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通達:洗浄又は払拭の業務等における化学物質のばく露防止対策の周知に当たって留意すべき事項について

 

洗浄又は払拭の業務等における化学物質のばく露防止対策の周知に当たって留意すべき事項について

平成25年3月14日基安化発0314第1号

(都道府県労働局労働基準部長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部化学物質対策課長通知)

改正 平成25年8月27日付け基安化発0827第1号

 

「洗浄又は払拭の業務等における化学物質のばく露防止対策について」(平成25年3月14日付け基発0314第1号)により、1,2―ジクロロプロパンを取り扱う業務並びに屋内作業場において液体の化学物質及びその含有物を用いて行う印刷機又は金属類の洗浄又は払拭の業務における化学物質のばく露防止対策が定められたところであるが、当該対策の関係事業場等に対する周知徹底に当たって留意すべき点を別添のとおり取りまとめたので、業務の参考とされたい。

 

別添

洗浄又は払拭の業務において事業者が講ずべき化学物質のばく露防止対策の留意事項

以下の事項は、「洗浄又は払拭の業務において事業者が講ずべき化学物質のばく露防止対策」(以下「対策」という。)を技術的に補足し、実務上の留意点等を示すものである。

1 対象業務(対策の1関係)

対象業務には、印刷機のローラーやブランケット部分を手作業で洗浄し又は払拭する業務及び印刷機に取り付けられた洗浄装置を用いて洗浄する業務だけでなく、メッキの前処理工程としての金属表面の脱脂や、金属部品や機械を洗浄槽等で洗浄(脱脂を含む。)する業務も含まれること。

洗浄又は払拭に用いる液体の化学物質としては、脂肪族塩素化合物、脂肪族フッ素化合物及び脂肪族臭素化合物(以下「脂肪族ハロゲン化合物」という。)のほか、シクロヘキサン、トリメチルベンゼン、ミネラルスピリット等炭素数の少ない石油系炭化水素類が多く用いられており、有機溶剤中毒予防規則(昭和47年労働省令第36号。以下「有機則」という。)に規定する有機溶剤及び特定化学物質障害予防規則(昭和47年省令第39号。以下「特化則」という。)に規定するエチルベンゼン等に限定せずにばく露防止対策を講ずる必要があること。本通達の対象物質としては、その含有量が、有機則に準じて全体の重量の5%を超える物としているが、特化則及びがん原性指針の対象物質については、それぞれの規定に基づき、重量の1%を超えて含む含有物は対象に含まれることに留意すること。常温で液体の溶剤を含まない水系の洗浄剤は対象としないが、エマルション系の洗浄剤については、当該溶剤の含有量により判断すること。

2 危険有害性情報に基づく化学物質管理(対策の3関係)

労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号。以下「安衛則」という。)第576条及び第577条は、有害物を取り扱い、蒸気を発散する有害な作業場においては、事業者は、その原因を除去し、屋内作業場における蒸気の含有濃度が有害な程度とならないよう必要な措置を講ずることとしており、化学物質を取り扱う事業者は、有機則、特化則等の特別則による規制対象となっている物質以外の物質であっても、当該物質の危険性や有害性を把握した上で、適正な化学物質管理を行うことが求められること。

労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第57条は、労働者に健康障害を生ずるおそれのある物等約100物質及びその含有物を表示対象物質とし、同法第57条の2は、640物質及びその含有物を通知対象物質としているが、安衛則の改正により、平成24年4月から、譲渡し、又は提供する者は、通知対象物質以外の危険有害性情報を有する全ての化学物質及びその混合物についても、表示や通知をすることが努力義務とされている。こうしたことを踏まえ、事業者は、洗浄剤等を購入する際に、含まれる化学物質に関する危険有害性情報を入手して確認し、労働者に周知する必要がある。その詳細は、「化学物質等の危険性又は有害性等の表示又は通知等の促進に関する指針」(平成24年厚生労働省告示第133号)によること。

3 適切な換気の確保(対策の3の(2)関係)

