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通達:技能実習生の労働条件の確保について

 

技能実習生の労働条件の確保について

平成22年2月8日基発0208第2号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

 

技能実習制度については、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」(平成28年法律第89号。以下「技能実習法」という。)が平成28年11月28日に公布され、本年11月1日から施行されることとなったところである。

このため、技能実習法に基づく技能実習制度における技能実習生の労働条件の確保については、下記の事項に留意の上、適切な対応に遺憾なきを期されたい。

なお、本通達は、平成29年11月1日から施行する。

 

第1 技能実習法に基づく技能実習制度の概要等

1 技能実習法に基づく技能実習制度の概要

技能実習法においては、技能実習計画の認定及び監理団体の許可の制度を設け、これらに関する事務を行う外国人技能実習機構(以下「機構」という。)を認可法人として新設することとされたこと。

これまでの技能実習制度においても、技能実習計画は作成されており、技能実習生の上陸又は1号から2号への在留資格変更等の際に、地方入国管理局において、専ら外国人の入国・在留管理の観点からその内容をあらかじめ確認しているところであるが、技能実習法に基づく技能実習制度においては、技能実習生ごとに作成する技能実習計画について主務大臣の認定を受ける仕組みを設け、また、実習実施者については実習の実施の届出、監理団体については監理団体の許可の制度を設けるものとされたこと。

また、新設された機構においては、技能実習計画の認定、監理団体の許可に関する調査、実習実施者及び監理団体に対する実地検査、実習実施者及び監理団体からの届出の受理、技能実習生に対する相談及び援助等を行うものであること。

なお、その他の主な改正点は、別紙1<編注:略>のとおりである。

2 技能実習制度の枠組み

出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号。以下「入管法」という。)の改正により、平成29年11月1日から、在留資格「技能実習」で行うことができる活動は、①入国1年目に実施する「技能実習1号」の活動(入管法別表第1の2の表の「技能実習」の項の下欄の第1号の活動)、②入国2、3年目に実施する「技能実習2号」の活動(同欄の第2号の活動)、③優良な実習実施者・監理団体に限定して、入国4、5年目に実施する「技能実習3号」の活動であること(別紙2参照)。

また、さらにそれぞれが、①団体監理型(同欄の第1号ロ及び第2号ロに定める形態であって、監理団体(受入れ団体)の責任と監理の下で、実習実施者(受入れ企業)において技能実習を行うもの)と、②企業単独型(同欄の第1号イ及び第2号イに定める形態であって、実習実施者が外国にある子会社等の職員を直接、技能実習生として受け入れるもの)に分かれている。

技能実習法に基づく技能実習制度においては、原則として、同法の施行後に上陸許可又は在留資格変更許可を受けた技能実習生に対して適用され、この場合には、上陸や在留資格変更の手続をとる前に、技能実習法に基づく技能実習計画の認定を受ける必要があること。

3 「技能実習1号」の活動内容

技能実習1号の活動は、①知識の修得をする活動(以下「講習」という。)と、②雇用契約に基づいて講習以外の技能等の修得をする活動(以下「技能等修得活動」という。)に区別されること。

(1) 講習

講習は、団体監理型にあっては監理団体が、企業単独型にあっては実習実施者が実施することとされていること。

講習は、座学(見学を含む。以下同じ。)によって行うこととされており、試作品の製造や商品生産施設での安全衛生教育、機械操作教育等の活動は含まれない。

講習の総時間数は、技能実習1号の活動全体の6分の1以上とされており、技能実習1号の活動を1年間予定する場合には、そのうち2か月以上を講習に充てることとなる。ただし、入国前に一定の講習を受講している場合には、我が国で行う講習の総時間数を短縮することができるものとされていること。

(2) 技能等修得活動

技能等修得活動は、実習実施者において実際の製品生産業務等に従事しながら実施されるものであること。

4 「技能実習2号」又は「技能実習3号」の活動内容

技能実習2号の活動は技能実習1号の活動により、技能実習3号の活動は技能実習2号の活動により技能等を修得した者が、当該技能等に習熟又は熟達するため、実習実施者において当該技能等を要する業務に従事するものであること。

