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通達:山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドラインに関する問答について

 

山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドラインに関する問答について

平成29年3月6日事務連絡

(都道府県労働局労働基準部安全主務課長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課建設安全対策室長通知)

改正 平成30年3月27日

 

山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドライン(平成28年12月26日付け基発1226第1号別添)について、別添のとおり取りまとめましたので業務の参考にしてください。

 

(別添)

厚生労働省安全衛生部

安全課建設安全対策室長

山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドラインに関する問答について

1 総論関係

2 肌落ち防止計画関係

3 切羽の監視・観察関係

4 切羽の立入禁止措置関係

5 具体的肌落ち防止対策

6 その他

 

1 総論関係

問1―1 「事業者」は誰を指すのか。

 施工業者(建設業者)である。ガイドラインに基づく措置を実施するのは基本的に元請と考えているが、その実施事項について専門工事業者が行うことが効果的と考えられる場合は、専門工事業者が行うこととして差し支えない。

問1―2 発注者にはどのような責務があるのか。

 労働安全衛生法第3条第3項では、注文者等仕事を他人に請け負わせる者は、施工方法、工期等について、安全で衛生的な作業の遂行をそこなうおそれのある条件を附さないように配慮しなければならないとされており、この注文者には発注者が含まれている。

ガイドラインにおいては、発注者の責務として明確に定めている事項はないが、肌落ち防止計画の変更の際には、事業者は発注者及び設計者と十分検討を行い、肌落ち防止計画を適切なものに変更することとしているので、労働災害防止の観点から真摯に検討を行うことが求められる。

発注者は、肌落ち災害防止対策を事業者に任せるのではなく、事業者との協議等の場を通じ、地山の状態に応じた適切な肌落ち防止対策が講じられるよう、肌落ちのリスクがあることを承知の上で切羽に入る作業員の安全確保に取り組んでいただきたいと考えている。

問1―3 事業者の責務として、ガイドラインに基づき切羽における肌落ち災害防止対策を講ずることが規定されているが、肌落ち災害が発生した場合の法的責任はどうなるのか。

 ガイドラインは法的な義務を規定したものではない。このため、ガイドラインに記載した措置を実施しなかったことを理由として労働安全衛生法違反として刑事責任を問われることはなく、罰則を科されることもない。しかしながら、労働安全衛生法に基づく規定は最低限の基準であり、ガイドラインに基づくより安全性の高い措置を採ることにより、肌落ち災害防止を図っていただきたい。

なお、労働安全衛生規則に違反する事項があった場合には、法的責任が問われることがある。

問1―4 ガイドラインは発注者に対してどのように周知されているのか。

 ガイドライン発出の際、国土交通省、独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構、各高速道路会社を含む主要な発注者団体及び発注者に対し、特段の配慮をいただくよう文書により要請している。詳細は以下のサイトの「山岳トンネル工事の切羽における肌落ち災害防止対策に係るガイドラインについて(平成28年12月26日付け基発1226第1号)」の別紙2及び3を参照されたい。

http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000149309.html

問1―5 ガイドラインには「・・・すること」「・・・させること」「・・・ものとする」「・・・望ましい」「・・・努めるものとする」等の表現があるが、どのように違うのか。

答 ガイドラインには、法的義務があるわけではないが肌落ち災害を防止するために実施することが望ましい事項を記載したものである。この中でも「・・・すること」等と断定している事項は取り組むことが強く求められるものである。一方、「・・・望ましい」「・・・努めるものとする」としている事項はより水準が低い事項であり、求められる程度が弱い。

問1―6 肌落ち防止対策が設計に入れられるように場合には、対策の選定方法・基準が必要となるが、誰が作成するのか。

 法的義務が課されていない他の安全対策と同じく、各発注者が個々に作成する又は既存の基準を引用することになる。

問1―7 肌落ち防止計画に盛り込んだ対策の費用負担はどうなるのか。

 問1―4のとおり、厚生労働省では、主要な発注者にガイドラインを送付し、特に特段の配慮をいただくよう要請しており、ガイドラインに基づく措置についてはおおむね理解をいただいているものと受け止めている。

