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通達:労働安全衛生規則第592条の8等で定める有害性等の掲示内容について

 

労働安全衛生規則第592条の8等で定める有害性等の掲示内容について

令和5年3月29日基発0329第32号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

 

労働安全衛生規則等の一部を改正する省令(令和4年厚生労働省令第82号)により、有害物の有害性等に関する掲示内容の見直しを行ったところである。有害物ごとに掲示すべき内容については、「労働安全衛生規則等の一部を改正する省令の施行等について」(令和4年4月15日付け基発0415第1号)の第3の1(4)イ(ア)において別途示すこととしていたところであるが、今般、当該内容については下記のとおりとするので、その施行に遺漏なきを期されたい。

 

1 掲示の記載内容について

(1) 疾病の種類について

労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第592条の8、有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号。以下「有機則」という。)第24条第1項、鉛中毒予防規則(昭和47年労働省令第37号)第51条の2、四アルキル中毒予防規則(昭和47年労働省令第38号)第21条の2、特定化学物質障害予防規則(昭和47年労働省令第39号。以下「特化則」という。)第38条の3、第38条の17第1項第2号、第38条の18第1項第2号及び第38条の19第1項第18号、粉じん障害防止規則(昭和54年労働省令第18号。以下「粉じん則」という。)第23条の2並びに石綿障害予防規則(平成17厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)第34条(以下「安衛則第592条の8等」という。)に基づき掲示の対象となる物質(以下「掲示対象物質」という。)により「生ずるおそれのある疾病の種類」の記載方法については、次に掲げる方法のうち、事業場において取り扱う物質に応じてふさわしい方法を選択すること。なお、アからウまでに掲げる方法による記載が可能な場合は、当該方法で記載することが望ましいこと。

ア 労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)別表第一の二(以下「労基則別表」という。)に基づく方法

労基則別表に、事業場において取り扱う物質を原因とする疾病が記載されている場合、労基則別表に記載された疾病を記載する方法例:事業場においてベンジジンを製造し、又は取り扱う場合は、労基則別表中第7号1の「ベンジジンにさらされる業務による尿路系腫瘍」から「尿路系腫瘍」、事業場においてベリリウムを製造し、又は取り扱う場合は、労基則別表中第7号6の「ベリリウムにさらされる業務による肺がん」から「肺がん」と記載

イ じん肺法施行規則(昭和35年労働省令第6号)第1条に基づく方法

粉じん則第23条の2の規定に基づく掲示については、「じん肺」及びじん肺法施行規則第1条各号に掲げる合併症を記載する方法

ウ 特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律(令和3年法律第74号)第2条第2項に基づく方法

石綿則第34条の規定に基づく掲示については、特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律第2条第2項各号に掲げる石綿関連疾病を記載する方法

エ 労働基準法施行規則別表第1の2第4号の規定に基づく厚生労働大臣が指定する単体たる化学物質及び化合物(合金を含む。)並びに厚生労働大臣が定める疾病(平成25年厚生労働省告示第316号。以下「疾病告示」という。)に基づく方法

疾病告示の表中欄に掲げる化学物質に応じ、それぞれ同表の下欄に定める症状又は障害のうち、同欄に定める臓器の障害を、疾病の種類として記載する方法

例:事業場においてアンモニアを製造し、又は取り扱う場合は、「皮膚障害、前眼部障害又は気道・肺障害」と記載

オ 日本産業規格Z7252(GHSに基づく化学品の分類方法)に定める方法により国が行う化学物質の危険性及び有害性の分類(以下「化学品分類」という。)の結果に基づく方法

化学品分類のうち、「特定標的臓器毒性(単回ばく露)」及び「特定標的臓器毒性(反復ばく露)」における標的臓器における障害を疾病の種類として記載する方法

例:事業場においてオルト-トルイジンを製造し、又は取り扱う場合は、オルト-トルイジンの「特定標的臓器毒性(単回ばく露)」の分類結果は「区分1(中枢神経系、血液系、膀胱)、区分3(麻酔作用)」、「特定標的臓器毒性(反復ばく露)」の分類結果は「区分1(血液系、膀胱)」であることから、「中枢神経系障害、血液系障害、泌尿器系障害」と記載

カ 特殊健康診断の対象となる物質名等に基づく方法

アからオまでの方法で疾病の種類を特定できない場合であって、事業場において、特化則第39条第1項等の特別規則で定める特殊健康診断の対象物質又は、特化則第2条第1項第6号の第三類物質等の特別規則で定められる物質であって特殊健康診断が義務付けられていない物質を製造し、又は取り扱うときは、当該物質による中毒(症)を疾病の種類として記載する方法

例:事業場において硫化ジエチルを製造し、又は取り扱う場合は、「硫化ジエチル中毒(症)」と記載

キ アからカまでの方法のうち、掲示対象物質について該当するものを組み合わせた方法

(2) 疾病の症状について

掲示対象物質により生ずるおそれのある疾病に係る「その症状」の記載方法については、次に掲げる方法のうち、事業場において取り扱う物質に応じてふさわしい方法を選択すること。