なお、技能実習1号のすべてが技能実習2号へ移行するものではなく、対象職種等によっては入国当初から技能実習1号のみで帰国することが予定されていること。

また、技能実習3号の活動を行う技能実習生は、技能実習2号を終了した後、原則1か月以上帰国しなければならないものであること。

5 技能実習の期間

技能実習の期間は、技能実習法において、技能実習1号は1年以内、技能実習2号及び技能実習3号は2年以内とされていること。

6 違法行為の防止・摘発及び違法行為に対する行政処分

(1) 機構による実地検査

機構において、実習実施者や監理団体等に対し、報告、帳簿書類の提示等を求めること、質問すること、及び、実習実施者又は監理団体等の設備や帳簿書類等を実地に検査することが認められており、この実地検査等については、虚偽の回答を行う等、一定の場合に技能実習計画の認定の取消事由となるほか、調査への協力が得られない場合には、技能実習計画の認定に必要な情報が得られないため技能実習計画が認定されないこと。

なお、機構は、監理団体に対して1年に1回程度の頻度、実習実施者に対して3年に1回程度の頻度で定期的に実地検査を行うことを予定していること。

(2) 実習実施者に対する指導監督

主務大臣である法務大臣及び厚生労働大臣には、技能実習計画の認定に関する業務について、実習実施者や監理団体等に対し、報告の徴収、帳簿書類の提出若しくは提示の命令、出頭の命令、主務大臣の職員をして質問又は立入検査を行わせる権限が認められていること。

また、機構や主務大臣の職員による検査等によって、実習実施者が認定された技能実習計画に従って技能実習を行わせていないことが判明したとき、技能実習法、出入国又は労働に関する法令等に違反したときであって、技能実習の適正な実施を確保するために必要があると認めるときは、主務大臣が改善命令を行う場合があること。

さらに、一度認定された技能実習計画であっても、当該計画に従って技能実習を実施していない場合や、認定基準を満たさなくなった場合、実習実施者が欠格事由に該当することとなった場合、主務大臣の職員が行う立入検査を拒んだり妨害等した場合、改善命令に違反した場合、出入国又は労働に関する法令等に違反した場合等には、認定の取消しの対象となること。

(3) 監理団体に対する指導監督

主務大臣である法務大臣及び厚生労働大臣には、監理団体の許可に関する業務について、実習実施者や監理団体等に対し、報告の徴収、帳簿書類の提出若しくは提示の命令、出頭の命令、主務大臣の職員をして質問又は立入検査を行わせる権限が認められていること。

また、機構や主務大臣の職員による検査等によって、技能実習法、出入国又は労働に関する法令等に違反したときであって、監理事業の適正な運営を確保するために必要があると認めるときは、主務大臣が改善命令を行う場合があること。

さらに、一度許可を受けた監理団体であっても、許可基準を満たさなくなった場合、監理団体が欠格事由に該当することとなった場合、許可の条件に違反した場合、改善命令に違反した場合、出入国又は労働に関する法令等に違反した場合等には、許可の取消しの対象となること。

なお、監理団体が、許可の取消事由(欠格事由を除く。)に該当することとなった場合等においても、主務大臣は、違反の内容等を考慮した上で、許可の取消しではなく、期間を定めて監理事業の全部又は一部の停止を命ずることがあること。

 

第2 技能実習生に係る労働基準関係法令の適用

1 技能実習1号について

(1) 講習の期間中

ア 団体監理型

団体監理型にあっては、技能実習法において、雇用契約に基づかない講習を入国当初に実施し、講習をすべて終了した後に、実習実施者との雇用契約に基づき技能等修得活動を開始することとされている。また、実習実施者と技能実習生は、講習の終了後の特定の日を就労の始期とする雇用契約を技能実習生の入国前に締結することとされている。

したがって、講習の期間中に技能実習生を製品生産業務等に従事させること、講習の期間中の技能実習生を実習実施者が指揮監督下に置くことは認められていない。

このため、団体監理型における講習の期間中の技能実習生については、その時点では雇用契約の効力が未だ発生しておらず、また、実習実施者からの指揮監督を受けず、労務の対償としての報酬を受けないこと等から、その限りにおいて、労働基準法(昭和22年法律第49号)上の「労働者」には該当しないこと。

イ 企業単独型

企業単独型にあっては、技能実習法上、実習実施者との雇用契約に基づき講習を実施する場合と、雇用契約に基づかずに講習を実施する場合とがある。

雇用契約に基づく講習の実施時期は入国当初に限られないが、雇用契約に基づかない講習は入国当初に実施され、当該講習を終了した後に実習実施者との雇用契約に基づき技能等の修得活動を開始することとなる。

