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事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針の一部改正等について
令和8年1月20日基発0120第1号
(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
事業譲渡における労働契約の承継に必要な労働者の承諾の実質性を担保し、併せて、労働者及び使用者との間での納得性を高めること等により、事業譲渡及び合併(会社法(平成17年法律第86号)第5編第2章及び第5章の規定による合併をいい、吸収合併又は新設合併をいう。以下同じ。)の円滑な実施及び労働者の保護に資するよう、「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」(平成28年厚生労働省告示第318号。以下「事業譲渡等指針」という。)を策定し、事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等(同法第2条第1号の会社その他事業を行う者で、労働者を使用するものをいう。以下同じ。)が留意すべき事項について周知を図ってきたところである。
令和6年通常国会において成立した事業性融資の推進等に関する法律(令和6年法律第52号。以下「事業性融資推進法」という。)の附帯決議において、「「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針」については、政府において、専門的な検討の場を設け、新たな企業価値担保権の創設を踏まえて必要な見直し等を行うこと。」とされたことから、関係審議会(労働政策審議会労働条件分科会組織再編に伴う労働関係の調整に関する部会)において検討が行われ、その結果を踏まえて、別添1「事業譲渡又は合併を行うに当たって会社等が留意すべき事項に関する指針の一部を改正する件」(令和8年厚生労働省告示第11号)が本日告示され、令和8年5月25日から適用されることとなった。
事業性融資推進法及び事業譲渡等指針の一部改正の趣旨及び概要並びにこれらの周知や相談対応における留意点は下記のとおりであり、これを了知の上、事業者等関係者に対する改正後の事業譲渡等指針の周知や労働者等からの相談対応等その運用について遺漏なきを期されたい。
記
1 事業性融資推進法の概要
事業性融資推進法は、事業者が、不動産担保や経営者保証等によらず、事業の実態や将来性に着目した融資を受けやすくなるよう、事業性融資の推進に関し、「企業価値担保権」等について定めた法律であること。
企業価値担保権とは、有形資産に乏しいスタートアップや、経営者保証により事業承継や思い切った事業展開を躊躇している事業者等の資金調達を円滑化するため、無形資産を含む事業全体を担保とする制度であること。
なお、担保権実行時には、企業価値を損なうことがないよう、事業継続に不可欠な費用(商取引債権・労働債権等)について優先的に弁済し、事業譲渡の対価を融資の返済に充てることとされていること。
事業性融資推進法の施行は、令和8年5月25日であること。
2 事業譲渡等指針の改正の概要
(1) 管財人が行うべき事項等
管財人は、労働組合等に対し労働者の権利の行使に必要な情報を提供するよう努めるとともに、次の事項を踏まえて対応することが適当と考えられるものであること。
イ 管財人に関する基本的な考え方
管財人は、労働者を含めた利害関係人のために、企業価値担保権の目的を実現すべき責務を担っており、善良な管理者の注意をもってその職務を行わなければならないこと。
また、管財人による買受人の選定が労働者の保護の見地から不適当であり、その注意を怠ったときは、利害関係人は裁判所に管財人の解任を請求できることとなることや、管財人が利害関係人に対し、連帯して損害を賠償する義務を負うこと。
さらに、企業価値担保権の実行手続における管財人は、労働組合法(昭和24年法律第174号)上の使用者の地位を承継すると解され、労働組合から、その権限に関する事項に係る団体交渉の申入れがあった場合には、誠意をもって交渉に当たらなければならないものとされていること。
ロ 企業価値担保権の実行に関する事項
個々の労働者に対しても同様に、労働者の権利の行使に必要な情報を提供すること。
労働組合等及び個々の労働者に対し労働者の権利の行使に必要な情報を提供するに当たっては、事業譲渡等指針第2の1の(2)のイに規定する事項や、分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針(平成12年労働省告示第127号)第2の4に規定する事項を参考にすること。
ハ 企業価値担保権の担保目的財産の換価としての事業譲渡に関する事項等
事業譲渡を行うに当たり、承継予定労働者、労働組合等との協議等を行うこと。
記の2の(1)に記載の情報提供等は、企業価値担保権の実行手続開始決定後、必要に応じて適宜行われること。営業又は事業の譲渡については、事業を解体せず雇用を維持しつつ承継することが原則であること。譲受会社等の選定及び担保目的財産の換価に際しては、裁判所の許可を受ける必要があり、管財人には、雇用の維持や取引関係の維持、その他多様な事情も考慮して最も適切な承継先を選定することが求められること。
(2) 会社が行うことが望ましい事項
会社(会社法第2条第1号に規定する会社をいう。以下この(2)において同じ。)は、企業価値担保権を設定する場合においては、会社が置かれている環境や経営課題等について、会社の状況に応じて労働者と意見交換を行い、労働組合等に対する情報提供等の促進に向けて取り組むこと。
(3) 企業価値担保権者や特定被担保債権者に関する基本的な考え方
企業価値担保権者等が、「基本的な労働条件等について、雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配、決定することができる地位にある」場合や、団体交渉の申入れの時点から「近接した時期」に譲渡会社等の労働組合の「組合員らを引き続き雇用する可能性が現実的かつ具体的に存する」場合等には、労働組合法上の使用者性を有する可能性があることに、留意が必要であること。
3 改正後の事業譲渡等指針の運用にあたっての留意事項
(1) 管財人が行うべき事項等について
記の2(1)の「労働者の権利の行使に必要な情報」について、企業価値担保権の実行手続に関する全体の状況として、企業価値担保制度の概要や買受人(事業を譲り受ける会社等)選定に当たっての原則、実行手続中における会社の状況等について情報提供をしたり、会社と労働者との間に生じた問題については労働組合に相談すること、労働問題に関する個別相談先として総合労働相談コーナーがあることなどを案内したりすることが考えられること。
(2) 会社が行うことが望ましい事項について
記の2(2)の「情報提供等の促進」について、事業の成長に向けて、労働者の理解と協力が得られるよう、例えば、会社が置かれている環境や経営課題、目指すべき事業の方向性に関する情報、資金調達において活用される企業価値担保権に関する制度の概要等について、情報提供をすることが考えられること。
4 周知や相談対応について
周知に当たっては、リーフレット「企業価値担保権が有効に活用され、事業の継続と成長が実現されるためには、労働者や労働組合とのコミュニケーションが重要です」(別添2)や「事業の譲渡を行う際に会社等が守るべきルール(事業譲渡等指針)が変わりました」(別添3)を活用するとともに、相談者に対しても、当該リーフレットを活用し、適切な対応を行うこと。
別添1
<編注:略。令和8年1月20日厚生労働省告示第11号>
別添2<編注:ここをクリックして閲覧>
別添3<編注:ここをクリックして閲覧>