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通達:「機械の包括的な安全基準に関する指針」の解説等について

 

「機械の包括的な安全基準に関する指針」の解説等について

平成19年7月31日基安安発第0731004号

(都道府県労働局労働基準部安全主務課長あて厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課長通知)

 

「機械の包括的な安全基準に関する指針」(以下「指針」という。)については、平成19年7月31日付け基発第0731001号「「機械の包括的な安全基準に関する指針」の改正について」(以下「局長通達」という。)により改正されたところであるが、指針の内容の解説、留意事項等を下記のとおりとりまとめたので、指針の周知等に当たって参考とされたい。

なお、平成13年6月5日付け基安安発第14号「「機械の包括的な安全基準に関する指針」の解説等について」は、本通達をもって廃止する。

 

1 「第1の1 趣旨」について

「危険性又は有害性等の調査」は、平成18年3月10日付け基発第0310001号「危険性又は有害性等の調査等に関する指針について」(以下「調査等指針通達」という。)の記の1の(3)にあるとおり「リスクアセスメント(risk assessment)」とされているものであること。

2 「第1の2 適用」について

(1) 「危険性又は有害性」は、調査等指針通達の記の2の(2)にあるとおり、ISO(国際標準化機構)等において「危険源」、「ハザード(hazard)」等の用語で表現されているものであること。

(2) 機械を労働者に使用させる事業者が、機械の仕様(構造、寸法、可搬重量、定格、動作形態等)を変更した場合、複数の機械を組み合わせて統合システム化を行う場合、ガード又は保護装置の取り外し又は無効化を行う(設計時に予め意図されていたものを除く。)場合は、本質的安全設計方策の実施等機械の製造等を行う者が行う措置に準じた保護方策を行う必要があること。

3 「第1の3 用語の定義」について

指針の第1の3の用語の定義は、JIS B9700―1(機械類の安全性―設計のための基本概念、一般原則―第1部:基本用語、方法論)における定義とも整合を図ったものであり、必要に応じ同JISを参考とすること。

(1) 「機械」の定義における「制御部」には、オンオフのみの操作スイッチを含むものであること。「動力部」に用いられる動力源としては、電力、内燃機関、油圧、空気圧等があり、人力のみによって動かされるものは「機械」には該当しないこと。

(2) 「安全防護」の定義において、「ガード」には、例えば、囲い、柵、蓋、覆い等容易に取り外せないように取り付けた固定式ガード、扉のように開閉できるようにした可動式ガード、固定式ガードの一部を作業等の必要性に合わせて調節できるようにした調節式ガードがあること。

また、「保護装置」には、例えば、光線が遮断されることにより労働者の存在を検知する光線式安全装置、マット状のスイッチにより労働者がその上に乗ったことを検知する圧力検知マット、労働者の身体が接触したことを検知するバンパースイッチ、機械の起動操作を両手で行うことにより手が危険区域内にあるときは機械の操作ができないようにした両手操作制御装置、連続的に操作しているときのみ機械が作動するイネーブル装置等があること。

(3) 「機械の意図する使用」の定義における「運転」には、機械の起動、操作、加工物の搬入・搬出、一時的な停止等の機械の運転に関する作業が含まれること。

(4) 「合理的に予見可能な誤使用」が起こり得る場合としては次のようなものがあること。

ア 機械の使用中に、機能不良、事故又は故障が生じた時の人の反射的な行動があった場合

イ 集中力の欠如又は不注意から生じる(故意の誤使用でない)誤った行動があった場合

ウ 作業中における「近道反応」、「省略行動」等の行動があった場合

エ 機械の運転を継続させようという動機から生じる不適切な行動があった場合

オ 機械の製造等を行う者が意図する使用目的、用途、使用方法を正しく知らない労働者がとりがちな行動があった場合

4 「第2 機械の製造等を行う者の実施事項」について

(1) 指針の第2の1の(2)の「危険性又は有害性の同定」とは、危険性又は有害性を特定することであり、JIS等において「危険源の同定」とされているものであること。

(2) 指針の第2の4に掲げる「機械に労働者が関わる作業等」は、JIS B9700―1の5.3において「種々の運転モード及び種々の介入方法」と表現されているものであること。なお、危険性又は有害性の同定では、機械に関していかなる状況においても安全が確保されるよう、取り扱われるあらゆる場面、事態を想定しておくことが必要であり、同項に掲げる作業等以外にも危険が想定される状況があれば考慮する必要があること。

ア 指針の第2の4のアの「機械の製造の作業」において同定する危険性又は有害性については、当該製造等する機械又はその部品若しくは構成品に関する危険性又は有害性であり、当該機械を製造等する際に使用する機械等の危険性又は有害性は、ここでの対象ではないこと。なお、当該機械を製造等する際に使用する機械等の危険性又は有害性は、指針第3の対象となること。

イ 指針の第2の4のオの「機械に故障、異常等が発生している状況」には、機械の部品の劣化や破損、回路の短絡等による故障、電磁ノイズによる誤動作、ソフトウェアエラーによる誤動作等が含まれること。

(3) 指針の第2の5の(1)及び6の(1)の「適切なリスクの低減が達成されている」とは、次のアからキまでのすべてが満たされていることであること。

ア 危険性又は有害性の同定の際に、機械に労働者が関わるすべての作業等が考慮されていること。この際、ある特定の作業のために設計された機械が、意図する作業以外の作業に使用される可能性を含めていること。