実習実施者と技能実習生は、講習のすべてを雇用契約に基づき実施する場合には入国時を就労の始期とする雇用契約を、講習の一部又は全部を雇用契約に基づかずに実施する場合には当該雇用契約に基づかない講習の終了後の特定の日を就労の始期とする雇用契約を、技能実習生の入国前に締結することとされている。

(ア) 実習実施者との雇用契約に基づく講習の期間中

雇用契約に基づく講習の期間中の技能実習生は、実習実施者との雇用契約に基づき当該活動を実施するものであって、労働基準法上の「労働者」に該当するものであり、労働基準関係法令が適用されること。

(イ) 雇用契約に基づかない講習の期間中

雇用契約に基づかない講習の期間中の技能実習生は、外国にあるその所属機関からの出張の状態にあるとされ、当該講習の期間中に技能実習生を製品生産業務等に従事させることは認められていない。

このため、当該講習の期間中の技能実習生は、外国にある事業場に所属する労働者であるものの、その時点では我が国の実習実施者との雇用契約の効力が未だ発生しておらず、また、実習実施者からの指揮監督を受けず、労務の対償としての報酬を受けないこと等から、その限りにおいて、我が国の労働基準法上の「労働者」には該当しないものであること。

(2) 技能等修得活動の期間中

ア 団体監理型

団体監理型において、監理団体の実施する講習の終了後、技能等修得活動中の技能実習生については、実習実施者との雇用契約に基づき当該活動を実施するものであって、労働基準法上の「労働者」に該当するものであり、労働基準関係法令が適用されること。

イ 企業単独型

企業単独型において、技能等修得活動中の技能実習生については、実習実施者との雇用契約に基づき当該活動を実施するものであって、労働基準法上の「労働者」に該当するものであり、労働基準関係法令が適用されること。

(3) 雇用契約に基づかない講習の期間中に業務が行われた場合

労働基準法上の「労働者」であるかどうかは、事業に「使用される」者であるか否か、その対償として「賃金」が支払われるか否かによって判断されるものであるが、実習実施者又は監理団体が、雇用契約に基づかない講習の期間中に、技能実習生を座学ではなく実際の業務に従事させた場合には、一般に、実態として当該技能実習生は実習実施者又は監理団体の指揮監督下にあるものと認められ、上記(1)のア及びイ(イ)にかかわらず、労働基準法上の「労働者」に該当すると考えられること。

2 技能実習2号又は技能実習3号について

技能実習2号又は技能実習3号の技能実習生については、実習実施者との雇用契約に基づき当該活動を実施するものであって、労働基準法上の「労働者」に該当するものであり、労働基準関係法令が適用されること。

 

第3 技能実習生の労働条件等の確保

技能実習生の適正な労働条件及び安全衛生の確保に当たっては、特に以下の点に留意すること。

1 中間搾取

監理団体の代表者、その役員等が、実習実施者に対し、監理団体名義の銀行口座や監理団体が管理する技能実習生名義の銀行口座に賃金を振り込ませ、これを引き出す等して当該賃金を不当に利得するようなことは、業として他人の就業に介入して利益を得るものであって、労働基準法第6条が禁止する中間搾取に該当すること。

2 労働条件の明示

技能実習生に対しては、労働基準法第15 条に基づき、本人が理解できるよう労働条件の内容を明らかにした書面を交付しなければならないこと。

また、雇用契約が更新される場合には、更新に際し、改めて労働条件を明示しなければならないこと。

なお、上記第2の1(1)のとおり、実習実施者と技能実習生との間には入国前に雇用契約が締結されており、機構における技能実習計画認定の審査の際に、雇用契約書や労働条件を技能実習生が理解したことを証する文書等を提出することとされていること。

3 強制貯金の禁止

使用者は、技能実習生に対し、労働契約に附随して貯蓄金を管理する契約をしてはならないこと。ここでいう貯蓄金の管理には、使用者が受け入れた技能実習生の預金を技能実習生個人ごとの名義で金融機関に預け入れ、その通帳、印鑑を使用者が保管することが含まれること。

なお、技能実習法において、実習監理を行う者又はその役員若しくは職員は、技能実習生に対し、技能実習に係る契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は技能実習生若しくは技能実習生になろうとする者との間で貯蓄金を管理することを禁止し、これに違反する行為に及んだ場合には罰則の対象としていること。

