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通達:公共職業訓練を行なう職業訓練所における施設設備について

 

公共職業訓練を行なう職業訓練所における施設設備について

昭和39年10月10日訓発第244号

(各都道府県知事、雇用促進事業団理事長あて労働省職業訓練局長通達)

 

最近における公共職業訓練の施設設備は、時代の要請とともにますます拡充の傾向にある。従つてこれらの施設設備の設置にあたつては、立地条件、訓練効果、経済効果等の面について十分考慮なされていることと存ずるが、職業訓練所によつては、これらのことについて配慮に欠けるうらみなしとしない。

たとえば、地耐力の調査が不十分であつたり、建物の配置が無計画になされていたり、さらには設置する装置、機械の選定にあたつていたずらに高級銘柄のものや、精度、使用性、耐久性等に問題の多い下級銘柄のものを選定する等の事例が見受けられる。

このような現状にかんがみ、今後、職業訓練所の新設、増改築及び工業的職種の機械設備の整備にあたつては、別添「公共職業訓練の施設設備設置要領」により実施されるよう御配意をお願いする。

なお、下記のことについては今後事前に図面によつて本省と打合せの上、後日再工事を行なうことのないように万全を期されるよう申し添える。

おつて詳細については引続き手引き書を作成配布する予定であること。

 

五〇トン以上の板金用油圧プレス、一〇分の一トン以上の空気ハンマ、ドロツプハンマ、動力シヤー、ブレーキプレス等の強力な地耐力を必要とする機械を設置する場合及び一台の重量が一トン以上の機械を同一実習場内に一〇台以上設置する場合。

〔注〕

図面については、機械の基礎の断面図及び平面図又はこれらの機械類を支えるのにいかなる措置を基礎に施すかを明らかにする図面(地耐力及び尺度を記入すること。B列3判一葉)

 

別添

公共職業訓練の施設設備設置要領

一 施設について

職業訓練所の設置にあたつては、次の事項に留意し、技術的観点、予算活用の観点等から十分に検討した計画をたて、実施するよう努力しなければならない。

(一) 土地について

イ 土地の面積については、設置される職業訓練所の将来の見通し、すなわち、その地区における産業事情、労働事情、交通事情等を十分調査のうえ、これらの要素の長期見通しとこれに対する職業訓練所の役割を勘案し、必要な面積を決定しなければならない。

最近土地狭隘のため実習場等の拡充をはばまれている例が多く、そのため訓練効果、安全性等を期待し得ない結果を招いている向もあるので特に留意すべきである。

ロ 地耐力については、近年鉄筋コンクリート建ての建物が多いうえに、工業的職種を含まない職業訓練所は殆どないという状況であり、したがつて大なり小なり重量のある機械設備が設置されるので十分に技術的検討を加えなければならない。かりに地耐力が不十分な場合は、できるだけ重量のかからない構造の建物とするか、各機械設備ごとに十分な基礎をつくるか、あるいは床全体をつくり床とするか等によつて、地耐力とそれにかかる重量が見合うような施工をしなければならない。一たん施工した後に手直し、あるいは補強しなければならないようなことのないように、十分実態の調査と相まつて技術的検討を加える必要がある。

ハ 土地の選定に当つては、地形からうける影響、風の強弱、天候及び湿度、温度の状況、砂ほこり、浸水、有害ガス、騒音、振動等に留意しなければならないが、特に海岸に選定する場合は塩風及び塩水による被害の有無等を考慮に入れる必要がある。

(二) 光熱水道について

光熱水道について最も問題の多いのは、施設内における電力消費予想の誤りであり、さらに臨時的電力供給施設を持つことによる不安全状態である。はなはだしい場合には施設の建設当初電力施設の計画が立案されていない事例がある。