全体換気装置は、作業場内の汚染された空気を排気口から外部に排出するとともに、新鮮な外気を導入して作業場内に発散した揮発性物質の蒸気を混合希釈することにより、作業場内の揮発性物質の蒸気の濃度を下げるものである。したがって、排気口からの汚染された空気は、室内に還流させることなく外部に直接排出する必要があること。また、全体換気を効果的に行うため、揮発性物質の消費量に応じて希釈に必要な換気量を確保するとともに、排気口を発散源からできるだけ近い位置にし、給気口があるものについては、吹き出す新鮮な外気が部屋全体に行き渡るよう配置するなどの工夫が必要であること。

「空気中の化学物質の含有濃度が有害な程度とならない」ためには、作業場の濃度レベルがACGIH又は日本産業衛生学会が定める許容濃度を常に下回る状態にある必要があるが、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けていない作業場では、1日の化学物質の消費量、1日の換気量等から算出した平均濃度が目安となること。また、ACGIHでTLV―STEL(短時間ばく露限度)やTLV―C(上限値)が定められている化学物質については、これらについても超えないようにする必要があること。

4 呼吸用保護具の使用(対策の3の(3)関係)

洗浄又は払拭の業務は、労働者に高濃度のばく露のおそれがあることから、有機則、特化則又はがん原性指針の対象物質かどうかに関わらず、有効な呼吸用保護具を使用すべきであること。有機ガス用防毒マスクについては、国家検定に合格したものを使用させるのはもちろんのこと、正しい装着と管理によりはじめて所定の効果が得られるものであるので、「防毒マスクの選択、使用等について」(平成17年2月7日付け基発第0207007号)に従うこと。なお、脂肪族ハロゲン化合物の中には、ジクロロメタンのように、試験ガスと比べて、破過時間(吸収缶が除毒能力を喪失するまでの時間)が極めて短いものがあるため、吸収缶の交換時期に留意するとともに、休憩中に有機ガス用防毒マスクを作業場に放置することがないよう、保管にも留意すること。また、業界団体等においては、(公社)日本保安用品協会の保護具アドバイザーに指導を求めることも有効であること。

「労働者が高濃度の化学物質にばく露するおそれがない」とは、単に化学物質の使用量が少ないことを指すものではなく、高沸点の化学物質のみを使用する場合などに蒸気圧等からばく露濃度を見積もったり、あらかじめ気中の化学物質の濃度を測定したりした結果が、ACGIH又は日本産業衛生学会が定める許容濃度等を常に下回り、かつ、労働者の呼吸域でのばく露がこれらを超えないと客観的に判断される場合があること。

5 保護手袋の使用(対策の3の(4)関係)

洗浄又は払拭の業務において、皮膚からの吸収を防止するために使用する不浸透性の保護手袋については、その組成と使用化学物質により浸透が始まる時間が大きく異なることに留意し、適切なものを選定すること。特に、市販のポリエチレン、ポリ塩化ビニル等の材質の手袋の中には、使用化学物質によって素材が溶出したり、短時間で浸透が始まり皮膚を保護することができないものがあることに留意すること。

6 作業方法等の改善(対策の3の(6)関係)

全体換気装置による換気が行われている作業場であっても、給気口から送られる新鮮な外気が作業場全体に行き渡らない等により、空気中の揮発性物質の蒸気の濃度は、必ずしも均一とはならない。このため、作業に従事する労働者が局所的に高い濃度の蒸気にさらされることにより当該労働者のばく露が大きくなることがあることに留意すること。また、洗浄作業を手作業で行う場合には、労働者の呼吸域が揮発性化学物質の発散場所からできるだけ離れた作業方法となるよう工夫すること。

7 危険有害性が不明の化学物質への対応(対策の4関係)

発散抑制措置は、化学物質の蒸気を発散源において吸引し、外気に排出する等の構造をもつものであること。気中に発散した化学物質を希釈しながら排出する全体換気装置は、発散抑制措置としては認められないこと。

 

(参考)

