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通達:労働教育の推進について

 

労働教育の推進について

昭和50年4月1日労発第39号

(各都道府県知事あて労働省労政局長通知)

 

労働教育行政の基本的考え方については、昭和二十八年六月六日付け労働省発労第一四号労働事務次官通牒により示されているところであるが、下記1に示すような最近における諸般の情勢変化と従来行われてきた労働教育の実情に対応し、都道府県が行う労働教育行政に関する諸通達を整理統合し、その運営の当面の指針を下記2以下のとおり定めたので、最近の情勢に即応しつつ、労働教育の一層の推進について、特段のご配慮を煩わしたい。

おつて、次に掲げる労働省労政局長通達は廃止する。

昭和二十八年十月七日付け労発第二二二号「国民一般に対する労働教育の実施について」

昭和二十八年十月七日付け労発第二二三号「労働学校の設置及び運営について」

昭和三十九年五月七日付け労発第七一号「労働教育の積極的推進について」

昭和四十四年六月三十日付け労発第七五号「労働学校等実施状況等の報告について」

 

1 労働をとりまく経済社会事情の変化

戦後三十年が経過し、この間、わが国経済はめざましい発展をなしとげてきたが、その過程で経済社会の諸事情が著しく変化してきている。とくに、労使関係にかかわる諸事情の変化のうち主要なものとしては次のような点があげられよう。

第一は、産業構造及び労働力事情の変化である。戦後わが国経済の発展の過程で産業構造及び就業構造の高度化が進み、雇用労働者は、その数及び全就業者中に占める割合が著しく増加し、その家族を含めると国民の大部分を占めるようになつた。また、若年労働者、技能労働者等を中心としながらも全体として労組力不足基調に移行するとともに、女子雇用労働者の増加、労働者全般の高学歴化、高年齢化等労働事情も変化してきている。

第二は、生産労働態様の変化である。技術革新、情報化、産業構造の近代化等に伴い、生産形態、経営組織等が大きく変化し、企業の機械化、大規模化、集中化等がすすみ、これに応じて労働態様も程度の差はあれ単純化、単調化、職種の交代等の変化が進み、また労働災害の大型化、新しい職業病の発生等の新たな問題が生じるとともに、職場における人間関係や仕事の人間化、働きがいの問題が大きく取り上げられるようになつた。

また、このような産業、社会経済の高度化とその急速かつ大きな変化発展は、今後も一層進むものと予想され、労働者がこれによく適応していくための絶えざる教育訓練の必要性が高まつている。

第三は、企業と企業外との関係をめぐる問題の発生である。企業の大規模化、集中化が進み、また、最近において物価の高騰が進む過程で、公害、環境汚染、危害有害製品の発生、あるいは投機行為、競争制限行為等、さらには東南アジアを中心として日系在外企業の労働諸問題の発生等産業企業等の社会的責任を求める声が高まつてきており、それが労使の大きな課題となつている。

第四は、労働者の意識の変化である。国民の賃金・所得が向上し、消費水準も著しく改善されるに伴い、若年層を中心として労働者の意識は急速に変化し、賃金要求のみならず、余暇の選好、教養、レクリエーシヨンその他の生活水準の向上が進むとともに、職場における人間関係や仕事についての満足感を重視する一方、労働組合、企業のいずれに対しても無関心あるいは社会、組織からの離脱傾向が進む等の問題が生じている。

第五に、以上のような経済社会事情の大きな変化に加え、とくに最近、今後のわが国労使関係に、重大な変化を及ぼす事情が発生している。それはわが国経済基調の転換である。最近における石油危機に端を発してわが国経済はインフレーシヨンの傾向が強まり、また、今後においてはエネルギー等の基礎資源、公害等に制約されて、従来の高成長から低成長へその基調が変わるものと予想されている。この事情は、上述のこれまでの諸事情の変化と相まつて、賃金問題を中心にわが国の労使関係にきわめて大きな影響を与えるものとみられる。

