◆トップページに移動 │ ★目次のページに移動 │ ※文字列検索は Ctrl+Fキー
自動更新及び自動延長規定のある場合の協約改訂の意思表示及び解約の効力
昭和32年3月28日
(宮城県民生労働部長あて労働省労政局労働法規課長通知)
一 質問一について
本件労働協約については、第六十八条に定める書面による改訂事項の通知をもつて、第六十六条但書にいう改訂の意思表示の効力要件と解することも可能であり、又かりに協約当事者の意思が第六十八条の規定を右意思表示の効力とはかかわりない改訂手続を定めたものとしているとすれば、そのように解することもできるのであつて、規定の文面のみからはそのいずれとも断定し難いので、質問の「改訂の意思表示」が有効なものであるか否かについても、右協約の規定のみからは直ちに判断することは困難であるが、組合が、昭和三十年十月二十日に行つた改訂の意思表示の効力を否定する会社側主張に一応押し切られ、その後当事者間において協約改訂のための協議も行われておらず、その間組合は昭和三十一年五月四日に協約破棄の通告を行つたが、同年十月十二日に至つて、改訂事項を添えて書面で改訂の意思表示を行つた本件事実に徴すれば、書面による改訂事項の通知は、改訂意思表示の効力要件であると解するか、或いは貴見の如く組合が「協約改訂の意思表示を暗黙の中に取消した」ものと認めて、本件協約については、その有効期間満了の昭和三十年十一月十八日以前において有効な改訂の意思表示がなかつたものと解すべきである。従つて、右協約は、第六十六条但書の規定により貴見の通り自動更新されたものと解せられる。
二 質問二について
質問の労働協約が、期限を定めず自動延長されたものであるとすれば、格別、一の通り自動更新されたものと解される以上、質問の「通告」は、貴見の通り、右協約の効力には何ら影響を及ぼすものではない。
三 質問三について
質問の「通告」については、質問の文面のみからは、その趣旨が明らかでないが、組合が本件協約の解約をかねてから強く欲しており、右「通告」後九十日を経過した日から争議行為に入つた経緯からしても、照会の範囲から判断する限り、右「通告」については、それがあくまで昭和三十一年十一月二十四日に即時解約することを目的とするものであれば無効と解すべきであるが、それがかかる即時解約としては無効であつても無効行為の転換によつて同日から九十日後に解約の効果が生ずることを組合は欲するであろうと認めることを必ずしも妨げないものと思われる。然りとすれば、既に昭和三十一年十一月十九日から期限を定めず自動延長されたものと認められる本件協約は、貴見の如く、同年「十一月二十四日から九十日を経過した日に解約された」こととなる。
(参考)
別紙労働協約は、昭和二十九年十一月十九日締結されたものである。この協約が労働委員会の斡旋、調停、仲裁の全部を経た後でなければ争議行為に入れない旨規定しているため、組合は不満を持ち、三十年十月十九日、会社に対し書面で改訂の意思表示をしたが、改訂事項を添えなかつたため会社は自動更新されたものと主張し、組合は一応押し切られた恰好でその後改訂に関する協議はなされなかつた。その後、組合は三十一年五月四日に破棄通知を行つたが、会社が自動更新により十一月十九日まで有効であると主張したため、十月十二日、改訂事項を添えて書面で改訂の意思表示を行い、更に十一月二十四日、「爾今無効である」旨の通告を行つた。会社は新協約を審議中であるし、右通告中の「爾今」というのは法定の九十日の予告を置かないものであるから解約申入とは認められないとして、協約は現在尚有効であると主張している。
なお、組合は、三十二年二月二十三日からストライキを行つている。
かかる事情において、次の如く解してよいか貴職の見解を承りたい。
一 本協約は、第六十六条の規定により昭和三十年十一月十九日以降更に一ヶ年有効になつたと解される。
二 昭和三十一年五月四日の破棄通告は、協約の効力に何の影響も与えない。
三 本協約は、昭和三十一年十一月二十四日から九十日を経過した日に解約されたものと解する。(要旨)
(別紙)
労働協約抜萃
第六十六条(有効期間並に成立)
本協約の有効期間は会社組合の代表者が署名捺印したる日より起算し満1ヶ年とする。
但し期間満了前何れか一方より
①改訂の意思表示なきときは更に1ヶ年延長するものとする。
第六十七条(有効期間の延長)
会社組合は協約改訂につき協議し期間満了迄に解決せざるときは新協約成立迄この協約は有効とする。
第六十八条(協約改訂)
会社組合は本協約の一部又は全部を改訂せんとするときは相手方に
②改訂事項を三十日前書面を以て通知し、経営協議会の議を経て改訂するものとする。
(昭和32年3月18日 宮城県民生労働部長発)