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通達:病院等における争議行為の正当性の限界

 

病院等における争議行為の正当性の限界

昭和30年8月31日労収第1517号

(愛媛県知事あて労働省労政局長通知)

 

当局の見解は左記の通りである。

なお、給食の停止、妨害をする如き争議行為については、近江絹糸彦根工場事件(大津地裁彦根支部昭和二十九年(ヨ)第十七号)同大阪本社事件(大阪地裁昭和二十九年(ヨ)第一八七六号)等における判決の趣旨から考えても、特に設問のような場合には一般に正当性の範囲を逸脱する場合が多いと考えられる。

一 労調法第三十六条にいう「安全保持の施設」とは、一般に人命に対する危害予防若しくは衛生上必要な施設をいうものと解されるが、如何なる施設がこれに該当するかは、当該事業場の具体的事情によつて判断されるものである。因より労調法第三十六条に該当しないものはすべて正当な争議手段とされるという訳のものでないことは当然であつて、争議手段の正当、不当は、結局健全な社会通念に従つて判断されるべきであり、労調法第三十六条の規定は、健全な社会通念に照して正当ならざる争議手段のうち、顕著な一例を示した趣旨と考えられる。

二 精神病院における争議行為についていえば、精神病院においては争議行為が一切許されないと解することは勿論できないが、しかし一般の工場事業場における争議行為の場合に比して、相当強い制約を受けるべきことは、その業務の特殊性からして当然である。

設問の場合、医療、看護、給食の業務を停廃し又はこれを妨げる争議行為のうちには、労調法三十六条に抵触する争議手段もあることは当然考えられるが、具体的に如何なるものがこれに該当するかは、事業場の実態及び争議行為の事情により判断すべきものであつて、設問の文面から直ちに具体的にこれを示すことはできない。しかし、直接同条には違反しない争議手段であつても、直接生命、身体を脅かす争議手段が許されないことは勿論であり、更に精神病院の特殊な任務及び性格に鑑み、又患者は紛争当事者以外の第三者であること、通常人としての判断、行動の能力を欠くものであること、環境からする精神的影響が敏感に病状に反映する虞があること、等に鑑み、患者に直接影響を及ぼすような争議行為については、労使双方共細心の注意を払つてこれを避け又は最小限に止めるように配慮することが当然であり、争議行為の方法、態様等において、かかる点について社会通念上必要且つ妥当とされる配慮を著しく欠く程度に至る場合においては、争議行為としての正当性の範囲を逸脱し、労働組合法上の保護を受けない場合があると考えられる。

 

(参考)

精神病院に於ては精神衛生法第二十九条該当又は生活保護法に依る準措置患者(生活保護法に依る医療扶助と公衆衛生法規との関係について昭和二九・一一・一七 社発第九〇四号 厚生省社会局長、公衆衛生局長連名通知及び精神障害者入院措置取扱要領について昭和二八・七・二〇衛発第一七六号厚生省公衆衛生局長通知)等を収容して居るので、病院は業務継続の公法上の業務を負担して居り且つ精神障害者に依る一般社会に対する危害を防止するためにも入院患者を総退院せしめてロック・アウトを行うことは争議行為としてでも為してはならないものと認め、尚常に実在するインシユリン治療患者の如く生命の保持上直ちに給食を絶対必要とする場合(生死に関係する)もあり、正常な意識を有しないものを拘束して治療して居るのであるから、争議中この病院に勤務する労働者其他のものが之れに対して相当の医療、看護、給食の業務を停廃し又は之を妨げる行為を為すことは、前記のように患者の生命を危殆ならしめる等社会通念上正当なものではなく、争議行為としてでも之を為すことは労調法第三十六条に抵触し禁止せらるべきものと考えますが如何。

(昭和30年8月18日 愛媛県知事発)