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定期健康診断における胸部エックス線検査等の対象者の見直しについて
平成22年1月25日基安労発0125第3号
(都道府県労働局労働基準部労働衛生主務課長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部労働衛生課長通知)
標記については、結核予防法の一部を改正する法律(平成16年法律第133号)及び結核予防法施行令の一部を改正する政令(平成16年政令第303号)並びに「労働者に対する胸部エックス線検査の対象のあり方等に関する懇談会」(以下「懇談会」という。)等における専門家による検討結果を踏まえ、労働安全衛生規則等の改正を行うとともに、平成22年1月25日付け基発0125第1号「労働安全衛生規則の一部を改正する省令及び労働安全衛生規則第四十四条第三項の規定に基づき厚生労働大臣が定める基準の一部を改正する件等の施行等について」(以下「基発0125第1号」という。)により通達されたところである。本見直しに関する事業者への周知、指導等においては、下記に留意されたい。
記
1 胸部エックス線検査の省略について
基発0125第1号の第3の1において、「定期健康診断の項目の省略基準の適用に関し、同基準の「医師が必要でないと認める」とは、胸部エックス線検査にあっては、呼吸器疾患等に係る自覚症状及び他覚症状、既往歴等を勘案し、医師が総合的に判断することをいう。したがって、胸部エックス線検査の省略については、年齢等により機械的に決定されるものではないことに留意すること。」とされていることを踏まえ、胸部エックス線検査の省略に関し医師が判断する際には、必要に応じて別添の懇談会の報告書を参考とすること。
2 問診票の活用等について
胸部エックス線検査の省略に関し医師が判断する際の呼吸器疾患等に係る自覚症状、既往歴等の把握等については、事前に問診票を配付し、回収することによる方法などがあること。
[別添]
労働者に対する胸部エックス線検査の対象のあり方等に関する懇談会報告書(抜粋)
(懇談会における検討結果)
1.定期健康診断における胸部エックス線検査について
1) 胸部エックス線検査を実施すべき対象者
下記の(イ)~(ハ)については、検討会報告書及び平成19年度研究報告書において、定期健康診断における胸部エックス線検査の必要性が十分示されており、省略すべきでない。
(イ) 40歳以上の者
(ロ) 40歳未満の者であっても、5歳毎の節目の年齢にあたる20歳、25歳、30歳及び35歳の者
(ハ) 40歳未満の者(20歳、25歳、30歳及び35歳の者を除く。)で、以下のいずれかに該当する者
一 学校(専修学校及び各種学校を含み、幼稚園を除く。)、病院、診療所、助産所、介護老人保健施設又は特定の社会福祉施設において業務に従事する者
※感染症法施行令第12条第1項第1号に掲げる者
二 常時粉じん作業に従事する労働者でじん肺管理区分が管理一であるもの又は常時粉じん作業に従事させたことのある労働者で、現に粉じん作業以外の作業に常時従事しているもののうち、じん肺管理区分が管理二である労働者
※じん肺法第8条第1項第1号又は第3号に掲げる者
三 呼吸器疾患等に係る自覚症状若しくは他覚症状又はそれらの既往歴のある者
※上記については、定期健康診断の際に実施される項目である「既往歴及び業務歴の調査」や「自覚症状及び他覚症状の有無の検査」等により、医師が判断する必要がある。
2) 胸部エックス線検査の実施を留意すべき対象者
下記については、一律には省略すべきでないとする対象集団を示す明確な知見は認められなかったものの、委員会での結論を踏まえると、一般に結核の感染リスクが高いと考えられることから、医師が胸部エックス線検査の省略について判断する際、特に留意すべき事項であると考える。
(イ) 結核の罹患の可能性が高いと考えられる多数の顧客と接触する場合等
(ロ) 結核罹患率が高い地域における事業場での業務
(ハ) 結核罹患率が高い海外地域における滞在歴
(ニ) 長時間労働による睡眠不足等
また、これらに該当しない者であっても、個別の既往歴の調査等で、特定の疾患(糖尿病、慢性腎不全等)の罹患や治療(免疫抑制剤の使用)等により免疫力の低下が疑われる状況にあることが把握され、結核の感染リスクが高いと考えられる場合などについては、医師が胸部エックス線検査の省略について判断する際、特に留意すべきであると考える。
