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通達:危険性又は有害性等の調査等に関する指針について

 

危険性又は有害性等の調査等に関する指針について

平成18年3月10日基発第0310001号

(都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)

 

労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)第28条の2第2項の規定に基づき、「危険性又は有害性等の調査等に関する指針」(以下「指針」という。)を作成し、その名称及び趣旨を、別添1のとおり平成18年3月10日付け官報に公示した。

ついては、別添2のとおり指針を送付するので、労働安全衛生規則(昭和47年労働省令第32号)第24条の12において準用する第24条の規定により、都道府県労働局安全主務課において閲覧に供されたい。

また、その趣旨、内容等について、下記事項に留意の上、事業者及び関係事業者団体等に対する周知等を図られたい。

 

1 趣旨等について

(1) 指針の1は、本指針の趣旨を定めているほか、特定の危険性又は有害性の種類等に関する詳細指針の策定について規定したものであること。

(2) 「機械安全に関して厚生労働省労働基準局長の定めるもの」には、「機械の包括的な安全基準に関する指針」(平成13年6月1日付け基発第501号)があること。

(3) 指針の「危険性又は有害性等の調査」は、ILO(国際労働機関)等において「リスクアセスメント(risk assessment)」等の用語で表現されているものであること。

2 適用について

(1) 指針の2は、労働者の就業に係るすべての危険性又は有害性を対象とすることを規定したものであること。

(2) 指針の2の「危険性又は有害性」とは、労働者に負傷又は疾病を生じさせる潜在的な根源であり、ISO(国際標準化機構)、ILO等においては「危険源」、「危険有害要因」、「ハザード(hazard)」等の用語で表現されているものであること。

3 実施内容について

(1) 指針の3は、指針に基づき実施すべき事項の骨子を示したものであること。

(2) 指針の3の「危険性又は有害性の特定」は、ISO等においては「危険源の同定(hazard identification)」等の用語で表現されているものであること。

4 実施体制等について

(1) 指針の4は、調査等を実施する際の体制について規定したものであること。

(2) 指針の4(1)アの「事業の実施を統括管理する者」には、総括安全衛生管理者、統括安全衛生責任者が含まれること。また、総括安全衛生管理者等の選任義務のない事業場においては、事業場を実質的に統括管理する者が含まれること。

(3) 指針の4(1)イの「安全管理者、衛生管理者等」の「等」には、安全衛生推進者が含まれること。

(4) 指針の4(1)ウの「安全衛生委員会等の活用等」には、安全衛生委員会の設置義務のない事業場において実施される関係労働者の意見聴取の機会を活用することが含まれるものであること。

また、安全衛生委員会等の活用等を通じ、調査等の結果を労働者に周知する必要があること。

(5) 指針の4(1)エの「職長等」とは、職長のほか、班長、組長、係長等の作業中の労働者を直接指導又は監督する者がこれに該当すること。また、職長等以外にも作業内容を詳しく把握している一般の労働者がいる場合には、当該労働者を参加させることが望ましいこと。

なお、リスク低減措置の決定及び実施は、事業者の責任において実施されるべきであるものであることから、指針の4(1)エにおいて、職長等に行わせる事項には含めていないこと。

(6) 指針の4(1)オの「機械設備等」の「等」には、電気設備が含まれること。

(7) 調査等の実施に関し、専門的な知識を必要とする場合等には、外部のコンサルタントの助力を得ることも差し支えないこと。

5 実施時期について

(1) 指針の5は、調査等を実施する時期を規定したものであること。

(2) 指針の5(1)イの設備には、足場等の仮設のものも含まれるとともに、設備の変更には、設備の配置替えが含まれること。

(3) 指針の5(1)オの「次に掲げる場合等」の「等」には、地震等により、建設物等に被害が出た場合、もしくは被害が出ているおそれがある場合が含まれること。

(4) 指針の5(1)オ(イ)の規定は、実施した調査等について、設備の経年劣化等の状況の変化に対応するため、定期的に再度調査等を実施し、それに基づくリスク低減措置を実施することが必要であることから設けられたものであること。なお、ここでいう「一定の期間」については、事業者が設備や作業等の状況を踏まえ決定し、それに基づき計画的に調査等を実施すること。