イ 機械の製造等を行う者は、指針の第2の6により、リスクの低減を実施していること。

ウ 危険性又は有害性が除去されていること、又は危険性又は有害性によるリスクが合理的に実現可能な最低のレベルにまで低減されていること。

エ 採用する保護方策により、新たに危険性又は有害性が生じていないこと、又は生じたとしてもリスクが合理的に実現可能な最低のレベルにまで低減されていること。

オ 残留リスクについて、譲渡の際に十分に通知され、かつ、警告されていること。

カ 保護方策の採用により、機械を操作する労働者の作業条件が悪化していないこと。

キ 採用した保護方策が、互いに干渉せず支障なく成り立つものとされ、かつ、機械の機能や使い易さを過度に低減せず意図する使用を妨げないものとされていること。

(4) 指針の第2の6の(1)の「優先順位」は、JIS B9700―1の5.4において「3ステップメソッド」と表現されているものであること。

(5) 指針の第2の7の「記録」については、機械を労働者に使用させる事業者から、機械に対する保護方策の追加を検討するため、又は使用上の情報の内容が不足している等の理由で当該機械に関して問い合わせがあった場合に適切な助言が行えるよう、当該機械について実施した危険性又は有害性等の調査等の結果について記録を作成し、保管しておくものであること。

5 「第3 機械を労働者に使用させる事業者の実施事項」について

(1) 指針の第3の3の実施時期について、既に設置されている機械であって、調査等が実施されていないものに対しては、調査等指針通達の記の5の(7)にあるとおり、計画的に調査等を実施することが望ましいこと。

(2) 指針の第3の5の情報の入手について、機械の製造等を行う者から適切な使用上の情報が提供されるようにするために、必要に応じ、当該機械の使用を予定している設置場所、使用条件、加工材料の危険性又は有害性に関する情報等を、機械の製造等を行う者に予め提供することが望ましいこと。

(3) 指針の第3の7の(1)及び8の(1)の「適切なリスクの低減が達成されている」とは、上記4の(3)を準用するものであること。

(4) 指針の第3の8の保護方策の検討及び実施においては、次の点に留意する必要があること。

ア 残留リスクを低減するための保護方策として、使用上の情報において示された事項については、そのすべてを確実に実施すること。

イ 調査等を実施した結果、使用上の情報の内容に不足等があった場合には、機械の製造等を行う者に当該内容の不足等に関して情報提供すること。

6 「別表第1 機械の危険性又は有害性」について

指針の別表第1の1の「機械的な危険性又は有害性」に関して、より詳細な危険性又は有害性の例として、JIS B9700―1の4.2に押しつぶし、せん断、切傷又は切断、巻き込み、引き込み又は捕捉、衝撃、突き刺し又は突き通し、こすれ・擦りむき、高圧流体の噴出による人体への注入が示されていること。

7 「別表第2 本質的安全設計方策」について

(1) 指針の別表第2の1は、機械の表面や開口部の鋭利な端部等により、切傷を負うことや身体の一部又は着衣が引っ掛かり、負傷すること等を防止する措置を求めたもので、具体的な方法としては、鋭利な端部、鋭角部、粗い表面、突起部を設けない設計とすることのほか、バリを除去すること、端部を折り曲げること、角部に丸みを付けること、管の開口端部に蓋をつけること等があること。

(2) 指針の別表第2の2は、機械的な危険性又は有害性に配慮して、機械の形状、寸法、駆動力等の設計を行うことを求めたものであること。

本項の(1)の安全距離の例として、JIS B9707(機械類の安全性―危険区域に上肢が到達することを防止するための安全距離)、JIS B9708(機械類の安全性―危険区域に下肢が到達することを防止するための安全距離)、JIS B9711(機械類の安全性―人体部位が押しつぶされることを回避するための最小すきま)が示されていること。

(3) 指針の別表第2の3は、加工物の自動供給装置、製品の自動取出し装置、送りスライド、ジグ等を用いて、機械の使用中に危険性又は有害性に接近する必要をなくすこと又は頻度を低減することを求めたものであること。その実施に当たっては、以下の点に留意することが必要であること。

ア 加工物の搬入・搬出作業等の自動化のための装置を付加する場合には、装置の動作の不具合を修正する場合等を含むすべての作業に対して調査等を実施し、当該装置と機械部分又は加工物との間でのはさまれ等の危険性又は有害性が新たに生じないようにする必要があること。

イ 機械を労働者に使用させる事業者が、加工物の搬入・搬出作業等の自動化のために、産業用ロボットやハンドリング装置等を機械に組み合わせてシステム化を行う場合、当該事業者は、機械の製造等を行う者が行う本質的安全設計方策の実施等の措置に準じた措置を行う必要があること。

(4) 指針の別表第2の4は、材料の強度等に関する規格値や適切な計算方法等に基づいて機械を設計することにより、機械の破損・破壊等の可能性を最小化することを求めたものであり、考慮すべき要素としては、本項に掲げたもののほか、応力変動がある部分の疲労強度、回転要素の静的及び動的バランス、材料の特性(かたさ、延性、ぜい性、均一性等)があること。

(5) 指針の別表第2の5は、機械の運動自体で生じる力、操作により加わる力、地震、風等による力等により機械が転倒することを防止する措置を求めたものであり、質量分布や運動部分のモーメント等を考慮して安定性の高い形状とすること、張出部を設けて安定性を確保すること等の方法があること。

なお、設計段階での措置だけでは安定性が十分に確保できない場合には、アンカーボルト、運動制限装置、負荷制限装置、転倒限界に近づいたことを警告する警報等の措置を講じる必要があること。

(6) 指針の別表第2の6は、感電のリスクを低減するために、設計段階から直接接触及び間接接触による感電から保護するための措置を求めたものであること。

「直接接触」とは、充電部に直接接触することをいい、直接接触に対する感電保護としては、手が届かない位置に充電部を配置すること、破壊せずには除去できない絶縁物で充電部を完全に覆うこと等があること。

