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変異原性が認められた化学物質の取扱いについて
平成17年5月12日基発第0512003号
(各都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長通知)
標記の件に関し、現在まで、
① 労働安全衛生法(以下「法」という。)第57条の3第1項の規定に基づき事業者が届け出た化学物質(以下「届出物質」という。)のうち有害性の調査の結果、強度の変異原性が認められたもの(合計365物質)
② 法第57条の3第1項の既存の化学物質として政令に定める化学物質(以下「既存化学物質」という。)のうち国が法第57条の5の規定に基づき行った有害性の調査の結果、強度の変異原性が認められたもの(合計135物質)
については、別添1の「変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」(平成5年5月17日付け基発第312号の3の別添1。以下「指針」という。)に基づく措置の実施を届出事業者に対して要請するとともに、指針の周知等を関係事業者団体に対して要請してきたところである。
今般、法第57条の3の規定に基づき有害性の調査の結果が届け出られた別紙に掲げる27の届出物質について、それぞれ有害性の調査(微生物を用いる変異原性試験及びほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験)に関し、学識経験者から、変異原性試験の結果、強度の変異原性が認められる旨の意見を得たので、これらの化学物質を指針に基づく措置が必要な化学物質とすることとしたところである。
ついては、別添2により別紙に掲げる届出物質を届け出た事業場に対して、指針に基づく措置を講ずるよう要請し、また、別添3により関係事業者団体に対して、別紙に掲げる届出物質を製造し、又は取り扱う際には、指針に基づく措置を講ずることの周知について要請したので、貴局におかれてもこれらの化学物質の製造又は取扱いを行う事業者に対して、指針に基づく措置を講ずるよう指導されたい。
別紙
変異原性が認められた届出物質
番号 |
名称公表通し番号 |
名称公表年月日 名称公表告示番号 |
名称 |
1 |
11692 |
平成16年3月26日 厚生労働省告示第134号 |
アクリル酸と4,4’―ビス(2,3―エポキシプロポキシ)オキシジフェニルとのアクリル酸=3―{4―[4―(2,3―エポキシプロポキシ)フェニルオキシ]フェニルオキシ}―2―ヒドロキシプロピルを主成分とする反応生成物 |
2 |
11965 |
平成16年6月25日 厚生労働省告示第253号 |
アセト酢酸=4―ニトロベンジル |
3 |
12180 |
平成16年9月27日 厚生労働省告示第350号 |
5―アミノ―1,2,4―トリアゾール―3―カルボン酸のジアゾ化反応生成物 |
4 |
12182 |
平成16年9月27日 厚生労働省告示第350号 |
3―アミノ―2―(フルオロメトキシイミノ)―3―イミノプロパンニトリル=酢酸塩 |
5 |
12579 |
平成17年3月25日 厚生労働省告示第113号 |
4―アミノ―3―メチルフェノールと1―クロロ―2,3―エポキシプロパンとのN,N―ビス(2,3―エポキシプロピル)―4―(2,3―エポキシプロポキシ)―2―メチルアニリンを主成分とする反応生成物 |
6 |
11723 |
平成16年3月26日 厚生労働省告示第134号 |
4―イソブチルベンゼンスルホニル=クロリド |
7 |
11992 |
平成16年6月25日 厚生労働省告示第253号 |
4,4’―オキシジフェノールと1―クロロ―2,3―エポキシプロパンの反応生成物 |
8 |
11318 |
平成15年9月26日 厚生労働省告示第315号 |
2―クロロカルボニルピラジニウム=クロリド |
9 |
11518 |
平成15年12月26日 厚生労働省告示第462号 |
3―クロロフェニルオキシラン |
10 |
12210 |
平成16年9月27日 厚生労働省告示第350号 |
6―クロロメチル―11H―ジベンゾ[b,e]アゼピン |
11 |
11759 |
平成16年3月26日 厚生労働省告示第134号 |
酢酸=3―[2,6―ジクロロ―4―(3,3―ジクロロアリルオキシ)フェノキシ]プロピル |
12 |
12021 |
平成16年6月25日 厚生労働省告示第253号 |
N―[4―シアノ―3―(トリフルオロメチル)フェニル]―2―メチルオキシラン―2―カルボキサミド |
13 |
12026 |
平成16年6月25日 厚生労働省告示第253号 |
1―(ジエトキシメチル)シクロプロパンカルバルデヒド |
14 |
12031 |
平成16年6月25日 厚生労働省告示第253号 |
