に協議を行うこと。

(4)新しい疾病に係る本省協議及び補504による報告の徹底

労働基準法施行規則別表第1の2第11号に該当する可能性があるなど新しい疾病等に関する請求事案については、報告例規に基づく本省報告を確実に行うとともに、本省への協議又は相談を徹底すること。

 

第4 労災補償業務の適正な事務処理の徹底

1 基本的な事務処理の徹底

労災保険給付の事務処理については、労災保険給付事務取扱手引(以下「給付事務手引」という。)等により指示しているところであるが、今後とも適正な給付のための適切な調査を徹底すること。

特に、法令、通達に基づいた調査、判断等の基本的な事務処理について、管理者から職員に十分な指導を行うなど、改めてその徹底を図ること。

また、調査に当たっては、保険給付の決定のために真に必要な調査を行うことを基本とし、決定に不要な資料の収集を行わないこと、必要な資料の不足が生じないようにすることなど過不足のないようにするとともに、原則として、調査は文書照会、電話録取等の簡素な手法により行い、必要に応じ、実地調査を行うこと。

さらに、関係資料を収集する際、被災労働者やその遺族等から同意書等を徴する場合は、機微な個人情報を収集することに特に留意の上、保険給付に当たり、真に必要なものに限り同意書等を徴すること。

2 請求人等への懇切・丁寧な対応

被災労働者及びその遺族といった請求人等に対する丁寧で分かりやすい説明の実施については、平成23年3月25日付け基労発0325第2号「今後における労災保険の窓口業務等の改善の取組について」により指示しているところであるが、引き続き、これを徹底するとともに、相談等の段階で、調査が困難であることや業務上外の見込み等について言及することは厳に慎むこと。

引き続き、請求書受付後3か月を経過した事案については、請求人等に対し、処理状況等を連絡するとともに、その後もおおむね月1回、定期的に連絡することを徹底すること。

また、過労死等事案等の不支給決定を行った場合には、当該不支給決定に対する請求人の納得性を高めるため、支給要件、当該不支給決定理由のポイント、審査請求手続等について、請求人に分かりやすい説明を行うこと。

3 不正受給防止に対する的確な対応

労災保険に係る不正受給は、労災保険制度に対する不信を招来し、制度の適正な運営を大きく阻害することにもなりかねないものである。

このため、不正受給を防止するための事務処理等については、給付事務手引により指示しているところであり、特に投書等により不正受給の疑いが生じた事案については、時機を逸することなく必要な調査を実施する等適切な対応を行うとともに、本省への速やかな報告を徹底すること。

また、特別加入者に係る不正受給防止対策については、平成29年12月7日付け基補発1207第1号「労災保険の特別加入者に係る不正受給防止対策の徹底について」に基づく調査や事務処理を徹底すること。

なお、不正受給者に対して支給した保険給付については、労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号。以下「労災保険法」という。)第12条の3第1項に基づき費用徴収を行うこととなるため、保険給付支払日から費用徴収金の時効が進行することに留意し、債権発生通知書による局への報告や不正受給者に対する納入告知の実施等、必要な事務処理を速やかに実施すること。

4 労災かくしの排除に係る対策の一層の推進

全国健康保険協会(協会けんぽ)の各都道府県支部から健康保険法の保険給付について不支給(返還)決定を受けた者の情報を得た場合において、被災労働者に対して、労災請求の勧奨を行うとともに、①労災かくしが疑われる場合、②新規の休業補償給付支給請求書の受付に際し労働者死傷病報告の提出年月日の記載がない場合には、速やかに監督・安全衛生部署に対して情報の提供を行うこと。

また、平成3年12月5日付け基発第687号「いわゆる労災かくしの排除について」に基づき、労災保険のメリット制の適用を受けている有期事業の事業場にあっては、メリット収支率の再計算及び返還金の回収等が生じる場合があることから、労災かくしが判明した場合には、局徴収主務課室に対し、速やかに、給付見込額や支払予定時期などの必要な情報を提供すること。

5 障害(補償)等年金を受ける者の再発に係る取扱い

せき髄損傷などにより、障害(補償)等年金を受ける者が再発した場合の事務処理における留意点については、平成27年12月22日付け基補発1222第1号「障害(補償)年金を受ける者が再発により傷病(補償)年金又は休業(補償)給付を受給する場合の事務処理上の留意点について」に基づく事務処理を徹底すること。

