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通達:鉄鋼業における自主的な安全管理活動の促進について

 

鉄鋼業における自主的な安全管理活動の促進について

平成28年2月25日基発0225第1号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

 

標記については、平成9年3月24日付け基発第190号(平成27年2月24日付け基発0224第1号により一部改正)「鉄鋼生産設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドラインの策定について」、平成18年8月1日付け基発第0801010号「製造業における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針について」等により推進してきたところであるが、本年に入ってから、別紙1のとおり、鉄鋼業において、設備の点検作業中の事故等、非定常作業を含む死亡災害が6件発生するなど、重大な災害が頻発しており、憂慮すべき状態となっている。

さらに、製造業においては、設置から20年以上経過した生産設備が約3割に達し、設備の老朽化が進展している。これを背景として、通路や昇降設備等の腐食・劣化を直接の原因とする災害が、別紙2のとおり、平成19年以降に全体で12件(死傷16人、死亡11人)発生し、そのうち鉄鋼業で5件(死傷9人、死亡4人)発生しており、経年設備の安全点検が喫緊の課題となっている。

このような状況を踏まえ、下記により、鉄鋼業の対象事業場に対して安全管理及び経年設備に係る自主点検の実施及びその結果の報告を求め、問題が認められる事業場に対しては、必要な対策を実施するよう指導することとするので、各労働局においては、その取組に万全を期されたい。

なお、別添1により一般社団法人日本鉄鋼連盟会長宛に協力要請を行い、別添2により関係事業者団体に対して注意喚起を行ったので了知されたい。

 

1 安全管理体制及び活動等に係る自主点検の実施

(1) 対象事業場

製鉄・製鋼・圧延業に属する労働者50名以上の事業場(関係請負人となっている事業者を除く。)

(2) 実施期限

平成28年3月31日

(3) 自主点検表

別紙3「安全管理体制及び活動等に係る自主点検表」のとおり。

2 経年設備に係る自主点検の実施

(1) 対象事業場及び対象設備

1(1)の事業場内に設置された設備・施設に付属する運転室、通路、昇降設備等のうち、設置から30年以上経過したもので、地上から2m以上の位置に設置されているもの。

なお、点検対象は、運転室、通路、昇降設備等そのものに加え、それら設備と支持部材の接合部を含むものとする。

(2) 実施期限

平成28年5月31日

(3) 自主点検表

別紙4「経年設備に係る自主点検表」のとおり。

3 自主点検表の送付

今後の安全対策の検討に資するため、別紙3については平成28年4月15日までに、別紙4については平成28年6月15日までに本省安全課に送付すること。

別紙1

鉄鋼業事業場内で発生した死亡災害(平成28年)

発生年月

管轄局

災害の概要

平成28年1月5日

愛媛局

裁断された鉄くずをトラックに積込む作業中、天井クレーンのリフティングマグネットの操作を誤り、クレーンの運転者がリフティングマグネットと運転室窓の間に挟まれたもの。

平成28年1月9日

大分局

高炉熱風炉の塗装作業を行うため、足場の設置作業を行っていた協力会社の労働者が足場直下の配管を歩いていた際に、約10m下の地面に墜落したもの。

平成28年1月13日

神奈川局

屋外の天井クレーンの点検作業を行っていたところ、点検歩道への通路が腐食により傾き、約20m下の地面に墜落したもの。

平成28年1月15日

愛知局

鋼片(重量250kg)をクレーンのリフティングマグネットを使ってつり上げ、移動していたところ、リフティングマグネットから鋼片が外れ、落下した際、クレーン運転者に激突したもの。

平成28年2月12日

大分局

製鋼工場建屋内にて設備のメンテナンスをするため配管を外そうとしたところ、設備から噴出した高温のスラグ(溶融鋼)に接触し、全身熱症を負ったもの。

平成28年2月17日

大分局

屋外の鉄鉱石の荷揚装置において清掃作業を行っていた協力会社の労働者が、約7m下に墜落したもの。

別紙2

生産設備の老朽化を直接の原因とする災害事例(平成19年~平成28年)

発生年月

災害が発生した事業場の業種

老朽化していた設備

災害の概要

死傷者数

括弧内は死亡者数で内数

H28.1

鉄鋼業

クレーン運転室の床と通路

屋外に設置されている天井クレーンの電気設備の保守を行っていた際、クレーン運転室に入ろうとしたところ、一体となっていた運転室の床と通路が傾き、約20m下の地面に墜落したもの。

1(1)

H27.11

鉄鋼業

点検通路

製鉄所のベルトコンベアのスカート側板取替工事のため準備していた側板(約25kg)を作業員2名で持って移動していたところ、点検通路を踏み抜き、約6m下に墜落したもの。

1(0)

H27.10

鉄鋼業

通路のデッキ

設備の軸受給脂作業を労働者4名で行っていたところ、通路のデッキが腐食により傾き、1.3m下方に転落したもの。

4(0)

H26.12

採石業

コンベア(スチール製メッシュ床)

被災者が高さ約5メートルの箇所において、コンベアの清掃作業を行っていたところ、作業していたスチール製メッシュ床が経年劣化により損傷し、幅40cm×長さ33~63cmの穴が開いており、その穴から墜落したもの。

1(1)

H23.8

鉄鋼業

塩酸タンク

製鋼所内の塩酸の入ったタンクの配管を移設作業中、配管の切断位置を確認するためタンクの上へ乗ったところ、タンク天板が抜けて、タンク内部に転落したもの。

また、タンク上のマンホール部から同僚が救助を試みるも、マンホールごと抜けてしまい、同僚もタンク内部へ転落したもの。

2(2)