3―[2,6―ジクロロ―4―(3,3―ジクロロアリルオキシ)フェノキシ]プロパン―1―オール |
15 |
12639 |
平成17年3月25日 厚生労働省告示第113号 |
2―[(ジフェニルメチリデン)アミノ]酢酸メチル |
16 |
11565 |
平成15年12月26日 厚生労働省告示第462号 |
硝酸=2―(N―ニトロブチルアミノ)エチル |
17 |
12237 |
平成16年9月27日 厚生労働省告示第350号 |
テトラキス(クロロメタン酸)=メタンテトラキス[メチレンオキシ(1―メチルエチレン)オキシ(1―メチルエチレン)]とtert―ブチルヒドロペルオキシドとのテトラキス[5―(tert―ブチルペルオキシカルボニルオキシ)―2,5―ジメチル―3―オキサペンチルオキシ]メタンを主成分とする反応生成物 |
18 |
12457 |
平成16年12月27日 厚生労働省告示第454号 |
2,3,3,3―テトラフルオロ―2―(ヘプタフルオロプロポキシ)プロパン酸=ペルフルオロ(2―メチルプロピル) |
19 |
11829 |
平成16年3月26日 厚生労働省告示第134号 |
1―(4―ニトロフェニル)シクロペンタン―1―カルボン酸 |
20 |
12664 |
平成17年3月25日 厚生労働省告示第113号 |
1,1’―ビス(2,4―ジニトロフェニル)―4,4’―ビピリジン―1,1’―ジイウム=ジクロリド |
21 |
11836 |
平成16年3月26日 厚生労働省告示第134号 |
ビス[2,3,3,3―テトラフルオロ―2―(トリフルオロメチル)プロパン酸]=ペルフルオロブタン―1,4―ジイル |
22 |
12668 |
平成17年3月25日 厚生労働省告示第113号 |
1,1’―ビス(6―ヒドロキシビフェニル―3―イル)―4,4’―ビピリジン―1,1’―ジイウム=ジクロリド |
23 |
12113 |
平成16年6月25日 厚生労働省告示第253号 |
2―(フルオロメトキシイミノ)プロパン―1,3―ジニトリル |
24 |
11884 |
平成16年3月26日 厚生労働省告示第134号 |
ペルフルオロ(2―メチルプロパノイル)=フルオリド |
25 |
12528 |
平成16年12月27日 厚生労働省告示第454号 |
4―メチル―1,3,2―ジオキサチオラン―2,2―ジオキシド |
26 |
12535 |
平成16年12月27日 厚生労働省告示第454号 |
1―メチル―7―ニトロ―1,2,3,4―テトラヒドロキノリン |
27 |
12536 |
平成16年12月27日 厚生労働省告示第454号 |
1―メチル―7―ニトロ―1,2,3,4―テトラヒドロキノリン製造時のろ液 |
別添1
変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針
平成5年5月
1 趣旨
この指針は、微生物を用いる変異原性試験、哺ほ乳類培養細胞を用いる染色体異常試験等の結果から強度の変異原性が認められた化学物質(以下「変異原化学物質」という。)又は変異原化学物質を含有するもの(変異原化学物質の含有量が重量の1パーセント以下のものを除く。)(以下「変異原化学物質等」という。)を製造し、又は取り扱う作業に関し、当該変異原化学物質への暴露による労働者の健康障害を未然に防止するため、その製造又は取扱いに関する留意事項について定めたものである。事業者は、この指針に定める措置を講ずるほか、労働者の健康障害を防止するための適切な措置を講ずるよう努めるものとする。
2 変異原化学物質による暴露を低減するための措置について
(1) 労働者への変異原化学物質による暴露の低減を図るため、当該事業場における変異原化学物質等の物性、製造量、取扱量、作業の頻度、作業時間、作業の態様等を勘案し、必要に応じ、次に掲げる作業環境管理に係る措置、作業管理に係る措置その他必要な措置を講ずること。
イ 作業環境管理
(イ) 使用条件等の変更
(ロ) 作業工程の改善
(ハ) 設備の密閉化
(ニ) 局所排気装置等の設置
ロ 作業管理
(イ) 労働者が変異原化学物質に暴露されないような作業位置、作業姿勢又は作業方法の選択
(ロ) 呼吸用保護具、不浸透性の保護衣、保護手袋等の保護具の使用
(ハ) 変異原化学物質に暴露される時間の短縮
(2) (1)により暴露を低減するための装置等の設置等を行った場合には、次によること。
イ 局所排気装置等については、作業が行われている間、適正に稼働させること。
ロ 局所排気装置等については定期的に保守点検を行うこと。
ハ 変異原化学物質等を作業場外へ排出する場合は、当該物質を含有する排気、排液等による事業場の汚染を防止すること。
ニ 保護具については同時に就業する労働者の人数分以上を備え付け、常時有効かつ清潔に保持すること。また、送気マスクを使用させたときは、当該労働者が有害な空気を吸入しないような措置を講ずること。