このような背景の下で、わが国労使関係の動向も大きく変わり、労働組合の課題は、賃金問題のみならず、企業内、産業内における合理化問題、週休二日制等労働時間短縮問題、定年延長等の労働福祉問題、さらには物価、公害、社会保障等のいわゆる国民的要求、制度的要求等に及び、また、労働者の地位の向上、産業民主化等の見地から労働者の参加を求める主張も強まつている。

また、わが国においては、労働組合の組織化は大企業中心であり、一方小・零細企業においてはなお非近代的な労使関係がみられ、労使関係が不安定なものも少なくないのが実用であるが、他面労働組合及び労働運動は、わが国社会経済において重要な地位を占めるに至り、その影響力は飛躍的に増大し、その健全な発展の如何は、わが国民主主義社会の将来を左右するといつても過言ではない。

2 今後の労働教育行政の重点

以上のような労働及び社会経済の諸事情の変化に伴い、労働教育行政の重要性は一層大きくなるとともに、その課題が大きく変化しつつあるので、当面労働教育を推進するにあたつては、次の諸点に十分留意されたい。

第一に、労働教育は、労使関係者に対し、労働問題及び社会経済に関する広い視野と合理的かつ客観的な認識力と判断力を培うことに資するものとしなければならない。すなわち、前述のように、労働問題の課題が広範囲に拡大するとともに、それと社会経済との相互関係がきわめて密接になつていることから、労使関係及びそれと社会経済との関係が調和的に発展するためには、労使関係者が労働問題について広い総合的な視野をもつとともに、合理的かつ客観的に判断することが強く要請される。

第二に、労働教育は労使関係者に対し、主体的能力を培うことに資するものとしなければならない。すなわち、労働問題は基本的には労使が自主的に解決することが期待されているものであるが、現代の労働問題は著しく複雑化し、社会経済に大きく影響することから、労使は、その社会的責任を自覚し、相互理解を一層促進するとともに、問題を自主的に解決する態度と能力が強く要請されているところである。また、現代の労働及び社会経済の諸条件は絶えず発展変化していくので、労使関係者は、これらの諸条件の変化に自ら適応し、発展していく能力が必要となつている。

第三に労働教育は、労働者の福祉や働きがい等の増進に資するとともに、人間の進歩への欲求に応えるものでなければならない。すなわち、労働組織や労働態様の画一化、単調化等に伴う人間疎外の問題に対処し、労働教育は、労働における人間性の確立に資する必要がある、また、労働者の自己啓発の意欲に応えることが、労働教育の大きな課題の一つである。

第四に、労働教育は、労働者生活全般の安定向上に資するものでなければならない。すなわち、現代の労働者生活は、企業内の労使関係にとどまらず、年金その他の社会福祉、財産形成、消費生活、レクリエーシヨン等企業外の問題に深くかかわつており、これが労働問題の大きな課題となつていることから、労働教育は広くこれら労働者生活全般の安定向上に資することが必要である。

第五に、労働教育は、国民に対し、労働問題に関する正しい認識と理解を培い、労働組合活動の重要性及び労働問題が国民一人一人の問題であることを一層理解させることともに、そのような認識に基づく正しい世論の形成により、労働問題が国民的合意の下に処理されることを促進することが必要である。

3 労働教育実施計画

(1) 都道府県は、年度ごとの労働教育実施計画を策定し、その周知に努め、教育対象者が計画的に参加できるようにするものとする。この計画は、別紙「労働教育運営要領」を参考にして、各都道府県の実施する具体的な労働教育の内容について定めるものとする。

(2) 労働教育は、これを学ぶ者のニードに沿つたものでなければ成果を期することができず、しかも現代の労働者の意識あるいは経営の対応方向も多様化し、労働教育の内容も多岐にわたるので、労働教育実施計画は、教育のニードを的確に把握し、それに沿って策定することが必要である。なお、労働教育のニードは、労働相談で扱つた問題の傾向分析、世論調査、受講者の感想・希望アンケート調査の機会等を使つて常に把握に努めることが重要である。

