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建築物等の解体等の作業及び労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における業務での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針
制定 平成26年3月31日指針公示第21号
改正 令和2年9月8日技術上の指針公示第22号
令和6年1月31日技術上の指針公示第25号
労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第28条第1項の規定に基づき、建築物等の解体等の作業及び労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における業務での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針(平成26年3月31日付け技術上の指針公示第21号)を改正したので次のとおり公表する。
建築物等の解体等の作業及び労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における業務での労働者の石綿ばく露防止に関する技術上の指針
1 趣旨
この指針は、建築物等の解体等の作業又は労働者が石綿等(石綿又は石綿をその重量の0.1パーセントを超えて含有する製剤その他の物をいう。以下同じ。)にばく露するおそれがある建築物等における業務を行う労働者の石綿のばく露による健康障害を予防するため、石綿障害予防規則(平成17年厚生労働省令第21号。以下「石綿則」という。)に規定する事前調査及び分析調査、石綿を含有する材料の除去等の作業における措置及び労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における業務に係る措置等に関する留意事項について規定したものである。
2 建築物等の解体等の作業における留意事項及び推奨される事項
2-1 事前調査及び分析調査
(1) 使用されている可能性がある石綿含有材料の種類が多岐に亘るような大規模建築物又は改修を繰り返しており石綿含有材料の特定が難しい建築物については、建築物石綿含有建材調査者講習等登録規程(平成30年厚生労働省、国土交通省、環境省告示第1号)第2条第3項に規定する特定建築物石綿含有建材調査者又は一定の事前調査の経験を有する同条第2項に規定する一般建築物石綿含有建材調査者が事前調査を行うことが望ましいこと。
(2) 事前調査において、石綿等の含有を判断するに当たっては、国土交通省及び経済産業省が公表する「アスベスト含有建材データベース」を活用することが望ましいこと。
(3) 事前調査のために、天井板を外す等、囲い込まれた部分を解放するに当たっては、当該部分の内部に吹き付けられた石綿等が存在し、天井板に石綿等の粉じんが堆積している等、囲い込みを解放する作業により石綿等の粉じんが飛散するおそれがあることから、あらかじめ作業場所を隔離するとともに、呼吸用保護具を使用することが望ましいこと。
(4) 吹付け材について分析調査を行う場合は、次に掲げる措置を講じることが望ましいこと。
ア 石綿をその重量の0.1パーセントを超えて含有するか否かの判断のみならず、石綿の含有率についても分析し、ばく露防止措置を講ずる際の参考とすること。
イ 建築物等に補修若しくは増改築がなされている場合又は吹付け材の色が一部異なる場合等吹付けが複数回行われていることが疑われるときには、吹付け材が吹き付けられた場所ごとに試料を採取して、それぞれ石綿をその重量の0.1パーセントを超えて含有するか否かを判断すること。
ウ 試料の採取に当たっては、表面にとどまらず下地近くまで採取すること。
(5) 試料の採取のために材料の穿孔等を行う場合は、呼吸用保護具を使用するとともに、当該材料を湿潤な状態のものとすることが望ましいこと。
2-2 吹き付けられた石綿等の除去等に係る措置
2-2-1 負圧隔離等の措置
石綿則第6条第2項に規定する隔離、集じん・排気装置の設置、前室等の設置及び負圧(以下「負圧隔離等」という。)の措置は、次の(1)から(5)までに定めるところによることが望ましいこと。
