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通達:法令名

 

労働関係調整法第三十七条について

昭和27年9月15日労発第167号

(各都道府県知事あて労働省労政局長通知)

最終改正 平成27年12月18日政労発1218第1号

 

労働関係調整法第三十七条に関しては、各方面から質問があるが、これが解釈、取扱については左記によることとし、運営上遺憾なきを期せられたい。

 

一 通知をなすべき相手及び公表

(イ) 労調法第三十七条の通知は、その争議行為が一の都道府県の区域内のみに係るものであるときは、当該都道府県の都道府県労働委員会(以下「都道府県労委」という。)及び都道府県知事の双方に対してなし、その争議行為が二以上の都道府県にわたるものであるとき、又は全国的に重要な問題に係るものであるときは、中央労働委員会(以下「中労委」という。)及び厚生労働大臣の双方に対してなさなければならない(労働関係調整法施行令(以下「施行令」という。)第十条の四第一項)。いずれか一方に通知しただけでは、労調法第三十七条の通知があったことにはならない。

中労委及び厚生労働大臣に対してなすべき通知は、関係都道府県労委又は関係都道府県知事のいずれかを経由してなすことができる(施行令第十条の四第二項)。すなわち中労委になすべき通知は都道府県労委を経由し、厚生労働大臣になすべき通知は都道府県知事を経由してなすことができることはもちろんであるが、中労委及び厚生労働大臣になすべき通知二通を一括して都道府県労委又は都道府県知事を経由してなすこともできるわけである。

都道府県知事及び都道府県労委宛てに通知書が提出されたときにおいて、その争議行為の実体が二以上の都道府県にわたるものであるときは、直ちに宛先を厚生労働大臣及び中労委宛てに訂正させることとし、当初通知書の提出された日を経由庁に到達した日として取り扱われたい。ただし、都道府県知事及び都道府県労委宛てに通知書が提出された事件につき、その争議行為の実体が二以上の都道府県にわたるものである疑いはあるが、その実体確認に時日を要する場合その他直ちに宛先を訂正させることができない事情のある場合は、当該都道府県内のみに係る争議行為として通知を受理し、公表の手続をとることとされたい。

一都道府県の区域内のみの争議行為であって全国的に重要な問題に係るものは、実際問題としてまれであろうと考えられ、また全国的に重要な問題に係るものであるか否かを当事者にあらかじめ認定させることは酷であるので、例えばその争議行為に係る労働争議の調整につき中労委が既に全国的に重要な問題に係るものであると認定しているような場合以外は、一都道府県の区域内のみの争議行為は、全国的に重要でないものとして取り扱うこととされたい。この場合、都道府県知事及び都道府県労委宛てに通知した後において、当該事件に関する調整につき中労委が全国的に重要な問題に係るものであると認定したような場合でも、通知の効力には影響はないと解せられる。

(ロ) 通知を受けたときに公表をなすのは、その争議行為が一の都道府県の区域内のみに係るものであるときは当該都道府県知事、その争議行為が二以上の都道府県にわたるものであるとき、又は全国的に重要な問題に係るものであるときは厚生労働大臣である。

公表には、その争議行為について

一、事件

二、日時

三、場所

四、概要

を明らかにするものとし、厚生労働大臣のなすべき公表は原則として厚生労働省公式ウェブサイトにおいて行うこととする。ただし、争議行為の規模及び公衆への影響度を勘案して、記者会見・記者発表、新聞広告、テレビ・ラジオ放送(広告を含む。以下同じ。)等の方法を併用することがある。

都道府県知事のなすべき公表は、都道府県公式ウェブサイトへの掲載、都道府県公報、記者会見・記者発表、新聞広告、テレビ・ラジオ放送等、各都道府県の実情及び争議行為の規模並びに公衆への影響度に応じて、適宜適切な方法により行われたい。

厚生労働大臣が公表をなすべき場合であっても、特別の必要があると認めるときは、その公表手続を関係都道府県知事に依頼することもあると思われるが、その場合にはその都度通知するからあらかじめ御了知ありたい。

また、厚生労働大臣による公表があった問題においても、その争議行為について特に関係のある都道府県においては、その都道府県の事情に適合した適宜の方法によって公衆に一層の周知徹底を図るようにせられたい。

二 通知の効力

労調法第三十七条の通知は、「争議行為をしようとする日の少なくとも十日前までに」しなければならない。この期間計算については、民法第一編第六章に定める期間の計算方法による。したがって通知があった日及び争議行為をなす日はこれを算入せず満十日間を間に挟んでいなければならない。例えば十月十五日に同盟罷業をやる場合には、十月四日までにその旨の通知がなされていなければならないことになる。

通知があった日には、通知をなすべき相手方に通知の文書が到達した日であって、当事者が文書を発送した日ではない。

通知は一、にも述べたように中労委及び厚生労働大臣又は都道府県労委及び都道府県知事になされなければならないから、通知をなすべき双方に到達した日が労調法第三十七条の通知があった日となる。すなわち、双方に到達する日が異なった場合には、遅れて到達した方の到達日が通知のあった日となる。

