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通達:建築物等の解体等の作業及び労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における業務での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針の制定について

 

建築物等の解体等の作業及び労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における業務での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針の制定について

平成26年4月23日基発0423第7号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

 

建築物等の解体等の作業及び労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における業務での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針(技術上の指針公示第21号。以下「新技術指針」という。)が平成26年3月31日に公示され、平成26年6月1日より適用されることとなっているが、その趣旨、内容等については、下記のとおりであるので、その施行に遺漏なきを期されたい。

 

第1 新技術指針制定の趣旨

新技術指針は、「建築物の解体等における石綿ばく露防止対策等技術的検討のための専門家会議」における検討の結果及び平成26年3月31日に公布された石綿障害予防規則の一部を改正する省令(平成26年厚生労働省令第50号。以下「改正省令」という。)の内容を踏まえ、建築物等の解体等の作業での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針(技術上の指針公示第19号。以下「旧技術指針」という。)の内容の見直しを行い、新たに制定するものである。

 

第2 旧技術指針からの変更の要点

1 技術指針の表題及び趣旨(新技術指針1―1)の変更

労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における業務に係る措置に関する留意事項が新たに技術指針に加えられたことに伴い、技術指針の表題及び1―1の趣旨の一部を変更したこと。

2 隔離等の措置(新技術指針の2―2―1)について

(1) 吹き付けられた石綿等の除去等の作業を開始する前に、隔離が適切になされ漏れがないことを、隔離空間の内部の吹き付けられた石綿等の除去等を行う全ての対象部分並びに床面及び壁面に貼った全てのプラスチックシートについて目視及びスモークテスターで確認することとしたこと。

(2) 前室については、洗身室及び更衣室を併設することとし、併設に当たっては、労働者が隔離空間から退室するときに、前室、洗身室、更衣室の順に通過するように互いに連接させることとしたこと。

(3) 石綿則第4条に基づき作業計画を定める際には、隔離空間からの退室に当たって洗身を十分に行うことができる時間を確保できるよう、作業の方法及び順序を定めることとしたこと。

3 集じん・排気装置の稼働状況の確認、保守点検等(新技術指針の2―2―2)について

(1) 吹き付けられた石綿等の除去等を開始する前に、集じん・排気装置を稼働させ、正常に稼働すること及び粉じんを漏れなく捕集することを点検することとしたこと。

(2) 隔離空間において初めて、吹き付けられた石綿等の除去等の作業を行う場合には、当該作業を開始した後速やかに、集じん・排気装置の排気口からの石綿等の漏えいの有無を点検することとしたこと。

(3) その日の作業を開始する前に、集じん・排気装置を稼働させ、前室が負圧に保たれていることを点検することとしたこと。

(4) 隔離空間の内部及び前室の負圧化が適切になされているかを確認するに当たっては、スモークテスター又は微差圧計(いわゆるマノメーター)に加え、これに類する方法でも確認することができることとしたこと。

(5) 集じん・排気装置の排気口からの石綿等の漏えいの有無の点検に当たっては、集じん・排気装置の排気口で、粉じん相対濃度計(いわゆるデジタル粉じん計をいう。)、繊維状粒子自動測定機(いわゆるリアルタイムモニターをいう。)又はこれらと同様に空気中の粉じん濃度を迅速に計測できるものを使用することとしたこと。

(6) 隔離空間の内部又は前室が負圧に保たれていない場合や隔離空間の外部への石綿等の粉じんの漏えいが確認されたときは、直ちに吹き付けられた石綿等の除去等の作業を中止し、当該漏えい箇所の周辺について、電動ファン付き呼吸用保護具及び作業衣を着用した者以外の者の立ち入りを禁止し、集じん・排気装置の補修又は増設その他の必要な措置を講ずることとしたこと。

4 隔離等の措置の解除に係る措置(新技術指針の2―2―3)について

(1) 隔離等の措置の解除に当たっては、隔離空間の内部に石綿等の取り残しがないことを目視で確認するとともに、隔離空間の内部の空気中の総繊維数濃度を測定し、石綿等の粉じんの処理がなされていることを確認することとしたこと。

5 漏えいの監視(新技術指針の2―5―2)について

(1) 吹き付けられた石綿等の除去等の作業における石綿等の粉じんの隔離空間の外部への漏えいの監視には、スモークテスター、粉じん相対濃度計(いわゆるデジタル粉じん計をいう。)又は繊維状粒子自動測定機(いわゆるリアルタイムモニターをいう。)を使用するほか、空気中の粉じん濃度を迅速に計測することができるものについてもその使用が望ましいものとしたこと。