4 賃金

(1) 賃金の控除等

賃金は、通貨で、実習実施者から直接技能実習生に、その全額を、毎月一回以上、一定期日に支払わなければならないこと。

特に、賃金の控除については、法令に別段の定めがある場合及び事理明白なものについて法定の労使協定を締結した場合にのみ認められるものであること。

すなわち、実習実施者が宿泊施設や食事を提供する場合に、その費用を労使協定に基づき控除することは認められるが、労使協定を締結していたとしても、「管理費」の名目でその具体的な使途が明らかにされない等、使途が不明であるものや、一部の使途は明らかであるが控除額の合計が実際に必要な費用に比して均衡を欠くもの等は事理明白といえず、これを控除した場合には労働基準法第24条違反となること。

なお、技能実習法施行規則(平成28年法務省・厚生労働省令第3号)において、宿泊施設や食事を提供する費用を実習実施者が徴収する場合には技能実習生に十分に理解させることを求めるとともに、当該費用の額が実費に相当する適正な額であることを求めているほか、技能実習終了時の帰国旅費や、監理団体が講習の実施に要する会場費や監査の実施に要する交通費等の監理に要する費用は、実習実施者又は監理団体が負担することとされており、これらを技能実習生に直接又は間接に負担させてはならないものとされていること。

(2) 最低賃金

使用者は、技能実習生に対し、最低賃金額以上の賃金を支払わなければならないこと。

技能実習制度は、現在の技術又は技能のレベルを向上させることを目的として創設された制度であり、技能実習生は当該業務に一定の経験を有しているものであるため、技能実習生は、特定最低賃金の適用が除外されている「雇入れ後一定期間未満の者であって、技能習得中のもの」に該当しないものであること。

なお、技能実習法において、技能実習生に対する報酬の額は、日本人が従事する場合の報酬の額と同等以上とするものとされていること。

5 労働時間

(1) 労働時間の取扱い

技能実習生は、技能実習計画に沿って、雇用契約に基づき業務に従事しながら技能等を修得するものであるので、当該技能等の修得活動時間は、当然に労働時間に該当すること。

さらに、講習を雇用契約に基づき実施することとしている場合には、当該講習時間は労働時間に該当すること。また、入国当初の講習を雇用契約に基づかずに実施する場合であっても、当該講習の終了後に中間講習、修了講習等を別途義務付けるときには、当該義務付けられた講習時間は労働時間に該当すること。

(2) 時間外・休日労働

時間外・休日労働は時間外・休日労働協定届の範囲を超えて行わせてはならず、また、これらに対しては法定の率以上の率で計算した割増賃金を支払わなければならないこと。時間外労働を「内職」と称して行わせ、これに対する報酬を非常に低額なものとし、労働基準法第37条に定める計算による金額を下回る場合には、同法違反となること。

なお、「技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する基本方針」(平成29年法務省・厚生労働省告示第1号。以下「基本方針」という。)において、技能実習生については適正に労働時間の管理を行うことが必要であること、技能実習の一環としてやむを得ず時間外・休日労働を技能実習生に行わせる場合には、労使協定の締結、割増賃金の支払等、労働基準関係法令で定める手続に従い行わせることが必要である旨記載されていること。

(3) 適用除外

労働基準法第4章に定める労働時間、休憩及び休日に関する規定は、農業又は畜産、養蚕、水産の事業に従事する労働者については適用されないが、これらの事業においても、深夜業及び年次有給休暇に関する規定は適用されること。

なお、労働時間等に関する規定が適用されない労働者についても、雇用契約において時間外・休日割増賃金を支払う旨を定めた場合には、当該契約に基づきこれらの賃金が支払われなければならないこと。

6 解雇

技能実習生は、技能実習期間に限りがあるため有期労働契約により雇用されている場合が一般的であるが、有期労働契約により雇用されている技能実習生については、労働契約法(平成19年法律第128号)第17条第1項に基づき、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間中に解雇することはできないこと。

さらに、技能実習制度は、一定期間の技能実習の実施により開発途上国等への技能移転を図ることを目的としていることからも、実習実施者は、予定された技能実習期間中の技能実習生の雇用の確保及び技能実習の継続に最大限努める必要があること。

なお、実習実施者の倒産等により技能実習の継続が不可能となった場合には、技能実習法により、実習実施者又は監理団体は、その旨を機構に申し出るとともに、引き続き技能実習を行うことを希望する技能実習生が技能実習を行うことができるよう、機構の支援を受けるなどして他の実習実施者等との連絡調整その他の必要な措置を行わなければならないとされていること。

7 寄宿舎

技能実習法施行規則において、監理団体又は実習実施者は、技能実習生に対して適切な宿泊施設を確保するものとされており、当該宿泊施設が事業の附属寄宿舎に該当する場合には、労働基準法第10章に定める措置を講ずる必要があること。

