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防毒マスクの選択、使用等について
平成2年9月28日基発第592号
(都道府県労働基準局長あて労働省労働基準局長通達)
防毒マスクの使用に関する監督及び指導の留意点については、昭和三七年七月二四日付け基発第七八一号により適正な運用を図つてきたところであるが、今般、標記について下記のとおり定めたので了知の上、指導に遺憾のないようされたい。
なお、従前の通達のうち防毒マスクの使用に係る部分については別紙のとおりとするので、併せて了知されたい。
記
第一 防毒マスクの選択に当たつての留意点
防毒マスクの選択に当たつては、次の点に留意すること
1 防毒マスクは、機械等検定規則第一四条の規定に基づき吸収缶及び面体ごとに付されている検定合格標章により、型式検定合格品であることを確認すること。
2 着用者自身の顔に合つた形状及び寸法の面体を有するものを選ぶこと。
3 作業の内容、強度等を考慮し、防毒マスクの重量、視野、吸排気抵抗等が当該作業に適したものを選ぶこと。このため、選択に当たつては取扱説明書等に記載されているデータを参考とすること。
4 有害物質(防毒マスクの規格第一条の表下欄に掲げる有害物質をいう。以下同じ。)の種類に応じ、作業に適したものを選ぶこと。
なお、亜硫酸・いおう用防毒マスクは、亜硫酸ガスのみが存在する作業場でも使用できるものであること。
5 作業環境中の有害物質の発散状況、作業時の暴露の危険性の程度等から労働者に高濃度暴露をもたらすおそれがあると認められるときは、できる限り除毒能力が高いものを選ぶこと。
なお、除毒能力の高低の判断方法として、一定のガス濃度に対する破過(除毒能力の喪失)時間の長短から判断する方法があること。
例えば、次の図に示すような吸収缶A及びBの破過曲線図において、ガス濃度一%の場合で比べると、破過時間はAが三〇分、Bが五五分となり、Aと比べてBの除毒能力が高いことがわかる。
第二 防毒マスクの使用に当たつての留意点
1 事業者は、衛生管理者、作業主任者等の労働衛生に関する知識、経験等を有する者のうちから、各作業場ごとに防毒マスクを管理する責任者を指名し、防毒マスクの適正な着用、取扱方法等について必要な指導を行わせるとともに、防毒マスクの適正な保守管理に当たらせること。
なお、防毒マスクは、酸素を発生するものでないから酸素濃度が一八%未満の場所では使用できない。このような場所では送気マスク等を使用すること。
2 事業者は、防毒マスクの取扱説明書等に基づき、防毒マスクの適正な装着方法、使用方法等について労働者に十分な教育・訓練を行うこと。
3 事業者は、防毒マスクを使用させるときは、その都度、着用者に、次の項目について点検を行わせること。
イ 排気弁の気密性が保たれていること。
ロ 吸収缶が適切に取り付けられていること。
ハ 吸収缶に水が侵入したり、破損していないこと。
ニ 吸収缶から異臭が出ていないこと。
4 次のような防毒マスクの着用方法は、有害物質が面体の接顔部から面体内へ漏れ込む等のおそれがあるため、行わないこと。
(1) タオル等を当てた上から防毒マスクを着用すること。
(2) 面体の接顔部に「接顔メリヤス」を使用すること。ただし、防毒マスクの着用により皮膚に湿しん等を起こすおそれがある場合で、かつ、面体と顔面との密着性が良好であるときは、この限りでないこと。
第三 防毒マスクの保守管理上の留意点
1 予備の吸収缶等を常時備え付け、適時交換使用できるようにすることが望ましいこと。
2 防毒マスクを常に有効かつ清潔に保持するため、使用後は砂じん、湿気等の少ない場所で、次の方法により手入れを行うこと。
(1) 面体、吸気弁、排気弁、しめひも等については、乾燥した布片又は軽く水で湿らせた布片で、付着したほこり、汗等を取り除くこと。
また、吸収缶が取り替えられる構造のものについては、汚れの著しいときは、吸収缶を取り外した上で面体を中性洗剤等により水洗すること。
(2) 活性炭、ソーダライム等の吸収剤や、ホプカライト等の触媒は吸湿により能力が低下するものが多いため、使用後は吸収缶の上栓と下栓を閉めて保管すること。栓がないものにあつては、ビニール袋に入れて密封する等の措置をとること。
3 次のいずれかに該当する場合には防毒マスクの部品を交換し、又は防毒マスクを廃棄すること。
イ 吸収缶について、破損した場合、著しい変形を生じた場合、又は有害物質等の臭気を感知する等により吸収剤の除毒能力が低下し有害物質を十分に無毒化できなくなつたと認められた場合
ロ 面体、吸気弁、排気弁等について、破損、き裂、著しい変形又は粘着性が認められた場合
ハ しめひもについて、老化等によりその弾性が失われ、伸縮不良の状態が認められた場合
4 防毒マスクは、手入れ後、積み重ねること(吸収缶のみを積み重ねることを含む。)、面体及び連結管を折り曲げること等による、き裂、変形等の異常を来さないように保管すること。なお、保管場所はなるべく冷暗所とすること。
5 使用済みの吸収缶の廃棄に当たつては、吸収剤に吸着された有害物質が遊離し、又は吸収剤が吸収缶外に飛散しないように袋等に詰めた後、廃棄すること。
別紙(省略)