また、「間接接触」とは、短絡等の故障のために充電状態となった導電性部分に接触することをいい、間接接触に対する感電保護としては、二重絶縁構造又は強化絶縁構造の機器を使用すること、導電性部分を保護ボンディング回路に接続したうえで絶縁不良等が発生したときに電源を自動断路する機器を備えること等があること。

なお、より詳細な感電保護の方法の例及びこれらに対する技術的要求事項がJIS B9960―1(機械類の安全性―機械の電気装置―第1部:一般要求事項)の6に示されており、感電保護を講じる際には当該事項も参考となること。

(7) 指針の別表第2の7は、機械の騒音、振動等の発生の回避又は低減を求めたものあり、例えば、騒音の発生を避けるために内燃機関や空圧機器に代えて電気機器を用いること、機械的切断に代えて水による切断とすること、振動低減のために質量の配分、運動の振動数又は振幅の変更を行うこと等があること。

(8) 指針の別表第2の8は、機械で放射線等を使用する場合においては、放射出力を必要最小限のレベルに抑制することを求めたものであること。放射線等によるリスクを低減するためにこのほか、例えば、危険性の高い放射線等を使用しないこと、放射線等の放射時間を短くすること、放射線等が標的に対して集中し、外部に拡散しないように放射源を設計すること、機械の操作を遠隔操作とすること等の方法が考えられること。

また、レーザー光線については、レーザー光路を労働者の眼の高さを避けて設定すること等の方策が「レーザー光線による障害防止対策要綱」(昭和61年1月27日付け基発第39号「レーザー光線による障害の防止対策について」の別紙)に示されていること。

(9) 指針の別表第2の9は、機械で使用する材料、塗料、触媒、切削油、燃料等により機械が着火源となって火災又は爆発が発生するリスクを低減することを求めたものであり、使用する材料を難燃性のものとすること、機械の各部の温度上昇を制限すること、可燃性ガス等が爆発範囲の濃度にならないようにすること、機械の構成品に本質安全防爆構造の電気機械器具を使用すること等の方法があること。

(10) 指針の別表第2の10は、機械で使用する材料、塗料、触媒、切削油、燃料等の物質を有害性のない又は少ないものとすることにより、中毒、眼疾患、皮膚疾患等の健康障害のリスクを低減することを求めたものであること。

機械で使用する化学物質等の危険性又は有害性に対する措置ついては、平成18年3月30日付け指針公示第2号「化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針」を参考とすること。

(11) 指針の別表第2の11は、機械の設計に当たって人間工学に基づく原則や知識を活用することにより、労働者の身体的負荷と精神的負荷を軽減すること及び照度不足による誤認等から誤操作が発生することを防止することを求めたものであること。

本項に掲げるもののほか次のような例があり、また、JIS B9700―2の4.8にも例が示されていること。

ア 作業の妨げとなる点滅光、閃光等がないようにすること。

イ 機械から騒音、振動、温熱等を可能な限り除去すること。

ウ 作業位置から見て、危険な箇所が十分認識できるようにすること。

(12) 指針の別表第2の12は、誤起動、誤動作等の発生を考慮せずに制御システムを設計すること等により危害が生じることを防止することを求めたものであること。本項に掲げた事項のほかに、制御システムの本質的安全設計方策の適用の例がJIS B9700―2の4.11に示されていること。

制御システムのフェールセーフ化の手法については、「工作機械等の制御機構のフェールセーフ化に関するガイドラインの策定について」(平成10年7月28日付け基発第464号、以下「フェールセーフ化ガイドライン」という。)に示されているので、本項の実施に当たっては当該ガイドラインを活用することが望ましいこと。

また、予期しない起動を引き起こす原因の例がJIS B9700―1の3.29に示されていること。

ア 指針の別表第2の12の(1)は、例えば、起動が電圧又は流体圧力の印加又は増加によって行われ、停止が電圧又は流体圧力の除去又は低減によって行われるものとすることを求めたものであること。

なお、「停止」について、駆動源が電力である場合、「停止」には次の3つの方式(停止のカテゴリー)があることがJIS B9960―1の9.2.2に示されており、調査等の結果に基づいて、適切な停止のカテゴリーを選択する必要があること。

① カテゴリー0:電源を直接遮断することによる停止

② カテゴリー1:機械が停止するために電力を供給し、その後停止した時に電源を遮断する制御停止

③ カテゴリー2:機械に電力を供給したままにする制御停止

これらのうち、カテゴリー2の停止は、例えば、プログラムにより静止の維持が命令されている状態や他の機械や装置からの信号待ちの状態が該当するものであり、電力を供給したままであることから、機械の運動部分が静止していても、運転を停止しているとはいえないことに留意する必要があること。

イ 指針の別表第2の12の(2)は、例えば、エンジンの始動と同時に機械が運動を開始してしまうこと、外部電源への接続と同時に機械が運動を開始してしまうこと等を防止する措置を求めたものであること。

ウ 指針の別表第2の12の(3)は、例えば、停電による電力供給の中断等のエネルギー供給に異常が発生した場合又は保護装置の作動、加工物の位置ずれ、搬出物の引っかかり等によって機械が停止した場合に、正常に回復すると同時に機械が運転を開始すると、異常処理等の作業を行っていた労働者が被災するおそれがあることから、このような場合に自動的に運転を開始しないようにすることを求めたものであること。

エ 指針の別表第2の12の(4)の「プログラムの変更が容易にできない」ようにする方法には、再プログラムが不可能なメモリに書き込んだソフトウェアを使用すること、パスワードを設定してソフトウェアへのアクセスを制限すること等の方法があること。