特に、事業附属寄宿舎規程(昭和22年労働省令第7号)第4条又は建設業附属寄宿舎規程(昭和42年労働省令第27号)第5条に基づき、外出又は外泊について使用者の承認を受けさせることや、共同の利益を害する場所及び時間を除き面会の自由を制限すること等の行為はしてはならないこと。

8 安全衛生教育

技能実習生についても、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第59条に基づく雇入時等の教育を実施するとともに、危険有害業務に従事させる場合には、特別教育を実施する必要があること。

また、当該教育を実施するに当たっては、技能実習生がその教育内容を理解できる方法により行う必要があること。特に、技能実習生に使用させる機械設備、安全装置又は保護具の使用方法等が確実に理解されるよう留意すること。

9 就業制限

技能実習生を、フォークリフトの運転等の労働安全衛生法第61条に定める就業制限業務に従事させる場合には、同条の規定に基づき、免許の取得、技能講習の修了等の資格が必要であること。

10 健康診断の実施等

技能実習生についても、労働安全衛生法第66 条等に基づき、雇入時の健康診断、定期健康診断、特殊健康診断を行うとともに、その結果必要と認められるときは事後措置を実施する必要があること。

11 労働者災害補償保険等

実習実施者が暫定任意適用事業に該当する場合を除き、技能実習生に対しては、労働者災害補償保険が強制適用されることはいうまでもないが、「技能実習制度 運用要領」(法務省・厚生労働省)において、労働者災害補償保険の暫定任意適用事業であっても、技能実習生を受け入れる場合には、労働者災害補償保険に係る保険関係の成立又はこれに類する措置を講じる必要があるとされていること。

雇用保険についても、技能実習生に対しては、通常の労働者と同様に適用されること。

12 その他

以上に限らず、労働搾取目的の人身取引に関連する事案に関して、加害者に適用が考えられる罰則、人身取引事犯の捜査の端緒となり得る罰則として、強制労働、賠償予定、前借金の相殺、休憩といったものも考えられること。

 

第4 実習実施者等に対する指導等

1 実習実施者に対する指導等

実習実施者に対しては、労働基準関係法令、本通達、基本方針及び「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針」(平成19年厚生労働省告示第276号)の内容について、周知啓発に努めるとともに、労働基準関係法令上問題があると考えられる事業場については、重点的に監督指導を実施するなどにより、労働基準関係法令の遵守徹底を図ること。技能実習生に対する人身取引が疑われるなど、重大又は悪質な事案については、司法処分を含め厳正に対処すること。

2 監理団体に対する対応

監理団体に対しては、平成29年10月27日付け基発1027第49号・開発1027第3号「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律の施行に伴う同法に基づく労働基準監督官の職権等について」により、技能実習生の法定労働条件の確保について、技能実習法に基づく実習実施者に対する指導等の状況を確認すること。

 

第5 関係機関との連携等

1 出入国管理機関との連携

出入国管理機関においては、技能実習生の在留資格付与等の観点から、技能実習制度の円滑な施行を担保している。

労働基準監督機関においては、技能実習生の法定労働条件の履行確保を図るため、機構との合同監督・調査への協議に参画を求める等、適切な連携に努めること。

2 機構との連携

機構においては、技能実習制度の円滑かつ適正な実施を図るため、実習実施者及び監理団体に対する指導や、母国語による技能実習生からの相談対応、技能実習法に基づく申告の受理等を行うこととされているところである。

労働基準監督機関においては、技能実習生の法定労働条件の履行確保を図るため、機構との相互通報制度に基づく通報を徹底する、技能実習生が一時宿泊先の提供を求めている場合には速やかに機構に情報提供する等、適切な連携に努めること。

3 公益財団法人国際研修協力機構(JITCO)の役割

JITCOにおいては、技能実習法の施行後は、実習実施者及び監理団体に対する巡回指導は行わず、実習実施者及び監理団体に対する機構への申請支援等の事業を行っていくこととされているので了知すること。

 

別紙1<略>


別紙2

技能実習制度の主な改正点(省令関係)

改正入管法に基づき次の法務省令が改正・制定され、別添の法務省作成資料のとおり、新たな技能実習制度における技能実習生の受入れに係る基準等が定められている。

① 出入国管理及び難民認定法施行規則(昭和56年法務省令第54号)

