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通達:国立障害者職業訓練校における向上訓練の実施について

 

国立障害者職業訓練校における向上訓練の実施について

平成2年6月8日能発第114号

(関係都道府県知事あて労働省職業能力開発局長通達)

 

近年、我が国の経済社会は、ME機器やコンピュータの導入等により、産業構造、職業構造の変化が著しく進展しており、これに伴い、従来の職務内容に加えて、より高度なもの、より新しいもの等が要求されるようになり、個々の労働者に対しても、広範かつ多様な職務内容等の変化に対応できる技能が求められている。

しかしながら、障害者にとってはその身体的ハンデキャップのゆえもあり、急速に変化する職務内容等に即応していくことが極めて困難である。また、多くの障害者を雇用する中小企業にあっては、経済的、組織的な事由等から企業独自で障害者に対しての教育訓練を実施することが難しい状況にある。

このような状況にかんがみ、障害者の職業能力の開発・向上を図るために、平成二年度から国立障害者職業訓練校において在職中の障害者を対象とした向上訓練を実施することとし、別添のとおり「国立障害者職業訓練校における向上訓練実施要領」を定めたので、その円滑な実施について特段の御配意をお願いする。

 

国立障害者職業訓練校における向上訓練実施要領

1 目的

国立障害者職業訓練校(以下「障害者訓練校」という。)において実施する向上訓練は、企業等に現に在職している障害者であって、一般の職業訓練校において健常者とともに訓練を受講することが困難なものに対して、その必要とする知識及び技能を付与することを目的とする。

2 向上訓練の種類

障害者訓練校において実施する向上訓練は、「一級技能士課程」、「二級技能士課程」及び「単一等級技能士課程」並びに「管理監督者課程」及び「技能向上課程」とすること。

3 訓練の対象者

(1) 一級技能士課程

当該課程の訓練科に関し、次のいずれかに該当する者であること。

イ 養成訓練(短期課程を除く。)を修了した者で、その後相当程度の実務の経験を有するもの

ロ 二級技能検定に合格した者で、その後相当程度の実務の経験を有するもの

ハ イ及びロに該当する者と同等以上の技能を有する者と認められるもの

(2) 二級技能士課程

当該課程の訓練科に関し、次のいずれかに該当する者であること。

イ 養成訓練(短期課程を除く。)を修了した者で、その後相当程度の実務の経験を有するもの

ロ イに該当する者と同等以上の技能を有する者と認められるもの

(3) 単一等級技能士課程

当該課程の訓練科に関し、次のいずれかに該当する者であること。

イ 養成訓練(短期課程を除く。)を修了した者で、その後相当程度の実務の経験を有するもの

ロ イに該当する者と同等以上の技能を有する者と認められるもの

(4) 管理監督者課程

管理者又は監督者としての職務に従事しようとする者又は従事している者であること。

(5) 技能向上課程

養成訓練(短期課程を除く。)を修了した者又はこれと同等以上の技能を有すると認められる者であること。

4 訓練コースの設定

訓練コースの設定に当たっては、訓練対象者及びその者を雇用する事業主等の職業訓練ニーズに即応した効果的なものとすること。

5 訓練の方法

訓練は、障害者訓練校の施設内における全日制又は定時制による集合訓練方式により、当該訓練校の設備及び障害者に対する職業訓練のノウハウ等を活用した効率的な訓練の実施を図ることとし、通信の方法による訓練は行わないものであること。

6 教科の科目

(1) 一級技能士課程、二級技能士課程、単一等級技能士課程

一級技能士課程にあっては職業能力開発促進法施行規則(以下「規則」という。)別表第三の三、二級技能士課程にあっては規則別表第四、単一等級技能士課程にあっては規則別表第四の二の表の各訓練科の教科の欄に掲げる内容とし、必要に応じて同欄に掲げられた教科以外の科目又は実習を追加できるものとする。この場合、追加した科目又は実習に必要な訓練時間を総訓練時間に追加しなければならないものとする。

(2) 管理監督者課程

イ 規則別表第五により行われる訓練以外の訓練

教科の科目は、管理者又は監督者としての職務に必要な技能を付与するために適切であると認められるものであること。

「管理者又は監督者としての職務に必要な技能」とは、職種にかかわらず管理者又は監督者として一般的に必要とされる技能であり、事例研究、討議法、役割演技法等の訓練技法を活用した管理者又は監督者の指導力・判断力等の向上に関する科目が含まれるものであること。

なお、学科のみ又は実技のみであっても差し支えないこと。

ロ 規則別表第五により行われる訓練

規則別表第五の教科の欄に定めるとおりであること。

なお、教科の科目の細目については、第一科、第二科、第三科及び第四科については「監督者訓練(TWI)方式」により、第五科については「訓練計画の進め方訓練(PDI)方式」により、第六科については「問題解決の仕方訓練(PST)方式」によりそれぞれ定められているとおりであること。

(3) 技能向上課程

教科の科目は、訓練の対象となる労働者の技能の程度に応じて、その職業に必要な技能(管理者又は監督者としての職務に必要な技能を除く。)を補完し、又は追加して習得させるために適切であると認められるものであること。