問1―8 肌落ちの定義に切羽崩壊は含まれるのか。

 第3の2で肌落ちについて「トンネルを掘削した面から岩石等が落下することをいう」としており、規模については規定していないので、ガイドラインでは切羽崩壊は肌落ちに含まれる。

なお、掘削中のトンネル全体が崩れるような大規模な落盤の防止対策についてもガイドラインに記載した対策はある程度有効性を発揮すると考えられる。

本来であれば、切羽崩壊が想定されるような地山に対しては、設計段階から支保構造をより強固なものとし、補助工法の採用も検討する等、対策を講ずることが望ましい。なお、施工中の地山状況が事前調査とは異なり切羽崩壊が想定される場合には、施工者は、発注者及び設計者と協議の上、支保構造の増強、補助工法の採用等の対策を講ずることが望ましい。

問1―9 「肌落ち災害防止」と「地山安定」との境界を明確にすべきではないか。

 地山が不安定であることの結果として生じる肌落ちがあるため、地山安定対策と肌落ち災害防止対策は明確に区別することは困難と考えられる。

問1―10 第7の「肌落ち防止対策の実施に係る留意事項」について、「留意」の意味するところは何か。

 肌落ち防止対策の選定、実施等に当たって事業者に留意いただきたい事項であり、第6の「肌落ち防止対策」の補足的意味合いを持つものである。

問1―11 ガイドラインはいつから効力を発するのか。

 発出日である平成28年12月26日から効力を発する。なお、着工済みのトンネル工事であっても、ガイドラインは適用される。

問1―12 ガイドライン改正の経緯は。

 改正前のガイドラインにおいては、切羽監視責任者に専任性を求めていたものの、全断面積の小さなトンネルまで専任の切羽監視責任者を置くことはかえって車両系建設機械との接触災害を誘発するおそれがあり、専任性と全断面積の関係について整理が必要であったこと、また、ガイドライン発出後の肌落ち災害等の発生状況を踏まえ、所要の改正を行った。

 

2 具体的肌落ち防止計画関係

問2―1 肌落ち防止計画のイメージがわからない。

 肌落ち防止計画は施工計画と同様のレベルにあるものであり、あるトンネル工事における肌落ち防止対策全般について策定するものである。肌落ち防止計画を受けて、個々の地山に対して対策を検討し、実施することになる。

問2―2 肌落ち防止計画の作成のなかで、地山の事前調査が規定されているが、発注者や設計者が事前に実施したボーリング調査等とは別に、事業者が施工を開始する前に再調査を実施しなければならないということか。また、この場合の事業者は元請か、専門工事業者か。

 肌落ち防止計画の策定にあたって発注者や設計者が事前に行ったボーリング調査結果等を活用することは差し支えない。また、それらの調査結果により適切な肌落ち防止計画が作成できる場合は、追加のボーリング調査等を行う必要はない。

この場合の事業者は通常は元請であると考えている。

問2―3 発注者や設計者が、工事費の増加や工事の遅延等を理由に事業者の作成した計画案を認めない場合は、事業者は自らの負担で計画を実行しなければならないのか。

 工事費の増加や工事の遅延を招いたとしても、労働者の安全を確保するためには肌落ち災害防止対策を充実させるべき場合があることから、今般ガイドラインを策定したものである。発注者や設計者はガイドラインに規定する対策を講じる直接の主体ではないが、肌落ちのリスクがあることを承知の上で切羽に入る作業員の安全を確保することはトンネルという社会的なインフラストラクチャーを整備する観点からも重要であり、関係者の合意が得られるようにはからっていただきたい。

