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通達:鉛中毒予防規則の施行について

 

鉛中毒予防規則の施行について

昭和47年9月18日基発第589号

(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局通達)

最終改正 平成16年3月19日基発第0319008号

 

労働安全衛生法(昭和四七年法律第五七号。以下「法」という。)および労働安全衛生法施行令(昭和四七年政令第三一八号。以下「令」という。)の規定に基づき、鉛中毒予防規則(昭和四七年労働省令第三七号。以下「鉛則」という。)は、昭和四七年九月公布され、その大部分の条項は同年一〇月一日からその大部分の規定が施行されることとなつた。今回のこの規則の制定は、法および令の施行に伴い従来の鉛中毒予防規則(昭和四二年労働省令第二号。以下「旧規則」という。)の内容に検討を加え鉛業務の範囲、鉛粉じんの除じん対象範囲の拡大その他により鉛中毒の予防対策の充実を期することとしたものである。ついては、今回の制定の趣旨を十分に理解し、関係者への周知徹底をはかるとともに、とくに下記事項に留意して、その運用に遺憾のないようにされたい。なお、旧規則における通達は、鉛則にこれに相当する規定があるものについては、当該規定に関して出されたものとして取り扱うこと。

 

第一 旧規則との主な相違

1 旧規則において、鉛業務とされていない鉛を取り扱う業務のうち、作業環境の気中鉛濃度等からみて鉛中毒予防措置を必要とするものが新たに鉛業務に追加して定められたこと(第一条関係)。

2 旧規則において、鉛業務を行なう作業場所に設けるべき局所排気装置について、その設置の特例が認められているもののうち、四五〇℃以下の温度で行なわれる溶融、鋳造の業務であつて、鉛の取扱量が多い一定の業務等についての特例が廃止されたこと(第二三条関係)。

3 除じん装置を設置する対象設備の範囲を拡大し、鉛を排出する一定の施設に設けた排気筒等について追加規定したこと(第二六条関係)。

4 設置する除じん装置は、ろ過式除じん装置又はこれと同等以上の性能を有するものとされ、必要に応じ、前置き除じん装置の設置が規定されたこと(第二六条関係)。

5 鉛の溶融設備の容量が著しく小さい場合又は局所排気装置のダクトの内部等における排気中の鉛濃度が著しく低い場合における除じん装置の設置についての特例が認められたこと(第二七条関係)。

6 局所排気装置の具備すべき性能基準について、旧規則が制御風速(熱気流を伴うものにあつては排風量)によつていたのを改め、所定場所における抑制濃度を定め、これをこえないようにすることができる能力のものでなければならないこととされたこと(第三〇条関係)。

7 鉛作業主任者が備えるべき資格が改められたこと(第三三条関係)。

8 局所排気装置の定期自主検査及びその結果の記録等について定められたこと(第三五条~第三八条)。

9 健康診断の実施について、その実施時期に鉛業務への配置替えの際にも行なうべきことが追加して定められるとともに、健康診断項目として、国際的に認められた精度の良い検査方法が採用され、労働者の健康管理の適正化に資することとされたこと(第五三条関係)。

10 法第八八条第一項(同条第二項において準用する場合を含む。)の規定による鉛関係の設備等の設置、移転又は主要構造部分の変更に係る届出について定められたこと(第六一条関係)。

 

第二 細部事項

1 第一条関係

(1) 第五号ホの「鉛快削鋼」とは、鉛を〇・一~〇・三五%程度含有する鋼をいうこと。鉛快削鋼は、鉛の含有量は少ないが、その製造工程における鉛の鋳込の業務において、高濃度の鉛ヒユームが発散することから追加して定められたこと。また、「鋳込」とは、溶融した鋼の中に鉛を添加することをいい、取鍋添加、注入管添加等の方法があること。

(2) 第五号トの「仕上げの業務」には、自動車を製造する工程における車体への鉛合金の溶着(はんだ盛り)筒所を研磨する作業が該当すること。

(3) 第五号チの「鋳込」とは、ガラスを製造する工程において、鉛化合物を含有する溶解したガラスを鋳型等に注入する作業が該当すること。

2 第二条関係

本条は、令別表第四第一五号において、労働省令に委任された適用除外の要件として、(1)鉛等により汚染されるおそれが少ないこと。(2)所轄労働基準監督署長の認定を必要とすることを規定したものであること。

3 第三条関係

本条は、鉛業務であつても遠隔操作による業務等のごとく、鉛等による汚染のおそれがないか又はごく少ないと思われるものについて、関係条項の適用の除外について規定したものであること。なお、旧規則で定められていた所轄労働基準監督署長の認定に係る適用の除外については、最近における鉛中毒の実態からみて適用除外の範囲の拡大はあり得ないとの見地から、行なわれないこととされたこと。

