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通達:労働安全衛生規則の一部を改正する省令、有機溶剤中毒予防規則の一部を改正する省令及び鉛中毒予防規則の一部を改正する省令等の施行について

 

労働安全衛生規則の一部を改正する省令、有機溶剤中毒予防規則の一部を改正する省令及び鉛中毒予防規則の一部を改正する省令等の施行について

平成元年8月22日基発第462号

(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)

 

労働安全衛生規則の一部を改正する省令(平成元年労働省令第二二号)、有機溶剤中毒予防規則の一部を改正する省令(平成元年労働省令第二三号)及び鉛中毒予防規則の一部を改正する省令(平成元年労働省令第二四号)が、平成元年六月三〇日公布され、同年一〇月一日から施行されることとなった。

また、この改正に伴い、労働安全衛生規則第四四条第三項の規定に基づく告示の一部を改正する告示(平成元年労働省告示第四五号)、労働安全衛生規則第四五条の二第四項において準用する同規則第四四条第三項の規定に基づく告示(平成元年労働省告示第四六号)及び労働安全衛生規則第四五条の二第一項及び第二項の規定に基づく告示(平成元年労働省告示第四七号)が平成元年六月三〇日公布され、同年一〇月一日から併せて適用されることとなった。

今回の改正は、昭和六三年一月の中央労働基準審議会の「労働安全衛生法令の整備について」の建議を踏まえ、労働安全衛生法(以下「法」という。)第六六条第一項の規定に基づく一般健康診断のうち、雇入時の健康診断、定期健康診断、特定業務(労働安全衛生規則第一三条第一項第二号に掲げる業務をいう。)従事者の健康診断(以下「定期健康診断等」という。)の項目の改正及び海外派遣労働者の健康診断に関する規定の新設並びに法第六六条第二項の規定に基づく特殊健康診断のうち、有機溶剤健康診断及び鉛健康診断の項目の改正を行ったものである。

ついては、左記に示す今回の改正の趣旨を十分に理解し、関係者への周知徹底を図るとともに、その運用に遺憾ないようにされたい。

 

第一 改正の趣旨

1 定期健康診断等の項目の改正

最近の高齢化社会の著しい進展等により、脳血管疾患、高血圧症、虚血性心疾患等のいわゆる成人病を有する労働者が増加している。このような成人病を有する労働者に対し、職務上の適正な配慮がなされない場合にはこれらの疾病が増悪することもある。さらに、成人病は、いったん発症すると適切な健康管理をしない限り進行することが多い。したがって、労働者一人一人に着目した疾病の予防とその早期発見のため、定期的に健康診断を行いその経時的な変化にも留意して適切な健康管理等を行うことが極めて重要である。

このため、貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査及び心電図検査を健康診断項目に加えるとともに、従来からの健康診断項目の内容を充実する等その積極的な対応を図ったものである。

2 海外派遣労働者の健康診断の新設

企業活動の国際化とともに、海外で働く労働者の数も年々増加している。

海外において疾病の増悪や新たな疾病の発症があると、職場環境、日常生活環境、医療事情等が国内と異なる面も多いため、医療をはじめとして様々な負担を労働者に強いることとなる。このため、海外に派遣する労働者の健康状態の適切な判断及び派遣中の労働者の健康管理に資するため、派遣前の健康診断に関する規定を新設したものである。また、海外勤務を終了した労働者を国内勤務に就かせる場合の就業上の配慮を行うとともに、その後の健康管理にも資するため、帰国後の健康診断に関する規定を新設したものである。

3 有機溶剤健康診断及び鉛健康診断の項目の改正

近年、作業環境や作業方法の改善により労働者が高濃度の有機溶剤や鉛にばく露されるような環境で働くことは少なくなり、健康診断で発見される有所見者の割合は年々減少してきている。

しかし、一方では低濃度の有機溶剤や鉛にばく露される環境で長期間にわたって働く労働者の健康への影響が懸念されている。

このような状況下での健康診断は、

① 有機物の体内摂取状況の把握

② 体内摂取された有害物に対する早期の生体側の反応の程度の把握

③ 有害物による早期の健康障害の把握

 が基本となるものであり、この観点から有機溶剤業務及び鉛業務に従事する労働者の就業時及びその後の適正配置の配慮等継続的な管理を行うことができるようにするため、従来の一次、二次の健康診断の区別を廃止するとともに、健康診断項目の見直しを行いその内容の一層の充実を図ったものである。

