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通達:団体交渉席上の暴力行為と団体交渉拒否の正当理由

 

団体交渉席上の暴力行為と団体交渉拒否の正当理由

昭和37年12月8日

(山口県労働民生部長あて労働省労政局労働法規課長通知)

 

本年一一月二八日付け労第一〇七二号をもつて照会のあつた標記の件に関する貴部の見解は、おおむね妥当である。

なお、本件のごとき暴力行為が行なわれたような場合は、当該暴力行為を行なつた者に、今後かかる行為を行なわない旨約せしめてかかる行為の再発を防止する措置を講ずることを妨げるものではなく、さらに、同人がこれに反して暴力行為に及ぶ場合、又は同人が団体交渉の席上暴力行為に及ぶことが常習的であると認められるような場合は、同人が参加する団体交渉を拒否しても正当な理由があるとされる場合もあると解されることを申し添える。

 

(参考)

某市から別紙一のとおり照会がありましたので、本件については別紙二のとおり解したいが妥当か。

(別紙一)

市と全日本自由労働組合(以下「全日自労」という。)との団体交渉中、全日自労の一役員が交渉に出席していた市の部長をつき倒すという事件が起きた。市としては、この暴力行為に対して反省を求める意味でつぎのような内容の文章を全日自労あてに差しだしたいと思うが、適当かどうか。

「A(暴力行為を行なつた全日自労の役員)は某月某日市役所市長室において話し合いのおり、同席の部長をつき倒す行為を行なつた。よつて以後貴組合が市に対する交渉陳情等の代表として参加することは認めない。本通告を行なつた後、市が貴組合と行なう一切の交渉においてAが組合代表の一員として参加するときは交渉に応じない。」

(別紙二) 当部の見解

(1) 労働組合の代表者またはその委任を受けた者は、労働組合または組合員のため労働条件の維持改善を図りその地位を向上するため、使用者またはその団体と団体交渉する権限を有することは、憲法二八条および労働組合法第六条の規定により明らかであるが、労働組合の団体交渉その他の行為であつても、いかなる場合にも暴力の行使は労働組合の正当な行為とは解されず、労働組合法第一条第二項の刑事免責を受けることはできない。

従つて、照会のような暴力行為が行なわれたとすれば、まことに遺憾であつて、その行為に対して市が反省を求めようとする趣意は了とするものである。

(2) しかし、今後においてAが組合代表者として参加するかぎり団体交渉をすべて拒むという事実が生ずれば、労働組合法第七条第二号に該当し不当労働行為となるおそれも生じてくるので、慎重を期する必要がある。すなわち、労働組合が団体交渉に際してだれを代表者に選ぶかは労働組合が自主的に決定すべきことであつて、使用者がとやかく言をさしはさむべき筋合いではなく、従つて組合代表として特定人が団交に参加していることのみを理由として団体交渉を拒否することは、一般的には、正当な理由とは認めがたいからである。

(3) 以上は、その交渉内容からして労働組合法にいう団体交渉(使用者対被使用者という関係における)であることを前提としたものであつて、それが団体交渉にあたらないとするならば、当然不当労働行為という問題は起らない。

(昭和37年11月28日 山口県労働民生部長発)