再発が多いと考えられるせき髄損傷に係る相談対応に当たっては、平成5年10月28日付け基発第616号「せき髄損傷に併発した疾病の取扱いについて」に関し、パンフレットを使用するなどにより、懇切・丁寧な説明に努めるとともに、併発疾病として掲げられていない疾病等であっても、せき髄損傷との関係性が医学的に認められる場合は労災補償の対象となることから、事案ごとに適切に因果関係を判断すること。

6 適正給付管理の実施

長期療養者に係る適正給付管理の実施に当たっては、昭和59年8月3日付け基発第391号「適正給付管理の実施について」を始めとする各種通達により指示しているところである。

令和2年11月18日付け基補発1118第1号「適正給付管理の実施に係る事務処理上の留意点について」においては、骨折等、一般的に早期に治ゆ(症状固定)に至ると考えられる負傷により、休業(補償)等給付を3年以上受給している者を重点的に調査対象者とする等の指示をしているところであり、このことにも留意し、引き続き、効率的かつ適切に適正給付に係る管理業務を実施すること。

7 定期報告の取扱い

労災年金受給者に係る定期報告の取扱いについては、従前より個人番号による情報連携を行い、併給調整に必要な情報等を取得することにより、傷病(補償)等年金、障害(補償)等年金及び遺族(補償)等年金の受給権者からの定期報告を一部省略しているが、令和6年5月24日付け基発0524第1号「労働者災害補償保険法施行規則及び厚生労働省関係石綿による健康被害の救済に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について」により、特別遺族年金の定期報告についても令和7年4月からその一部を省略することとされたところである。

この特別遺族年金受給者を含め、定期報告の事務処理を行うに当たっては、個人番号を取得できない等により、定期報告の提出が必要な者については、「定期報告対象者リスト」を、定期報告省略対象者については、「厚年等突合表(個人番号)」や「住基突合異動状況確認リスト」等をそれぞれ配信しているので、各種リストを活用した定期報告の提出状況の把握や督促、受給資格の確認等の審査を的確に実施すること。

8 業務統計等の適切な取扱いについて

過労死等の労災補償状況や補408(傷病別長期療養者推移状況報告)等においては、例年、各局からの報告に基づき本省において集約しているが、令和6年度、各局からの報告に数多くの誤りが見受けられたところである。労災補償業務に関する統計については、制度改正等の基礎資料として行政において利用されるだけでなく、国民に広く公表することで、社会全体で利用される情報基盤である。そのため、正確な数字が反映されているものでなくてはならない。各局内における集計作業においては、原本資料との突合や局署における確認作業を徹底すること。

9 毎月勤労統計等に係る追加給付対応

毎月勤労統計及び賃金構造基本統計調査に係る追加給付事案への対応については、引き続き被災労働者、未支給請求の対象遺族等からの電話相談、窓口相談に懇切・丁寧に対応すること。

局署で処理が必要となる追加給付に係る事務処理については、平成31年3月15日付け基管発0315第1号・基補発0315第3号・基保発0315第1号「労災保険の追加給付等について」に基づき、また、対象者死亡後の未支給請求対応については、令和2年7月31日付け基補発0731第1号「労災保険の追加給付における未支給の保険給付に係る請求権者の特定及び「未支給請求書」の送付業務について」及び令和5年3月22日付け補償課長補佐(業務担当)事務連絡に基づき、適切な対応を行うこと。

 

第5 労災診療費等に係る事務処理の留意点

1 労災診療費の的確な審査の実施等

労災診療費の審査は、「労災診療費算定マニュアル(令和6年4月版)」等に基づき実施しているところであるが、ここ数年、会計検査院が局に対して行う実地検査において、医療機関からの誤った請求に対する審査が十分でなかったことにより、労災診療費が過大に支払われているとの指摘を受けている。労災診療費算定基準の周知・理解の徹底はもとより、誤請求の多い医療機関に対する個別指導の実施等を通じて、的確な審査体制の構築と誤請求の防止に取り組むこと。

審査にあたっては、平成25年4月8日付け基労発0408第1号「地方厚生局等から提供された診療報酬返還等に関する情報提供の労災診療費審査業務への活用等について」及び平成25年4月8日付け基労補発0408第1号「地方厚生局等から提供された診療報酬返還等に関する情報の労災診療費審査業務への活用等における留意事項について」に基づき提供を受けた情報を、積極的に活用すること。