問2―4 肌落ち防止計画は、事業者が発注者と検討し、適切なものに変更するとあるが、協議により発注者が変更するものであり事業者が変更するものではないか。

 肌落ち防止計画の作成者は事業者としている。

問2―5 肌落ち防止計画を作成するのは、元請と掘削担当の一次下請けのいずれが適当か。

 一般論としては、現場の統括管理を行う立場である元請が作成することが適当だが、計画策定の過程では掘削担当一次下請の意見を聞くことは実務的に必要となると考えている。

問2―6 肌落ち防止計画書は作業手順書に記載するのか。

 肌落ち防止計画は地山の状況に応じて適切な対応をとるために対策、監視、退避等についてあらかじめ策定しておくものであり、施工計画に相当するレベルのものである。

なお、労働安全衛生規則第380条に定める施工計画と一体のものとして作成することは差し支えない。

問2―7 肌落ち防止計画では切羽の観察と結果の記録について記載することとされているが、昼夜の交代時の引き継ぎと全切羽作業員への周知が必要ではないか。

 ガイドラインでは切羽観察結果の交代時の引き継ぎ及び作業員への周知について明確に記載していないが、当然に実施していただけるものと理解している。

問2―8 肌落ち防止計画によって十分な肌落ち対策ができないおそれがあると認められる場合は、計画を適切なものに変更することとあるが、それはどのような場合か。

 地山の状況と、それに応じて想定している具体的な肌落ち防止対策によってでは、肌落ちが防止できないと考えられる状況をさす。例えば、想定以上に地山が変位、変状する場合や、鏡の一部が局所的に弱く肌落ち防止対策の充実が必要である場合などが考えられる。

あらかじめ立てた計画に固執することなく、状況に応じて柔軟な対応をいただきたい。

問2―9 発注者や設計者との協議の結果、肌落ち災害防止計画の見直しが不要とされた後に肌落ちが発生した場合、事業者の責任はどのようになるのか。

 労働安全衛生規則等の法定事項を遵守していれば、事業者に労働安全衛生法上の法的責任はない。

問2―10 肌落ち防止計画は、労働安全衛生法第88条に基づく計画届に提出する必要があるのか。必要がある場合、すでに届出済みの工事については、変更計画届として再提出する必要があるのか。

 ガイドラインに基づく肌落ち防止計画は計画届とは別の枠組みであり、法に基づいて肌落ち防止計画を計画届に添付することは義務付けられていない。一方で、肌落ち防止対策を説明するための資料としては適切と考えられるので、計画届の添付書類として肌落ち防止計画を提出することにより説明がしやすくなるのであれば活用いただくことは差し支えない。

なお、計画届は制度上変更手続きがないので、届出済みの工事については、改めて手続きを行う必要はないが、着工済みの工事であってもガイドラインを踏まえて適宜肌落ち防止対策を実施していただくことが望ましい。

 

3 切羽の監視・観察関係

問3―1 切羽監視責任者は「切羽の状態を常時監視すること」となっているが、夜方も含めて常時監視をするのか。

 切羽における作業があるのであれば、昼方、夜方に関係なく、常時監視することをガイドラインは求めており、最低1人の監視責任者を配置していただきたいものである。

問3―2 切羽監視責任者は専任とすべきか。または作業主任者が兼任することができるのか。

 切羽監視責任者の役割を踏まえると、切羽監視責任者は専任であるべきと考えている。

一方で、全断面積の小さなトンネルまで専任の切羽監視責任者を置くことはかえって車両系建設機械との接触災害を誘発するおそれがあることから、平成30年1月に専任性と全断面積の関係を明確にするための改正を行ったところである。

改正後のガイドラインにおいては、切羽監視責任者を原則として専任とする考え方は従来と変わらないものの、掘削全断面積が概ね50m2未満であって、車両系建設機械との接触防止等の安全確保措置の実施が困難な場合には、作業主任者等が兼任して差し支えないとした。

なお、50m2としたのは、二車線道路であればほとんどの道路が全断面積50m2以上あると考えられるためである。

問3―3 切羽監視責任者には法令上の位置付けがないが、切羽監視責任者がずい道等掘削等作業主任者とその指揮のもとに作業を行う労働者に退避等の指示ができる権限を明確にする必要があるのではないか。

