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通達:冷凍機械運転係員の安全保持行為の限界

 

冷凍機械運転係員の安全保持行為の限界

昭和29年8月20日

(石川県民生労働部長あて労働省労政局労働法規課長通知)

 

労調法第三十六条は、人命又は身体の保護のための安全保持の施設の正常な運行を停廃し、妨害する争議行為を禁止している。従って、照会の事案についていえば、「アンモニアガスの漏洩、爆発及び電気的事故の防止」等に関する業務であつて、人命又は身体の保護を目的とするものを拒否することは、第三十六条に違反する争議行為といえるであろうが、「保管中の貨物の鮮度維持並びに急速凍結実施中の貨物の凍結完了に必要な機械」の運転を拒否することは、それ自体では、直ちに、同条違反を構成するものではない。なお、人命又は身体の安全に関する業務の停廃・妨害とは別に争議行為が施設に対する明白、積極的な加害行為やその程度に及ばない場合でもそれによつて工場事業場の基本的施設に重大な損壊を生ぜしめ、労働者自身の職場を破壊して争議終了後の職場復帰を無意味にするようないわば自殺的な争議行為などは、一般に正当な争議行為といえない場合が多いであろうが、照会の限りでは、本件争議行為は、かかる意味での正当性を欠く争議行為とは直ちには、いい難いものと思われる。

もつとも、大量の凍結貨物を一挙にして腐敗せしめるようなことは、争議行為として行う場合であつても、健全な労働良識にたつて判断すれば通常好ましいものとはいえず、また争議行為の方法として賢明なものともいえないであろう。

なお、保安要員の任務については、人命、身体の安全のための施設の正常な運行の維持に当ることがその任務であるのは勿論であるが、その外に工場事業場の重要な施設等の損傷の防止、その他の必要以上の損害の防止等、その工場事業場の実情に応じて争議のフエアプレーのために必要な要員を、保安要員として労使の協定等で定めておくのが普通のやり方で、このことはまた労働慣行として極めて望ましいものである。(要旨)

 

(参考)

某会社は、荷主より貨物例えば生鮮食料品等を預り、これを冷凍保管するのが主なる業務であるが、ストライキに際し、保安要員として勤務すべき冷凍機械運転係員の従事すべき安全保持行為について、組合側は「アンモニヤガスの漏洩、爆発及び電気的事故等の防止並びに事故に対する処置に必要な程度」だと主張し、会社側は「右の他、保管中の貨物の鮮度維持並びに急速凍結実施中の貨物の凍結完了に必要な機械運転をも加えるべきだ。」と主張しているが、この点、如何に考えるべきか。(要旨)

(昭和29年8月14日 石川県民生労働部長発)