また、長期にわたって局保留となっている事案に関しては、局管理者がその理由を把握した上で、課内で事案に応じた対応を検討する等により方針を決定し、早期の保留解消に努めること。

なお、労災診療費の電子レセプト審査については、令和2年度から順次事前審査点検業務の外部委託化を開始し、令和6年12月をもって全局への導入が完了したところである。令和7年度からの事業の運用に向け、留意点等を令和6年度中に示すこととしているので、積極的に活用し、審査事務を効率化すること。

2 労災保険指定医療機関の指定申請の勧奨

療養(補償)等給付は療養の給付が原則であり、療養の費用の支給は例外的なものであることから、被災労働者が一時的に費用を負担することなく療養の給付を受けられるよう、労災保険指定医療機関の指定勧奨に取り組む必要があるところ、令和5年度においては、労災保険指定医療機関の増加件数がこれまでに比べ著しく鈍化した。

こうした状況を受け、労災保険指定医療機関の指定手続に係るリーフレットを作成し、厚生労働省のホームページに掲載したほか、局における指定勧奨のツールとして活用することとしたところである。

局においては、引き続き、労災保険指定を受けていない医療機関に対し、労災保険指定医療機関制度の周知に努めるとともに、被災労働者が労災保険指定医療機関以外の医療機関を受診して、療養(補償)等給付たる療養の費用請求書を提出した場合は、当該医療機関に対して指定申請を行うよう積極的に働きかけること。

なお、医療機関の負担軽減の観点等から実施している「労災診療費被災労働者援護事業」(実施機関:(公財)労災保険情報センター)は、労災保険指定医療機関の指定を受けるメリットの1つであることから、労災保険指定医療機関の指定申請の勧奨を行う際には同事業の周知も併せて行うこと。

3 労災レセプトオンライン化の普及促進

労災レセプトのオンライン化については、令和6年7月23日付け基保発0723第3号「労災レセプトのオンライン化に向けた普及促進事業等について」(以下「普及促進通達」という。)により、普及促進に取り組んでいるところであるが、令和6年12月の普及率(※)は43.5%と依然として低調である。

令和7年度から、事前審査点検業務の外部委託事業の本格的な運用が開始され、審査事務の効率化を進めていく上でも、労災レセプトのオンライン化の普及促進に一層取り組んでいく必要がある。

このため、次年度以降の普及促進の取組については、局における実施事項も含めて追って指示することとしているが、普及促進通達で指示した、地区医師会等の関係団体との会合、新規労災指定時の説明会等におけるパンフレット配付等、あらゆる機会を活用した労災レセプトのオンライン化の勧奨や、労災レセプト請求件数が多い指定医療機関等に対する個別訪問による導入勧奨の取組を確実に実施すること。

また、普及促進通達で導入勧奨実施を指示した以外のオンライン請求未導入指定医療機関等についても、レセプト請求件数が多く勧奨効果が高いと見込まれる機関等に対し、追加で個別訪問による導入勧奨を実施する等、各局の事情を踏まえ効率的な導入勧奨を実施すること。

加えて、自治体病院を所掌する都道府県や市町村等の関係機関に対しても、会議等の機会を通じたパンフレット等の配布や個別訪問による協力依頼を行う等により、労災レセプトのオンライン請求の勧奨を積極的に実施すること。

(※)1か月のレセプト全件数に占めるオンラインレセプト件数の割合

 

第6 費用徴収と第三者行為災害に係る的確な債権管理

1 費用徴収

労災保険法第31条第1項に基づく費用徴収については、局において、署から通知書が送付されていたものの、費用徴収の該当性の有無の判断を行っていなかったり、署において、局に通知書を送付しなかったりしたことで、時効により債権回収が不能となった事案が生じたところである。このような事態が生じることのないよう、費用徴収に係る事務処理にあたっては、該当事案の漏れのない把握のため、署においては、支給決定を行う際に保険料の納付状況を必ず確認するよう徹底し、局においては、滞納事業場リストや労働者死傷病報告提出事業場リスト等の情報を定期的に把握し、署からの報告に漏れがないか確認すること。