 

第二 改正の要点

Ⅰ 労働安全衛生規則関係

1 定期健康診断等関係

(1) 健康診断項目の追加

従来の健康診断項目に、次の①から④までに掲げる項目(以下「追加項目」という。)を追加したこと(第四三条、第四四条関係)。

① 貧血検査(血色素量及び赤血球数の検査)

② 肝機能検査(GOT、GPT及びγ―GTPの検査)

③ 血中脂質検査(血清総コレステロール及び血清トリグリセライドの量の検査)

④ 心電図検査

なお、特定業務従事者の健康診断項目も同様に改正されることとなること(第四五条関係)。

(2) 聴力の検査方法等

イ 一、〇〇〇ヘルツ及び四、〇〇〇ヘルツの音に係る聴力の検査を行わなければならないこととしたこと(第四三条、第四四条関係)。

なお、特定業務従事者の聴力の検査も同様に改正されることとなること(第四五条関係)。

ロ 定期健康診断の場合、一定の年齢の者については、医師が適当と認める方法による聴力の検査をもって代えることができることとしたこと(第四四条関係)。

ハ 特定業務従事者の健康診断の場合、前回の健康診断で一、〇〇〇ヘルツ及び四、〇〇〇ヘルツの音に係る聴力の検査を行ったときは、医師が適当と認める方法による聴力の検査とすることができることとしたこと(第四五条関係)。

ニ 特定業務従事者の健康診断の場合、一定年齢の者については、医師が適当と認める方法による聴力の検査とすることができることとしたこと(第四五条関係)。

(3) 健康診断項目の省略

イ 定期健康診断及び特定業務従事者の健康診断の項目のうち追加項目については、労働大臣の定める基準に基づき、医師が必要でないと認めるときは省略できることとしたこと(第四四条、第四五条関係)。

ロ 特定業務従事者の健康診断(定期の者に限る。)のうち追加項目については、前回の健康診断で当該項目の検査を行った場合、医師が必要でないと認めるときは当該項目を省略できることとしたこと(第四五条関係)。

ハ 定期健康診断及び特定業務従事者の健康診断について、従来医師が必要でないと認めるときは省略できることとしていた血圧測定並びに尿中の糖及び蛋白の有無の検査を省略できないこととしたこと(第四四条、第四五条関係)。

(4) その他

イ 定期健康診断又は特定業務従事者の健康診断を実施する際、過去一定の期間内に雇入時健康診断、海外派遣労働者の健康診断又は特殊健康診断が実施されている場合には、重複する項目を省略できることとしたこと(第四四条、第四五条関係)。

ロ 健康診断項目の改正に伴い、健康診断個人票及び健康診断結果報告書の様式の改正を行ったこと(第五一条、第五二条関係)。

ハ 労働安全衛生規則第四五条に「特定業務従事者の健康診断」の見出しをつけたこと(第四五条関係)。

2 海外派遣労働者の健康診断関係

(1) 海外に六月以上派遣される労働者及び六月以上の海外勤務を終了し国内業務に従事する労働者に対する健康診断を新設したこと(第四五条の二関係)。

(2) 健康診断は、定期健康診断の項目及び労働大臣が定める項目で医師が必要と認める項目について行わなければならないこととしたこと(第四五条の二関係)。

(3) 労働大臣の定める基準に基づき、身長及びかくたんの検査は、医師が必要でないと認めるときは省略できることとしたこと(第四五条の二関係)。

(4) 海外に派遣する労働者の健康診断を実施する際、過去六月以内に定期健康診断等又は特殊健康診断が実施されている場合には、重複する項目を省略できることとしたこと(第四五条の二関係)。