技能実習制度に関して、入国審査時に提出すべき資料等を定めたもの。

② 出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令(平成2年法務省令第16号)

技能実習1号の在留資格等で我が国に上陸する際の審査基準を定めたもの。

③ 出入国管理及び難民認定法第二十条の二第二項の基準を定める省令(平成21年法務省令第51号)

技能実習1号から技能実習2号に移行する際の審査基準を定めたもの。

④ 出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の技能実習の項の下欄に規定する団体の要件を定める省令(平成21年法務省令第53号)

団体監理型の場合の監理団体の要件を定めたもの。

⑤ 出入国管理及び難民認定法別表第一の二の表の技能実習の項の下欄に規定する事業上の関係を有する外国の公私の機関を定める省令(平成21年法務省令第52号)

企業単独型の場合の外国にある技能実習生の所属機関の要件を定めたもの。

研修・技能実習制度の見直しに係る法務省令の改正・制定の概要

※ (用例)は文末

1 研修・技能実習に係る上陸基準の概要

(1) 「技能実習1号イ」及び「技能実習1号ロ」に係る主な基準

ア 技能実習生の保護に係る主な要件

(ア) 講習において技能実習生の法的保護に必要な情報に係る講義を義務付け(「技能実習1号ロ」では専門的知識を有する外部講師が行う)([実イ]―7,[実ロ]―8)

(イ) 技能実習生の技能等の修得活動前に実習実施機関等が労働者災害補償保険に係る保険関係の成立の届出等の措置を講じていること([実イ]―15,[実ロ]―12)

(ウ) 監理団体による技能実習生のための相談体制の構築([団体]1―4)

(エ) 実習実施機関での技能実習が継続不能となった場合,監理団体が技能実習生の新たな受入れ先確保に努めること([団体]1―5)

(オ) 技能実習生の帰国旅費等の確保(帰国担保措置)([実イ]―16,[実ロ]―13)(「技能実習1号イ」では実習実施機関,「技能実習1号ロ」では監理団体が確保)

イ 団体による監理の強化に係る主な要件

(ア) 3か月に1回以上監理団体の役員による技能実習の監査を実施し,その結果を地方入国管理局へ報告すること([団体]1―3)

(イ) 技能実習に係る技能等について一定の知識等を有し,適正な技能実習計画を策定する能力のある役職員(当該団体の監理の下で技能実習を実施する実習実施機関の役職員を兼務する者を除く。)が当該計画を策定すること([団体]1―7)

(ウ) 1か月に1回以上監理団体の役職員が実習実施機関を訪問し,技能実習実施状況の確認及び指導を行うこと([団体]1―8)

ウ 技能実習生受入れに係る欠格要件

(ア) 受入れ側の機関又はその役員等が,研修又は技能実習に係る不正行為を一定期間(行為の重大性に応じて5年間,3年間又は1年間)行っていないこと(対象となる事由を省令で明確化)([実イ]―18,19,[実ロ]―16,17,31,36)

(イ) 受入れ側の機関又はその役員等が,入管法,労基法等の労働関係法令に規定する罪により刑に処せられたことがある場合には,その執行を終わり,又は執行を受けることがなくなった日から5年を経過していること([実イ]―21,[実ロ]―19,33,38)

(ウ) 受入れ側の機関の役員等が,過去5年間に他の機関で役員等として研修又は技能実習の監理等に従事したことがある場合には,その在任中に当該他の機関が不正行為を行い,一定期間研修生及び技能実習生の受入れを認められないこととされている場合には,当該期間が経過していること([実イ]―22,[実ロ]―20,34,39)

(エ) 送出し側の機関又はその役員等が,過去5年間,外国人に不正に在留資格認定証明書の交付等を受けさせる目的で,偽変造文書等の行使等を行っていないこと([実イ]―23,[実ロ]―40)

エ 不当な金品徴収等の禁止に係る要件

(ア) 送出し機関等が技能実習生等から保証金等を徴収し,又は労働契約の不履行に係る違約金を定める契約等が行われていないこと([実イ]―5,[実ロ]―6)

(イ) 技能実習に関係する機関相互の間で,技能実習に関連して,労働契約の不履行に係る違約金を定める契約等が行われていないこと([実イ]―6,[実ロ]―7)

(ウ) 監理団体の監理費用を徴収する場合は,技能実習生の受入れ前に,費用を負担する機関に対して金額及び使途を明示し,技能実習生には直接的又は間接的に負担させないこと([団体]1―6)