洗浄又は払拭の業務等における化学物質のばく露防止対策のための質疑応答集

平成25年3月

改正 平成25年8月

厚生労働省化学物質対策課

この質疑応答集は、「洗浄又は払拭の業務等における化学物質のばく露防止対策について」(平成25年3月14日付け基発0314第1号、平成25年8月27日付け基発0827第3号により改正。以下「通達」という。)及び「洗浄又は払拭の業務等における化学物質のばく露防止対策の周知に当たって留意すべき事項について」(平成25年3月14日付け基安化発0314第1号。平成25年8月27日付け基安化発0827第1号により改正)に関し、都道府県労働局及び労働基準監督署の担当官が、外部からの問い合わせに対応するための資料として作成したものです。集団指導等において適宜活用して構いませんが、必要に応じて、追加、見直しなどを行う予定ですので、最新版を用いるようにしてください。

1.対象業務について

問1 印刷業以外の製造業や製造業以外の業種も対象となりますか。また、洗浄作業を屋外において行う場合も対象になりますか。

(答) 屋内作業場において行う印刷機又は金属類の洗浄又は払拭の業務は、労働者が洗浄剤に含まれる溶剤成分に高濃度のばく露のおそれがあることから、特に、通達で対策を示したものです。このため、印刷業だけでなく、すべての業種が対象となります。また、通達の対策は、屋内作業場を対象としていますが、船舶の内部、車両の内部等通風が不十分な場所における業務についても、通達の趣旨を踏まえ、各項目に準じた対策を講ずるよう努めてください。

なお、通達は、有機則に規定する有機溶剤、特化則に規定するエチルベンゼン等に限定せず、溶剤を含む洗浄剤を幅広く対象としています。

2.SDSについて

問2 資材納入業者がSDSを交付してくれません。

(答) 通達の別添には、雇入れ時の教育、適切な換気の確保など、安衛則に基づき事業者が講ずべき措置が含まれていますが、事業場で使用する化学物質の種類や危険有害性がわからないと、事業者は、化学物質による健康障害を防止するために必要な措置を講ずることができません。また、製造者、商品名が同一の洗浄剤であっても、製造時期により含有割合が変更されることがあるため、商品名は必ずしも使用化学物質を特定できません。労働安全衛生法及び労働安全衛生規則においては、化学物質を譲渡又は提供しようとする者は、SDSを交付するなど相手方に危険有害性情報を通知することとされています。まれに、国際的に危険有害性の分類がなされていないためにSDSを交付することができない化学物質もありますが、使用実績がないために発がん性など危険有害性情報が判明していないこともあるので、よく調べずに洗浄又は払拭の業務に用いるべきではありません。

問3 洗浄剤を購入した際に入手したSDS(安全データシート)を確認したところ、成分の含有量として、アセトン1~5%、n―ヘキサン3%と記されている。このため、第2種有機溶剤の含有率は4~8%と幅を持ち、有機則の適用の有無が明確でないが、どのようにしたらよいか。適用法令の欄には、有機則の適用の有無は明記されていない。

(答) SDSは、譲渡又は提供する者が交付するものであり、法令やルールに則った範囲で、一定の幅が認められているので、資材納入業者等から受け取ったSDSに不明の点がある場合は、まずは当該業者に問い合わせて確認ください。ただし、問のように関係法令の適用が不明であるなど不適切と思われるSDSを受け取った場合は、最寄りの労働基準監督署等にお知らせください。法令の規定に抵触するかどうかを確認して、必要な指導を行います。

たとえば、問のSDSに関しては、以下のとおりです。

・成分の含有量については、10%未満の幅をもたせた通知は可(安衛則第34条の2の6)

・一方、安衛則第34条の2の4第4号に規定する「適用される法令」を明記の必要あり。したがって、このような場合には、成分の含有量の幅を小さくすること、「適用される法令」欄に有機則の適用の有無(適用されない場合も)を明記すること等により、SDS上で有機則の適用の有無を明確にするよう、SDS作成事業者を指導することとなります。