計画立案に当つては、需要電力の長期予想をたてるとともに電力基本料金の節減を考慮し、当初の受電能力については必要とする需要電力よりも多少ゆとりのある程度とし、漸次増加せしめるような計画をたてるべきである。ただし、需要電力の増加に伴う付帯工事的なものはむしろ当初において施工したほうが経済的である。また、実習場の配電盤や分電盤についてはその位置、形式及び容量並びに配線方式、容量、配線端の位置等についても十分に検討のうえ、できるだけ当初において施工すべきである。

上下水道の配管工事は工事経費が高額なばかりでなく、他に及ぼす影響も大であるから、後に模様替えする必要を生じないように慎重に設計しなければならない。

なお、きわめて特殊な場合に限られるが、暖房、排水、水質等も一応考慮しておく必要がある。

(三) 建物配置計画について

土地面積の経済性は、建物配置計画の良否により左右されるものであり、将来の拡充に際して障害が生じる原因は多くの場合、建物配置計画の不十分なことにあると考えられる。

普通、建物配置計画は土地の決定以前に作成される事例が多いようであり、そのため土地が決定して計画に多少問題があり再検討の要があるにも拘らず、そのまま施工されることがある。いかに良い建物配置計画であつてもその土地の諸条件を考慮したものでなければ真に有効な施設とはいい得ない場合もあるので、それぞれの場合における立地条件を勘案し建物配置計画を立案するよう努めなければならない。

要するに、土地面積を最も経済的に使用することにより、できるだけ予備面積を確保するとともに、地形、重力導入路、上下水道、運搬能率、各建物間の有機的関連及び弾力的使用、方位、風向き、災害予防、外観等の諸要素について入念な調査検討を行ない決定することが必要である。

(四) 実習場の建物について

実習場の建物については、建屋の形式、構造、高さ、広さ、使用建築材料等について十分な考慮を払い、それぞれの訓練職種の訓練が最も有効適切に実施できる施設であるように着目配慮する必要がある。すなわち、精度の高い機械類を多く取扱う実習場の場合は、できるだけ外部からの砂ほこりを防ぐ防じん性を、震動や高音を発する作業を行なう実習場の場合は耐震性と防音性を、また、ほこりやガス等を多く発生したり高温高湿になりやすい作業を行なう実習場の場合は通気性をそれぞれ考慮しなければならない。

さらに屋根をトタンぶきにする場合、日光の強い場所では建物内部の温度上昇の原因になることもあるのでこのような点を勘案し、その土地の特徴を十分に取入れ、採光、運搬能率、災害予防、外観等についても配慮することを忘れてはならない。

建物の経済性から見ると、その内部はできるだけ柱の少ない建物とすべきであり、類似あるいは関連ある職種が併設される場合は実習作業に弾力性をもたせ、かつ、実習場を経済的、効果的に使用することができるよう、小間仕切りを避けるほうがよく、また、将来増築する場合の条件も考慮に入れておくことも大切なことである。

なお、変電室、ガス発生室その他危険物を設備し、あるいは取扱う建物については、消防法その他関係法条令に規定されている要件を備えるよう、それぞれ基準にしたがつて設計施工しなければならない。

(五) 機械の基礎工事について

機械の据付けのための基礎工事については、地耐力を正確に把握し、設置される機械の標準寸法が明らかになつておれば基礎工事の施工ができるわけであるから、できる限り建屋の建設と併行して基礎工事を行なうほうが経済的である。特に基礎のくい打ちは建屋が完成してからでは困難であるばかりでなく、くいが長尺物の場合は作業不可能な事態が生じるから注意を要する。また、不完全な基礎工事は将来あらゆる面に障害となつて現われるから、地耐力と機械の静荷重及び動荷重のバランスをよく把握していなければならない。例えば普通の場合、各機械のそれぞれに対して基礎をつくるが、その基礎だけでは沈下を防ぐことができないと判断された場合は、実習場全体の床に対して鉄筋あるいはアングル等を網状に張りめぐらし、板状の鉄筋コンクリート床としたつり床とすることも一つの方法として考えられる。