H23.4

セメント・同製品製造業

踊り場(金属製)

生コン製造プラントのメンテナンス中、プラント建屋屋上からバケットエレベーターに向かう途中の通路の金属製踊り場が腐食していたため、被災者が金属製踊り場に乗った際に床面を踏み抜き、地上まで約10m墜落したもの。

1(1)

H22.12

機械器具製造業

鋼鉄製シャッター

工場出入口の鋼鉄製大型シャッターのワイヤロープが経年劣化により切断し、自重によりシャッターが落下、シャッターと地面の間に挟まれたもの。

1(1)

H21.6

土石製品製造業

ベルトコンベア

細砂運搬用のベルトコンベアを解体するため、コンベア上でガス溶断作業を行っていたところ、コンベアの支柱を固定していたボルトが老朽化していたため、支柱が倒壊し、約8.5m下に落下したもの。

1(1)

H20.10

石油製品・石炭製品製造業

屋根(コーンルーフタンク)

被災者は、軽油貯蔵タンクの消防法に基づく年2回の定期点検を単独で開始し、屋根(コーンルーフタンク、固定タイプ)に乗ったところ、軽油中の硫化水素等により屋根内部が腐食しており、屋根全体が非常に薄くなっていたため踏み抜き墜落し、溺死したもの。

1(1)

H19.11

石油製品・石炭製品製造業

通路(鉄板)

脱硫設備コンベアのプーリーの取り外し作業を終え地上に降りようとした際、コンベア横の通路の鉄板が腐食していたため、腐食箇所に歩み板を敷き終え、当該通路を歩いていたところ、通路の別の箇所の鉄板が腐食していたため、その鉄板を踏み抜き、地上約30mの高さから墜落したもの。

1(1)

H19.10

パルプ・紙・紙加工品製造業

汚水槽の覆い

パルプ工場の汚水処理施設において汚水槽の覆いの交換作業をするため、覆いの上で撤去準備作業を行っていたところ、腐食していた覆いが折れて汚水槽へ墜落したもの。

1(1)

H19.9

鉄鋼業

落鉱防止用鉄板

高炉ベルトコンベアからの鉱石等に係る落鉱防止用鉄板の上で清掃作業を行っていたところ、腐食していた鉄板の一部が抜け、約19m下方のデッキに墜落したもの。

1(1)



別添1

○鉄鋼業における自主的な安全管理活動の促進について(要請)

平成28年2月25日基発0225第2号

(一般社団法人日本鉄鋼連盟会長あて厚生労働省労働基準局長通知)

労働基準行政につきましては、日頃から御理解と御協力をいただき感謝申し上げます。

さて、鉄鋼業における安全管理につきましては、平成9年3月24日付け基発第190号(平成27年2月24日付け基発0224第1号により一部改正)「鉄鋼生産設備の非定常作業における安全衛生対策のためのガイドラインの策定について」、平成18年8月1日付け基発第0801010号「製造業における元方事業者による総合的な安全衛生管理のための指針について」等により推進してきたところですが、本年に入ってから、別紙1のとおり、設備の点検作業中の事故等、非定常作業を含む死亡災害が6件発生するなど、重大な災害が頻発しており、憂慮すべき状態となっています。

さらに、製造業においては、設置から20年以上経過した生産設備が約3割に達し、設備の老朽化が進展しています。これを背景として、通路や昇降設備等の腐食・劣化を直接の原因とする災害が、別紙2のとおり、平成19年以降に全体で12件(死傷16人、死亡11人)発生し、そのうち鉄鋼業で5件(死傷9人、死亡4人)発生しており、経年設備の安全点検が喫緊の課題となっています。

このような状況を踏まえ、都道府県労働局長を通じて下記により対象事業場に対して安全管理及び経年設備に関する自主点検を実施することとしましたので、その趣旨について御理解をいただき、貴会員企業へ周知いただくとともに、貴会員企業の求めに応じて自主点検に係る技術的な支援を行っていただくようお願いいたします。

<編注:記の内容については本通達と同じ為略>

 

別添2

○装置産業における経年設備の自主点検について(注意喚起)

平成28年2月25日基発0225第3号

(一般社団法人日本化学工業協会会長・石油化学工業協会会長・石油連盟会長・一般社団法人セメント協会会長・一般社団法人日本砕石協会会長・日本製紙連合会会長あて厚生労働省労働基準局長通知)

労働基準行政につきましては、日頃から御理解と御協力をいただき感謝申し上げます。

さて、製造業においては、設置から20年以上経過した生産設備が約3割に達し、設備の老朽化が進展しています。これを背景として、通路や昇降設備等の腐食・劣化を直接の原因とする災害が、別紙1のとおり、平成19年以降に全体で12件(死傷16人、死亡11人)発生しており、本年、鉄鋼業事業場において、クレーンの点検作業中に運転席へ向かう通路が腐食・劣化していたために通路が傾き、作業者が転落し死亡する災害が発生しました。

このような状況を踏まえ、今般、一定規模以上の鉄鋼業事業場に対して、別紙2の自主点検表による経年設備の自主点検の実施及びその結果の報告について、一般社団法人日本鉄鋼連盟会長宛に協力要請を行ったところです。

つきましては、貴協会におかれても、この自主点検の趣旨について御理解をいただき、貴会員企業に対して、添付の自主点検表を参考として経年設備の点検等を行うよう注意喚起していただくようお願いいたします。