(5) 指針の5(1)オ(イ)の「新たな安全衛生に係る知見」には、例えば、社外における類似作業で発生した災害や、化学物質に係る新たな危険有害情報など、従前は想定していなかったリスクを明らかにする情報があること。

(6) 指針の5(3)は、実際に建設物、設備等の設置等の作業を開始する前に、設備改修計画、工事計画や施工計画等を作成することが一般的であり、かつ、それら計画の段階で調査等を実施することでより効果的なリスク低減措置の実施が可能となることから設けられた規定であること。また、計画策定時に調査等を行った後に指針の5(1)の作業等を行う場合、同じ事項に重ねて調査等を実施する必要はないこと。

(7) 既に設置されている建設物等や採用されている作業方法等であって、調査等が実施されていないものに対しては、指針の5(1)にかかわらず、計画的に調査等を実施することが望ましいこと。

6 調査等の対象の選定について

(1) 指針の6は、調査等の実施対象の選定基準について規定したものであること。

(2) 指針の6(1)の「危険な事象が発生した作業等」の「等」には、労働災害を伴わなかった危険な事象(ヒヤリハット事例)のあった作業、労働者が日常不安を感じている作業、過去に事故のあった設備等を使用する作業、又は操作が複雑な機械設備等の操作が含まれること。

(3) 指針の6(1)の「合理的に予見可能」とは、負傷又は疾病を予見するために十分な検討を行えば、現時点の知見で予見し得ることをいうこと。

(4) 指針の6(2)の「軽微な負傷又は疾病」とは、医師による治療を要しない程度の負傷又は疾病をいうこと。また、「明らかに軽微な負傷又は疾病しかもたらさないと予想されるもの」には、過去、たまたま軽微な負傷又は疾病しか発生しなかったというものは含まれないものであること。

7 情報の入手について

(1) 指針の7は、調査等の実施に当たり、事前に入手すべき情報を規定したものであること。

(2) 指針の7(1)の「非定常作業」には、機械設備等の保守点検作業や補修作業に加え、予見される緊急事態への対応も含まれること。

なお、工程の切替(いわゆる段取り替え)に関する情報についても入手すべきものであること。

(3) 指針の7(1)アからキまでについては、以下に留意すること。

ア 指針の7(1)アの「作業手順書等」の「等」には、例えば、操作説明書、マニュアルがあること。

イ 指針の7(1)イの「危険性又は有害性に関する情報」には、例えば、使用する設備等の仕様書、取扱説明書、「機械等の包括的な安全基準に関する指針」に基づき提供される「使用上の情報」、使用する化学物質の化学物質等安全データシート(MSDS)があること。

ウ 指針の7(1)ウの「作業の周辺の環境に関する情報」には、例えば、周辺の機械設備等の状況や、地山の掘削面の土質やこう配等があること。また、発注者において行われたこれらに係る調査等の結果も含まれること。

エ 指針の7(1)エの「作業環境測定結果等」の「等」には、例えば、特殊健康診断結果、生物学的モニタリング結果があること。

オ 指針の7(1)オの「複数の事業者が同一の場所で作業を実施する状況に関する情報」には、例えば、上下同時作業の実施予定や、車両の乗り入れ予定の情報があること。

カ 指針の7(1)カの「災害事例、災害統計等」には、例えば、事業場内の災害事例、災害の統計・発生傾向分析、ヒヤリハット、トラブルの記録、労働者が日常不安を感じている作業等の情報があること。また、同業他社、関連業界の災害事例等を収集することが望ましいこと。

キ 指針の7(1)キの「その他、調査等の実施に当たり参考となる資料等」の「等」には、例えば、作業を行うために必要な資格・教育の要件、セーフティ・アセスメント指針に基づく調査等の結果、危険予知活動(KYT)の実施結果、職場巡視の実施結果があること。