なお、機械の基礎に必要な条件は次のとおりである。

(イ) 機械設備と地盤との中間にあつて、その圧力に十分に耐えられるものであること。

(ロ) 機械設備の精度及び機能の保持に十分であること。

(ハ) 沈下しないものであること。

(ニ) 安定性のあること。すなわち、しゆう動、回転または浮動性のないこと。

(ホ) 破損しないものであること。

(ヘ) 防音的なもので、基礎の上面は平面かつ水平であること。

(六) 実習場の内部設計について

実習場の内部設計は、その良否が訓練効果を左右する重大なポイントであるので、十分な配意が必要であるばかりでなく、実習場を数次にわけて設ける場合には、その将来の完成図に円滑に移行することのできるように設計上の関連づけがなされていなければならない。

実習場を設計するに当つては、理想図を作成したうえで、これに種々の制約条件を勘案し、実際的なしかも比較的理想に近い設計図を完成すべきであり、その順序は次のとおりである。

(イ) 計画立案に必要な資料の収集、調査、分析

(ロ) 計画立案

(ハ) テムプレツト(模型、型紙等)による表示

(ニ) 評価

(ホ) 修正

(ヘ) 決定

イ 床面積

床面積は固有床面積と作業床面積とに分けられるが、固有床面積は機械等の設備そのものが据えられる広さだけでなく、これらの設備の可動範囲についても十分余裕をとらなければならない。また、作業床面積は訓練職種の訓練上の作業内容によりそれぞれその特殊性を考慮して必要限度の広さが確保されなければならない。

ロ 通路

(イ) 通路はその幅を次のようにとること。

実習場の主要路 二・五~三メートル

実習場の副通路 一・五~二メートル

その他の通路 〇・八~一メートル

(ロ) 訓練中の訓練生の移動、製品と材料の運搬距離が最短に保てるよう配慮すること。

(ハ) 通路は作業床面積と同水準とし、その床材料はコンクリート、木れんが、板、三和土等訓練職種の訓練におけるそれぞれの作業の実態に即して選ぶこと。

(ニ) 通路は壁面の近くを避け、かつ、できるだけ曲りかどをなくし、また交差する個所は直角にすること。

(ホ) 通路は作業場との境界を白線、黄線、白タイル等により区画すること。

(ヘ) 主要通路は製品や材料の搬出入、訓練生の出入に都合のよいようにすること。

ハ 機械の配置

(イ) 機械相互間の横及び前後間隔は安全作業ができ、かつ、作業員が適宜説明、実演その他技術的指導等ができる広さを確保すること。

(ロ) 機械の向きは運転部分あるいは運動部分をなるべく通路側に向けないようにし、直射日光を避け、かつ、採光と人工照明の利用のうえで最もよく、しかも材料の供給搬出に好都合であり、また、指導監督に便利であるようにすること。

(ハ) 訓練上の機械にしても、それは種々雑多であるので訓練中の訓練生に過度の熱気、湿気、じんあい、騒音、震動等を与えることのないようにできるだけその配置について配慮すること。

(ニ) 訓練における実習場といえども常に飛散物、落下物、爆発、火災等による危険及び上部走行物よりの危険にさらされているので、訓練中の訓練生がこれらの危険から守られるよう配意すること。

(ホ) 訓練効果の向上はもとより、無理無駄をなくする上からもできるだけ実習工程の順に適した配置にすること。

(ヘ) 加工中の材料が通路その他壁面にのび実習作業が阻害されないよう配置すること。

(ト) 使用ひん度の低い機械はできるだけ主作業の邪魔にならない場所に配置すること。

(チ) 研削盤(グラインダ)、溶接機等危険度の高い機械はできるだけ周囲の空間を多くする場所を選ぶこと。

ニ 作業台とその配置

次の事項のほか前項ハ機械の配置における、(二)、(ホ)、(ヘ)について機械の配置と同様留意すること。

(イ) 作業台の形式及び大きさはそれぞれの作業に適したものを選ぶこと。

(ロ) 作業台相互間の横及び前後の間隔は安全作業ができ、かつ、指導員が適宜説明、実演、その他指導等ができる広さを確保すること。

(ハ) 作業台の向きも機械の場合と同様に、採光あるいは人工照明の利用のうえで最もよく、かつ、材料の供給搬出に好都合であり、また、指導監督に便利であるようにすること。ただし、作業者の反対側正面に危険を及ぼす懸念のある作業をしなければならない作業台は、壁あるいは窓側に向け向い合つた作業はさせないようにすること。