(5) 健康診断の新設に対応し、海外派遣労働者健康診断個人票の様式を定めたこと(第五一条関係)。

Ⅱ 有機溶剤中毒予防規則関係

1 従来の一次、二次の健康診断の区別を廃止し、必ず実施すべき健康診断項目と医師が必要と判断した場合に実施しなければならない項目にしたこと(第二九条関係)。

2 すべての有機溶剤等に共通の健康診断項目に加えて、一定の有機溶剤等については、それぞれの有機溶剤等に対応し、貧血に関する検査、肝機能に関する検査、尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査及び眼底検査を必ず実施すべき健康診断項目として定めたこと(第二九条、別表関係)。

3 尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査は、必ず実施すべき健康診断項目として有機溶剤の種類に応じその検査内容を定めたこと(別表関係)。

4 貧血に関する検査としては、従来全血比重の検査及び血色素量、ヘマトクリット値又は赤血球数の検査を行っていたが、このうち全血比重の検査及びヘマトクリット値の検査を廃止し、必ず実施すべき健康診断項目として血色素量及び赤血球数の検査としたこと(第二九条、別表関係)。

5 肝機能に関する検査としては、従来ウロビリノーゲンの検査を行っていたがこれを廃止し、必ず実施すべき健康診断項目としてGOT、GPT及びγ―GTPの検査としたこと(第二九条関係、別表関係)。

6 健康診断項目の改正に伴い、健康診断個人票及び健康診断結果報告書の様式の改正を行ったこと(第三〇条、第三〇条の二関係)。

Ⅲ 鉛中毒予防規則関係

1 従来の一次、二次の健康診断の区別を廃止し、必ず実施すべき健康診断項目と医師が必要と判断した場合に実施しなければならない項目にしたこと(第五三条関係)。

2 血液中の鉛の量の検査及び尿中のデルタアミノレブリン酸の量の検査を必ず実施すべき健康診断項目としたこと。

また、赤血球中プロトポルフィリンの量の検査を医師の判断で実施する項目とし、従来行っていた尿中のコプロポルフィリンの検査、尿中のコプロポルフィリンの量の検査、尿中の鉛の量の検査及び尿中の好塩基点赤血球数の検査を廃止したこと(第五三条関係)。

3 貧血に関する検査として従来行っていた全血比重の検査及び血色素量、ヘマトクリット値又は赤血球数の検査を廃止し、貧血検査は医師の判断で実施することとしたこと(第五三条関係)。

4 健康診断項目の改正に伴い、健康診断個人票及び健康診断結果報告書の様式の改正を行ったこと(第五四条、第五五条関係)。

 

第三 細部事項

Ⅰ 労働安全衛生規則関係

1 第四三条(雇入時健康診断)関係

(1) 本条は、貧血症、肝機能障害、高脂血症、心疾患等の疾病に対応した健康診断項目とするため貧血検査、肝機能検査、血中脂質検査及び心電図検査を追加したものであること。

また、加齢等による聴力低下を早期に把握するため、聴力検査についてその検査方法を規定したものであること。

(2) 第三号の「色覚の検査」は、学術用語の変更に合わせて改めたものであること。

(3) 第三号の「聴力の検査」とは、一、〇〇〇ヘルツ及び四、〇〇〇ヘルツの周波数で、一定の音圧の音が聞こえるかどうかの検査を行うことをいうこと。

なお、一、〇〇〇ヘルツの音は日常会話の音域の代表とされる音であり、四、〇〇〇ヘルツの音は高齢化に伴い、早期の聴力低下が起こる音域の代表とされる音であること。

また、雇入時の聴力の検査は、オージオメーターを使用して、通常三〇デシベルの音圧の純音を用いて実施されるものであるが、検査を実施する場所の騒音の程度を考慮し行うものであること。

(4) 第六号の検査は、高齢期の増加する貧血や食行動の偏り等による貧血を把握するために行うものであること。

(5) 第七号の検査は、肝機能障害を早期に把握するために行うものであること。

(6) 第八号の検査は、動脈硬化の原因となる高脂血症を把握するために行うものであること。

また、「血清トリグリセライドの量の検査」は、原則として空腹時に行われるべきものであるが、食事摂取後に行われた場合にはその内容により検査結果に変動を生ずることがあるので、医師がその影響を考慮して判断するものであること。