(3) 労働問題及びそれをとりまく産業経済の諸条件は絶えず発展変化していくので、労使関係者又は国民が常にこの変化に対応していくため、労働教育は、生涯にわたつて継続的・組織的に行われるように、その機会を設ける必要がある。とくに労働者にとつては、労働教育は、この生涯教育の一環をなすものであるので、労働教育実施計画は、教育対象者の年齢、職務等の各層に応じ、必要な教育が効果的に受けられるように策定することが必要である。

(4) 労働教育実施計画の内容は、各労働教育関係機関と労働教育連絡協議会等の場を通じて、総合的に検討し、重複をさけるとともに、任務分担、相互協力等を図ることが必要である。

4 労働教育の内容

(1) 労働教育の内容は、労働教育の目的を達成するために必要な労働問題及びこれに関連する社会経済問題の全般にわたるものであり、それぞれの労働教育の対象者、教育の必要性、ニード等を勘案し、具体的な教育内容及び水準を選択し、効果的に行うものとする。

(2) 労働教育の内容については、労働問題の課題とともに範囲が拡大し、たえず変化発展していくことに留意すべきである。したがつて、労働教育の内容は、集団的労働関係の正しい理解とルールの確立に直接必要なものにとどまらず、広く健全な労使関係の基礎となる諸問題、たとえば労働条件等労働関係の具体的内容、労働組合の運営、労務管理・生産性等労働に係る経営問題、また、社会保障・財産形成・余暇・働きがい等労働者生活に関する問題、さらにはこれらの労働問題の背景として理解が必要な政治、経済、社会、法律、経営、国際関係等の基礎的知識も労働教育の重要な内容である。

(3) また、労働教育の内容は、それぞれの対象者に応じた必要性と水準に適したものとしなければならない。たとえば、次のような点に留意する必要がある。

イ 労働者に対する教育について

従来の労働教育においては、中小企業等を中心とする未組織労働者に対する教育が必ずしも十分でなく、なおその分野で紛争が発生する状況にあるので未組織労働者を対象とする労働教育に一層の工夫が必要である。

また、労働者の中においても、たとえば労働組合の行動力において重要な位置を占めるとともに、意識の多様化、余暇選好の進んでいる若年労働者、定年退職後の職業生活に不安のある中高年齢者、最近とくに増加し、職業生活と家庭生活、母性等に特殊な問題のある婦人労働者、あるいは地域によつては大きな比重を占める出稼労働者、種々の労働者階層に対し、必要に応じ特別の労働教育を行うことを考慮する必要がある。

次に、組織労働者については、労働組合活動の課題の拡大、その社会経済全般に及ぼす影響等からみて、とくに労働組合の幹部の役割はきわめて重大であるので、労働組合幹部に対する広い視野と合理的、客観的な認識力と判断力を培う教育の重要性に十分留意する必要がある。

また、これから労働者となろうとする学生、主婦等の就職予定者、あるいは労働者生活に重要な位置を占める労働者の家族等についても、必要に応じ教育の実施を考慮するものとする。

ロ 使用者に対する教育について

使用者に対する労働教育については、中小企業等においてなお労働組合についての理解も十分でなく、非近代的労務管理が存在する現状にかんがみ、中小企業や労働組合のない企業の経営者に対する労働教育を引き続き強化しなければならない。また、労使関係の安定に果たす役割が大きい労務担当者あるいは日常の労使関係の接点に位置する職長その他の管理者に対する広範な実務教育を実施する必要がある。

ハ 国民に対する教育について

国民に対する教育については、労働問題の社会経済に及ぼす影響が著しく高まつているので、これを一層促進することが必要であるが、それは単なる情報の提供にとどまらず、労働問題を自らの国民的課題として考え、積極的にとりくむようなものとしなければならない。

