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通達:会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律について

 

会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律について

平成12年8月29日労政発第18号

(都道府県労働局総務部長あて労働省労政局労政課長通知)

 

「会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律」(以下「法」という。)については、第147回通常国会において本年5月24日に成立し、同年5月31日に平成12年法律第103号として公布された。

法は、会社をめぐる最近の社会経済情勢にかんがみ会社分割の制度を創設するための商法等の一部を改正する法律(平成12年法律第90号)と一体のものとして、会社の分割に伴う労働契約の承継等について商法の特例等を定めることにより、労働者の保護を図ることを目的とするものである。その主たる内容は下記のとおりであるので、参考までに通知する。

なお、現在、下記第2の6の指針について「労働契約承継法の指針の在り方研究会」において検討が行われているところであり、その意見を踏まえ、法を実施するための労働省令の公布と併せて、年内を目途に告示することとしている。制度の周知については、労働省令及び指針の公布・告示後に、別途通知することを予定しているので、申し添える。

おって、去る7月11日に日本労働研究機構において、労働省労政局長より「会社分割と労働者保護」と題して講演を行っており、その際の講演録が発行されているので、参考までに添付する。

 

第1 趣旨

商法における会社分割法制の導入に伴い、分割をした会社の権利義務が分割によって設立する会社等に包括的に承継されることとなることを踏まえ、同法制の目的を尊重しつつ、労働者保護の観点から、労働契約の承継等についての特例等を定めることを目的として、立法措置を講ずることとしたものである。

 

第2 概要

1 法律の目的

この法律は、会社の分割が行われる場合における労働契約の承継等に関し商法(明治32年法律第48号)及び有限会社法(昭和13年法律第74号)の特例等を定めることにより、労働者の保護を図ることを目的とすることとしたこと。(第1条関係)

2 労働者等への通知

(1) 分割会社は、次に掲げる労働者に対し、分割計画書等を承認する株主総会等の会日の二週間前までに、労働契約を設立会社等が承継する旨の分割計画書等中の記載の有無等を書面により通知しなければならないこととしたこと。(第2条第1項関係)

イ 当該会社が雇用する労働者であって、設立会社等に承継される営業に主として従事するものとして労働省令で定めるもの

ロ 当該会社が雇用する労働者(イに掲げる労働者を除く。)であって、分割計画書等にその者が当該会社との間で締結している労働契約を設立会社等が承継する旨の記載があるもの

(2) 分割会社は、労働組合との間で労働協約を締結しているときは、労働組合に対し、分割計画書等を承認する株主総会等の会日の二週間前までに、労働協約を設立会社等が承継する旨の分割計画書等中の記載の有無等を書面により通知しなければならないこととしたこと。(第2条第2項関係)

(3) 簡易な分割の手続が行われる場合については、会社は、分割計画書等が作成された日から起算して二週間以内に2(1)及び2(2)の通知と同様の事項を書面により通知しなければならないこととしたこと。(第2条第3項関係)

3 労働契約の承継

(1) 2(1)のイに掲げる労働者が分割会社との間で締結している労働契約であって、分割計画書等に設立会社等が承継する旨の記載があるものは、当該分割計画書等に係る分割の効力が生じた時に、設立会社等に承継されることとしたこと。(第3条関係)

(2) 2(1)のイに掲げる労働者であって、分割計画書等にその者が分割会社との間で締結している労働契約を設立会社等が承継する旨の記載がないものは、2(1)の通知がされた日から分割会社が定める日(分割計画書等を承認する株主総会等の会日の二週間前の日から当該会日の前日までの日に限る。3(3)及び3(6)において「期限日」という。)までの間に、分割会社に対し、当該労働契約が承継されないことについて、書面により、異議を申し出ることができることとしたこと。(第4条第1項関係)

(3) 分割会社は、期限日を定めるときは、2(1)の通知がされた日と期限日との間に少なくとも13日間を置かなければならないこととしたこと。(第4条第2項関係)

(4) 簡易な分割の手続が行われる場合の期限日は、分割を行うべき日の前日までの日に限ることとしたこと。(第4条第3項関係)

(5) 3(2)に規定する労働者が異議を申し出たときは、当該労働者が分割会社との間で締結している労働契約は、分割計画書等に係る分割の効力が生じた時に、設立会社等に承継されることとしたこと。(第4条第4項関係)

(6) 2(1)のロに掲げる労働者は、2(1)の通知がされた日から期限日までの間に、分割会社に対し、当該労働者が分割会社との間で締結している労働契約が設立会社等に承継されることについて、書面により、異議を申し出ることができることとしたこと。(第5条第1項関係)

(7) 3(3)及び3(4)は、3(6)の場合に準用することとしたこと。(第5条第2項関係)

(8) 3(6)に規定する労働者が異議を申し出たときは、当該労働者が分割会社との間で締結している労働契約は、設立会社等に承継されないこととしたこと。(第5条第3項関係)

4 労働協約の承継等

(1) 分割会社は、分割計画書等に、分割会社と労働組合との間で締結されている労働協約のうち設立会社等が承継する部分を記載することができることとしたこと。(第6条第1項関係)

(2) 分割会社と労働組合との間で締結されている労働協約のうち、労働条件に関する部分を除き、分割会社と労働組合との間で分割計画書等の記載に従い設立会社等に承継させる旨の合意があったときは、合意に係る部分は、分割の効力が生じた時に、設立会社等に承継されることとしたこと。(第6条第2項関係)

(3) 4(2)に定めるもののほか、分割会社と労働組合との間で締結されている労働協約については、労働組合の組合員である労働者と分割会社との間で締結されている労働契約が設立会社等に承継されるときは、分割の効力が生じた時に、設立会社等と労働組合との間で当該労働協約(4(2)の合意に係る部分を除く。)と同一の内容の労働協約が締結されたものとみなすこととしたこと。(第6条第3項関係)

5 労働者の理解と協力

分割会社は、当該分割に当たり、労働大臣の定めるところにより、その雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めることとしたこと。(第7条関係)

6 指針

労働大臣は、分割会社及び設立会社等が講ずべき労働契約及び労働協約の承継に関する措置に関し、その適切な実施を図るために必要な指針を定めることができることとしたこと。(第8条関係)

7 施行期日等

(1) この法律は、一部の規定を除き、商法等の一部を改正する法律の施行の日(同法の公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日)から施行することとしたこと。(附則第1条関係)

(2) 関係法律の規定の整備を行うこととしたこと。(附則第2条関係)

 

(注) 講演録「会社分割と労働者保護」は省略した。