 退避等の指示を行う義務は法令上事業者にあるとされているが、切羽を監視する者が退避の指示を出すことがもっとも効率的であり合理的と考えられるので、ガイドラインにおいては退避指示を切羽監視責任者の職務の一つとした。

法的な位置付け明確化については、今後の課題としたい。

問3―4 切羽監視責任者の兼任は認められるか。

 切羽を常時監視する職務であるので、基本的に他の業務を兼任することは望ましくないと考えている。

問3―5 切羽監視責任者の要件は。

 切羽監視責任者に資格要件は求められないが、監視を行うに足る知見があることが当然の前提である。

問3―6 吹付け作業時は粉じん濃度が高くなるが、このような状態であっても切羽監視責任者による監視を行うのか。

 吹付けを行っている切羽そのものを至近から監視することまでは求めていないので、粉じんのばく露と肌落ちのおそれ程度を勘案し、適切な監視位置を設定されたい。

問3―7 ズリ出し時に、切羽監視責任者が切羽の状況を監視することは重機との接触災害を発生させるおそれがあるがどのようにすべきか。

 切羽監視責任者が、重機と接触する災害が生じないようにすることをまず第一に考えていただきたい。接触災害防止対策をとった結果として一時的に切羽の監視ができなくなることは、やむを得ないものと考えている。

なお、ズリ出し作業を行う前に、安全にズリ出しが行える程度に切羽が安定していることを確認することは必要である。

また、発破の点火やズリ出し等、労働者が切羽に接近しない作業工程においては切羽監視責任者による監視を不要とすることについて、平成30年のガイドライン改正時に明記した。

監視が不要である間、切羽監視責任者が切羽の監視以外の職務に就くことは問題はない。

問3―8 肌落ち災害が発生した場合に切羽監視責任者が責任を問われることはあるか。

 切羽監視責任者には法令上の位置づけはないので、労働安全衛生法上の法的責任を問われることはない。また、切羽監視責任者が安衛則381条の観察、同382条の点検を行うことが想定されるが、この義務は事業者にかけられているものであるので、観察、点検の実務担当者が法的責任を問われることは考えにくい。

問3―9 第5の2の(2)のイで切羽の変状等の切羽の監視項目が示されているが、監視結果を記録として保存する必要があるか。

 監視結果は退避の判断に繋がるので、変状が生じた場合はその時間と内容を記録し、変状が進展した場合に比較できるようにしておくことが、ガイドラインの趣旨からは望ましいと考えられる。また、変状が生じた場合には、現行の肌落ち防止対策が不十分である場合もあるため、計画の見直しについても検討することが望ましい。

問3―10 ガイドラインに基づく切羽の監視と労働安全衛生規則第382条の点検の関係は。

 則第382条の点検は、毎日及び中震以上の地震後、並びに、発破を行った後に行うものであり、作業開始前、地震後及び発破直後の安全の確保を念頭に置いている。ガイドラインの監視は常時行うものであり、時間とともに地山が緩んで肌落ちに至るような場合も把握できるようにしているものである。

ガイドラインの監視は、則第382条の点検を含んでいるが、切羽での作業中、常態として行うものとなっている。

問3―11 切羽の観察について、観察対象項目の(ア)圧縮強度及び風化品質、(イ)割れ間隔及び割れ目状態、(ウ)走向・傾斜、(エ)湧水量、(オ)岩盤の劣化の状態のうち、肌落ち防止対策で鏡吹付けを施工した場合には(ア)(イ)(ウ)(オ)の観察ができないがどのように計画の適否を評価すればよいか。

 ガイドラインに基づく切羽の観察は、装薬時、吹付け時、支保工立て込み時、交代時に行うこととしている。鏡吹付け実施後は観察可能な観察対象項目の観察結果、鏡面の変化及びその他のデータにより切羽の評価を行い、計画の適否を判断していただきたい。