この場合窓には金網を張らなければならないこと。

ホ 採光、照明

(イ) 採光は原則として北側または南側採光とすること。

(ロ) 採光は側窓及び天窓から行なうこと。

(ハ) 窓面の有効採光面積は側窓の場合は壁面積の三五%以上、天窓の場合は床面積の二〇~二五%または屋根面積の二〇~三〇%とすること。

(ニ) 採光と照明は明暗の対照が著るしくならないように、また、まぶしさを起こさせないようにし、窓の大きさ、光線の方向、実演場の型及び大きさ、窓の位置並びに床及び壁の光線反射度等を考慮すること。

(ホ) 側窓台の高さは床面から〇・八五~一・二メートルくらいが適当であること。

(ヘ) 天窓の場合は北側採光と南側採光では種々の長所短所があるので、その土地の気候、実習場の性格等を考慮のうえ選ぶものであること。

(ト) 照明は全般照明と局部照明(作業点照明)とに分けられるが、全般照明はできるだけけい光燈または水銀燈を用いる天井照明とし、局部照明は白熱電球またはけい光燈のベンチライトあるいは白熱電球のマシンライトによること。

(チ) 照明には長いコードを必要とすることのないように、コンセントの配置に留意すること。

(リ) 照度基準は「公共職業訓練における安全衛生管理要綱」を参照のこと。

ヘ 色彩

色彩は、採光、照明とともに設計の要素の一つとして見逃せない問題であり、また、建屋、機械設備、材料その他配管配線等の色彩の調和は適切な採光、照明とともに災害発生の防止に寄与するところが大きいものであるので十分考慮すること。

色の反射は白色では八四%くらいで最大の反射率を有しているので、最も明るくするには白色塗料を使用すればよいわけであるが、しかし明るさだけによつて物がよく見えるというわけではなく、つねに対照について考慮しなければならないこと。

たとえば、建屋の型、機械設備の配置、天井、壁等あらゆるものと光線との関係が適切な色彩を決定する要因であることに留意すること。

色彩の標示については「公共職業訓練における安全衛生管理要綱」を参照のこと。

ト 付属設備

(イ) 休憩の場所、便所等については、職業訓練所の拡充に伴つて増改築できるよう弾力的に配意しなければならないこと。

(ロ) 工具室は訓練には不可欠の工具類を保管しておくところであるから、工具類の所在、破損、紛失等がすぐわかるように棚を設けるなど適当な方法を講じること。

棚は工具の記号をつけて出し入れが便利になるように工夫し、高さ一・五メートル未満の棚には記号札を上向きに、高さ一・五メートル以上の棚には記号札を下向きに付け、高さ二メートル以上のものはこれを避け、最上段の部分は予備として残しておくと便利である。

また、スパナ、ハンマ等を重ね積みしている例をよくみかけるが、工具管理の乱れるもとであるから必ず全部の工具に対して必要な棚を備けること。

工具室内の主要通路は約一メートル、棚と棚の間の通路は約〇・八メートルが適当であること。

なお、工具の受払い窓は受払いの際混雑しないように、その大きさ、様式、位置等について十分考慮して設けること。

(ハ) 更衣室は通風、採光が良く衛生的で訓練生の出入りに便利で管理しやすいところがよいこと。なお、経済性からいつて工具室の上を利用することが好ましいが、この場合階段の幅は一・五メートル以上とし、踏み板には滑り止めを付けること。