(4) 指針の7(2)については、以下の事項に留意すること。

ア 指針の7(2)アは、「機械等の包括的な安全基準に関する指針」、ISO、JISの「機械類の安全性」の考え方に基づき、機械設備等の設計・製造段階における安全対策を行うことが重要であることから、機械設備等を使用する事業者は、導入前に製造者に調査等の実施を求め、使用上の情報等の結果を入手することを定めたものであること。

イ 指針の7(2)イは、使用する機械設備等に対する設備的改善は管理権原を有する者のみが行い得ることから、その機械設備等を使用させる前に、管理権原を有する者が調査等を実施し、その結果を機械設備等の使用者が入手することを定めたものであること。

また、爆発等の危険性のあるものを取り扱う機械設備等の改造等を請け負った事業者が、内容物等の危険性を把握することは困難であることから、管理権原を有する者が調査等を実施し、その結果を請負業者が入手することを定めたものであること。

ウ 指針の7(2)ウは、同一の場所で混在して実施する作業を請け負った事業者は、混在の有無やそれによる危険性を把握できないので、元方事業者が混在による危険性について事前に調査等を実施し、その結果を関係請負人が入手することを定めたものであること。

エ 指針の7(2)エは、建設現場においては、請負事業者が混在して作業を行っていることから、どの請負事業者が調査等を実施すべきか明確でない場合があるため、元方事業者が調査等を実施し、その結果を関係請負人が入手することを定めたものであること。

8 危険性又は有害性の特定について

(1) 指針の8は、危険性又は有害性の特定の方法について規定したものであること。

(2) 指針の8(1)の作業の洗い出しは、作業標準、作業手順等を活用し、危険性又は有害性を特定するために必要な単位で実施するものであること。

なお、作業標準がない場合には、当該作業の手順を書き出した上で、それぞれの段階ごとに危険性又は有害性を特定すること。

(3) 指針の8(1)の「危険性又は有害性の分類」には、別添3の例のほか、ISO、JISやGHS(化学品の分類及び表示に関する世界調和システム)で定められた分類があること。各事業者が設備、作業等に応じて定めた独自の分類がある場合には、それを用いることも差し支えないものであること。

(4) 指針の8(2)は、労働者の疲労等により、負傷又は疾病が発生する可能性やその重篤度が高まることを踏まえて、危険性又は有害性の特定を行う必要がある旨を規定したものであること。したがって、指針の9のリスク見積りにおいても、これら疲労等による可能性の度合と重篤度の付加を考慮する必要があるものであること。

(5) 指針の8(2)の「疲労等」には、単調作業の連続による集中力の欠如や、深夜労働による居眠り等が含まれること。

9 リスクの見積りの方法について

(1) 指針の9はリスクの見積りの方法等について規定したものであるが、その実施にあたっては、次に掲げる事項に留意すること。

ア 指針の9は、リスク見積りの方法、留意事項等について規定したものであること。

イ 指針の9のリスクの見積りは、優先度を定めるために行うものであるので、必ずしも数値化する必要はなく、相対的な分類でも差し支えないこと。

ウ 指針の9(1)の「負傷又は疾病」には、それらによる死亡も含まれること。また、「危険性又は有害性により労働者に生ずるおそれのある負傷又は疾病」は、ISO等においては「危害」(harm)、「負傷又は疾病の程度」とは、「危害のひどさ」(severity of harm)等の用語で表現されているものであること。

エ 指針の9(1)アからウまでに掲げる方法は、代表的な手法の例であり、(1)の柱書きに定める事項を満たしている限り、他の手法によっても差し支えないこと。

オ 指針の9(1)アで定める手法は、負傷又は疾病の重篤度と可能性の度合をそれぞれ横軸と縦軸とした表(行列:マトリクス)に、あらかじめ重篤度と可能性の度合に応じたリスクを割り付けておき、見積対象となる負傷又は疾病の重篤度に該当する列を選び、次に発生の可能性の度合に該当する行を選ぶことにより、リスクを見積もる方法であること。(別添4の例1に記載例を示す。)