問3―12 切羽の観察結果に基づき切羽評価点を算出することとされているが、統一した評価方法や点数を今後明示する予定はあるか。

 評価方法や点数を厚生労働省から示す予定はない。

問3―13 切羽の観察結果を記録し、切羽評価点を算出し、地山等級を査定するとあるが、切羽毎に観察結果の記録と評価点の算出、地山等級の査定が必要か。

 第5の3の(1)のアの切羽の観察においては、装薬時、吹付け時、支保鋼建込み時、交代時に切羽の観察を行い、過去の切羽の観察結果の推移との比較を行うこととしている。また、同イの切羽の観察結果の記録においては、切羽の観察結果を記録し、切羽評価点を算定し、地山等級を査定することとしている。これは、毎回の切羽の観察について切羽評価点を算定し、地山等級を査定するまでのことを求めているのではないが、切羽評価点の算定と地山等級の査定は定期的に実施いただきたい。

あわせて、切羽の観察結果から継続的に切羽を評価し、地山の状況が大きく変わってきたと判断した場合には、遅滞なく地山等級の変更が可能となるよう措置をいただきたい。

なお、地山等級がかわらない場合であっても、地山の状態に変化があれば、肌落ち防止対策を変更することは必要となることがあるので、留意を願いたい。

問3―14 切羽観察結果の記録は、切羽監視責任者が行うのか。

 切羽観察を行い、結果を記録する者は特定していないので、十分な知見がある者が行えばよい。

問3―15 監視カメラにより切羽を監視又は観察をすることは認められるか。

 監視カメラは視野が狭く、短時間で方向を変えることもできないので、急な変化に対応できないと考えられ不適当である。併用することは差し支えないが、主体には現場で肉眼による監視又は観察を行うことが求められる。

問3―16 地山等級のⅠ~Ⅳは鉄道トンネル、B~Eは道路トンネルの区分を使用しているものと思われる。肌落ち防止対策の選定の表ではⅣとB、ⅢとCなどが同一に区分されているが、両者は厳密には異なるのではないか。

 鉄道トンネルと道路トンネルの地山等級の区分は全く同じというわけではないが、肌落ち防止対策を選定する上では大きな違いがないと考えられることからガイドラインでは同一の区分としたものである。

問3―17 切羽の監視、観察、点検について記録簿は示されるのか。

 示す予定はない。

 

4 切羽の立入禁止措置

問4―1 切羽の立入禁止措置は、鏡吹付け前のみを対象とするのか、すべての作業サイクルに適用するのか。特に、装薬、支保工建込み、ロックボルト打設時等には、切羽に立ち入らないための対策費用が必要となる。

 切羽の危険性に鑑み、鏡吹付け前はもちろん、鏡吹付け後も原則として立入禁止とすべきと考えている。切羽における作業は可能な限り機械化を進め、立ち入らなければならない機会を極力減らしていただきたい。

問4―2 浮石落し自体が危険な作業であり、安全対策が必要ではないか。

 ブレーカー等により作業することで、作業員が浮石落とし前の天端の直下に入らないような措置を採っていただきたいものである。

問4―3 切羽における作業はできる限り機械で行うとされているが、具体的にどういうことをすればよいのか。

 浮石落としをブレーカーで行う、装薬、支保工建て込みを機械で行う等である。

 

5 具体的肌落ち防止対策

問5―1 切羽への労働者の立入りを原則として禁止し、真に必要がある場合のみ立ち入らせるようにするとあるが、真に必要な場合とは具体的にどの様な状況を言うのか。

 切羽に立入る以外に実施方法がない状況をいう。この記述は、切羽に立入る以外に実施方法がないと安易に判断することは危険を放置することにつながるので、切羽に立入らずに済む方法を作業ごとに可能な限りご検討いただきたい趣旨である。