オ 指針の別表第2の12の(5)の電磁妨害の影響を低減する方策の例がJIS B9960―1の4.4.2に示されていること。

(13) 指針の別表第2の13は、安全上重要な機構や制御システムの故障の確率を最小化することを求め、そのための方策を示したものであること。

ア 「非対称故障モードの構成品」とは、複数の故障モードがある部品や回路において、特定の故障モードの発生確率が他より極端に高くなるような特性で、部品や回路にこの特性を持たせることにより、安全側に(一般的には機械が停止する側に)故障する確率を高くするようにした構成品であること。

イ 「冗長化」とは、複数の回路を並列的に設けることにより、一部に故障が生じても機能を維持する構造としたものであること。ただし、自動監視又は点検間隔の短い定期的な点検により故障を可能な限り検出できるようにする必要があること。また、冗長化には、設計、技術、原理等の異なる複数の系を設けて、同一原因による故障を避けるようにする異種冗長化構成があること。

ウ 「自動監視」とは、装置に自己診断機能を持たせ、故障や異常を定期的かつ自動的に確認し、故障等があれば機械を停止させる等の安全機能が作動するようにするものであること。

エ 適切な部品及び構成品を選択する際の指標としてJIS B9705―1(機械類の安全性―制御システムの安全関連部―第1部:設計のための一般原則)に「安全制御のカテゴリー」が、制御システムの安全機能のリスク低減性能を解析する際の指標としてJIS C0508(電気・電子・プログラマブル電子安全関連系の機能安全)に「安全度水準」が示されていること。

(14) 指針の別表第2の14は、誤操作による危害の発生を防止するため、操作装置等に係る留意事項をまとめたものであり、人間工学的な配慮、操作回路の適切な設計、操作部分の適切な配置等の措置があること。

ア 指針の別表第2の14の(1)について、本号で掲げた事項のほか、操作装置(手動制御器)において配慮すべき事項が、JIS B9700―2の4.8.7、4.8.8、4.11.8及びJIS B9960―1の10.1.2に示されていること。

イ 指針の別表第2の14の(1)のイについて、視覚、聴覚及び触覚シグナルの色、記号及び技術的要求事項がJIS B9706―1(機械類の安全性―表示、マーキング及び作動―第1部:視覚、聴覚及び触覚シグナルの要求事項)に示されていること。

ウ 指針の別表第2の14の(1)のウに関連する技術的要求事項がJIS B6011(工作機械―操作方向)に示されていること。

エ 指針の別表第2の14の(1)のコに関連する技術的要求事項がJIS B9706―3(機械類の安全性―表示、マーキング及び作動―第3部:アクチュエータの配置及び操作に対する要求事項)に示されていること。

オ 指針の別表第2の14の(1)のシの「安全防護を行うべき領域」とは、別表第3の2で定める領域のことであること。

カ 指針の別表第2の14の(2)のアは、誤って身体の一部がレバー等に触れる等、起動させようという意図がないのに機械が起動してしまうことによるリスクを低減しようとするもので、押しボタンを押しながら起動レバーを動かさないと機械が起動しないようにすること等を求めたものであること。

キ 指針の別表第2の14の(2)のウは、機械の安全防護領域内に他の作業者がいるにもかかわらず、機械の運転を開始して機械にはさまれる等のリスクを低減するための措置を求めたものであること。

ク 指針の別表第2の14の(3)のイの(ア)から(ウ)のうち、いずれかの機能を備えない場合又は他の保護方策を実施した場合は、当該機能を備えなかったことに起因するリスク及びその低減方策について使用上の情報として提供することが必要であること。

また、設定、教示、工程の切替え、そうじ又は保守点検等の作業に対する制御モードに関する技術的要求事項がJIS B9700―2の4.11.9に示されていること。

ケ 指針の別表第2の14の(3)のイ(イ)の「イネーブル装置」とは、連続的に操作するとき、機械が機能することを許可するための補足的な手動操作装置のことで、その技術的要求事項がJIS B9960―1の9.2.5.8に示されていること。

「ホールド・ツゥ・ラン制御装置」とは、手動制御器を作動させている間に限り危険な機械機能の起動開始指令を出し、かつ、維持する制御装置のことで、JIS B9960―1の9.2.5.6に示されていること。

両手操作制御装置に関する技術的要求事項については、JIS B9960―1の9.2.5.7に示されていること。

(15) 指針の別表第2の15は、保守点検作業におけるリスクを低減するための措置を示しているものであり、保守点検作業には、当該部品及び構成品の入手、保管、廃棄等の関連作業が含まれること。

また、機械の製造等を行う者は、保守点検作業の方法及び手順を使用上の情報として提供することが必要であること。

8 「別表第3 安全防護の方法」について

(1) 指針の別表第3の1の安全防護は、別表第2の本質的安全設計方策によっては合理的に除去できない又はリスクを低減できない危険性又は有害性に対して、リスクの低減のために実施するものであること。

なお、非常停止装置は別表第4の付加保護方策のひとつであって、「両手操作制御装置等」の「等」には含まれないこと。

(2) 指針の別表第3の2は、安全防護領域の設定方法について定めたものであること。

ア 指針の別表第3の2の(2)の「はさまれ等の危険が生じることを防止するために必要な空間」とは、安全防護領域内に労働者又はその身体の一部が入る場合に、ガードと機械の運動部分にはさまれることがないようにするため又は労働者が待避するために必要な幅を確保するための空間をいうこと。