オ その他の主な要件

(ア) 「技能実習1号イ」で受入れが認められる技能実習生と実習実施機関との関係

① 本邦の公私の機関の外国にある事業所の職員([実イ]―1)

② 実習実施機関と引き続き1年以上の取引実績又は過去1年間に10億円以上の取引実績を有する機関の外国にある事業所の職員([機関]―1)

③ 実習実施機関と国際的な業務上の提携その他の事業上の関係を有する機関で法務大臣が告示をもって定める機関の外国にある事業所の職員([機関]―2)

(イ) 「技能実習1号ロ」で技能実習生の受入れが認められる団体([団体]1―1)

① 商工会議所又は商工会

② 中小企業団体

③ 職業訓練法人

④ 農業協同組合

⑤ 漁業協同組合

⑥ 公益社団法人又は公益財団法人

⑦ 法務大臣が個別に告示した団体

(ウ) 講習の実施([実イ]―7,[実ロ]―8)

日本語,生活一般,修得技能に関する知識,技能実習生の法的保護に必要な情報等に関する講習を一定期間以上(※)実施(「技能実習1号ロ」においては,技能等修得活動を実施する前に監理団体が実施)

※ 技能実習1号における活動時間全体の6分の1(ただし,入国前6か月以内に実習実施機関(「技能実習1号イ」の場合)若しくは監理団体(「技能実習1号ロ」の場合)が本邦外で実施した講習又は外国の公的機関等が実施した外部講習を1か月以上かつ160時間以上受けている場合は12分の1)以上

(エ) 技能実習生の受入れ人数([実イ]―11,[実ロ]―24~29)

実習実施機関の常勤職員数に応じて定める人数の範囲内(現行の受入れ人数枠と同様に,「技能実習1号イ」では原則として常勤職員の20分の1,「技能実習1号ロ」では現行の特例告示による人数枠を継続。ただし,実習実施機関の常勤職員数に技能実習生を含めない。)

(オ) 報酬の要件([実イ]―8,[実ロ]―21)

日本人が従事する場合の報酬と同等額以上の報酬

(2) 「研修」に係る主な基準(公的研修又は非実務研修のみ)

ア 公的研修として認められる研修([研修]―5)

(ア) 国,地方公共団体の機関又は独立行政法人が自ら受入れ機関となる研修

(イ) 独立行政法人国際協力機構(JICA)等の事業として行われる研修

(ウ) 国際機関の事業として行われる研修

(エ) 我が国の国,地方公共団体等の資金により主として運営される研修

(オ) 外国の国若しくは地方公共団体等の職員を受け入れる研修

(カ) 外国の国又は地方公共団体に指名された者が,我が国の国の援助及び指導を受けて行われる研修で,同人が本国において技能等を広く普及する業務に従事している場合

イ 研修生受入れに係る欠格要件

上記(1)ウの(ア)ないし(エ)と同じ

ウ 上記ア及びイのほか新たに追加される要件

(ア) 研修が継続不可能となった際の受入れ機関による地方入国管理局への報告([研修]―6)

(イ) 受入れ機関による研修生の帰国旅費等の確保(帰国担保措置)([研修]―7)

(ウ) 受入れ機関による研修実施状況に係る文書の作成,保存([研修]―8)

2 技能実習2号への変更基準の概要

(1) 「技能実習2号イ」への主な変更基準(「技能実習1号イ」に係る上陸基準と同一の要件を除く。)

ア 技能検定試験基礎2級等に合格していること([変更]1―2)

イ 「技能実習1号イ」の活動と同一の実習実施機関で,かつ,同一の技能等について行われること([変更]1―4)

ウ 本邦での技能実習の活動期間が3年以内の期間であること([変更]1―17)

エ 「技能実習1号イ」の活動期間が1年以内であること([変更]1―17)

(2) 「技能実習2号ロ」への主な変更基準(「技能実習1号ロ」に係る上陸基準と同一の要件を除く。)

ア 「技能実習1号ロ」の活動と同一の実習実施機関で,かつ,同一の技能等について行われること([変更]2―4)

イ 「技能実習1号ロ」の活動期間が1年以内であること([変更]2―28)

ウ 上記(1)ア及びウに該当すること([変更]2―2,28)

3 その他

(1) 経過措置

改正法施行後に「技能実習1号イ」又は「技能実習1号ロ」で入国する者の在留資格認定証明書交付申請では,改正法の施行前であっても改正基準省令を適用するなど,必要な経過措置については附則で規定