装薬については、機械による削孔、治具による切羽からある程度離れたところからの装薬等により、切羽になるべく近づくことなく作業を実施することが可能と思われる。現場では、1~2メートル程度離れたところから装薬作業を行っている場合があるように承知しており、この場合、鏡に接して作業するよりも安全の程度が高いことは間違いないが、肌落ちの規模によっては作業員が巻き込まれ、死亡する災害も発生しているので、より遠くから作業できる工法を開発することが期待される。

問5―2 肌落ち防止対策の選定の表の見方がわからない。

 地山の状況に対する工法の相性を記載したものである。例えば、地山等級Ⅳであれば、鏡吹付けの必要性は薄いので△、Ⅲでは有効性が一定程度認められるので○、Ⅱでは鏡吹付けの実施が望ましい地山が多いので◎としている。

それぞれの地山等級に対し、必要と考えられる肌落ち防止対策をまとめたものであり,これを実施する必要があるという趣旨でまとめたものではない。◎○は有効、△は有効性がある程度認められる、×は有効性が認めがたいと理解いただきたい。

問5―3 鏡吹付けの吹付け厚さの確認のため切羽への立ち入り時間が長くなることが想定されるが、かえって危険なことにならないか。

 吹付け厚さを確認するために切羽へ立ち入ることは、かえって危険な作業を増やすことになりかねないので、極力避けていただきたい。

吹付け厚さを算定する方法としては、例えば、トータルステーションを用いて吹付け前後の鏡面の座標の差分から吹付け厚さを算出する方法、吹付け面積と吹き付けたコンクリート量から吹付け厚さを算定する方法などが考えられる。

問5―4 ベンチカット工法の場合、鏡吹付けの対象とすべき部分はどこか。

 上半全面と側壁部を指す。なお、下半部についても肌落ち災害が発生するほどの高さがある場合には、地山の状況により鏡吹付けの対象とすべきである。

問5―5 切羽において核残しを行う場合、核は鏡吹付けの対象となるのか。

 核部分からの肌落ちにより肌落ち災害が発生するおそれがある場合は、鏡吹付けの対象とすべきである。

問5―6 鏡吹付けの対象としているアーチ側壁部とはどの部分を指すのか。

 掘削により地山が露出している鏡近傍の側壁部分を指す。

問5―7 発注時の積算に反映させる場合、吹付け厚さの根拠付けはどのようにするのか。

 ガイドラインでは地山等級Ⅲ又はCクラスで30mm、Ⅱ又はDクラス以下で50mmを最低限確保することとしているが、吹付け厚さについて一般的に記載することは難しいので、例示にとどめている。

問5―8 鏡吹付けの吹付け厚さについて「Cクラスでは30mm」、「Dクラス以下では50mm」を最低限確保することとされているが、これはあらゆる切羽について適用されるのか。

 鏡吹付けの要否、実施する場合の厚さを地山の状況に応じ規定することは困難であり、ガイドラインでは代表的な地山について例示しているものである。

問5―9 鏡吹付けのコンクリートについては、ガイドラインでは一般によく用いられる18N/mm2を想定しているのか。そうであれば、例えば36N/mm2のコンクリートを用いた場合は、吹付け厚さは半分でよいと考えてよいか。

 ガイドラインでは18N/mm2のコンクリートを想定している。よって、36N/m2のコンクリートを使用するのであれば、半分の厚さで同等の強度が得られるものと考えている。

問5―10 切羽の状況が部分的に悪い場合は、鏡吹付けの有無と厚さや鏡ボルトの配置を切羽の一部に限定しても良いか。

 肌落ち防止対策として適当なものであることが必要である。例えば、鏡の状態が平均的には安定しているが右肩部が緩んでいるような場合には、右肩部のみ鏡ボルトの打設を行うこともありうる。

問5―11 「鏡」は掘削の進行方向に対して垂直である面と定義されているが、この定義では鏡に含まれない天端やアーチ側壁部の鏡吹付けは必要ないのか。

 切羽のうち鏡以外の部分についても、第6の1の(1)のなお書きにおいて、鏡吹付けをアーチ側壁部にも行うこととしており、切羽全体をカバーすることができるよう記載している。

