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労働関係調整法の施行について
昭和21年10月14日厚生省発労第44号
労働関係調整法は昭和二一年九月二七日公布され、一〇月一三日より施行せられることとなり、同一二月施行令が公布されたが、本法は労働争議を民主主義的に予防解決し、産業の平和を維持し以て経済の興隆に寄与することを目的としてゐるのであつて、労働組合の健全な発展を促進助成しやうとする労働組合法と共に極めて重大な意義を持つものである。従つて本法施行については労働関係の当事者はもとより、広く一般民に対しても充分その趣旨の徹底を図ると共に、特に左記各項に留意しその万全を期せられたく、命に依り通牒する。
追つて左記各項中労働委員会に関する事項については、適宜貴官より当該会長に御連絡を願ひ度い。
記
一 趣旨の徹底
本法の施行については、その当初関係職員の関係の教養を努めると共に、他面に於て労働関係の当事者及一般国民に対し、講習会、研究会、新聞、雑誌、ラジオ等によりその趣旨の徹底に万全を期するは勿論、爾後引続き適時、斡旋、調停及び仲裁の手続き及びその効果、平和的解決と争議行為に訴へた場合との利害得失の比較等に関する平明な解説又は具体的な事例等をもつて絶えず趣旨の徹底に努め、以て関係当事者が進んで本法を利用するやうに特に配意すること。
二 労働関係調整法(以下法と称する)第二条、第三条及び第四条関係
本法による労働関係の調整は此等の条文に於て明らかな如く関係当事者の自主的努力によつて之をなすことを本旨とし、政府及本法の諸措置はかかる努力に対して援助を与へやうとするものであるから、本法の運用に当つては、右の根本精神に基き、本法の活用を奨励しても、苟も弾圧干渉等に亘ることのないやう、当事者が本法による諸措置に頼つて自主的努力を怠ることのないよう充分配慮すること。
三 法第五条関係
本法の運用に当つては、事の性質上、迅速処理を図ることが重要であるので、関係機関に於ては、文書の形式等些細な事項に拘泥することなく専ら実質に重きを置き、第五条の精神を充分に活かすやう、特に末端機関に此の趣旨を徹底せしめること。
四 法第六条関係
法第六条の労働争議の定義に於ては「争議行為発生の虞ある状態」をも労働争議の中に含ましめてゐるが、此の判断については充分に慎重を期し、例えば当事者の一方より右の理由により調停の申請等があつた場合にも慎重に之を取扱ふこととし、此の点の解釈を繞つてかへつて後に紛議の種をのこす等のことがないよう特に注意すること。
五 法第八条関係
本法に於ける公益事業は法第八条に列挙する事業で公衆の日常生活に必要不可欠なる事業を謂ふのであるが、その細部の具体的限界等については必ずしも明瞭でないので、近く別途指示して之を明らかにする予定であるが、若し此の点の実際的取扱について疑義が生じた場合には、遅滞なく当省に禀議すること。第二項の公益事業の追加指定に関し、貴管下に於て、地方的特殊産業等で追加指定を必要とするものが生じた場合には、速に当省に連絡すること。
六 法第九条関係
(一) 労働関係調整法施行令(以下令と称する)第一条の規定により地方労働委員会又は勤労署が争議行為発生の届出を受けたときは、委員会は地方長官、署長は委員会及び地方長官に電話、口頭その他適宜の方法により迅速にその旨を報告又は通知すること。
二以上の都道府県に亘る争議行為につき、関係地方長官の一が届出を受けたときは、速やかに中央労働委員会の会長、厚生大臣及び他の関係地方長官に、その旨を報告又は通知すること。
(二) 法第九条の労働委員会又は行政官庁は争議行為届出受理簿を備へ付け、関係当事者よりの届出又は前号の関係機関よりの報告又は通知があつたときは、直ちに之を記入し整理して置くこと。
右の受理簿には少くとも左記事項を記載すること。
(イ) 届出受理年月日
(ロ) 争議行為発生年月日
(ハ) 当事者名
(ニ) 事業の種類
(ホ) 争議行為発生の事業場名及所在地
(ヘ) 参加人員
(ト) 争議行為の種類