カ 指針の9(1)イで定める手法は、負傷又は疾病の発生する可能性の度合とその重篤度を一定の尺度によりそれぞれ数値化し、それらを数値演算(かけ算、足し算等)してリスクを見積もる方法であること。(別添4の例2に記載例を示す。)

キ 指針の9(1)ウで定める手法は、負傷又は疾病の重篤度、危険性へのばく露の頻度、回避可能性等をステップごとに分岐していくことにより、リスクを見積もる方法(リスクグラフ)であること。(別添4の例3に記載例を示す。)

(2) 指針の9(2)の事項については、次に掲げる事項に留意すること。

ア 指針の9(2)ア及びイの重篤度の予測に当たっては、抽象的な検討ではなく、極力、どのような負傷や疾病がどの作業者に発生するのかを具体的に予測した上で、その重篤度を見積もること。また、直接作業を行う者のみならず、作業の工程上その作業場所の周辺にいる作業者等も検討の対象に含むこと。

イ 指針の9(2)ウの「休業日数等」の「等」には、後遺障害の等級や死亡が含まれること。

ウ 指針の9(2)エは、疾病の重篤度の見積りに当たっては、いわゆる予防原則に則り、有害性が立証されておらず、MSDS等が添付されていない化学物質等を使用する場合にあっては、関連する情報を供給者や専門機関等に求め、その結果、一定の有害性が指摘されている場合は、入手した情報に基づき、有害性を推定することが望ましいことを規定したものであること。

(3) 指針の9(3)前段の事項については、次に掲げる事項に留意すること。

ア 指針の9(3)前段アの「はさまれ、墜落等の物理的な作用」による危険性による負傷又は疾病の重篤度又はそれらが発生する可能性の度合の見積りに当たっては、必要に応じ、以下の事項に留意すること。

なお、行動災害の見積りに当たっては、災害事例を参考にしつつ、具体的な負傷又は疾病を予測すること。

(ア) 加害物の高さ、重さ、速度、電圧等

(イ) 危険性へのばく露の頻度等

危険区域への接近の必要性・頻度、危険区域内での経過時間、接近の性質(作業内容)等

(ウ) 機械設備等で発生する事故、土砂崩れ等の危険事象の発生確率

機械設備等の信頼性又は故障歴等の統計データのほか、地山の土質や角度等から経験的に求められるもの

(エ) 危険回避の可能性

加害物のスピード、異常事態の認識しやすさ、危険場所からの脱出しやすさ又は労働者の技量等を考慮すること。

(オ) 環境要因

天候や路面状態等作業に影響を与える環境要因を考慮すること。

イ 指針の9(3)前段イの「爆発、火災等の化学物質の物理的効果」による負傷の重篤度又はそれらが発生する可能性の度合の見積りに当たっては、必要に応じ、以下の事項に留意すること。

(ア) 反応、分解、発火、爆発、火災等の起こしやすさに関する化学物質の特性(感度)

(イ) 爆発を起こした場合のエネルギーの発生挙動に関する化学物質の特性(威力)

(ウ) タンク等に保管されている化学物質の保管量等

ウ 指針の9(3)前段ウの「中毒等の化学物質等の有害性」による疾病の重篤度又はそれらが発生する可能性の度合の見積りに当たっては、必要に応じ、以下の事項に留意すること。

(ア) 有害物質等の取扱量、濃度、接触の頻度等

有害物質等には、化学物質、石綿等による粉じんが含まれること。

(イ) 有害物質等への労働者のばく露量とばく露限界等との比較

ばく露限界は、日本産業衛生学会やACGIH(米国産業衛生専門家会議)の許容濃度等があり、また、管理濃度が参考となること。

(ウ) 侵入経路等

エ 指針の9(3)前段エの「振動障害等の物理因子の有害性」による疾病の重篤度又はそれらが発生する可能性の度合の見積りに当たっては、必要に応じ、以下の事項に留意すること。