問5―12 鏡ボルトの打設間隔の数値が明記されているが、打設長に関する目安はないか。

 地山の状況や掘削面の大きさ・形状等により異なると思われるので、基準値は示していない。

問5―13 地山等級がC等級の場合の鏡ボルトを打設する間隔が1.8m程度とされているが、C等級で鏡ボルトを必ず打設する必要があるのか。

 ガイドラインに記載しているのは例示であり、最終的な判断は個々の地山の状況により異なりうるものと理解している。

問5―14 切羽変位計測の計測点はどのように決定するのか。

 計測点の決定方法を一般的に定めることは困難であるので、ガイドラインでは記載していない。

なお、切羽変位計測は、切羽全体を面でとらえることはできないので、切羽の変状を見逃すおそれがある。このため、補助的な肌落ち防止対策と位置づけ、他の対策との併用を前提としている。

問5―15 切羽変位計測の管理基準値はどのように設定するのか。

 切羽変位計測の管理基準値は地山の状況、計測点の位置によっても異なり、一律に示すことは困難であり、また、技術的に詳細に渡る事項をまとめることは困難であることから、記載していないものである。

問5―16 切羽における作業では、150ルクス以上が望まれるとされているが、照度は、どの位置にて測定するのか、断面の上部と下部では照度が異なってくる。作業場全体か、特に監視が必要と思われる場所なのか。

 切羽全体を150ルクス以上にすることが望ましいが、それが難しければ観察する箇所を150ルクス以上にしていただきたい。

問5―17 切羽における作業では、150ルクス以上が望まれるとされているが、照明の当て方や確保すべき後方距離等についての規定はないか。

 技術的に詳細に渡る事項をまとめることは困難であることから、記載していない。

問5―18 肌落ち防止対策の選定の表において、切羽崩壊の場合、設備的防護対策は不適ではないか。

 肌落ちには拳以下の岩塊が落下するようなものから1トン以上の岩塊が連続して落下するものまで幅が広いが、ガイドラインではこれらを書き分けず包括的に「肌落ち」と定義している。

ご指摘のとおり、設備的防護対策は切羽崩壊には不適切ではあるが、一定の範囲の「肌落ち」には相応の防護効果があることから、表において△として記載しているものである。

問5―19 ドリルジャンボのアームを利用したネットやマットは、切羽不良時の核残しをした場合、設置が困難ではないか。

 ガイドラインでは、肌落ち防止対策は状況に応じて適切に選択するものとしているので、特定の方法にこだわることなく対策を講じていただきたい。

問5―20 設備的防護対策はどの程度の岩塊を念頭に置いて設計・設置するべきか。

 具体的な肌落ち防止対策は地山の状況等に応じてここに検討することとなるので、ガイドラインにおいては指標となるものは設けていない。

問5―21 設備的防護対策であるネット、マット、マンケージガード等は、一定の効果は認められるものの、作業によっては、その設備が支障となったり、設備の設置及び取り外し時に逆に危険性が高くなる可能性も考えられるが、使用方法を具体的に例示等することはできないか。

 設備的防護対策に限らず、肌落ち防止対策は地山の状況に応じ適切に選定すべきものであり、設置することによりかえって危険が増加する場合は使用しない方がよい場合もある。

このような事例を具体的に提示することは予定していない。

 

6 その他

問6―1 第7の1の(1)で電動ファン付き呼吸用保護具の着用は「必要に応じ」とされているが、義務付けられているのではないか。

 電動ファン付き呼吸用保護具の使用が義務づけられているのは、粉じん則別表第3第1号の2、第2号の2又は第3号の2に掲げる作業であるが、本ガイドラインは、人力により掘削する場所における作業のように粉じん則による電動ファン付き呼吸用保護具の使用義務がない作業にも適用される。このため、「必要に応じ」としている。