(7) 第一〇号の「心電図検査」は、不整脈、虚血性心疾患、高血圧に伴う心臓の異常等を把握するために行うものであること。

なお、この場合の標準的な検査法は、安静時の標準一二誘導心電図を記録するものであること。

2 第四四条(定期健康診断)関係

(1) 本条は、貧血検査等四項目を追加するとともに聴力検査についてその検査方法を規定したものであること。

また、健康診断項目の省略基準について改正を行うとともに、医師が適当と認める方法による聴力検査を行う場合の基準についても規定したものであること。

(2) 第一項第三号の「聴力の検査」は、オージオメーターを使用して、通常一、〇〇〇ヘルツについては三〇デシベル、四、〇〇〇ヘルツについては四〇デシベルの音圧の純音を用いて実施されるものであるが、検査を実施する場所の騒音の程度を考慮し行うものであること。

(3) 第三項(健康診断項目の省略)関係

イ 「血圧の測定」については、従来医師の判断で省略できることとされていたが、労働者の血圧の状態を若年から定期的に把握し管理することが必要であることから省略できないこととしたものであること。

ロ 「尿検査」については、従来医師の判断で省略できることとされていたが、糖尿病や腎疾患を早期に把握することが必要であることから省略できないこととしたものであること。

ハ 追加項目の省略に際しては、医師が個々の労働者の現在の健康状態、日常生活状況、作業態様、過去の健康診断の結果等を十分考慮して総合的に判断すべきものであること。

(4) 第五項の規定は、三四歳以下の者及び三六歳以上三九歳以下の者については、第一項第三号の聴力の検査を、同号で規定する一、〇〇〇ヘルツ及び四、〇〇〇ヘルツの音に係る聴力の検査以外の、医師が適当と認める聴力の検査をもって代えることができることを規定したものであること。

なお、「医師が適当と認める聴力の検査」には、音叉による検査等があること。

3 第四五条(特定業務従事者の健康診断)関係

(1) 第二項の規定は、特定業務従事者に対し定期に行う健康診断の追加項目について、前回の健康診断において当該項目の検査が実施されている場合、医師が必要でないと認めるときは当該項目を省略できることを規定したものであること。

(2) 第四項の規定は、特定業務従事者に対し定期に行う健康診断において、オージオメーターによる一、〇〇〇ヘルツ及び四、〇〇〇ヘルツの音に係る聴力検査が前回の健康診断において実施されている場合、当該検査方法以外で医師が適当と認める聴力の検査をもって代えることができることを規定し、また、三四歳以下の者及び三六歳以上三九歳以下の者についても当該検査方法以外で医師が適当と認める聴力の検査をもって代えることができることを規定したものであること。

4 第四五条の二(海外派遣労働者の健康診断)関係

(1) 「本邦外の地域に六月以上派遣」とは、業務命令によって日本国外の業務に六月以上従事させることをいうものであること。この場合の業務遂行の形態としては、転勤、在籍出向、移籍出向、出張等があること。

(2) 第三項の規定は、海外に労働者を派遣する際に行う健康診断を実施する際、既に実施されている雇入時健康診断、定期健康診断、特定業務従事者の健康診断及び特殊健康診断がある場合、海外派遣労働者の健康診断と重複する項目については、その限りで相当する項目を省略して行うことができることを規定したものであること。

5 第五一条(健康診断個人票)関係

(1) 健康診断結果の記録の名称を「一般健康診断個人票」から「健康診断個人票」に改めたこと。

(2) 第四四条第四項(第四五条第三項の規定により準用する場合を含む。)又は第四五条の二第三項の規定に基づいて健康診断項目を省略した場合は、その旨が明確になるように健康診断個人票に記載するものであること。

6 様式第五号(1)関係

労働安全衛生規則第四八条の規定に基づく歯科医師による健康診断結果を明確にするため「歯科健診」の欄及び「歯科医師の氏名(印)」の欄を設けたこと。

7 様式第六号関係

定期健康診断結果報告書の様式を健康診断項目ごとにその実施者数、有所見者数を報告させるものに改めたこと。

Ⅱ 有機溶剤中毒予防規則関係

1 第二九条(健康診断)関係

(1) 第二項第二号関係

イ 「有機溶剤による健康障害の既往歴の調査」とは、過去に有機溶剤による貧血、肝機能障害、腎機能障害、末梢神経障害等の健康障害があったかどうかを調査することをいうこと。