ア 疾病告示に基づく方法

疾病告示の表の中欄に掲げる化学物質に応じ、それぞれ同表の下欄に定める症状を記載する方法

例:事業場においてセレン化水素を製造し、又は取り扱う場合は、「頭痛、めまい、嘔吐等」と記載

イ 特殊健康診断の項目の自他覚症状に基づく方法

特化則別表第3及び第4等の特別規則で定める特殊健康診断における自他覚症状を記載する方法

例:事業場においてベンジジン及びその塩を製造し、又は取り扱う場合は、当該物質に係る特殊健康診断の項目における自他覚症状「血尿、頻尿、排尿痛等」と記載

ウ 有機溶剤中毒予防規則の規定により掲示すべき事項の内容及び掲示方法を定める等の件(昭和47年労働省告示第123号。令和5年3月31日廃止。以下「旧告示」という。)に基づく方法

旧告示第1号(1)から(4)までに掲げる主な症状(頭痛、倦怠感、めまい及び貧血)を記載する方法

エ じん肺法施行規則様式第3号の自覚症状に基づく方法粉じん則第23条の2の規定に基づく掲示については、じん肺法施行規則様式第3号の自覚症状の欄に記載されている症状(呼吸困難、せき、たん、心悸亢進等)を記載する方法

オ アからエまでの方法のうち、掲示対象物質について該当するものを組み合わせた方法

(3) 取扱い上の注意事項について

安衛則第592条の8等(有機則第24条第1項を除く。)に基づく「取扱い上の注意事項」については、労働安全衛生法(昭和47年法律第57号。以下「法」という。)第57条の2第1項に基づく通知事項である「貯蔵又は取扱い上の注意」のうち取扱い上の注意に該当する内容を記載する方法、又は、日本産業規格Z7253(GHSに基づく化学品の危険有害性情報の伝達方法-ラベル、作業場内の表示及び安全データシート(SDS))に基づく安全データシート(以下「SDS」という。)における「項目7取扱い及び保管上の注意」の内容を記載する方法があること。

有機則第24条第1項の規定に基づく掲示については、旧告示第2号に掲げる以下の内容について記載し、必要に応じて、法第57条の2第1項に基づく通知事項である「貯蔵又は取扱い上の注意」のうち取扱い上の注意に該当する内容又はSDSにおける「項目7取扱い及び保管上の注意」の内容を記載すること。

ア 有機溶剤等を入れた容器で使用中でないものには、必ずふたをすること。

イ 当日の作業に直接必要のある量以外の有機溶剤等を作業場内へ持ち込まないこと。

ウ できるだけ風上で作業を行い、有機溶剤の蒸気の吸入をさけること。

エ できるだけ有機溶剤等を皮膚にふれないようにすること。

(4) 中毒が発生したときの応急処置について

有機則第24条第1項に基づき掲示する必要のある「中毒が発生したときの応急処置」については、旧告示第3号に掲げる以下の内容を記載すること。

ア中毒の症状がある者を直ちに通風のよい場所に移し、速やかに、衛生管理者その他の衛生管理を担当する者に連絡すること。

イ中毒の症状がある者を横向きに寝かせ、できるだけ気道を確保した状態で身体の保温に努めること。

ウ中毒の症状がある者が意識を失っている場合は、消防機関への通報を行うこと。

エ 中毒の症状がある者の呼吸が止まった場合や正常でない場合は、速やかに仰向きにして心肺そ生を行うこと。

(5) 使用すべき保護具の掲示について

安衛則第592条の8等に基づく「使用すべき保護具」等については、法第57条の2第1項に基づく通知事項である「貯蔵又は取扱い上の注意」のうち取扱い上の注意に該当する内容又はSDSにおける「項目8ばく露防止及び保護措置」の内容を参考にしつつ、当該作業場におけるリスクアセスメントの結果に基づく措置として使用すべき具体的な保護具等の種類を記載すること。

なお、使用すべき旨が規定されている保護具が呼吸用保護具の場合は、防毒用又は防じん用の別を記載し、この別が防毒用のときは吸収缶の種類、防じん用のときは性能区分も記載することが望ましいこと。使用すべき旨が規定されている保護具が防護手袋の場合は、その種類についても記載することが望ましいこと。

2 掲示方法について

安衛則第592条の8等の掲示方法は、作業場において作業に従事する全ての者が作業中に容易に視認できる方法によることをいい、掲示板による掲示のほか、デジタルサイネージ等の電子情報処理組織を使用する等の方法があること。

3 その他

1(1)及び(2)の「おそれのある疾病の種類」及び「疾病の症状」の記載例については、独立行政法人労働者健康安全機構労働安全衛生総合研究所化学物質情報管理研究センターのホームページに物質別に掲載する予定であるので、参考にされたい。