人体部位が押しつぶされることを回避するための最小すきまの例がJIS B9711(機械類の安全性―人体部位が押しつぶされることを回避するための最小すきま)に示されていること。

イ 指針の別表第3の2の(3)の「ガード又は保護装置が有効に機能するために必要な距離」とは、例えば、格子状のガードであればその格子の間から身体の一部を入れた場合に格子の幅等に応じて身体の一部が内部に進入し得る距離以上の距離を、光線式安全装置であれば身体の一部が光線を遮断してから機械が停止するまでの時間に進入し得る距離及び光軸の間隔に応じて光軸を遮断することなく身体の一部が進入し得る距離以上の距離を、両手操作制御装置であれば手がスイッチを離れてから機械が停止するまでの時間において危険区域に手が進入し得る距離以上の距離をいうものであり、JIS等において「安全距離」とされるものであること。

また、危険区域に上肢が到達することを防止するための安全距離の例がJIS B9707に、危険区域に下肢が到達することを防止するための安全距離の例がJIS B9708に、手・腕等の接近速度に基づく保護装置の設置位置決定方法の例がJIS B9715(機械類の安全性―人体部位の接近速度に基づく保護設備の位置決め)に示されていること。

(3) 指針の別表第3の3は、危険性又は有害性に応じたガード又は保護装置の性能、設置の方法等について示したものであること。

ア 指針の別表第3の3の(1)及び(2)は機械的な危険性又は有害性に対する安全防護について示したものであること。

(ア) 指針の別表第3の3の(1)は、ベルト伝動装置やシャフト伝動装置等の動力伝達部分により生じる危険性又は有害性について安全防護を実施する場合は、固定式ガード又はインターロック付き可動式ガードのいずれかを設けることを求めたものであること。

(イ) 指針の別表第3の3の(2)は、機械の正常な運転において、労働者が安全防護領域へ進入する必要性に応じて適切なガード又は保護装置の種類を示したものであること。なお、ガード又は保護装置の選択に関して参考とすべき事項がJIS B9700―2の5.2に示されていること。

(ウ) 指針の別表第3の3の(2)のアは、機械の正常な運転において、労働者が安全防護領域に入る必要がない場合は、安全防護領域のすべてを囲うようにガード又は保護装置を設置することを求めたものであり、この際、固定式ガードを優先して採用することが望ましいこと。

(エ) 指針の別表第3の3の(2)のイ(ア)の「労働者の身体の一部が進入するために必要な開口部」とは、例えば、材料の供給、加工後の製品の取り出しのために労働者が手を進入させる部分等があること。

(オ) 指針の別表第3の3の(2)のイ(イ)を実施するに当たり、例えば、機械を操作する労働者以外の者が安全防護領域に進入するおそれがある機械において両手操作制御装置と光線式安全装置を組合せて使用する等、危険性又は有害性等の調査の結果に基づいて、適宜、ガード及び保護装置を組み合せて使用することが必要であること。

(カ) 指針の別表第3の3の(2)のイ(ウ)は、開口部に可動式ガード等のガード又は光線式安全装置、圧力検知マット等の身体の一部の進入を検知して機械を停止させる保護装置を設けた場合であって、労働者が安全防護領域内に全身を入れることが可能なときは、労働者が進入した状態で他の者が機械を起動したときに保護装置が機能しないこととなることから、安全防護領域内の労働者の存在を検知する装置を設け、労働者がいる場合には機械を起動できないようにインターロック機構を設けること等の措置を講じることを求めたものであること。

なお、「安全防護領域内の労働者を検知する装置等」は、領域内直接監視用レーザスキャナや領域内直接監視用マットスイッチ等安全防護領域内を直接監視する工学的手段を指すが、現在の技術水準に鑑みれば、すべての機械に対して、これらの直接監視手段を付設することが必ずしも合理的に実現可能でない場合もあり、「安全防護領域内の労働者を検知する装置等」の「等」には、ロックアウトによる進入管理や死角領域に対するミラーの設置といった間接的な監視方策も含むものであること。

(キ) 指針の別表第3の3の(2)のイ及びウを実施するに当たり、設置したガード又は保護装置が作業遂行を著しく妨げ、又は機械を操作する労働者に過度な負担を与えるものである場合、当該ガードの取り外しや保護装置の無効化が行われるおそれが高まることから、労働者が開口部から進入する又は開口部に接近する頻度等を考慮して、作業内容に応じた適切なものを選択することが重要であること。

イ 指針の別表第3の3の(3)は、機械の油圧及び空圧設備における高圧流体の噴出、高圧ホースの跳ね等によるリスクの低減を求めたものであり、高圧流体が通るホース等が外力により損傷することがないようカバーを設けること、圧力が許容値を超えないよう制限弁を設けること、噴出のおそれのある部分にガードを設けること、機械の運転が停止されたとき自動的にアキュムレータが減圧されるようにすること等の措置があること。

ウ 指針の別表第3の3の(4)のうち、機械の充電部分で労働者が接触し又は接近することにより感電の危険を生ずるおそれのあるものについては、感電を防止するための囲い又は絶縁覆いを設けなければならないこと。

なお、感電保護の方法の例がJIS B9960―1の6に示されていること。

エ 指針の別表第3の3の(5)は、高温又は低温の部分に労働者が接触し又は接近することにより火傷等を負うリスクを低減するために、当該部分にガードを設けること、断熱材を取り付けること等の措置を求めたものであること。

オ 指針の別表第3の3の(6)は、防振技術や制振技術を機械に適用することにより騒音又は振動をできる限り低減することを求めたものであること。

なお、騒音については、騒音性難聴等の健康障害をもたらすレベル以下であったとしても、警報が聞こえないといった事態を招くおそれもあり、可能な限り抑制することが望ましいこと。