(ア) 物理因子の有害性等

電離放射線の線源等、振動の振動加速度等、騒音の騒音レベル等、紫外線等の有害光線の波長等、気圧、水圧、高温、低温等

(イ) 物理因子のばく露量及びばく露限度等との比較

法令、通達のほか、JIS、日本産業衛生学会等の基準等があること。

オ 負傷又は疾病の重篤度や発生可能性の見積りにおいては、生理学的要因(単調連続作業等による集中力の欠如、深夜労働による影響等)にも配慮すること。

(4) 指針の9(3)後段の安全機能等に関する考慮については、次に掲げる事項に留意すること。

ア 指針の9(3)後段アの「安全機能等の信頼性及び維持能力」に関して考慮すべき事項には、必要に応じ、以下の事項が含まれること。

(ア) 安全装置等の機能の故障頻度・故障対策、メンテナンス状況、使用者の訓練状況等

(イ) 立入禁止措置等の管理的方策の周知状況、柵等のメンテナンス状況

イ 指針の9(3)後段イの「安全機能等を無効化する又は無視する可能性」に関して考慮すべき事項には、必要に応じ、以下の事項が含まれること。

(ア) 生産性の低下等、労働災害防止のための機能・方策を無効化させる動機

(イ) スイッチの誤作動防止のための保護錠が設けられていない等、労働災害防止のための機能・方策の無効化しやすさ

ウ 指針の9(3)後段ウの作業手順の逸脱等の予見可能な「意図的」な誤使用又は危険行動の可能性に関して考慮すべき事項には、必要に応じ、以下の事項が含まれること。

(ア) 作業手順等の周知状況

(イ) 近道行動(最小抵抗経路行動)

(ウ) 監視の有無等の意図的な誤使用等のしやすさ

(エ) 作業者の資格・教育等

エ 指針の9(3)後段のウの操作ミス等の予見可能な「非意図的」な誤使用の可能性に関して考慮すべき事項には、必要に応じ、以下の事項が含まれること。

(ア) ボタンの配置、ハンドルの操作方向のばらつき等の人間工学的な誤使用等の誘発しやすさ

(イ) 作業者の資格・教育等

10 リスク低減措置の検討及び実施について

(1) 指針の10(1)の事項については、次に掲げる事項に留意すること。

ア 指針の10(1)アの「危険性又は有害性を除去又は低減する措置」とは、危険な作業の廃止・変更、より危険性又は有害性の低い材料への代替、より安全な反応過程への変更、より安全な施工方法への変更等、設計や計画の段階から危険性又は有害性を除去又は低減する措置をいうものであること。

イ 指針の10(1)イの「工学的対策」とは、アの措置により除去しきれなかった危険性又は有害性に対し、ガード、インターロック、安全装置、局所排気装置の設置等の措置を実施するものであること。

ウ 指針の10(1)ウの「管理的対策」とは、ア及びイの措置により除去しきれなかった危険性又は有害性に対し、マニュアルの整備、立入禁止措置、ばく露管理、警報の運用、二人組制の採用、教育訓練、健康管理等の作業者等を管理することによる対策を実施するものであること。

エ 指針の10(1)エの「個人用保護具の使用」は、アからウまでの措置により除去されなかった危険性又は有害性に対して、呼吸用保護具や保護衣等の使用を義務づけるものであること。また、この措置により、アからウまでの措置の代替を図ってはならないこと。

オ 指針の10(1)のリスク低減措置の検討に当たっては、大気汚染防止法等の公害その他一般公衆の災害を防止するための法令に反しないように配慮する必要があること。

(2) 指針の10(2)は、合理的に実現可能な限り、より高い優先順位のリスク低減措置を実施することにより、「合理的に実現可能な程度に低い」(ALARP)レベルにまで適切にリスクを低減するという考え方を規定したものであること。

なお、低減されるリスクの効果に比較して必要な費用等が大幅に大きいなど、両者に著しい不均衡を発生させる場合であっても、死亡や重篤な後遺障害をもたらす可能性が高い場合等、対策の実施に著しく合理性を欠くとはいえない場合には、措置を実施すべきものであること。