(1) 隔離の方法
ア 床面は厚さ0.15ミリメートル以上のプラスチックシートで二重に貼り、壁面は厚さ0.08ミリメートル以上のプラスチックシートで貼り、折り返し面(留め代)として、30から45センチメートル程度を確保することにより、出入口及び集じん・排気装置の排気口を除いて作業場所を密閉すること。
イ 隔離空間(石綿則第6条第2項第4号の規定により負圧管理を求められる石綿等の除去等を行う作業場所及び前室をいう。以下同じ。)については、内部を負圧に保つため、作業に支障のない限り小さく設定すること。
ウ 吹き付けられた石綿等の除去等の作業を開始する前に、隔離が適切になされ漏れがないことを、隔離空間の内部の吹き付けられた石綿等の除去等を行う全ての対象部分並びに床面及び壁面に貼った全てのプラスチックシートについて目視及びスモークテスターで確認すること。
(2) 集じん・排気装置の設置方法
ア 集じん・排気装置は、内部にフィルタ(1次フィルタ、2次フィルタ及びHEPAフィルタ(日本産業規格Z8122に定める99.97パーセント以上の粒子捕集効率を有する集じん性能の高いフィルタをいう。以下同じ。))を組み込んだものとするとともに、隔離空間の内部の容積の空気を1時間に4回以上排気する能力を有するものとすること。
イ 集じん・排気装置は、隔離空間の構造を考慮し、効率よく内部の空気を排気できるよう可能な限り前室と対角線上の位置に設置すること。
また、内部の空間を複数に隔てる壁等がある場合等には、吸引ダクトを活用して十分に排気がなされるようにすること。
(3) 隔離空間への入退室時の留意事項
ア 隔離空間への入退室に当たっては、隔離空間の出入口の覆いを開閉する時間を最小限にとどめること。また、中断した作業再開の際に集じん・排気装置の電源を入れるために入室するに当たっては、内部が負圧となっていないことから、特に注意すること。
イ 隔離空間からの退室に当たっては、身体に付着した石綿等の粉じんを外部に運び出さないよう、洗身室での洗身を十分に行うこと。また、石綿則第4条に基づき作業計画を定める際には、洗身を十分に行うことができる時間を確保できるよう、作業の方法及び順序を定めること。
(4) 湿潤な状態のものとする方法
吹き付けられた石綿等の除去等に当たっては、材料の内部に浸透する飛散抑制剤又は表面に皮膜を形成し残存する粉じんの飛散を防止することができる粉じん飛散防止処理剤を使用することにより石綿等を湿潤な状態のものとし、隔離空間内の石綿等の粉じんの飛散を抑制又は防止すること。
(5) その他
ア 隔離空間が強風の影響を受け、石綿等の粉じんが飛散するおそれがある場合には、木板、鋼板等を設置する等の措置を講じること。
イ 隔離空間での作業を迅速かつ正確に行い、外部への石綿等の粉じんの漏えいの危険性を減ずるとともに吹き付けられた石綿等の除去等の漏れを防ぐため、隔離空間の内部では照度を確保すること。
2-2-2 集じん・排気装置の稼働状況の確認、保守点検等
集じん・排気装置の稼働状況の確認、保守点検等石綿則第6条第2項に規定する集じん・排気装置の取扱いについては、次の(1)から(5)までに定めるところによることが望ましいこと。
(1) 吹き付けられた石綿等の除去等の作業を開始する前に、集じん・排気装置を稼働させ、正常に稼働すること及び粉じんを漏れなく捕集することを点検すること。
(2) 集じん・排気装置の稼働により、隔離空間の内部及び前室の負圧化が適切に行われていること及び集じん・排気装置を通って石綿等の粉じんの漏えいが生じないことについて、定期的に確認を行うこと。
(3) 集じん・排気装置の保守点検を定期的に行うこと。また、保守点検、フィルタ交換等を実施した場合には、実施事項及びその結果、日時並びに実施者を記録すること。
(4) 集じん・排気装置の稼働状況の確認及び保守点検は、集じん・排気装置の取扱い及び石綿による健康障害の防止に関して、知識及び経験を有する者が行うこと。
(5) 吹き付けられた石綿等の除去等の作業を一時中断し、集じん・排気装置を停止させるに当たっては、空中に浮遊する石綿等の粉じんが隔離空間から外部へ漏えいしないよう、故障等やむを得ない場合を除き、同装置を作業中断後1時間半以上稼働させ集じんを行うこと。