3.適切な換気の確保について

問4 全体換気装置は、どのようなものか。どの程度の効果があるか。

(答) 洗浄又は払拭の業務を行う屋内作業場で、局所排気装置やプッシュプル型換気装置を設けて発散抑制措置を講ずることができない場合は、法令に定めのある場合を除き、全体換気装置を稼働させることにより、作業場内の揮発性物質の平均的な濃度を下げることができます。全体換気装置は、外気を導入して外気に直接排出する空調システムだけでなく、外気に面した壁に取り付けられた換気扇なども該当します。直径30cmの軸流型換気扇では、1分間当たり13m3(1時間当たり780m3)程度の能力があるとされています(昭和53年12月25日付け基発第707号)。

全体換気装置を用いるときは、労働者のばく露低減の効果は、揮発性物質の消費量、換気の能力に加え、排風機の位置等による作業場内の気流と労働者の口元の位置によって変わることに留意しましょう。発散源から排気口に向かう気流の途中に作業者や他の労働者の口元が入るような位置関係では、ばく露が大きくなってしまいます。また、排風機の配置が悪く作業場内全体が換気されないと、気流が滞留することにより作業者や他の労働者のばく露が大きくなるおそれがあります。

問5 「空気中の化学物質の含有濃度が有害な程度とならない」ことの確認は、具体的にはどのようにして行うのか。

(答) 局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けている場合は、少なくともスモークテスター等で発散源からの空気が正しく吸い込まれ、発散抑制措置が適正に機能していることを確認します。これらを設けていない作業場では、1日の換気量を、例えば1時間当たり780m3の能力の全体換気装置を3台稼働させている場合は、1日8時間で780m3×3台×8時間=18,720m3と算定し、1日の化学物質の消費量を割ることで、便宜的な平均濃度が得られるので、これを許容濃度と比較します。

こうした簡便な手法は、本来の労働衛生工学での換気量計算とは異なり、また、作業や換気の状況による時間的変動や、揮発性物質の挙動を正確に表していないため、労働者の口元での正確なばく露量はわかりませんが、気中濃度の測定を行うことなく、換気や化学物質の消費量のみから濃度レベルを見積もることができるため、作業場内で作業を続けることによる長時間の高濃度ばく露を見過ごさずに対応することにつながります。ただし、ACGIHの短時間ばく露限度や上限値については、この平均値では比較できません。

4.呼吸用保護具の使用について

問6 化学物質の使用量が少なくても防毒マスクが必要となるのか。

(答) 洗浄又は払拭の業務においては、脂肪族ハロゲン化合物を含む洗浄剤をスプレー缶で吹き付ける場合など、化学物質の使用量が少なく作業場内の揮発性物質の平均的な濃度が低いと考えられる場合においても、局所排気装置又はプッシュプル型換気装置を設けない場合は、発散源近くで局所的に高濃度となることがあるため、作業に従事する労働者や近傍にいる他の労働者に高濃度のばく露のばく露のおそれがあると考え、洗浄又は払拭の業務を行っている間、有機ガス用防毒マスク等の有効な呼吸用保護具を使用してこれら労働者のばく露を減らしてください。

問7 自社の作業場は、防毒マスクが必要なほど劣悪な作業環境ではないと思う。

(答) 防毒マスクは、正しく使用すれば労働者の化学物質のばく露を低減することができるので、法令の規定により使用を義務付けられる場合に限らず積極的に使用してください。有機ガス用防毒マスク(国家検定合格品)は、大がかりなものばかりでなく、低濃度用のものは、吸収缶を付けた状態でも百数十グラム程度と軽量のものがあります。

なお、防毒マスクは、正しい着用法でも数%から10%のすき間からの洩れを見込む必要がありますが、顔面との間にあごひげなどですき間ができると、洩れが大きくなります。同様の理由で、顔面との間にタオルを挟んではいけません。