また、厚生労働大臣及び中労委に対する通知を、都道府県知事又は都道府県労委を経由してなす場合には、通知が経由機関に到達した日から効力が発生すると解する。この場合も、厚生労働大臣宛ての通知が経由庁に到達した日と中労委宛ての通知が経由庁に到達した日とが異なるときは、遅れて到達した方の通知が経由庁に到達した日が通知のあった日となる。

したがって、都道府県労委及び都道府県知事は、通知を受けたときは、相互に連絡してもう一方に通知があったかどうか、またその到達の日が異なっていないかどうかを必ず確かめなければならない。

都道府県知事及び都道府県労委は、厚生労働大臣又は中労委宛ての通知を受けたときは、直ちにそれぞれに進達すべきであるが、文書の到達については、日数を要することも予想されるので、取りあえず電話、ファクシミリ又は電子メールにより、通知があった日、事件、争議行為の日時、場所、概要を直ちに厚生労働大臣及び中労委に報告することとされたい。

三 通知書の記載事項

労調法第三十七条において公益事業における争議行為について当事者があらかじめ通知をなすべきことを規定しているのは、公益事業は公衆の日常生活に欠くことのできない事業であるから、これについては抜き打ち争議を禁じてあらかじめ争議行為のあることを公衆に周知せしめて、突然の争議行為による公衆の損害、迷惑を最小限に食い止めることに重要な眼目のあるものであるから、その通知は、右の趣旨からして、いつ、どこで、どのような争議行為が行われ、これによって当該事業の運営がどのように影響を受けるかを公衆が知ることができる程度に具体的であることが必要である。と同時に、争議行為の実相によっては通知について余りに厳格に具体性を要求しても事実上全ての事項について記載することが困難な事情もあり、また、労働組合の争議権に対して著しい拘束を課するごとき結果になる場合もなしとしないので、この間の事情については十分考慮されなければならない。

(1) 右の観点から労調法第三十七条の通知の内容については、おおむね左に準拠して取り扱うこととされたい。

通知には、事件、争議行為をしようとする日時、場所及びその争議行為の概要が明らかにされなければならない。

(イ) 事件

労調法第三十七条には「公益事業に関する事件につき関係当事者が争議行為をするには・・・・」とあるから、何の事件についての争議行為の通知であるかが明確にされなければならない。したがって、その通知に係る争議行為の目的その他によってどの事件であるかが明らかにされる必要がある。例えば、賃金問題について争議行為の通知をした後について、その問題についてでなく、他の問題、例えば解雇問題で争議行為をしようとする場合には、別個の事件についての争議行為であるから、改めて解雇問題について争議行為をなす旨の通知をなさなければならない。

(ロ) 日時

日時についてはできるだけ具体的に、できれば「何月何日何時から何月何日何時まで」というように記載すべきである。しかしながら十日以上前に通知するのであるから、確定的なことは記載できないこともあろうが、その場合にも「何月何日何時から何時まで、ただし状況いかんによっては何月何日何時から何時までに変更することもある。」とか「何月何日以降何月何日までの間において何時間ストを行う」というように、できる限り具体的に記載するのが至当である。要するに、公衆がいつ争議行為が行われる予定であるかを判断し得ることが目的であるから、事情の許す限り明確にすべきである。

(ハ) 場所

争議行為の通知は、公衆にその争議行為によって受ける影響を知らせることが趣旨であるから、争議行為の場所は、例えば私鉄でいえば、何々鉄道の何々線というように記載するのが至当である。十日前に争議行為を行う事業場が具体的になっていない場合でも、一応「全事業場」を通知しておくというのではなく、大体予想し得る事業場を挙げ、かつ、変更される可能性がある場合には、これを書き加えるようにできる限り具体的にしておくことが至当である。

(ニ) 概要

争議行為の種類、規模等を(イ)、(ロ)との関連において通知するわけである。例えば同盟罷業を行うのか、怠業を行うのかというような争議行為の種類、どの程度の規模で行われるかについて明らかにし、その他の事項についても、それによって公衆が当該争議行為による被害を具体的に知り得るように記載することが至当である。十日前にまだ具体的に明確に定めていないときでも、できる限り具体的に記載するようにすべきことは、日時、場所の場合と同様である。

(2) 右に述べたように通知書の記載事項は、できる限り具体的であることが必要であるが、場合によっては具体的な争議計画が十日前に定め難いこと、その他事情いかんによって単に「何月何日以降事件解決まで事業場の全部又は一部においてストライキを行う」といったような通知がなされることもやむを得ない場合も予想し得る。したがって、このような通知があった場合には事情やむを得ないときは、一応これを受理し、ただ労調法第三十七条の、事前に争議行為を具体的に公衆に知らせるという趣旨に鑑みて、同条の十日間の通知とは別個に、そのような通知を受け、これを公表した後においても、労働組合が争議行為の日時、場所、概要について一層具体的に決定した時は、事前に公衆に周知させるため、労働組合はこれを都道府県知事又は厚生労働大臣に直ちに通報するようにすべきであり、都道府県知事としては、かかる通報のあり次第、これを周知する方法を講ずるよう、しかるべく指導、措置方取り計られたい。