更衣室内の主要通路は一メートル以上とし、更衣箱は必ず施錠できるものであること。

(ニ) 倉庫は耐火性の建物とするのが原則であること。その設計については物品の受払い、保管等はもちろん、収容すべき材料、部品あるいは製品の種類、形状、容積、性質、数量その他各種の条件を考慮してなされなければならないものであること。職業訓練所の場合は各実習場がほとんど接近しているので、各実習場ごとに設けるよりも集中化したほうが経済的に有利であること。

倉庫内の主要通路は品物の持ち運びに影響のない程度の幅でよいが、普通一~一・五メートルとされており、棚も品物によつて最も適した種類を選ぶことが便利であること。

なお、次の事項について留意すること。

a 入庫、出庫、保管等に便利な構造のものであること。すなわち適当な広さを持つとともに天井は保管する品物の容積に応じた適当な高さを有し、床はできるだけコンクリート打ちか板張りとし、採光、通風等にも注意し、品物の変質、換耗、紛失、盗難、湿気、火災等の防止について役立つよう設けること。

b ばい煙、有害ガス、じんあい等の進入を防止できるものであること。

c 危険物貯蔵倉庫は消防法に規定する要件を備える等建築基準に従つた構造とし、独立した建物にすること。

以上のほか職業訓練所の空気調整、防じん、給排水、防火、災害防止、電気等に関する諸設備については「公共職業訓練における安全衛生管理要綱」を参照のこと。

(七) 建物機械設備等の図面の管理について

図面はその性質上必要な時期が限定されるため、用済みになると粗末に扱い、管理をおろそかにしがちである。しかし、図面は実物の各部分が一目で理解されまた、見て歩いても判断しかねるかくれた部分を容易に理解させるという非常に重要な役割りを持つているものであるから、これが保管については責任ある管理をしなければならないものであること。

なお、備えなければならない図面の種類は次のとおりであること。(図面の大きさはいずれもB列3判とし、尺度を明示すること。)

(イ) 職業訓練所の全体配置図

(ロ) 職業訓練所内の上下水道、ガス配管図

(ハ) 本館建屋図(電気配線を含む。)

(ニ) 各実習場の建屋図(電気配線を含む。)

(ホ) 各実習場の機械設備配置図

(ヘ) 主要機械設備の基礎図

二 機械設備について

機械の優秀性の評価については、一口で表わし得ない技術的なむずかしい問題を含んでいる。

およそ機械と名のつくもので一工程で完成されるものはない。多くの部品が部分的に組立てられ、さらに全体の組立て工程を経て完成されるものである。従つて、ビス一本でも機械全体につながるものであるから必要な部品のどれが欠けても機械としては成立たないものであり、そしてそれはすべてバランスのとられたそれぞれ堅実な部品によつて構成されていなければならないものである。しかしてこのバランスのとれた優秀な機械類は三年や五年の経験で完成されるものでなく相当長い考案工夫の歴史をもつだけの価値あるものである。従つて同種機械の場合、購入時には同等と見えても優秀品とそうでないものとでは耐久性において格段の差があらわれてくることは、多くの例によつて明らかである。

従つて、職業訓練所の機械設備の設置にあたつては、単に事務的に選定することを厳に慎しむとともに、次の事項に留意し技術的に十分検討のうえ決定しなければならない。

(一) 優秀品の選定について

企業における機械設備は減価償却が可能であり、二~三年で取替えることもできる。しかし職業訓練所に設置される機械設備類については、相当長期にわたつて使用に耐えなければならないと同時に、度々の故障による訓練の中断をできるだけ避け得るものでなければならないものであり、企業等で下級品を設備しているからそれで十分であると考えこれにならうことはきわめて危険である。

従つて、新しく考案されたものは例外であるが、一般的に多くの技術者が優秀であると判断したものを選ぶべきであり、特に五年以上の耐用年数を必要とするものについては当該製品について五年以上の製造実績を有するものの中から優秀品を選ばなければならない。