5 労働教育の方法

労働教育の方法には多様なものがあり、とくに近時多くの手法が開発されているが、それぞれの労働教育の目的、対象者、そのニード等に見合つて、適切な方法を選択し、労働教育を効果的に行うものとする。

(1) 労働教育の方法には集合教育、通信教育、情報提供等の方法があり、集合教育としては学校方式、講座方式、講習会方式、講演会方式、ゼミナール、討論会、研究会、懇談会等の方式がある。従来集合教育においては講義形式が中心であつたが、意見や立場を異にする者の間の相互理解や意思疎通を図るのに適した討論形式を一層活用することが望ましい。

また、労働教育を正しく位置づけ、教育効果を高めるためには、相当日数の昼間教育の方式について考慮することが望ましい。そのためには、使用者が所定労働時間内に、労働者に有給で教育を受けさせる態勢が望まれるが、此度新たに雇用保険法により能力開発事業の一環として一定の労働教育について使用者がその受講のための労働者に有給教育休暇を付与する場合に、使用者に助成する制度が創設されたので、その活用を図り、昼間教育の拡大に努められたい。

(2) 通信教育としては、日本労働協会の行う労働通信教育講座等があり、労働大学に受講する機会のない者等に対する体系的労働教育の方法として有効であるので、その活用を図ることが望ましい。

(3) また、労働情報の提供は、変化する情勢に即した、自主的な学習に資するものとして効果的な教育方法であり、今後一層活用を図る必要がある。とくに、国民に対する労働教育においては、新聞、テレビ等の報道機関を通じた教育が効果的である。また、情報提供のための教育資料については、それぞれの地域における労働事情に応じた適切な資料を作成するとともに、日本労働協会の刊行する各種資料を有効に活用することが望ましい。

6 労働教育関係機関、諸団体との協力

(1) 労使の行う労働教育に対する指導・援助

もとより、労働組合、使用者又はそれらの団体は、それぞれ労働組合員又は労務担当者その他従業員に対し、労働教育を行うべきであり、これが労働教育の中心的位置を占めることはいうまでもない。これらの労働教育については自主的に行なわれるべきであつて、いたずらに行政機関が介入すべきものではないが、従来労使それぞれが行う労働教育は、ややもするとそれぞれの立場に偏りがちであり、また、あまりに当面の問題に性急なきらいがあつた。もちろん、労使関係は対立的側面のあることは否定できず、また、当面緊急の問題に関する教育ももとより必要であるが、労働教育は労働問題に対する合理的、客観的な認識力・判断力を培うことがより重要であり、その意味で労働教育行政としては、労使それぞれが自主的に行う労働教育に対し、適切な指導・援助を一層強化することが必要である。

なお、労働者に対する教育の重要性、とくに、生涯教育の必要性が強まつていることから、労使が協力し、労働者の労働教育の受講を一層促進するよう労使に対し指導を強化することも必要である。

(2) 労働教育専門機関との協力

労働教育の性格から、公、労、使の相互理解と協力を基礎とした労働教育専門機関の役割は、きわめて重要である。日本労働協会は、このため法律により設置されたところであり、また同様の趣旨から、地方公共団体においても、地方労働協会等の専門的労働教育機関を設置するところが次第に増加してきている。そこで、都道府県は、このような地方労働協会が設置されている場合には、これに対し日本労働協会との連けいを一層密にして労働教育活動を強化するよう指導し、また、設置されていない都道府県においては、これによつて労働教育活動を充実することが望ましい。

また、労働教育の主体として大学の意義も大きい。労働教育にとつて、大学は単に講師の派遣等の協力を受けるにとどまらず、労働教育のためにその研究教育の機能の提供を受けられるよう働きかけることも望ましい。

なお、都道府県等は、日本労働協会、地方労働協会あるいは大学等が行う労働教育等に対し、積極的に協力するとともに、自らが実施する労働教育についても、これらの協力を受けることが望ましい。