(3) 指針の10(2)に従い、リスク低減のための対策を決定する際には、既存の行政指針、ガイドライン等に定められている対策と同等以上とすることが望ましいこと。また、高齢者、日本語が通じない労働者、経験の浅い労働者等、安全衛生対策上の弱者に対しても有効なレベルまでリスクが低減されるべきものであること。

(4) 指針の10(3)は、死亡、後遺障害又は重篤な疾病をもたらすリスクに対して、(2)の考え方に基づく適切なリスク低減を実施するのに時間を要する場合に、それを放置することなく、実施可能な暫定的な措置を直ちに実施する必要があることを規定したものであること。

11 記録について

(1) 指針の11(1)から(5)までに掲げる事項を記録するに当たっては、調査等を実施した日付及び実施者を明記すること。

(2) 指針の11(5)のリスク低減措置には、当該措置を実施した後に見込まれるリスクを見積もることも含まれること。

(3) 調査等の記録は、次回調査等を実施するまで保管すること。なお、記録の記載例を別添5に示す。

 

(別添1・2)<編注:略。公示名をクリックして表示>

危険性又は有害性等の調査等に関する指針公示第1号

 

(別添3)

危険性又は有害性の分類例

1 危険性

(1) 機械等による危険性

(2) 爆発性の物、発火性の物、引火性の物、腐食性の物等による危険性

「引火性の物」には、可燃性のガス、粉じん等が含まれ、「等」には、酸化性の物、硫酸等が含まれること。

(3) 電気、熱その他のエネルギーによる危険性

「その他のエネルギー」には、アーク等の光のエネルギー等が含まれること。

(4) 作業方法から生ずる危険性

「作業」には、掘削の業務における作業、採石の業務における作業、荷役の業務における作業、伐木の業務における作業、鉄骨の組立ての作業等が含まれること。

(5) 作業場所に係る危険性

「場所」には、墜落するおそれのある場所、土砂等が崩壊するおそれのある場所、足を滑らすおそれのある場所、つまずくおそれのある場所、採光や照明の影響による危険性のある場所、物体の落下するおそれのある場所等が含まれること。

(6) 作業行動等から生ずる危険性

(7) その他の危険性

「その他の危険性」には、他人の暴力、もらい事故による交通事故等の労働者以外の者の影響による危険性が含まれること。

2 有害性

(1) 原材料、ガス、蒸気、粉じん等による有害性

「等」には、酸素欠乏空気、病原体、排気、排液、残さい物が含まれること。

(2) 放射線、高温、低温、超音波、騒音、振動、異常気圧等による有害性「等」には、赤外線、紫外線、レーザー光等の有害光線が含まれること。

(3) 作業行動等から生ずる有害性

「作業行動等」には、計器監視、精密工作、重量物取扱い等の重筋作業、作業姿勢、作業態様によって発生する腰痛、頸肩腕症候群等が含まれること。

(4) その他の有害性

 

(別添4)

リスク見積り及びそれに基づく優先度の設定方法の例

1 負傷又は疾病の重篤度

「負傷又は疾病の重篤度」については、基本的に休業日数等を尺度として使用するものであり、以下のように区分する例がある。

① 致命的:死亡災害や身体の一部に永久損傷を伴うもの

② 重大:休業災害(1か月以上のもの)、一度に多数の被災者を伴うもの

③ 中程度:休業災害(1か月未満のもの)、一度に複数の被災者を伴うもの

④ 軽度:不休災害やかすり傷程度のもの

2 負傷又は疾病の可能性の度合

「負傷又は疾病の可能性の度合」は、危険性又は有害性への接近の頻度や時間、回避の可能性等を考慮して見積もるものであり(具体的には記の9(3)参照)、以下のように区分する例がある。

① 可能性が極めて高い:日常的に長時間行われる作業に伴うもので回避困難なもの

② 可能性が比較的高い:日常的に行われる作業に伴うもので回避可能なもの

③ 可能性がある:非定常的な作業に伴うもので回避可能なもの

④ 可能性がほとんどない:まれにしか行われない作業に伴うもので回避可能なもの

3 リスク見積りの例

リスク見積り方法の例には、以下の例1~3のようなものがある。

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(別添5)

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