(三) 争議行為発生の届出があつた場合の処置は右の如くであるが、行政官庁及労働委員会事務局は、争議行為を伴はない場合であつても、管下の労働争議全般につき常に的確なる情報の把握蒐集に努め、上級官庁に対する行政官庁の情報は迅速的確に且つ出来るだけ具体的に之を為すこと。特に法第八条の公益事業及び法第一八条第一項第五号の公益事業に準ずる事業については、国民の日常生活に対する影響極めて大であり、実情によつては、強制調停に出づる必要もある訳であるので、その労働関係の動向については常に的確なる把握に努力すること。
七 法第一〇条及第一一条
(一) 斡旋員候補者の選定基準
(1) 斡旋員候補者は原則として中立的立場にある者につき委嘱すること。但し過去に於て労働運動の経験者であり、又は使用者であつた者でも、現在左に掲げる基準に照して適格者であれば、必ずしも過去の立場に拘泥する必要はないこと。又労働委員会の委員中より斡旋員候補者を委嘱することは勿論差支へないこと。
(2) 斡旋員候補者は労働問題につき理解を有し、且つ労働関係の当事者に信望のある者であると共に、労働問題に関聯する法律、経済及社会問題について相当の知識乃至経験を有する者でなければならないこと。
(3) 斡旋員候補者は必要に応じ何時でも斡旋員として活動し得る時間的余裕を有する者なること。
(4) 斡旋員候補者の人選に際しては、当該地方の各産業に亘り夫々適任者を委嘱し置くやう考慮すること。
(二) 斡旋員候補者の員数は当該地方の産業の分布、労働関係の実情等により可成多数委嘱して置くことが望ましいが要は(一)の標準により真の適当者を得ることに重点を置き、員数に拘泥する必要はないこと。
(三) (略)
八 (略)
九 法第一三条関係
本法の斡旋は、労働争議の解決につき当事者の自主的な努力に対して援助を与へ、之を和解せしめることを目的とした制度であるから、斡旋員はその職務の遂行に当つては、此の根本精神に則り苟も弾圧干渉に亘ること等は絶対にないやう特に注意すると共に或は当事者の主張は別々に之を聴取し、或は一方の意見を他方に伝へ、又は当事者の希望がある場合にはその交渉に立会ふ等、機に臨み変に応じて適宜の処置を執ることに細心の注意を払ひ、以て事件の円満な解決に到達するやう努力しなければならないこと。
一〇 略
一一 法第一八条関係
(一) 法第一八条の調停の申請又は決議がなされたときは、労働委員会の会長は遅滞なくその旨を、所轄地方長官に通知すること。
(二) 令第七条第二項の公表は、府県公報に公示すると共に、新聞、ラジオ等に発表してこれを行うこと。
前項の公表には、調整の申請若しくは請求の受理又は決議の年月日及び法第三七条の期間の満了により争議行為の発生することあるべき日を明示すると共に、当該事件の要点、特に双方の主張の要点を公正に発表し以て輿論の喚起に資するやう配慮すること。
一二 法第一九条関係
調停委員会は、実情に応じその機能を十分に発揮するため、これを予め数班常設し置くことも考慮すべきこと。
一三 法第二〇条関係
調停委員会の中立委員の数は、原則として、使用者労働者各代表委員と同数とすること。
一四 (略)
一五 (略)
一六 法第二四条関係
調停委員会の当事者に対する出頭命令、臨検検査等については、労働組合法第二九条の規定が適用されること。
一七 (略)
一八 (略)
一九 (略)
二〇 法第三一条及第三二条関係
仲裁に関する労働委員会の運営に関しては、労働組合法第二八条、第二九条、同法施行令第四一条等の規定の適用ある外労働委員会の一般運営規程によるものなること。申請が当事者の一方よりなされた時は、他の一方に対してもその旨通知すること。
二一 法第三四条関係
仲裁々定は労働協約と同一の効力を有し当事者を法的に拘束するものであるが、その手続に於て、例えば、申請の権限なき者よりの申請に基いて仲裁を開始した場合、当事者の一方よりの申請に基き開始した仲裁に於て当該労働協約が法第三〇条第二号の労働協約に該当しない場合に、仲裁々定の内容が法令の強行規定に違反してゐる場合、其の他重大は瑕疵がある場合等には、その仲裁々定は無効となり、当事者は裁判に訴へ得る外紛議の原因ともなるから、仲裁手続の進行については、かかることのないよう充分に注意すること。
二二 (略)
二三 法第三六条関係
本条により禁止される行為の範囲については、労資双方に対し予め具体的に周知徹底せしめ、過つて本条に違反するが如きことがないやう予め充分の措置を講ずること。
二四 (略)
二五 (略)
二六 (略)