問8 トリメチルベンゼンのような芳香族炭化水素を使う場合でも防毒マスクを使う必要があるか。

(答) 石油系炭化水素類は、沸点や許容濃度がさまざまなので、個別に検討する必要があります。例えば、1,3,5―トリメチルベンゼンと1,2,4―トリメチルベンゼンの混合物については、SDSからどちらも沸点は約170℃、常温での蒸気圧約330Paとわかりますから、発散源の近くでは常温で(330Pa/101325Pa)*24450ml/mol=80ppm程度の濃度になる可能性があります。印刷機のローラーが熱をもっている場合や、洗浄槽を加熱する場合その他物理的な条件により、濃度は高くなることもあります。ACGIHも日本産業衛生学会も許容濃度として25ppmを提案していることから、局所排気装置等を設けない場合は、有機ガス用防毒マスクを使用するようにしましょう。保護手袋も必要です。また、含まれている他の混合物についても同様に確認します。

5.代替物の使用について

問9 洗浄剤を納入する業者から、有機則等の対応が不要な未規制物質への切替を進められている。これにより、有機則にかかる規制は不要となるので、換気装置をはずしてもよいか。

(答) 印刷機の洗浄・払拭の業務においては、ばく露をできるだけ少なくすることが重要ですが、有害要因を除去するため、より有害性が低いことがわかっている代替物への切替も可能です。

ただし、代替が効果をもつためには「有害性が低い」ことが前提です。代替に先立ち、

① 有機則、特化則、がん原性指針、変異原性指針等の規制情報の確認

② SDSなど入手可能な有害性情報による確認

③ 取扱い方法を勘案したばく露状況の把握

④ 国や研究機関などが発信する最新の知見の把握

などを行ってください。

①のみに依存して代替化を進めると、使用実績が少なく有害性情報が十分収集されていない(安全性が確認されていない)化学物質を選定してしまうことがあります。

また、安易に未規制物質への切替を進めて労働者の揮発性化学物質へのばく露が増大することがあってはなりません。洗浄剤を納入する業者などSDS作成事業者は、洗浄剤の利便性や特色を説明する際には、個別法令等での規制の有無だけでなく、危険有害性情報などについても幅広く情報提供するようにしてください。

なお、最新の情報として、例えば次のようなものがあります。

①:平成25年8月13日の政省令改正により、1,2―ジクロロプロパンが特化物に

④:平成24年11月IARCがトリクロロエチレンの発がん分類を2Aから1に、1,1,2,2―テトラクロロエタンを3から2Bに変更

平成25年5月、日本産業衛生学会が、1,2―ジクロロプロパンの発がん分類を2A、オフセット印刷工程を1とするよう提案(意見を募集し、最短で1年後に勧告)

平成25年7月、1―ブロモプロパンの洗浄業務により健康障害を生じたとの米国の緊急警告

注)IARC(国際がん研究機関)の発がん分類

1 ヒトに対する発がん性あり

2A ヒトに対する発がん性の可能性が高い

2B ヒトに対する発がん性の可能性あり

3 ヒトに対する発がん性を分類できない

4 ヒトに対する発がん性はおそらくない

問10 有機塩素系洗浄剤の代わりに、代替フロンや臭素系洗浄剤を使うことにした。労働安全衛生法の規制がないということだが、大丈夫か。

(答) 洗浄剤を代替するときは、問9の考え方をよく理解して進めるようにしてください。洗浄剤として、脂肪族塩素化合物とよく似た性質を持つものに、脂肪族フッ素化合物や脂肪族臭素化合物があり、これらの組合せも含め、まとめて脂肪族ハロゲン化合物と呼ばれます。例えば、一部のフッ素塩素系洗浄剤や1―ブロモプロパンなどについても、労働安全衛生規則第24条の15の規定に基づき、文書交付の対象となりますし、これら化学物質による職業性疾病を予防するのは、事業者の責務です。洗浄剤を購入して労働者に使用させるに当たっては、雇入れ時の教育にこれら化学物質の危険有害性や取扱い方法などの事項を含めなければなりませんから、必ずSDSを入手するようにしてください。

洗浄能力に着目して洗浄剤の代替を行う場合であっても、洗浄・払拭の業務では、ばく露が特に大きくなる可能性があることも考慮に入れて、有害性やばく露の程度を勘案した物質の選定をするようにしてください。