カ 指針の別表第3の3の(7)は、放射線等にばく露されることによる健康障害を防止するために、機械の外部に放射又は漏洩する放射線等の量を可能な限り低減することを求めたものであること。「外部に漏洩する放射線等の量を低減すること等」の「等」には、例えば、遮へい体が開放された場合には放射源からの放射が直ちに停止するようインターロックを構成すること、放射源と労働者とのばく露防止に必要な距離を確保することがあること。

キ 指針の別表第3の3の(8)は、機械において取り扱われる有害物質等による健康障害を防止するための措置を求めたものであること。

ク 指針の別表第3の3の(9)は、加工中の材料、加工後の製品、金属屑等の排出物又は工具の破片が、通常の作業工程において、あるいは位置不良、破損等により落下、飛来等することによるリスクの低減を求めたものであり、飛散防止のためのガードを設けること等の措置があること。

(4) 指針の別表第3の4は、各種ガードの構造上の要件を示したものであること。ガードの形状、大きさ、配置、色等を決定するに当たっては、機械の正常な運転の作業のほか、設定、教示、工程の切替え、そうじ、保守点検、異常に対する措置等の作業において、当該作業の遂行を妨げず、かつ、当該作業を行う労働者に大きな負担を与えないものとするよう留意することが重要であること。

ア 指針の別表第3の4の(2)は、機械の正常な運転の作業の必要上、安全防護領域に進入するために設けられた開口部に対するリスクの低減とは異なり、加工材料の搬入や加工後の製品の搬出のために設けられた開口部において、製品の位置ずれ等の不具合が起きたときに反射的に労働者が手を入れて修正しようとする場合に対するリスクの低減を想定したものであること。

指針の別表第3の4の(2)のイの「開口部を通って労働者の身体の一部が最大動作領域に達する」ことを防止する措置を講じるに当たり、危険区域に上肢が到達することを防止するための安全距離の例がJIS B9707に、危険区域に下肢が到達することを防止するための安全距離の例がJIS B9708に示されていること。

イ 指針の別表第3の4の(3)の可動式ガードについて、作業能率を上げる等のため可動式ガードのリミットスイッチ部にテープを巻いて固定したり、電磁スイッチ部に磁石を付けたりすること等により安全機能が無効化されることがあることに留意する必要があること。

可動式ガードが開いたことを検知する目的で設置されるスイッチのうち、機械接点式のものについては、接点部分の溶着による作動不良を防ぐため、当該可動式ガードの構成品に直接接触して又は当該可動式ガードの動作に機械的に連動して強制的に接点が切り離される構造を有するものとすること。

また、光電式、磁気式、半導体式等の機械接点式以外のスイッチについては、故障等により当該可動式ガードが完全に閉じていないときに危険性又は有害性である運動部分を誤って動作可能な状態とするおそれがあることから、調査等の結果に基づいて、例えば、当該可動式ガードのインターロック機構に要求される安全制御のカテゴリー(JIS B9705―1)に対応した機器を採用する必要があること。

ウ 指針の別表第3の4の(3)のイは、可動式ガードを閉めたときに不意に機械の運動部分が動作することを防止する措置を求めたものであること。ただし、「可動式ガード」の特別な形式として、ガードが所定の位置(閉じた位置)に到達したら他の起動制御器を用いることなく機械を自動的に起動させる機能を持たせた可動式ガード(以下「制御式ガード」という。)には、本号は適用されないこと。機械又は作業の性質に応じ、制御式ガードを保護方策として採用する場合には、本号が適用できないことにより生じるリスクを低減する必要があること。特に、ガードが開いたときに開口部を通って労働者が安全防護領域内に全身を入れることが可能な可動式ガードは、制御式ガードとしてはならないこと。

エ 指針の別表第3の4の(3)のエの「ロック機構付きの可動式ガード」において、開口部を通って安全防護領域内に労働者の全身が入ることができるときは、当該領域内に閉じ込められた労働者が脱出できるよう、ガードの内側から操作することが可能な手動ロック解除ハンドル等のロック解除できる手段を設けることが望ましいこと。

(5) 指針の別表第3の5は、保護装置に共通的な構造上の要件を定めたものであること。

なお、保護装置のうち、電気的検知保護設備に関する技術的要求事項がJIS B9704―1(機械類の安全性―電気的検知保護設備―第1部:一般要求事項及び試験)に、光線式安全装置に関する技術的要求事項がJIS B9704―2(機械類の安全性―電気的検知保護設備―第2部:能動的光電保護装置を使う設備に対する要求事項)に、レーザスキャナに関する技術的要求事項がJIS B9704―3(機械類の安全性―電気的検知保護設備―第3部:拡散反射形能動的光電保護装置に対する要求事項)に示されていること。

(6) 指針の別表第3の6は、特に設定、教示、そうじ、修理等のために機械の運動部分の動作領域に進入又は接近して作業を行うときに、機械が不意に動作することにより危険が生じるおそれがあるときは、運動部分の動作を確実に停止させるよう機械的拘束装置を設けることを求めたものであること。

(7) 指針の別表第3の7の「ガード及び保護装置の制御システム」とは、機械の制御システムのうち、安全機能に関連する部分をいい、JIS B9705―1において「制御システムの安全関連部」とされているものであること。

また、指針の別表第3の7の(2)に掲げたシステムの構造は、フェールセーフ化ガイドラインにおいて、「安全確認システム」とされているものであること。

なお、指針の別表第3の7の(3)について、適切な部品及び構成品を選択する際の指標として「安全制御のカテゴリー」(JIS B9705―1)が、制御システムの安全機能のリスク低減性能を解析する際の指標として「安全度水準」(JIS C0508)が示されていること。