(3) 労働行政各機関との協力

労働基準行政、職業安定行政、職業訓練行政及び婦人少年行政の各労働行政機関においては、それぞれの所管する法令の施行事務を行つており、その中で、労使その他の関係者に対し、各種の特別の教育訓練を行つている。労働教育は、労働問題全般にわたつて必要な教育を実施しなければならないことから、労働教育行政機関は、これらの関係労働行政機関と相互に連携協力を図り、労働教育を実施しなければならない。

(4) 市町村の行う労働教育に対する指導援助

都道府県は、市町村がその労働事情に応じて実施する労働教育に対し、上記に準じて指導援助に努めるとともに、相互に連携協力を図るものとする。

(5) 労働教育連絡協議会等の設置及び運営強化

都道府県は、地域における労働教育を総合的かつ有効適切に実施するとともに、その普及を図るように、上記のように、労働組合、使用者、労働教育専門団体、関係労働行政機関等の関係者による労働教育連絡協議会等を設置し、又は運営を強化して、協力体制の確立を図ることが望ましい。

7 労働教育実施状況報告

各都道府県における労働教育の実施状況を把握し、将来の行政運営の参考にする必要があるので、都道府県は毎年度の実施状況を別紙様式(1~3)により翌年五月末日までに労働省労政局労政課あて提出願いたい。

 

別紙

労働教育運営要領

この要領は、都道府県が実施する労働教育の標準を定めたものである。都道府県は、この要領を参考にして労働教育を実施するよう努めるものとする。ただし、それぞれの労働事情その他の実情に即し、弾力的に運用することを妨げるものではない。

Ⅰ 労働学校

 ① 目的 労働問題に関する基礎的な知識を体系的に、しかも平易に教育することを目的とする。

 ② 対象者 労働者及びその他の労働問題に関心を有する者とする。

 ③ 講師 関係行政庁職員、大学教員、労働問題専門家等とする。

 ④ 科目 次の科目を中心に行う。

  ○ 最近の労働及び経済情勢

  ○ 労働者保護

  ○ 労働者福祉

  ○ 労使関係

  ○ 最近の労働諸問題

⑤ 実施機関 労政主管事務所(以下「労政事務所等」という。)が原則として、管轄区域内に少くとも一校を開設するものとする。

Ⅱ 労働大学

 ① 目的 労働問題全般について、専門的知識を体系的に付与することを目的とする。

② 対象者 労働学校の修了者等労働問題について基礎的教育を受けた者は労使関係の当事者として労働問題について相当の知識、経験を有する者とする。

 ③ 講師 大学教員を中心とし、必要に応じ労働問題の専門家、関係行政庁職員を加えるものとする。

 ④ 科目 次の科目を中心に行う。

  ○ 労働関係法

  ○ 労働判例

  ○ 労働協約

  ○ 労使関係

  ○ 労働運動史

  ○ 労働者保護

  ○ 労働者福祉

  ○ 労働組合運営

  ○ 労務管理

  ○ 労働経済

  ○ 賃金問題

  ○ 社会保障

  ○ 国際労働問題

  ○ 最近の経済情勢

  ○ 最近の労働諸問題

 ⑤ 実施機関 都道府県が原則として一校以上開設するものとする。

 ⑥ 修了証等 原則として試験を行い、合格者に対し修了証を交付するものとする。

⑦ その他 都道府県は、労働大学を開設することができない場合又は労働大学以外に必要がある場合には、日本労働協会等の労働通信教育の受講の奨励、スクーリングの開催、受講者の組織化を図るものとする。