(二) 一職業訓練所に多くの台数を設備する施設の選定について標準的な六尺旋盤に例をとつた場合、最高二五〇万円から最低四〇万円程度のものであるが、ほぼ中間的な中級品で、しかも優良銘柄の中から実用型を選定することが望ましい。これは訓練修了後直ちに職場において役立たしめなければならない訓練生の実技訓練を主とした訓練にとつては、極めて重大な要素となるからである。

(三) 中古品について

設備の経済効果は訓練効果とともに重大な条件の一つであるから原則として中古品は避けなければならない。

自動車整備の教材用として使用する自動車のような場合は別としても、普通の機械の場合は過去において中古品により失散した事例はあまりにも多く、故障多発による修理費の支出等の経済的損失が大きい。また訓練効果のうえにも響くことはもちろん安全性からいつても好ましくないものである。

(四) 機械の剛性について

剛性は耐久性の第一的要素であり、従つて経済効果を左右することにもなるが、訓練に使用する性質上特に剛性について留意しなければならない。

最近、メーカーが表示している製品の容量あるいは能力は標準的に表示しているものとされているが、しかしそれは最大のものと解釈しなければならない。たとえば五馬力の電動機を取付けて仕事をする機械の能力及び剛性は三馬力程度のものであり、実際に五馬力の仕事をしようとする場合には七・五馬力の電動機を取付けて仕事のできる能力及び剛性を持つた機械とすることが正しい選び方である。

すなわち、動力シヤー、ブレーキプレス等の強力作業に使用されるものについては、刃の強さ、シヤフト径、フレームの肉厚、材質あるいは全体重量、旋盤についてはスピンドルの径、ベツトの幅、全体重量等がそれぞれ剛性について余裕を持ち、しかもこれらの関係がよくバランスのとれたものであるかどうか、各機械によつて十分検討を加えなければならない。

なお、特殊なものは別として、普通の機械は、それぞれその基礎を必要としないもの、すなわちアンカーボルトを必要としないだけの安定性と重量のあるものを選び、必要によつては自由に移動して実習場を弾力的に使用することができるようなものを選定しなければならない。

(五) 機種の統一について

少数の指導員の指導能力を最大限に発揮させるには、機械は極力一種類に統一することが望ましい。また、毎年訓練生の技能測定あるいは技能検定を実施しているが、機種によつてハンデイキヤツプをつけることが困難であるため、機種を統一することが技能度の判定に際し公正を期するうえにも必要なことである。

訓練としては、できるだけ多機種について経験を持たせることの必要性も考えられるであろうが、しかしそれは訓練の主目的が短期間に一定限度の技能を完全習得させることにある限り実際的に不可能であり、またかりに可能であつたとしても使い易いことを理由に簡易なものを多く扱わせることはあまり意味を持たない。特に旋盤等のように操作原理の同様な機械は、一種類について十分操作し得るように指導するならば、他のメーカーのものでも僅かな時間で同じように操作し得るものであり、一種類だけによつて訓練しても何らハンデイキヤツプが認められないことが度々の事例によつて立証されている。従つて、実用的なもの一種類によつて直接訓練することが最も有利である。ただし、しいて二種類を望むならば、テストマシンを一―二台加えた設備とすることがよいと考えられる。

(六) 電力の経済性について

施設内における電力の消費は運営上かなり重要な条件になつている。従つて多量の電力を必要とする溶接機等については、できるだけ電力消費の少ないコンデンサタイプを採用する等により、経費がかさまぬよう配慮すべきである。

(七) 安全衛生について

職業訓練所の安全衛生設備は、企業の範となるべきものであり、特に多くの若年者を預かる施設として安全衛生施設を優先することは当然のことと考えられる。

従つて、装置及び機械の設置に当つては安全衛生面に特に留意して施設し、また、安全装置の必要なものは必ず装置付きの機械を購入するように努める等他の施設に最優先してなさなければならない。

なお、安全衛生については「公共職業訓練における安全衛生管理要綱」を参照されたい。