ロ 「有機溶剤による自覚症状及び他覚症状の既往歴の調査」とは、過去に有機溶剤による別添の表一の症状のそれぞれがあったかどうかを調査することをいうこと。

ハ 「尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査」とは、有機溶剤中毒予防規則別表(以下「有機則別表」という。)下欄の「尿中のメチル馬尿酸の量の検査」、「尿中のN―メチルホルムアミドの量の検査」、「尿中のマンデル酸の量の検査」、「尿中のトリクロル酢酸又は総三塩化物の量の検査」、「尿中の馬尿酸の量の検査」、「尿中の二・五―ヘキサンジオンの量の検査」をいうこと。

ニ 「既往の異常所見の有無の調査」とは、過去の貧血に関する検査、肝機能に関する検査、眼底検査、腎機能に関する検査及び神経内科学的検査における異常所見の有無を調査することをいうこと。

(2) 第二項第三号の「有機溶剤による自覚症状又は他覚症状と通常認められる症状の有無の検査」は、有機溶剤による生体影響等健康への影響を総合的に把握するうえで重要な検査である。この検査の結果は、医師が必要と認める場合の健康診断項目の実施や医師が必要でないと認める場合の健康診断項目の省略等の判断の際の重要な基準ともなるものであるので、別添の表一に掲げる症状のすべてについて、その有無を確認しなければならないものであること。

なお、適宜問診票を用いても差し支えないが、その際には医師による全症状にわたる十分な問診を行うべきものであること。

(3) 第三項は、有機則別表に掲げる有機溶剤等の種類に応じ、貧血の検査として血色素量及び赤血球数の検査、肝機能の検査としてGOT、GPT及びγ―GTPの検査、尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査又は眼底検査を行うことを規定したものであること。

また、尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査のための尿の採取には、各物質ごとに適切な時期があり、その保存には適当な方法があるので別途示すところによること。

(4) 第四項の規定に基づき、医師が必要でないと認めて健康診断項目を省略する場合には、別途示すところによること。

(5) 第五項関係

イ 第一号の「作業条件の調査」は、従来有機則別表に定められていたが、新たに、医師が必要と認める場合に行う項目として規定したこと。

ロ 第二号の「貧血検査」とは、有機則別表の(一)に掲げる有機溶剤等に対しては血色素量及び赤血球数の検査以外の貧血に関する検査をいい、それ以外の有機溶剤等に対しては血色素量及び赤血球数の検査を含む貧血に関する検査をいうこと。

貧血に関する検査には、血色素量及び赤血球数の検査以外にヘマトクリット値、網状赤血球数の検査等があること。

ハ 第三号の「肝機能検査」とは、有機則別表の(二)、(四)、(六)に掲げる有機溶剤等に対してはGOT、GPT、γ―GTP以外の肝機能に関する検査をいい、それ以外の有機溶剤等に対してはGOT、GPT、γ―GTPの検査を含む肝機能に関する検査をいうこと。

肝機能に関する検査には、GOT、GPT、γ―GTPの検査以外に血清の総蛋白、ビリルビン、アルカリフォスファターゼ、乳酸脱水素酵素の検査等があること。

ニ 第四号の「腎機能検査」には、尿中蛋白量、尿中糖量、尿比重の検査、尿沈渣顕微鏡検査等があること。

ホ 第五号の「神経内科学的検査」には、筋力検査、運動機能検査、腱反射の検査、感覚検査等があること。

2 様式第三号の二関係

有機溶剤等健康診断結果報告書の様式を健康診断項目ごとに、その実施者数、有所見者数を報告させるものに改めたこと。また、尿中の有機溶剤の代謝物の量の検査については、その結果を三つの分布に区分して報告させることとしたこと。