6 労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における留意事項(新技術指針の3)について

(1) 労働者を常時就業させる建築物等に係る措置

石綿則第10条第1項又は第4項に規定する労働者を就業させる建築物等に係る措置については、事業者は、その労働者を常時就業させる建築物若しくは船舶の壁、柱、天井等又は当該建築物若しくは船舶に設置された工作物について、建築物貸与者は当該建築物の貸与を受けた二以上の事業者が共用する廊下の壁等について、吹き付けられた石綿等又は張り付けられた石綿含有保温材等の損傷、劣化等の状況について、定期的に目視又は空気中の総繊維数濃度を測定することにより点検することとしたこと。

(2) 労働者を建築物等において臨時に就業させる場合の措置

石綿則第10条第2項に規定する労働者を建築物等において臨時に就業させる場合の措置を講ずるに当たっては、次のアからエまでに定めるところによることとしたこと。

ア 事業者は、その労働者を臨時に就業させる建築物若しくは船舶の壁、柱、天井等又は当該建築物若しくは船舶に設置された工作物の石綿等の使用状況及び吹き付けられた石綿等又は張り付けられた石綿含有保温材等の損傷、劣化等の状況について、当該業務の発注者からの聞き取り等により確認すること。

イ 事業者は、石綿等の粉じんを飛散させ、労働者がその粉じんにばく露するおそれがあるときは、労働者に呼吸用保護具及び作業衣又は保護衣を使用させること。

ウ 事業者は、石綿の飛散状況が不明な場合は、石綿等の粉じんが飛散しているものと見なし、労働者に呼吸用保護具及び作業衣又は保護衣を使用させること。

エ 建築物又は船舶において臨時に労働者を就業させる業務の発注者(注文者のうち、その仕事を他の者から請け負わないで注文している者をいう。)は、当該仕事の請負人に対し、当該建築物若しくは船舶の壁、柱、天井等又は当該建築物又は船舶等に設置された工作物の石綿等の使用状況及び吹き付けられた石綿等又は張り付けられた石綿含有保温材等の損傷、劣化等の状況を通知するよう努めること。

 

第3 適用日

新技術指針は平成26年6月1日に適用することとしたこと。なお、旧技術指針は、新技術指針の適用をもって廃止することとしたこと。

 

第4 細部事項

1 隔離等の措置(新技術指針の2―2―1)について

(1) 新技術指針の2―2―1の(4)イの「洗身を十分に行うことができる時間を確保する」とは、隔離空間における作業の終了又は中断の後から、休憩等の次の予定に移るまでの間に、隔離空間におけるの作業に従事した労働者が一人一人体に付着した石綿等を十分に洗い落とし、全員が退出することができる十分な時間を確保することをいうこと。

2 集じん・排気装置の稼働状況の確認、保守点検等(新技術指針の2―2―2)について

(1) 新技術指針の2―2―2の(1)の「粉じんが漏れなく捕集することを点検する」とは、新技術指針の2―2―2の(6)に掲げる計測機器を使用して、排気口のダクト内部の空気を採気し、粉じんが検出されないこと、又は作業開始前に集じん・排気装置を稼働させ、排気口のダクト内部の粉じん濃度が一定濃度まで下がって安定したことを確認のうえ、吸気口でスモークテスター等により粉じんを発生させ、排気口のダクト内部の粉じん濃度が粉じん発生前と比較して上昇しないことを確認する必要があること。

(2) 新技術指針の2―2―2の(2)の「集じん・排気装置の排気口からの石綿等の漏えいの有無を点検する」は、石綿則第6条第2項第5号について示されているものと同様であること。

(3) 新技術指針の2―2―2の(4)の「集じん・排気装置を通って石綿等の粉じんの漏えいが生じないこと」についての定期的な確認については、少なくとも1日1回行うこと。

なお、例えば以下に掲げる場合のように、石綿等の粉じんの漏えいの懸念が生じた場合には、その都度、集じん・排気装置を通した石綿等の粉じんの漏えいの有無の点検を行うことが望ましいこと。

・集じん・排気装置は、作業中、極力動かさず、静置させるべきであるが、やむを得ず、当該装置を動かした場合

・労働者が集じん・排気装置にぶつかった場合

・1次フィルタ又は2次フィルタの交換時にHEPAフィルタがずれたおそれがある場合(HEPAフィルタは作業中に交換してはならないものであるから留意すること。)

また、集じん・排気装置の設置時及び1次フィルタ又は2次フィルタの交換の都度、フィルタ及びパッキンが適切に取り付けられていること等についても目視で確認すること。

(4) 新技術指針の2―2―2の(5)の「これに類する方法」には、糸や垂れ幕等により、隔離空間の外部から内部に向かって空気が流れていることを確認する方法があること