2-2-3 隔離空間における隔離の解除に係る措置
石綿則第6条第3項に規定する隔離の解除に当たっては、次の(1)から(5)までに定める措置を講じることが望ましいこと。
(1) あらかじめ、HEPAフィルタ付きの真空掃除機により隔離空間の内部の清掃を行うこと。
(2) 石綿等の粉じんが隔離空間の内部に浮遊したまま残存しないよう、(1)及び石綿則第6条第3項に規定する湿潤化並びに除去完了の確認後、1時間半以上集じん・排気装置を稼働させ、集じんを行うこと。なお、含有する石綿の種類、浮遊状況により、確実な集じんが行われる程度に稼働時間は長くすること。
(3) 隔離空間の内部の空気中の総繊維数濃度を測定し、石綿等の粉じんの処理がなされていることを確認すること。
(4) 隔離の解除を行った後に、隔離がなされていた作業場所の前室付近について、HEPAフィルタ付きの真空掃除機により清掃を行うこと。
(5) (1)から(4)までの作業では労働者に呼吸用保護具を使用させること。
2-2-4 吹き付けられた石綿等の近傍における附属設備の除去に係る措置
吹き付けられた石綿等の近傍の照明等附属設備を除去するに当たっては、石綿等に接触して石綿等の粉じんを飛散させるおそれがあるため、当該設備の除去の前に、隔離等をすること。
2-3 石綿等の除去に係る措置
2-3-1 石綿等の切断等の作業等に係る措置
(1) 石綿等の除去等の作業においては、原則として切断等以外の方法(手ばらし)により当該作業を実施すること。切断等以外の方法により石綿等の除去等の作業を実施することが技術上困難な場合にあっては、当該石綿等を湿潤化した上で、手工具により当該作業を実施すること。
(2) (1)によることが技術上困難であり、電動工具を用いて石綿等の切断等の作業等を行う場合にあっては、石綿等を湿潤な状態にした場合においても高濃度の粉じんが発散するおそれがあること及び電動工具を使用中に散水等を行うことによる感電のおそれがあることから、原則として除じん性能を有する電動工具を使用すること。やむを得ず除じん性能を有していない電動工具を使用する場合は、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第333条に規定する漏電による感電の防止措置を講じた上で、電動工具に可能な限り水が直接かからないように留意しつつ切断面等に水を噴霧することにより石綿等を常時湿潤な状態にすること。
2-3-2 剥離剤の使用に係る措置
石綿則第6条の2第3項(石綿則第6条の3において準用する場合を含む。)及び石綿則第13条第1項に規定する「その他の石綿等の粉じんの発散を防止する措置」として、剥離材を使用する場合は、使用する剥離材に係る労働安全衛生法第57条に基づくラベル表示及び第57条の2に基づく安全データシート(SDS)により、特定化学物質への該当性や、有害性区分がある物質の含有の有無を確認し、リスクアセスメント対象物が含有されている場合は、化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成27年9月18日付け危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第3号)に定めるところによりリスクアセスメントを実施し、その結果に基づき、法令に定める措置を含め、適切なリスク低減措置を実施すること。この際、リスク低減措置として呼吸用保護具を使用する場合は、原則として、防毒機能を有する電動ファン付き呼吸用保護具(G-PAPR)又は給気式呼吸用保護具を使用すること。
2-3-3 隔離の解除に係る措置
石綿則第6条の2第3項及び第6条の3の規定に基づく隔離の解除に当たっては、あらかじめ、HEPAフィルタ付きの真空掃除機により隔離された場所の内部の清掃を行うことが望ましいこと。
2-4石綿含有シール材の取り外しに係る措置
固着が進んだ配管等のシール材の除去を行うに当たっては、十分に湿潤化させ、グローブバッグ等による隔離を行うことが望ましいこと。
2-5 雑則
2-5-1 呼吸用保護具等の選定