なお、教科の科目は、学科の科目又は実技の科目のみであっても差し支えないものであること。

7 訓練科名

管理監督者課程の訓練であって規則別表第五により行われる訓練以外の訓練及び技能向上課程の訓練にあっては、訓練の内容を適切に表した訓練科の名称とすること。

8 訓練時間

訓練時間は、各課程ごとに次のとおりとする。

(1) 一級技能士課程、二級技能士課程、単一等級技能士課程

訓練に必要な最小限の訓練時間は、各課程の規則別表の訓練時間の欄に定められているとおりであること。

なお、必要に応じてこれ以上の訓練時間であっても差し支えないものであること。

(2) 管理監督者課程

イ 規則別表第五により行われる訓練以外の訓練

総訓練時間は、一○時間以上であること。

ロ 規則別表第五により行われる訓練

規則別表第五の訓練科ごとに訓練時間の欄に定めるとおりであること。

なお、訓練生の身体的事情等を考慮して、訓練時間を越えて実施することは差し支えないものであること。

(3) 技能向上課程

総訓練時間は、一二時間以上であること。

9 設備

教科の科目に応じ当該科目の訓練を適切に行うことができると認められるものであること。

特に訓練生の身体的事情等に配慮し、障害を補完し、障害部位以外等で操作できる補装具、訓練用機器等の積極的活用を図ること。

10 訓練生数

(1) 一級技能士課程、二級技能士課程、単一等級技能士課程

訓練を行う一単位の訓練生の数は、訓練科ごとに一〇人以上五○人以下を標準とすること。

(2) 管理監督者課程

イ 規則別表第五により行われる訓練以外の訓練

訓練を行う一単位の訓練生の数は、訓練技法等に応じ適切な人数とすること。ただし、概ね三○人を上限とすること。

ロ 規則別表第五により行われる訓練

訓練を行う一単位の訓練生の数は、訓練科ごとに七人以上一○人以下とすること。

(3) 技能向上課程

訓練を行う一単位の訓練生の数は、概ね一〇人程度とすること。

なお、効果的な訓練が実施できると判断できる場合には、これ以上の人数で実施しても差し支えなく、また、訓練生の身体的事情、重度障害者の割合等を勘案してこれ以下の人数で実施することも差し支えないものであること。

11 職業訓練指導員

(1) 職業訓練指導員は、教科の科目について、詳細で、かつ実務に則した知識を有するとともにその内容について的確に指導できる者であること。また、必要に応じ外部からの講師を招聘する等指導陣の充実を図るための適切な措置を講ずること。

また、規則別表第五による管理監督者課程の訓練を担当する職業訓練指導員は、監督者訓練員等の特別な訓練を受けた者であること。

(2) 訓練を行う一単位当たりの職業訓練指導員の数は、教科の科目、訓練技法等に応じ適切な人数であればよいが、原則としては訓練生一○名について一名とし、訓練技法、訓練生の身体的事情、重度障害者の割合等を勘案し、必要に応じてこれ以上とすることは差し支えないものであること。

12 補助者等

職業訓練指導員を補佐する者を配置する等、訓練生の身体的事情等を考慮して効果的な訓練を実施すること。

13 その他

一級技能士課程、二級技能士課程及び単一等級技能土課程の向上訓練については、以下に留意すること。

(1) 修了時試験

イ 試験の水準

修了時の試験は、高度熟練技能労働者又は熟練技能労働者として通常要求される作業方法、能率の維持等に必要な知識を有するか否かを判定できる水準において行うものであり、具体的には、各訓練科に相当する各等級の技能検定の学科試験と同程度の内容とすること。

ロ 基準問題の作成

全国的に同一の試験水準を維持するため、労働省において各訓練科の基準問題を作成するものであること。

ハ 試験問題の作成

障害者訓練校は、労働省が作成した基準問題に準じた試験問題を一○○問程度作成し、採点、配点及び合否判定の基準等を定めておくこと。

なお、試験問題は、採点者の主観により、得点が左右されないように充分配意されたものでなければならないこと。

ニ 試験の実施

障害者訓練校は、試験を厳正に行い、適正かつ公平に採点するとともに秘密の保持をすること。

ホ 修了証書

障害者訓練校は、各課程の訓練科の教科に係る全訓練時間について八〇パーセント以上出席し、修了時試験に合格した者に対して規則第二九条の四の規定に基づく修了証書を交付しなければならないこと。

(2) 修了証明書の発行

障害者訓練校は、修了証書の交付を受けた者から修了証明書の請求があったときは、当該事実を確認のうえ、これを交付しなければならないこと。

(3) 再指導及び追試験

障害者訓練校は、修了時試験において合格基準に達しない者に対して再指導を行うことができる。再指導は受講者の知識習得程度、修了時試験の得点等を考慮して必要な教科について補講を最低一二時間以上行うものとすること。再指導後は、前記(1)に示す手続きにより速やかに修了時の試験の追試験を行うことができること。