また、局管理者は、署からの報告により把握した事案について、関係通達に基づき適正かつ速やかに費用徴収の該当の有無の決定を行うとともに、対象事案のリストを月1回以上決裁する等により進捗管理を徹底すること。

2 第三者行為災害債権の適正な管理

(1)第三者行為災害に係る事務処理の留意点

第三者行為災害事案の適切な進行管理を行う観点から、第三者行為災害事務取扱手引第2章第4に基づき、署管理者は概ね四半期に一度、三者システムの受付台帳及び第三者行為災害処理経過簿の決裁等を行い、処理状況の把握を徹底すること。

求償事案については、当該債権について消滅時効の期限が到来する前に納入告知を行うことを従前より指示してきたところであり、引き続き、その事務処理の徹底を図ること。

なお、平成26年3月31日付け基労管発0331第1号・基労補発0331第1号「第三者行為災害における自賠責保険等又は自動車保険等に対する求償の取扱いについて」に基づき、適切に納入告知書を発行し、時効の更新措置を講ずること。

また、真正な全部示談が成立している場合の支給調整については、令和5年10月3日付け補償課長補佐(業務担当)事務連絡「第三者行為災害における真正な全部示談が成立している場合の介護(補償)等給付の支給調整について」に基づき、年金給付以外の他の労災保険給付と同様に全損害の填補日以降を給付の対象期間とする介護(補償)等給付を行わないこと。併せて、労災先行で年金給付を行い求償した事案であっても、災害発生から7年以内に第二当事者等又は保険会社等から損害賠償金等の支払いを受けたときはその額を限度として控除を行う必要があることから、定期的に示談及び示談内容を把握する必要があることに留意すること。

(2)納入特例等の外部委託について

納入督励及び債権回収に係る外部委託事業については、令和5年4月5日付け基補発0405第1号「労災補償業務に関する各種債権の納入督励及び債権回収等業務の外部委託について」により通知したところであり、令和7年度においても継続して事業を実施するので、積極的に活用すること。

なお、委託業務については、局ごとの上限件数に達した場合であっても各ブロックの範囲内であれば上限件数を超えて委託することも可能のため、本省補償課通勤災害係に相談の上、活用すること。

また、第三者行為災害事案に係る支給調整等事務については、令和4年3月30日付け基補発0330第1号「第三者行為災害支給調整等事業に係る外部委託について」により通知したところであり、令和7年度においても継続して事業を実施するので、効果的かつ効率的な事務処理のため、積極的に活用すること。

 

第7 特別加入制度の周知・広報等

近年、働き方の多様化に伴い、特別加入制度についての社会的な関心が高まっており、本省において、関係省庁、関係団体へのリーフレットの送付や、厚生労働省ホームページで特別加入制度関係の紹介ページを掲載する等により、特別加入制度の周知・広報を実施しているところである。各局においても、様々な機会をとらえ、積極的に周知広報に努めるとともに、特別加入制度の照会等が行われた場合は、適切に対応すること。

また、令和6年11月から、特定フリーランス事業(それまでに対象になっていたものを除く。)を新たに特別加入の対象としたところであり、本改正に伴う事務処理は、令和6年4月26日付け基発0426第2号「労働者災害補償保険法施行規則及び労働保険の保険料の徴収等に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行等について」及び令和6年5月1日付け基補発0501第1号「特別加入の対象となる事業の新設に伴う事務処理事項について」に基づき、適切に対応すること。なお、特定フリーランス事業に係る特別加入団体として承認を受けている団体については、厚生労働省ホームページで掲載しているので、相談者への案内等に活用すること。

さらに、家事使用人(介護作業従事者・家事支援従事者)については、令和6年2月8日付け基発第0208第1号「家事使用人の労災保険の特別加入促進及び働きやすい環境の整備のための周知広報資料の策定について」において、特別加入に係るポスター、特別加入団体となるための手続の手順をまとめたパンフレット及び主に家事使用人を雇う家庭向けの「家事使用人の雇用ガイドライン」を策定した旨が通知され、また、相談があった場合の対応については、令和6年2月8日付け事務連絡「家事使用人等への「家事使用人の雇用ガイドライン」等の周知及び相談等があった場合の対応について」において通知したところであるので、当該事務連絡に基づき、特別加入制度の照会等が行われた場合は、適切に対応すること。