(2) 告示の廃止

「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令の研修の在留資格に係る基準の5号の特例を定める件」等の関連告示を廃止

(用例)

[実イ]―15:「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(案)の表の法別表第1の2の表の技能実習の項の下欄第1号イに掲げる活動」の第15号

[実ロ]―12:「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(案)の表の法別表第1の2の表の技能実習の項の下欄第1号ロに掲げる活動」の第12号

[研修]―5:「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令(案)の表の法別表第1の4の表の研修の項の下欄に掲げる活動」の第5号

[変更]1―2:出入国管理及び難民認定法第20条の2第2項の基準を定める省令第1条第2号

[団体]1―5:出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の技能実習の項の下欄に規定する団体の要件を定める省令(案)第1条第5号

[機関]―1:出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の技能実習の項の下欄に規定する事業上の関係を有する外国の公私の機関を定める省令(案)第1号

 

別紙3

出入国管理及び難民認定法(昭和二十六年政令第三百十九号)

別表第一

在留資格

本邦において行うことができる活動

(略)

(略)

技能実習

一 次のイ又はロのいずれかに該当する活動

イ 本邦の公私の機関の外国にある事業所の職員又は本邦の公私の機関と法務省令で定める事業上の関係を有する外国の公私の機関の外国にある事業所の職員がこれらの本邦の公私の機関との雇用契約に基づいて当該機関の本邦にある事業所の業務に従事して行う技能、技術若しくは知識(以下「技能等」という。)の修得をする活動(これらの職員がこれらの本邦の公私の機関の本邦にある事業所に受け入れられて行う当該活動に必要な知識の修得をする活動を含む。)

ロ 法務省令で定める要件に適合する営利を目的としない団体により受け入れられて行う知識の修得及び当該団体の策定した計画に基づき、当該団体の責任及び監理の下に本邦の公私の機関との雇用契約に基づいて当該機関の業務に従事して行う技能等の修得をする活動

二 次のイ又はロのいずれかに該当する活動

イ 前号イに掲げる活動に従事して技能等を修得した者が、当該技能等に習熟するため、法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用契約に基づいて当該機関において当該技能等を要する業務に従事する活動

ロ 前号ロに掲げる活動に従事して技能等を修得した者が、当該技能等に習熟するため、法務大臣が指定する本邦の公私の機関との雇用契約に基づいて当該機関において当該技能等を要する業務に従事する活動(法務省令で定める要件に適合する営利を目的としない団体の責任及び監理の下に当該業務に従事するものに限る。)

 

別紙4

不正行為の類型について

1 受入れが5年間停止される不正行為

① 暴行、脅迫、監禁等

② 旅券・外国人登録証の取上げ

③ 賃金等の不払

賃金不払のほか、割増賃金の不払、最低賃金額未満の支払及び講習手当の不払をいう。

④ 人権を著しく侵害する行為

実習実施機関が技能実習生の意に反して預金通帳を取り上げていた場合などが含まれる。

⑤ 偽変造文書の行使・提供

賃金額等に関して地方入国管理局に虚偽の申請をした場合などが含まれる。

2 受入れが3年間停止される不正行為

① 保証金の徴収等

監理団体、実習実施機関、外国にある送出し機関等が技能実習生やその家族から保証金を徴収していた場合や、これらの機関等との間で労働契約の不履行に係る違約金その他の不当な財産の移転を予定する契約を締結していた場合をいう。

例えば、技能実習生の逃走を防止するために技能実習生やその家族等から保証金を徴収したり、休日に許可を得ずに外出すること、作業時間中にトイレ等で離席すること等を禁じてその違約金を定めたりすることなどが、この類型に該当する。

② 雇用契約に基づかない講習の期間中の業務への従事

③ 二重契約

賃金額等について技能実習生との間で地方入国管理局への申請内容と異なる内容の取り決めをしていた場合をいう。

④ 技能実習計画との齟齬

長時間にわたる時間外労働・休日労働により労働時間が技能実習計画を大幅に上回っている場合などが含まれる。

⑤ 労働関係法令違反

1の①、③又は④に該当するもの以外のものをいう。

⑥ その他

①~⑤のほか、名義貸し、実習継続不可能時の報告不履行等7類型がある。

3 受入れが1年間停止される不正行為

① 日誌等の作成等不履行

② 帰国時の報告不履行

※ 「出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の基準を定める省令」(平成2年法務省令第16号)の表の法別表第1の2の表の技能実習の項の下欄第1号イに掲げる活動の第18号等による。