(3) 次の事項について当該作業に係る作業規定を定め、これに基づき作業させること。
イ 設備、装置等の操作、調整及び点検
ロ 異常な事態が発生した場合における応急の措置
ハ 保護具の使用
3 作業環境測定について
(1) 変異原化学物質に係る作業が屋内で行われる場合であって、当該物質に関する作業環境測定手法が開発されているときには、定期に当該物質の性状に応じ作業環境測定基準、作業環境ガイドブック等を参考として作業環境測定を実施することが望ましいこと。
(2) 作業環境測定の結果及び結果の評価の記録を30年間保存するよう努めること。
4 労働衛生教育について
(1) 変異原化学物質等を製造し、又は取り扱う作業に従事している労働者及び当該作業に従事させることとなった労働者に対して、次の事項について労働衛生教育を行うこと。
イ 変異原化学物質の性状及び有害性
ロ 変異原化学物質による健康障害、その予防方法及び応急措置
ハ 局所排気装置その他の変異原化学物質への暴露を低減するための設備並びにそれらの保守及び点検の方法
ニ 保護具の種類、性能、使用方法及び保守管理
(2) 上記事項に係る労働衛生教育の時間は4時間以上とすること。
(3) (1)のイからニの全部又は一部について十分な知識及び技能を有していると認められる労働者については、当該項目についての教育を省略して差し支えないこと。
5 危険有害性等の表示について
「化学物質等の危険有害性等の表示に関する指針」(平成4年労働省告示第60号)に基づき、変異原化学物質等を譲渡し、又は提供する場合には化学物質等安全データシートを交付し、容器、包装等にラベル表示を行う等の措置を講ずること。
6 変異原化学物質等の製造等に従事する労働者の把握について
変異原化学物質等を製造し、又は取り扱う作業に常時従事する労働者について、1年を超えない期間ごとに次の事項を記録すること。
イ 労働者の氏名
ロ 従事した作業の概要及び当該作業に従事した期間
ハ 変異原化学物質により著しく汚染される事態が生じたときは、その概要及び講じた応急措置の概要
なお、上記の事項の記録は、当該労働者が当該事業場において常時当該作業に従事することとなった日から30年間保存するよう努めること。
別添2
○変異原性が認められた化学物質の取扱いについて
平成17年5月12日基発第0512001号
(届出事業者あて厚生労働省労働基準局長通知)
労働安全衛生法第57条の3第1項の規定に基づき、貴殿から届出のあった下記の化学物質(以下「届出物質」という。)に係る有害性調査の結果について、学識経験者から、強度の変異原性が認められる旨の意見を得たところです。
つきましては、届出物質の製造又は取扱いに関し、別添の「変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」(平成5年5月17日付け基発第312号の3の別添1)に基づく措置を講じるようお願いします。
(記及び別添 略)
別添3
○変異原性が認められた化学物質の取扱いについて
平成17年5月12日基発第0512002号
(社団法人日本化学工業協会会長・社団法人日本化学工業品輸入協会会長・化成品工業協会会長・農薬工業会会長・日本製薬団体連合会会長あて厚生労働省労働基準局長通知)
労働安全衛生行政の運営につきましては、日頃から格段の御協力を賜り厚く御礼申し上げます。
さて、これまで、
① 労働安全衛生法(以下「法」という。)第57条の3第1項の規定に基づき事業者が届け出た化学物質(以下「届出物質」という。)のうち有害性の調査の結果、強度の変異原性が認められたもの(合計365物質)
② 法第57条の3第1項の既存の化学物質として政令に定める化学物質(以下「既存化学物質」という。)のうち国が法第57条の5の規定に基づき行った有害性の調査の結果、強度の変異原性が認められたもの(合計135物質)
については、これら化学物質を製造し、又は取り扱う事業者が、別添の「変異原性が認められた化学物質による健康障害を防止するための指針」(平成5年5月17日付け基発第312号の2の別添。以下「指針」という。)に基づく措置を講ずるよう、その周知をお願いしているところです。
このたび、法第57条の3の規定に基づき有害性の調査の結果が届け出られた別紙に掲げる27の届出物質について、それぞれ有害性の調査に関し、学識経験者から、変異原性試験の結果、強度の変異原性が認められる旨の意見を得ましたので、これらの化学物質を指針に基づく措置が必要な化学物質とすることとし、別紙に掲げる届出物質については各物質を届け出た事業者に対し、指針に基づく措置を講ずるよう要請したところです。
つきましては、貴会傘下会員に対しても、別紙に掲げる届出物質を製造し、又は取り扱う際には、指針に基づく措置を講ずるよう周知いただきますようお願いいたします。
(別添及び別紙 略)