加えて、「規制改革実施計画」(令和4年6月7日閣議決定)において、オンライン利用率を大胆に引き上げる取組を着実に推進することとされており、特別加入関連手続については、「特別加入に関する変更届(中小事業主等及び一人親方等)」、「特別加入に関する変更届(海外派遣者)」、「特別加入の申請」、「特別加入の脱退の申請」、「給付基礎日額の変更申請」の5つの手続が対象となっている。令和7年度末までに「特別加入に関する変更届(中小事業主等及び一人親方等)」、「特別加入に関する変更届(海外派遣者)」についてはオンライン利用率50%(令和5年度はそれぞれ41.2%、42.6%)、「特別加入の申請」、「特別加入の脱退の申請」、「給付基礎日額の変更申請」についてはオンライン利用率20%(令和5年度はそれぞれ14.3%、27.5%、7.6%)とすることを目標とし、電子申請の普及に向けた取組を進めていることに留意するとともに、令和4年1月よりGビズIDを利用した電子申請が可能となったため、労働保険事務組合、特別加入団体及び海外派遣事業主に、積極的に利用勧奨すること。

 

第8 行政争訟等に当たっての的確な対応

1 行政事件訴訟の敗訴を踏まえた対応

令和6年度における訴訟追行状況をみると、裁判所においては認定基準等所定の枠組みに沿った判断がされつつも、行政の評価とは異なる評価が行われ、敗訴する事例が依然として認められる。

このような状況も踏まえ、訴訟追行に当たっては、引き続き、平成22年8月4日付け事務連絡(最終改正:令和2年3月16日)「労災保険に係る訴訟に関する対応の強化について」に基づく的確な訟務の追行の徹底を図ることとし、事業場や関係者への補充調査の結果や、医学意見書などの客観的な証拠に基づき、裁判所の理解が得られるよう的確な主張・立証を行うこと。

特に、地方労災医員を含め医師に意見を求める際には、意見の内容がより客観的かつ一般的な医学的知見を踏まえたものとなるよう、証拠としての信用性に留意した上で依頼すること。

2 敗訴等事案の情報共有

敗訴等事案について、引き続き情報提供を行うので、局管理者は、各種会議や職員研修等の機会を捉えて、署管理者をはじめとする労災部署の職員に対して説明し、共有を図り同種事案の発生を防止すること。

3 審査請求事案の迅速・公正な処理審査

請求受理後6か月以上経過した長期未決事案は減少傾向にあるが、新規請求件数が増加傾向にあることから、労災補償課長は、「労災保険審査請求事務取扱手引」第3部のⅢ「局管理者における取組み」に基づき、毎月、事案ごとに処理状況を把握した上で、処理が遅延している場合には、その原因を明確にした上で遅延を解消するために必要な助言・指導や組織的支援を行い、適切な進行管理のもと迅速処理に努めること。

また、労働者災害補償保険審査官は、的確に争点整理を行った上で審理に必要な資料の収集等を確実に実施することにより、迅速・公正な審査決定を行うこと。補充調査等により、新たな事実関係が判明したなどの場合は、法令、通達等に照らした上で、原処分の適否を判断すること。

なお、参与から審査請求事件につき意見が述べられた場合は、その内容を十分に尊重すること。

 

第9 地方監察の的確な実施等

地方監察は、関係法令、通達等に基づく事務処理の実態を的確に把握し、迅速・適正かつ効率的な事務の運営とその水準の維持・向上を図るとともに、公正妥当な基準に基づき客観的に検査、評価することにより行政の斉一性を確保することを目的としている。その上で、地方労災補償監察官及び労災年金監察官(以下「監察官」という。)は、地方労災補償監察官監察指針を踏まえた計画的かつ効果的な監察を実施すること。

特に、是正改善を要する事項については、単に指摘するのみならず当該問題の生じた背景、原因を的確にとらえた対応策を検討の上、その根拠となる法令、通達等を示すなど具体的な指示・助言を行い、確実に是正改善させるとともに、その後も適正な事務処理が行われているか継続して確認すること。

また、監察官は監察及び日常の業務指導において、業務の簡素・合理化に資する事例を収集し、署における効率的な業務運営の確保に努めること。

令和6年度中央監察結果については、局署が実際に行っている事務処理状況を的確に把握した上で、地方監察結果と併せて自局の取組状況と照らし合わせて問題点等の有無を検証し、改善すべき事務処理等が認められた場合には、翌年度の業務実施計画、監察計画等に反映させること。また、各種会議や研修等のあらゆる機会において積極的に活用することにより、労災補償業務を担当する非常勤職員を含むすべての職員に周知・徹底し、適正な事務処理を定着させること。