3) その他
40歳未満で自覚症状や他覚症状がない者については、肺がん、その他の肺疾患等(慢性閉塞性肺疾患、縦隔腫瘍、サルコイドーシス)、循環器疾患に関し、それぞれの疾患で特定の集団の発症リスクが高いとする疫学的知見は認められず、かつ、有病率も稀であることから、医師が胸部エックス線検査の省略について判断する際、特に留意する必要性は乏しいと考える。
また、40歳未満で自覚症状や他覚症状がない者における、生活歴(喫煙歴)、就業形態、受動喫煙に関し、それぞれの項目で結核の感染リスク等の危険性が高いとする調査結果は認められなかったことから、医師が胸部エックス線検査の省略について判断する際、特に留意する必要性は乏しいと考える。
なお、特殊な業務における行政指導の健康診断で胸部エックス線検査が早期発見に有効な呼吸器疾患の発症が疑われるものについては、既に胸部エックス線検査を規定しているもの以外に胸部エックス線検査の必要性は認められないことから、医師が胸部エックス線検査の省略の可否を判断する際、特に留意する必要性はない。
2.定期健康診断以外の健康診断における胸部エックス線検査について
定期健康診断以外の健康診断における胸部エックス線検査等の必要性の有無については、検討会報告書で一定の結論が得られていたが、本懇談会においても再度検討した。
1) 雇入時の健康診断(安衛則 第43条)
雇入時の健康診断における胸部エックス線検査は、結核も含めて呼吸器疾患の診断、労働者の適正配置および入職後の健康管理に有用であるため、現行どおり実施すべきである。
2) 特定業務従事者の健康診断(安衛則 第45条)
特定業務の中には、土石、獣毛等のじんあい又は粉末を著しく飛散する場所における業務、坑内における業務等もあることから、特定業務従事者の健康診断における胸部エックス線検査は、現行どおり実施すべきである。
3) 海外派遣労働者の健康診断(安衛則 第45条の2)
海外に派遣する労働者の健康状態の適切な判断及び派遣中の労働者の健康管理に資する観点から、また、海外勤務を終了した労働者を国内勤務に就かせる場合の就業上の配慮やその後の健康管理に資する観点から、海外派遣労働者の健康診断における胸部エックス線検査は、現行どおり実施すべきである。
4) 結核健康診断(安衛則 第46条)
結核予防法が改正された際に、結核発病のおそれがあると診断された者に対する6ヶ月後の胸部エックス線検査等の実施に係る規定が、医療機関への受診を前提として廃止されたため、安衛法においても、同趣旨の結核健康診断の規定を廃止すべきである。
(上記に基づき、第1回懇談会後に所定の手続きを経て、平成21年4月1日に結核健康診断は廃止された。)
5) じん肺法に基づくじん肺健康診断(じん肺法第8条等)
じん肺法に基づくじん肺健康診断が3年に1回の実施となっている者(常時粉じん作業に従事しており、じん肺管理区分1※1)の労働者や、常時粉じん作業に従事したことがあり、現在は粉じん作業以外の作業に従事しているじん肺管理区分2※2)の労働者)については、じん肺健康診断が実施されない2年間については、安衛法に基づく定期健康診断における胸部エックス線検査を受けることを前提として、じん肺法に基づく定期外健康診断(じん肺又はじん肺の合併症にかかっている疑いがあると診断された時等に速やかに実施。)が規定されているため、安衛法における定期健康診断の際に胸部エックス線検査を実施すべきである。
注)
※1) 管理区分1
じん肺の所見がないと認められるもの
※2) 管理区分2
エックス線写真の像が第一型(両肺野にじん肺による粒状影又は不整形陰影が少数あり、かつ、大陰影がないと認められるもの。)でじん肺による著しい肺機能の障害がないと認められるもの
○懇談会の報告書における略語について 安衛法…労働安全衛生法 安衛則…労働安全衛生規則 感染症法施行令…感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律施行令 検討会…労働安全衛生法における胸部エックス線検査等のあり方検討会 平成19年度研究…労働安全衛生法に基づく胸部エックス線検査の労働者の健康管理に対する有効性等の評価に関する調査・研究 委員会…胸部エックス線検査を実施すべき対象者の範囲に関する調査研究委員会 |