9 「別表第4 付加保護方策の方法」について

(1) 指針の別表第4の1は、緊急の事態が生じたときに、機械の操作者又は共同作業者等が機械を停止させ、労働災害の発生又は被害の拡大を防止することができるようにするものであること。

指針の別表第4の1のアの明瞭に視認できるものとしては、スイッチの取り付け部の背景を黄色とし、スイッチの操作部を赤色としたものがあること。

なお、非常停止装置の設計に関する詳細事項が、JIS B9703(機械類の安全性―非常停止―設計原則)の4.4及びJIS B9960―1の9.2.5.4.2に示されていること。

(2) 指針の別表第4の2の「労働者の脱出又は救助のための措置」には、非常停止後に機械の特定の要素を手で動かせるようにすること、はさまれた被災者を開放するために反転動作ができるようにすること、被災者等が救助を求めるための伝達手段を設けること等があること。

(3) 指針の別表第4の3は、機械の動力源を遮断して保守点検作業を行う際に、誤って他の労働者等が動力を入れることによる危険を防止するための措置等を求めたものであること。

なお、指針の別表第4の3の(4)の措置について、機械に蓄積又は残留したエネルギーを除去することが安全上不適切である又は不可能である場合には、必要に応じ、当該エネルギーによるリスクの低減のために保護方策を実施し、残留リスクについて使用上の情報として提供することが必要であること。

(4) 指針の別表第4の4は、重量のある機械において、運搬中の落下等に対するリスクの低減を求めたものであり、機械を安定的につりあげることができるようフック、リング等を設けること、フォークリフトで持ち上げるためのフォークの案内溝を設けること等の措置があること。

(5) 指針の別表第4の5は、高所における作業が必要な機械における高所からの墜落を防止するための措置及び大型の機械に設置された作業床、通路、階段、はしご等において滑りやつまづきによる転倒や転落を防止するための措置を求めたものであること。

ア 指針の別表第4の5の(1)の「作業等」とは、指針第2の4のアからキに示す機械に労働者が関わる作業のことをいうこと。

イ 指針の別表第4の5の(2)の「安全な」とは、少なくとも、移動に適切な幅を有し、通路面から高さ1.8メートル以内に障害物が置かれておらず、かつ、当該通路等に滑り防止対策及び墜落防止対策が講じてあることをいうこと。

ウ 指針の別表第4の5の(3)の「床面を滑りにくいもの等」とは、床面を滑りにくい材料とすることのほか、不要な段差や凹凸をなくすこと等の措置があること。

10 「別表第5 使用上の情報の内容及び提供方法」について

(1) 指針の別表第5の1は、使用上の情報の内容について示したものであること。

ア 指針の別表第5の1に掲げる事項のうち、次に掲げるものについては、機械本体に直接印刷し、又は銘板等を貼付することにより表示することが必要であること。

(ア) 製造等を行う者の名称及び住所

(イ) 型式又は製造番号等の機械を特定するための情報

(ウ) 寸法、重量、動力源の定格等の機械の主たる仕様

イ 指針の別表第5の1の(3)の「機械の仕様及び構造に関する情報」には、次のようなものがあること。

(ア) 機械及び附属品、使用工具、機械の取付具に関する詳細な情報

① 寸法、質量、重心位置、最大荷重等の設計仕様

② 機械の構造や機構を示す図表

③ 動作範囲、最大速度、駆動力等の運動部分に関する情報

④ 定格電力、定格圧力等の動力源に関する情報

(イ) 機械から生じる騒音、振動、放射線、電磁ノイズ、ガス、蒸気、粉じん等に関するデータ(測定方法を付記すること)。

(ウ) 電気設備に関する情報

① 感電又は電気火災を引き起こす可能性

② 電力回路の故障や電源の変動が及ぼす影響

③ 内部に蓄積又は残留する電気的エネルギー

(エ) 法令により規制を受けている機械については、適合していることを証明する書面(検定合格証等)

(オ) 調査等を実施するに当たって参照した規格や基準

ウ 指針の別表第5の1の(4)のアの「意図する使用の目的及び方法」には、次のようなものがあること。

(ア) 機械の使用目的、用途、使用方法、機能(機械の設計・製造段階で製造等を行う者が仕様として定めるもの)

(イ) 機械の正しい操作・使用方法

(ウ) 手動操作装置に関する情報(操作方法の説明、配置図等)

(エ) 設定、調整、運転準備等の方法、手順及び条件

(オ) 特定の技術知識又は特別な技量を要し、機械の運転に熟練した者だけで行われるべき保守点検作業に関する指示事項

(カ) 特別の技量を有しない者によって行うことが許される保守点検作業に関する指示事項

(キ) 停止(特に非常停止)のモード、手段及び手順

エ 指針の別表第5の1の(4)のイの「運搬、設置、試運転等の使用の開始に関する情報」には、次のようなものがあること。

(ア) 保管方法、保管条件

(イ) 運搬・取扱いに関する指示事項又は禁止事項(例えば、吊り上げ設備使用時の吊り位置を示した図面等)

(ウ) 組立て及び取付けの条件

(エ) 固定又は据付けに関する条件(振動減衰の方法や水平度等)

(オ) 使用及び保守点検作業に必要な空間

(カ) 動力源への接続に関する事項(特に、電気的過負荷に対する保護に関する事項)

(キ) 環境条件(温度、湿度、振動、電磁波等)