 

第10 個人情報等の厳正な管理

1 特定個人情報の適切な取扱いの徹底、適正な個人番号登録事務の実施

労災年金たる保険給付等に関する事務における特定個人情報等の取扱いについては、「労災保険給付等個人番号利用事務処理手引」(最終改正:令和6年5月24日付け基発0524第1号。以下「手引」という。)において指示しているところであるが、特定個人情報等を取り扱う事務取扱担当者に異動があった場合の名簿作成やユーザー情報の漏れのない登録・変更、定期的な研修等、手引に基づく事務処理を確実に実施すること。

その際、ユーザー情報の登録等を行う場合は、個人番号利用事務及び個人番号アクセス記録閲覧に係る業務を行う上で、局署の業務体制に応じ、事務取扱担当者の中でも、番号システムを使用する者のみに権限付与を行うことや、個人番号事務の意義、目的も踏まえた研修を実施することに特に留意すること。

また、個人番号が記載された請求書等の書類が編纂されたファイルについては、手引に基づき施錠された書棚に保管する必要があることに留意し、請求書等に記載された個人番号を復元できない程度にマスキング又は削除、個人番号をマスキングした請求書等の写しを編綴したファイルを除き、施錠されていない書棚には保管しないこと。

さらに、個人番号登録に当たっては、手引に基づき原則として支給決定前に行い、支給決定の決裁等の際に個人番号の登録内容に誤りがないか複数人での確認を徹底すること。

2 個人情報の漏えい防止

令和6年度においても、誤送付や紛失等多くの情報漏えい事案が発生しており、そのほとんどの事案は文書送付前のダブルチェックや文書の適切な管理といった基本的な事務処理の徹底がなされていなかったことが原因となっている。

このため、個人情報の漏えい防止については、平成28年3月28日付け地発0328第5号「都道府県労働局における保有個人情報漏えい防止及び発生時の対応について」(最終改正:令和5年4月1日)及び平成28年4月1日付け基総発0401第5号「労働基準行政における個人情報漏えい防止マニュアル」(最終改正:令和6年4月)等により指示されている基本的な事務処理を今一度確認し、自己点検の実施等を通じて、個人情報の管理を徹底すること。

3 石綿関連文書を含む行政文書の適正な管理等

石綿関連文書の保存については、平成27年12月18日付け地発1218第4号・基総発1218第1号(最終改正:令和4年3月24日)「石綿関連文書の保存について」に示された取扱いを確実に実施するとともに、令和6年7月4日付け基総発0704第1号・基安労発0704第2号「石綿関連文書の管理の徹底について」に示された、石綿関連文書の管理状況の点検を少なくとも年度ごとに1回実施し労働基準部長に報告すること等を通じて、引き続き、その適正な文書管理を徹底すること。

また、令和6年9月27日付け総務課長補佐(総務・広報担当)事務連絡「労働基準行政にかかる行政文書の電子的管理について」に基づき、石綿関連文書以外の行政文書の電子化を促進すること。

4 報道機関に対する的確な対応

過労死等事案など労災認定された個別の事案について社会的関心が高まっていることを背景に、局署において報道機関等から取材を受ける機会が増えている状況にあるが、その対応に当たっては、被災労働者及びその遺族等の個人情報保護の観点に十分留意すること。

なお、社会的関心が高いと考えられる事案に係る取材等を受けた場合は、速やかに本省へ報告すること。

 

第11 社会復帰促進等事業に係る適切な事務処理

社会復帰促進等事業として行われる義肢等補装具費及びアフターケア等に係る相談、受付及び進行管理等についての対応は、給付事務手引により指示しているとおり、労災保険給付の事務処理に準じて行うほか、各々支給要綱及び実施要領等に基づいて適切に行うこと。

 

第12 外国人労働者への懇切・丁寧な対応

1 外国人労働者に対する労災保険制度の周知及び請求勧奨の取組

(1)外国人労働者に対する周知等

外国人労働者については、我が国の労災保険制度について知識が十分でない場合も多い上、被災労働者の遺族にあっては、母国にあって我が国の労災保険制度を不知であることから、機会をとらえて母国語等による説明を行い、制度不知による請求漏れのないよう、きめ細かな対応を図る必要がある。