Ⅲ 労働講座

1 労働専門講座

 ① 目的 労働問題に関する専門的な知識を重点的に付与するものとする。

 ② 対象者 労働問題の基礎的知識、経験を有する者とする。

 ③ 講師 大学教員を中心とし、労働問題専門家、関係行政庁職員等を加えるものとする。

④ 科目 特定のテーマを選んで行うものとする。テーマとしては、労使関係、労働法、労務管理、労働経済、賃金、多国籍企業の労働問題等が考えられる。

⑤ 実施機関 都道府県が労働教育専門団体(日本労働協会、地方労働協会等をいう。以下同じ。)との協力又は共催により行うものとする。

2 労働組合幹部講座

 ① 目的 労働組合の当面している諸問題について専門的に研究する機会を供与することを目的とする。

 ② 対象者 労働組合の各級幹部、組合事務局職員等とする。

 ③ 講師 大学教員、労働問題専門家等とする。

 ④ 科目 次の科目を中心に行うものとする。

  ○ 労働組合の役割と機能

  ○ 労働組合の財政及び運営

  ○ 最近の労働経済情勢

  ○ 労使関係

  ○ 労働判例

  ○ 労働組合の社会的責任

  ○ 最近の労働諸問題

 ⑤ 実施機関 都道府県が労働教育専門団体との協力又は共催により行う。

3 経営者のための労働講座

 ① 目的 経営者に必要な労使関係及び労働組合について、理解を深め、幅広い知識を付与することを目的とする。

 ② 対象者 主として中小企業の経営者及び管理者とする。

 ③ 講師 大学教員、労働問題専門家、関係行政庁職員等とする。

 ④ 科目 次の科目を中心に行うものとする。

  ○ 労働関係法

  ○ 不当労働行為

  ○ 労務管理

  ○ 労働経済

  ○ 最近の労働諸問題

 ⑤ 実施機関 都道府県が労働教育専門団体との協力又は共催により行うものとする。

4 労務担当者講座

 ① 目的 労務担当者に必要な労務管理に関する基礎的知識を付与することを目的とする。

 ② 対象者 主として中小企業の労務担当者とする。

 ③ 講師 労働問題の専門家(社会保険労務士を含む。)、関係行政庁職員等とする。

 ④ 科目 次の科目を中心に行うものとする。

  ○ 労働関係法の実務

  ○ 労使交渉と労働協約の実務

  ○ 労働者保護の実務

  ○ 労働関係の諸手続

  ○ 賃金管理の実務

  ○ 労働者福祉の実務

  ○ 最近の労働諸問題

 ⑤ 実施機関 労政事務所等が関係行政庁等の協力を得て行うものとする。

Ⅳ 労働講習会

1 勤労者生活講習会

 ① 目的 勤労者生活の安定向上に必要な実際的知識を付与することを目的とする。

 ② 対象者 労働者及びその家族、その他労働者生活の安定向上に関心を有する者とする。

 ③ 講師 大学教員、関係専門家、関係行政庁職員等とする。

④ 科目 勤労者生活の安定向上に関するテーマを選んで行うものとする。テーマとしては、勤労者の健康管理、財産形成、消費生活、レクリエーシヨン等が考えられる。

 ⑤ 実施機関 労政事務所等が関係機関との協力又は共催により行うものとする。

2 労働実務講習会

 ① 目的 主として中小企業における労働問題について、実務的な知識を付与することを目的とする。

 ② 対象者 主として中小企業の労使とする。

 ③ 講師 労働問題専門家(社会保険労務士を含む。)、関係行政庁職員等とする。

④ 科目 実務的なテーマを選んで行うものとする。テーマとしては、近代的労務管理、賃金管理、労働時間管理、週休二日制の導入法、労働協約の結び方、労使協議制、苦情処理の方法、賞与・諸手当の管理、退職金制度、労働者の財産形成、労働福祉施設、共済制度、寮の管理、従業員の定着、雇用管理、従業員の教育訓練等が考えられる。

 ⑤ 実施機関 労政事務所等が関係機関との協力又は共催により行うものとする。

Ⅴ その他の教育

上記以外に都道府県が、その実情に応じて独自に行う労働教育(講演会、セミナー、研究会、懇談会等を含む。)とする。この場合においても、都道府県が行う労働教育の体系、実効等を十分考慮して行うものとする。

 

別紙1~3 略