(1) 電動工具を用いて石綿等の切断等の作業等を行う場合、電動ファン付き呼吸用保護具(漏れ率に係る性能区分がS級であり、ろ過材の性能区分がPS3又はPL3のものであり、かつ、呼吸用保護具の製造事業者により指定防護係数が300以上であることを証明する型式に限る。)又はこれと同等以上の指定防護係数を有する呼吸用保護具を使用すること。
また、隔離空間の外部で石綿等の除去等の作業(電動工具による石綿等の切断等の作業を除く。)行う際に使用する呼吸用保護具は、電動ファン付き呼吸用保護具、これと同等以上の性能を有する空気呼吸器、酸素呼吸器若しくは送気マスク又は取替え式防じんマスク(防じんマスクの規格(昭和63年労働省告示第19号)に規定するRS3又はRL3のものに限る。)とすることが望ましいこと。ただし、石綿等の切断等を伴わない囲い込みの作業又は石綿含有成形品等を切断等を伴わずに除去する作業では、同規格に規定するRS2又はRL2の取替え式防じんマスクとして差し支えないこと。
(2) 石綿含有成形品等の除去作業を行う作業場所で、石綿等の除去等以外の作業を行う場合には、取替え式防じんマスク又は使い捨て式防じんマスクを使用すことが望ましいこと。
(3) 隔離空間の内部での作業においては、フード付きの保護衣を使用することが望ましいこと。
2-5-2 漏えいの監視
負圧の点検及び集じん・排気装置からの石綿等の粉じんの漏えいの有無の点検に加え、吹き付けられた石綿等の除去等の作業における石綿等の粉じんの隔離空間の外部への漏えいを監視するため、スモークテスターに加え、粉じん相対濃度計(いわゆるデジタル粉じん計をいう。)、繊維状粒子自動測定機(いわゆるリアルタイムモニターをいう。)又はこれらと同様に空気中の粉じん濃度を迅速に計測することができるものを使用し、常時粉じん濃度を測定することが望ましいこと。
2-5-3 建築物等から除去した石綿を含有する廃棄物の扱い
建築物等から除去した石綿を含有する廃棄物は、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和45年法律第137号)等の関係法令に基づき、適切に廃棄すること。
3 労働者が石綿等にばく露するおそれがある建築物等における業務における留意事項
3-1 労働者を常時就業させる建築物等に係る措置
(1) 事業者は、その労働者を常時就業させる建築物若しくは船舶の壁、柱、天井等又は当該建築物
若しくは船舶に設置された工作物に、吹付け材又は保温材、耐火被覆材等が封じ込め又は囲い込みがされていない状態である場合は、石綿等の使用の有無を調査することが望ましいこと。
(2) 事業者はその労働者を常時就業させる建築物若しくは船舶の壁、柱、天井等又は当該建築物若しくは船舶に設置された工作物について、建築物貸与者は当該建築物の貸与を受けた2以上の事業者が共用する廊下の壁等について、吹き付けられた石綿等又は張り付けられた石綿含有保温材等が封じ込め又は囲い込みがされていない状態である場合は、損傷、劣化等の状況について、定期的に目視又は空気中の総繊維数濃度を測定することにより点検することが望ましいこと。
3-2 労働者を建築物等において臨時に就業させる場合の措置
石綿則第10条第2項に規定する労働者を建築物等において臨時に就業させる場合は、次の(1)から(3)までの措置を講じることが望ましい。
(1) 事業者は、その労働者を臨時に就業させる建築物若しくは船舶の壁、柱、天井等又は当該建築物若しくは船舶に設置された工作物に吹き付けられた石綿等又は張り付けられた石綿含有保温材等の有無及びその損傷、劣化等の状況について、当該業務の発注者からの聞取り等により確認すること。
(2) 事業者は、石綿等の粉じんの飛散状況が不明な場合は、石綿等の粉じんが飛散しているものと見なし、労働者に呼吸用保護具及び作業衣又は保護衣を使用させること。
(3) 建築物又は船舶において臨時に労働者を就業させる業務の発注者(注文者のうち、その仕事を他の者から請け負わないで注文している者をいう。)は、当該仕事の請負人に対し、当該建築物若しくは船舶の壁、柱、天井等又は当該建築物若しくは船舶に設置された工作物に吹き付けられた石綿等又は張り付けられた石綿含有保温材等の有無及びその損傷、劣化等の状況を通知すること。