(5) 新技術指針の2―2―2の(6)及び2―5―2中の「粉じん濃度を迅速に計測できるもの」にはパーティクルカウンターが含まれること。

3 隔離等の措置の解除に係る措置(新技術指針の2―2―3)について

新技術指針の2―2―3の(4)中「隔離空間の内部の空気中の総繊維数濃度を測定し、石綿等の粉じんの処理がなされていることを確認する」とは、JIS K 3850―1「空気中の繊維状粒子測定方法」等により、総繊維数濃度又は石綿の濃度が、除去作業を開始前の濃度又は周辺の一般環境の濃度と比較して同程度であることを確認することをいうこと。なお、やむを得ない事情によりこれらの測定が実施できない場合であっても、石綿等の粉じんが隔離空間の内部に浮遊したまま残存しないよう、新技術指針の2―2―3(3)の粉じんの処理は確実に行う必要があること。

4 労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等の業務における留意事項(改正指針の3)について

新技術指針の3―1中の「目視又は空気中の総繊維数濃度を測定することにより点検する」とは、目視により石綿含有建材の劣化状況の確認すること、又はJIS K 3850―1「空気中の繊維状粒子測定方法」等により、総繊維数濃度又は石綿の濃度が、建築物屋外の濃度と同程度であることを確認することをいうこと。

5 旧技術指針と変更のない部分の解釈について

平成24年5月9日付け基発0509第10号「建築物等の解体等の作業での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針の制定について」の第2で示す旧技術指針の解釈については、新技術指針の解釈についても同様とすること。ただし、下表の右欄に掲げる字句は、左欄に掲げる字句にそれぞれ読み替えるものとすること。

読み替え後

読み替え前

石綿指針の2―1

石綿指針の2

石綿指針の2―1―2

石綿指針の2―2

石綿指針の2―1―3

石綿指針の2―3

石綿指針の2―1―4

石綿指針の2―4

(第2の1の(3)中)

石綿指針の2―4の(2)の調査結果の記録の掲示について、別紙に示すモデル様式があるので参考とすること。なお、モデル様式によらず大気汚染防止法(昭和43年法律第97号)他関係法令や条例で別途掲示に係る定めがある場合は、それらに義務付けられた事項を満たした掲示を行う必要があることに留意すること。

(第2の1の(3)中)

石綿指針の2―4の(2)の調査結果の記録の掲示について、別紙に示すモデル様式があるので参考とすること。

石綿指針の2―2

石綿指針の3

石綿指針の2―2―1

石綿指針の3―1

石綿指針の2―2―2

石綿指針の3―2

(第2の2の(2)中)

ア 石綿指針2―2―2(4)中「隔離空間の内部の負圧化が適切に行われていること」の定期的な確認については、少なくとも1日に1回行うこと。

(第2の2の(2)中)

ア 石綿指針3―2の(1)中「隔離空間の内部の負圧化が適切に行われていること」の定期的な確認については、少なくとも1日に1回行うこと。また、「石綿等の粉じんの漏洩が生じていないこと」の定期的な確認については、集じん・排気装置の設置時及びフィルタ(1次フィルタ、2次フィルタ又はHEPAフィルタ)の交換の都度、フィルタ及びパッキンが適切に取り付けられていること等について目視により行うこと。」

石綿指針の2―2―2の(7)

石綿指針の3―2の(3)

石綿指針の2―2―2の(8)

石綿指針の3―2の(4)

 

第4 関係通達の改正

1 平成24年5月9日基発0509第10号「「建築物等の解体等の作業での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針」の制定について」の一部改正

記の第2の1の(1)アを次のように改める。

ア 石綿指針の2―1―2の(1)中「石綿に関し一定の知見を有し、的確な判断ができる者」には、「建築物石綿含有建材調査者講習登録規程」(平成25年7月30日公示)により国土交通省に登録された機関が行う講習を修了した建築物石綿含有建材調査者、石綿作業主任者技能講習修了者のうち石綿等の除去等の作業の経験を有する者及び日本アスベスト調査診断協会に登録された者が含まれること。

記の第2の1(2)イ中「社団法人日本作業環境測定協会が実施する「石綿分析技術の評価事業(石綿分析に係るクロスチェック事業)」により認定されるAランク又はBランクの認定分析技術者があること。」を「公益社団法人日本作業環境測定協会が実施する「石綿分析技術の評価事業(石綿分析に係るクロスチェック事業)」により認定されるAランク又はBランクの認定分析技術者、一般社団法人日本環境測定分析協会が実施する「アスベスト偏光顕微鏡実技研修修了者」や「アスベスト偏光顕微鏡インストラクター」があること。」