オ 指針の別表第5の1の(4)のエの「機械の故障、異常等に関する情報」には、次のようなものがあること。

(ア) 想定される故障、異常等の種類及び部位

(イ) 修理や異常処理(特に不具合の発見)を適切に遂行するための図面及び図表

(ウ) 修理後や異常処理後の再起動に関する事項

(エ) 使用できる消火設備

(オ) 有害物質の漏洩や放出の可能性についての警告、並びにそのような事態に対処する手段又は方法

カ 指針の別表第5の1の(4)のオの「合理的に予見可能な誤使用」は、機械の製造等を行う者が、機械の設計、製造段階で実施した調査等において想定、考慮した「誤使用」をいうこと。機械を労働者に使用させる事業者においては、実際に機械を使用する作業の内容に則し、機械を使用する現場で実施する調査等において、明示された「合理的に予見可能な誤使用」のすべてについて検討するとともに、その内容に不足がある場合(経験等から他の誤使用が予見できる場合)には、追加の保護方策を確実に実施するとともに、機械の製造等を行う者に当該内容の不足に関する情報を提供することが必要であること。

キ 指針の別表第5の1の(5)は、機械の製造等を行う者が設置したガード、保護装置及び付加保護方策を明示することにより、これを適切に使用させるとともに、機械を使用する事業場において、誤ってこれらの保護方策を無効化したり、安全機能を低下させないようにするためのものであること。

ク 指針の別表第5の1の(5)のアの「目的」については、当該ガード、保護装置及び付加保護方策によるリスク低減の対象である危険性又は有害性を示すこと。

ケ 指針の別表第5の1の(5)のイの「設置位置」に関して、検知保護装置については、検出可能範囲も併せて示すこと。

コ 指針の別表第5の1の(5)のウの「安全機能及びその構成」の内容には、次の事項が含まれること。

(ア) 安全機能の原理、機構、動作の概略を示す図表

(イ) 点検が必要なものについては、その方法、頻度

(ウ) 機械の制御システムのうち、安全機能に関連する部分の構成を示す図表(シーケンス回路図やブロック図、使用した構成品の部品表等)

(エ) 安全機能に関連するソフトウェアの処理の流れを示す図表(例えば、フローチャート、状態遷移図等)

サ 指針の別表第5の1の(6)のイの「特定の用途又は特定の付属品の使用によって生じるおそれのあるリスク」には、当該リスクの低減に必要な保護方策に関する情報も含むこと。

シ 指針の別表第5の1の(6)のウについて、機械を使用する現場で実施した調査等の結果やこれまでの経験から、当該保護方策の内容に不足があると思われる場合には、追加の保護方策を実施するとともに、機械を製造する者に当該内容の不足に関する情報を提供すること。

(2) 指針の別表第5の2の使用上の情報の提供の方法については、次のようなものがあること。

ア 指針の別表第5の2の(1)の「標識、警告表示等」の「等」には、機械本体に直接印刷して又は銘板等の貼付により提供される情報があること。「標識、警告表示等」については、機械を使用する労働者の知識、経験、生活習慣、言語等の条件に関係なく、すべての労働者が当該標識、警告表示等の内容を理解できるものとするよう努める必要があること。この観点から、理解しやすい標識(絵文字)を文章による警告よりも優先して使用することが望ましいものであること。標識(絵文字)の例がJIS B9706―1の7にあること。

警告文は、日本語で表記し、要求があれば機械を使用する労働者が理解できる言語も表記すること。

イ 指針の別表第5の2の(2)の「警報装置」には、警笛、サイレン、ブザー、点滅灯、回転灯等があり、これら「警報装置」を使用するに当たっては、次の事項にも留意する必要があること。

(ア) 機械の起動や速度超過等の重要な警告を発する場合には、関係者が確実に認識できるように警告を工夫する必要があること。

(イ) 頻繁な警報の発報(特に誤報)は、警報装置を無効化させる動機となるおそれがあることに留意すること。

(ウ) 点検が必要な警報装置については、点検方法や点検周期等の情報を提供すること。

ウ 指針の別表第5の2の(3)の「取扱説明書等の文書」は、日本語で作成し、可能であれば、英語をはじめとする外国語が併記されるのが望ましいものであること。また、機械を労働者に使用させる事業者は、必要に応じて、機械の製造等を行う者に対して機械を使用する労働者の条件を予め提供し、併記される外国語に関して機械の製造等を行う者と協議する必要があること。

「取扱説明書等の文書」を作成する際に留意すべき事項がJIS B9700―2の6.5.2に示されていること。

なお、機械を労働者に使用させる事業者が、作業標準等の作業に係る禁止・注意事項を記載した書類を作成する場合においても、「取扱説明書等の文書」に準じ、ここに掲げた事項に留意して作成することが必要であること。

11 その他

局長通達の別図において、機械を労働者に使用させる事業者から機械の製造等を行う者への矢印「注文時の条件等の提示、使用後に得た知見等の伝達」は、機械を労働者に使用させる事業者が、機械の製造等を行う者に対し、新規に機械を注文する場合又は機械の改造等を依頼する場合等において、設置場所、使用条件、加工材料の危険性及び有害性、危険性又は有害性等の調査及びリスクの低減に関連する情報を予め提供すること、使用上の情報の不足がある場合等において調査等の実施を要求すること、さらに、使用開始後の労働災害の発生等当該機械の安全に関する知見等を提供すること等を表していること。

 

(参考 「第3 機械を労働者に使用させる事業者の実施事項」において引用した調査等指針の内容を反映させたもの)

機械の包括的な安全基準に関する指針

<編注:略。平成19年7月31日付け基発第0731001号「「機械の包括的な安全基準に関する指針」の改正について」に掲載してあります>