なお、この分布の区分は、正常・異常の鑑別を目的としたものではないこと。

Ⅲ 鉛中毒予防規則関係

1 第五三条(健康診断)関係

(1) 第一項第二号の「鉛による自覚症状及び他覚症状の既往歴の調査」とは、過去に鉛による別添の表二の症状のそれぞれがあったかどうかを調査することをいい、また、「既往の検査結果の調査」とは、過去の血液中の鉛の量の検査及び尿中のデルタアミノレブリン酸の量の検査の結果を調査することをいうこと。

(2) 第一項第三号の「鉛による自覚症状又は他覚症状と通常認められる症状の有無の検査」は、鉛による生体影響等健康への影響を総合的に把握するうえで重要な検査である。この検査の結果は、医師が必要と認める場合の健康診断項目の実施や医師が必要でないと認める場合の健康診断の省略等の判断の際の重要な基準ともなるものであるので、別添の表二に掲げる症状のすべてについて、その有無を確認しなければならないものであること。

なお、適宜問診票を用いても差し支えないが、その際には医師による全症状にわたる十分な問診を行うべきものであること。

(3) 第一項第四号及び第五号の検査のための血液・尿の採取及び保存については、別途示すところによること。

(4) 第二項の規定に基づき、医師が必要でないと認めて健康診断項目を省略する場合には、別途示すところによること。

(5) 第三項第二号の「貧血検査」には、血色素量及び赤血球数の検査以外にヘマトクリット値、網状赤血球数の検査等があること。

(6) 第三項第四号の「神経内科学的検査」には、筋力検査、運動機能検査、腱反射の検査、感覚検査等があること。

2 様式第三号関係

鉛健康診断結果報告書の様式を健康診断項目ごとに、その実施者数、有所見者数を報告させるものに改めたこと。また、血液中の鉛の量の検査、尿中のデルタアミノレブリン酸の量の検査及び赤血球中のプロトポルフィリンの量の検査については、その結果を三つの分布に区分して報告させることとしたこと。

なお、この分布の区分は、正常・異常の鑑別を目的としたものではないこと。

Ⅳ 告示第四七号関係

第一項第一号及び第二項第一号の、「腹部画像検査」とは、胃部エックス線検査及び腹部超音波検査をいうこと。

 

第四 その他の事項

Ⅰ 健康診断の実施に当たって留意すべき事項

1 法に定める健康診断以外の健康診断等との関係

事業者が法に定める健康診断を実施する場合、近接した時期に他の健康診断等が実施され、その内容に法に定める健康診断に相当するものが含まれているときは、その相当する部分については、当該健康診断等を利用して実施することとしても差し支えないものであること。

2 健康診断結果の評価について

一般健康診断と特殊健康診断双方の対象となる労働者に係る健康診断の評価に際しては、一般健康診断と特殊健康診断の結果を経時的な変化を含め総合的に評価することが重要であること。

従って、これらの健康診断結果については、医療機関への紹介状やその回答等を含め、労働者ごとに一括保存することが望ましいものであること。

Ⅱ その他

1 昭和四七年九月一八日付け基発第五八九号通達の記の第二の11の(3)及び(4)を削ること。

2 昭和四七年九月一八日付け基発第六〇一号の一通達の記の第一編の第二の28の(3)を削ること。

3 昭和五三年八月三一日付け基発第四七九号通達の記の第二のⅡの7の(3)及び(4)並びに9の(1)及び(2)を削ること。

 

別添

表一 有機溶剤による自覚症状及び他覚症状

1 頭重、2 頭痛、3 めまい、4 悪心、5 嘔吐、6 食欲不振、7 腹痛、8 体重減少、9 心悸亢進、10 不眠、11 不安感、12 焦燥感、13 集中力の低下、14 振戦、15 上気道又は眼の刺激症状、16 皮膚又は粘膜の異常、17 四肢末端部の疼痛、18 知覚異常、19 握力減退、20 膝蓋腱・アキレス腱反射異常、21 視力低下、22 その他

表二 鉛による自覚症状及び他覚症状

1 食欲不振、便秘、腹部不快感、腹部の疝痛等の消化器症状、2 四肢の伸筋麻痺または知覚異常等の末梢神経症状、3 関節痛、4 筋肉痛、5 蒼白、6 易疲労感、7 倦怠感、8 睡眠障害、9 焦燥感、10 その他