4 第二三条関係

第四号括弧内の業務については、鉛の取扱量が多く、かつ、鉛溶融作業中浮渣を除去する場合等において、鉛ヒユームの発散が認められ、かつ、鉛中毒患者が発生した事例もあり、原則どおり、局所排気装置の設置が義務づけられたものであること。

5 第二六条関係

(1) 本条は、鉛業務のうち、鉛粉じんの発散が著しい発散源に設けるべき局所排気装置及び溶鉱炉、焼成炉等一定の設備に設けた排気筒について、除じん装置を当該設備に併設すべきことが規定されたものである。なお、本改正にあたつては、除じん装置を併設すべき設備についてその対象の拡大が図られ、作業環境の再汚染の防止とあわせて公害の防止に資するよう配意されたものであることに留意すること。

(2) 設置すべき除じん装置については、鉛粉じんの粒径及びその毒性等からみて、ろ過式除じん装置又はこれと同等以上の性能を有するものでなければならないこととされたこと。

(3) ろ過式除じん装置とは、ろ層に含じん気体を通して、粉じんをろ過捕集する原理によるものをいい、バツグフイルターによるものとスクリーンフイルターによるものとがあること。

(4) 第二項の「前置き除じん装置」には、重力沈降式、ルーバー等の慣性除じん装置、サイクロン等があること。

6 第二七条関係

(1) 本条は、除じん装置の設置に関し、鉛又は鉛合金を溶融するかま、るつぼの容量が小さい場合、又は局所排気装置のダクト排気中の鉛濃度が低い場合における適用除外について規定されたものであること。

(2) 第二号の「設備の内部」とは、局所排気装置にあつては、ダクト内部を、焙焼炉等一定の設備にあつては、当該炉に直結する設備で、当該炉からの鉛を含有する気体を排出するものの内部をいうこと。

7 第三〇条関係

本条は、局所排気装置及び排気筒の具備すべき性能を抑制濃度方式により規定したものである。即ち、局所排気装置、排気筒についてはそのフードの周囲の所定位置において、また、一作業直で通常の発散状態になつたときにおいて、環気中鉛濃度の平均値が常態として〇・一五mg/m3をこえないようにすることができる能力のものであるべきことが規定されたものであること。

8 第三三条関係

鉛作業主任者は、鉛作業主任者技能講習を修了した者のうちから選任することとされたが、昭和四九年九月三〇日までの間は、衛生管理者の免許を受けた者のうちから選任することができることとされていること(附則第四条)。

9 第三五条及び第三六条関係

法第四五条、令第一五条第八号の規定に基づき、鉛業務に係る定期自主検査の対象となる設備が規定されるとともに、当該設備ごとの検査事項について一年以内ごとに一回、定期に自主検査を実施し、その結果を記録しなければならないことが規定されたものであること。

(1) 第三五条第二項第一号ホ及び第三七条第一号ハの「吸気及び排気の能力」は、所定要領によつて換気中の鉛濃度の測定を実施することによる検査が必要であるが、この方法によることが困難な場合にあつては、局所排気装置の性能が確保されている場合の所定位置における制御風速をあらかじめ測定により明らかにしておき、検査の場合、風速を測定し、前記風速と比較することにより局所排気装置の性能の有無を検査しても差支えないこと。

(2) 第三五条第二項第一号ヘ及び第三七条第一号ニの「必要な事項」とは、ダンパーの調節、フアンの排風量不足の有無、排風機の注油状態の検査等をいい、第三五条第二項第二号及び第三六条第二号ニの「必要な事項」には、除じん装置等の性能が低下した場合における排気又は排液の量の調整等を含むこと。

10 第三七条関係

(1) 本条は、法第二七条の規定に基づき、局所排気装置又は除じん装置について、新設時、変更時等においても所定の事項について点検を実施すべきことを規定したものであること。

(2) 本条による点検結果については、事業者が第三六条に規定する事項について記録し、これを保存しておくことが望ましいこと。

11 第五三条関係

(1) 本条は、法第六六条第二項、令第二二条第一項第四号の規定に基づき、常時鉛業務に従事する労働者に対し、雇入れの際、当該業務への配置替えの際及び定期に鉛健康診断を実施すべきことを規定したものであること。

(2) 第一項の「当該作業に配置替えする際」とは、その事業場において、他の作業から鉛業務に配置転換する直前においての意であること。

12 第六一条関係

本条は、法第八八条第一項の規定により鉛業務に係る設備等の設置、移転、変更に係る届出について規定したものであること。