このため、外国人労働者に対しては、「(日本で働く外国人向け)労災保険請求のためのガイドブック」(13言語※1)等を活用した労災保険制度の説明を行うこと。窓口相談に際しては、「外国人労働者相談コーナー」、「外国人労働者向け相談ダイヤル」及び「労働条件相談ほっとライン」(13言語※2)も適宜活用すること。

また、平成31年3月26日付け基監発0326第1号・基安安発0326第3号・基安労発0326第1号・基安化発0326第1号・基補発0326第1号「外国人労働者が被災者である労働災害に関する労災保険制度の周知等の対応について」に基づき、監督・安全衛生部署において被災者が外国人労働者である労働者死傷病報告を受理した場合は、当該報告の写しが労災部署に提供されるので、事業主に労災保険制度の説明を行い、労災保険給付の請求を勧奨するとともに、外国人労働者に対する説明を依頼すること。

※1対応言語:英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、ベトナム語、ネパール語、ミャンマー語、韓国語、タイ語、インドネシア語、カンボジア語、ペルシア語※2対応言語:英語、中国語、ポルトガル語、スペイン語、タガログ語、ベトナム語、ネパール語、ミャンマー語、韓国語、タイ語、インドネシア語、カンボジア語、モンゴル語

(2)外国人技能実習生及び特定技能外国人に対する周知等

監督・安全衛生部署からの情報に加えて、外国人技能実習生に対する労災保険制度の周知については、平成29年10月27日付け基補発1027第2号「今後の技能実習生の死亡災害に関する労災保険給付の請求勧奨等について」に基づき、また、特定技能外国人に対する労災保険制度の周知については、平成31年3月15日付け基監発0315第3号・基安安発0315第1号・基安労発0315第4号・基安化発0315第3号・基徴収発0315第1号・基補発0315第2号「特定技能外国人の労働条件等の確保に当たって留意すべき事項について」に基づき、引き続き、請求勧奨に努めること。

 

第13 労災補償業務の実施体制の確保と人材育成

1 業務実施体制の確保

厳しい定員事情や行政経費に係る予算事情など、行政を取り巻く環境が依然として厳しい中、労災補償業務の迅速かつ公正な事務処理を行うためには、局署一体となって実施体制を確保する必要がある。

そのため、本省においては、コールセンターをはじめとする外部委託等において、令和6年7月から新たに「労働基準監督署チャットボット」の運営を開始したところであるが、局署においては、再任用職員や非常勤職員も含めた職員全体の業務分担の見直しを行い、効率的な事務処理体制を整えること。特に、精神障害に係る労災請求件数の一層の増加に対応する場合等においては、局内の行政需要に応じた応援体制を構築するなど、迅速・的確な対応をするための業務実施体制の確保を図ること。

2 人材育成

将来にわたって労災補償業務の迅速かつ公正な事務処理を実施していくためには、労災補償業務に係る中核的人材の確保を念頭に、職員の育成及び資質向上を図ることが不可欠である。

このため、中核的人材となり得る職員について十分な労災補償業務経験を積ませるとともに、地方労働行政職員研修計画に基づく基礎研修や専門研修をはじめとした中央研修を計画的に受講させるほか、局内研修やブロック研修、再任用職員を活用した研修等により業務に必要な知識を確実に付与すること。

また、本省においては、地方局において労災補償業務の中核を担う職員に対し、「中核人材育成研修」を実施している。局管理者においては、本研修の趣旨を踏まえ対象者を選定し、積極的に本研修を活用すること。

特に、若手職員や社会人選考採用職員等の労災補償業務経験年数の少ない職員に対しては、労働大学校ホームページ上の「労働行政職員オンライン公開講座」における中央研修の基礎的な講義動画を積極的に活用しながら、局署におけるOJTなどの研修を行うことにより、業務に必要な基礎的な知識・経験を積ませること。

なお、本省においては、局から支援の要望があった場合、要望内容に応じ、非常勤職員を含めた職員の能力向上のための研修の実施や、事務処理の習熟に効果的な資料やノウハウの提供等必要な支援を引き続き行うこととしている。