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協約違反の作業所閉鎖
昭和28年10月30日労収第3321号
(調達庁労務部長あて労働省労政局長通知)
一 当事者が争議行為としての作業所閉鎖ではない旨言明していたとしても、その行為が現実にその主張を貫徹することを目的とする行為、又はこれに対抗する行為であつて、それが客観的に業務の正常な運営を阻害するものであるかぎり、労調法第七条にいう争議行為である。従つて、当事者が、「争議行為としての作業所閉鎖でない」と言つたことのみで当該行為が当然に争議行為でなくなるものではない。
二 別添労働協約第二十七条の二の趣旨は、争議行為の予告義務を両当事者に課したものであるから、本件を争議行為たる作業所閉鎖と解するならば、使用者は協約違反の責を免れず、従つてこれに対する損害賠償の責を負うものである。
三 協約当事者たる調達庁(又はその下部渉外労務管理機関)が労働協約を遵守するよう軍に対し強調したとしても、組合又は組合員に対する関係において、法律上の雇用主たる調達庁が協約条項違反の責を免れるものでないと解する。
なお、調達庁と軍との間の求償関係については、当局の権限外の事項であるので回答を差控えたい。
(参考)
当庁と全駐留軍労働組合との間に締結され、現に効力を有する労働協約には当事者の一方が争議行為を行う場合における他方に対する事前通知についての義務規定を設けているが、(別添(1)労働協約第二七条の二参照)(注)この規定に関連し下記事項について至急何分の御回示を煩わしたい。
記
一 小倉綜合補給廠において軍が行つた就業拒否の性格について
キヤンプ小倉綜合補給廠において、全駐留軍労働組合福岡地区本部小倉支部が不当解雇撤回、職場明朗化等十項目の要求を掲げ、八月三日及び四日の両日ストライキを行い軍も又当該ストライキ終了後直ちにストライキ参加の労務者の就業拒否を行うという事態が発生した。この軍の行つた就業拒否は別添(2)(3)(4)及び(5)の往復文書(略)によつて明かな通り、軍が、(一)労働争議が解決するまで、ストライキに参加した労務者の作業復職を認めないと明言していること、(二)軍の都合による就業拒否でないと明言していること、(三)就業拒否当時天災事変等休業を必要とする事由の存在しなかつたこと、(四)更に労働紛争の解決と同時に残業拒否を解除していること等よりして争議行為としての作業所閉鎖とも解せられるが、他面軍が争議行為としての作業所閉鎖ではない旨を言明しているので軍の都合による休業として休業手当を支給すべきであると解せられるが如何。
二 軍の行つた就業拒否の小倉支部に対する事前通告の要否について
上記によつて軍の行つた就業拒否を争議行為として作業所閉鎖であると解した場合、協約第二七条の二の事前通告制度の趣旨からして、本件作業所閉鎖を小倉支部に通告後直ちに行つたことは明らかに事前通告義務違反と解せられるが如何。
三 事前通告義務に違反して争議行為を行つた場合における損害賠償義務について
事前通告制度の趣旨並びに性格よりして争議行為自体によつて与えた損害については免責され、事前通告違反によつて与えた損害についてのみ賠償義務を負うものと解するが如何。
四 構成員の事前通告義務違反と協約当事者の責任について
当庁は協約の当事者として下部渉外労務管理機関並びに軍に対し当該協約を遵守せしめる義務を負うものと考えられるが軍が争議行為として作業所閉鎖を行わんとする場合、当庁或いは下部渉外労務管理機関が軍に対し協約所定の事前通告を行つてから作業所閉鎖を実施するように強調せるにも拘わらず、これを無視して作業所閉鎖を行つた場合協約当事者たる当庁は事前通告義務違反の責任を負わず事前通告義務違反によつて与えた損害賠償関係は軍と組合又は組合員との間において処理すべきものと考えるが如何。
(注) 調達庁と全国駐留軍労働組合との間の労働協約第二十七条の二
争議行為を行う場合は、中央においては五日、地方においては二日以前に他方に文書を以つて通告しなければならない。
(昭和28年10月19日 調達庁労務部長発)