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通達:雇用保険法等の一部を改正する法律について

 

雇用保険法等の一部を改正する法律について

令和6年5月17日基発0517第1号・職発0517第4号

(各都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長・厚生労働省職業安定局長通知)

 

「雇用保険法等の一部を改正する法律」(以下「改正法」という。)については、第213回通常国会において、5月10日に可決成立し、令和6年法律第26号として本日公布されたところである。

また、改正法の一部の施行と併せて、「雇用保険法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備等に関する政令」(令和6年政令第186号)及び「雇用保険法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係省令の整理に関する省令」(令和6年厚生労働省令第83号)も制定され、本日公布されたところである。

改正法の主たる内容は下記のとおりであるので、その趣旨を十分理解の上、その施行に万全を期されたい。なお、施行期日が公布日以外の改正項目に関する政省令等の整備については、今後、順次行うこととしている。

 

第1 雇用保険法(昭和49年法律第116号)の一部改正(改正法第1条)

1 自己都合離職者に係る給付制限の見直し(令和7年4月1日施行)

(1) 公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける受給資格者に加えて、正当な理由なく自己の都合により退職した受給資格者のうちイ又はロに該当する者(ロに該当する受給資格者にあっては教育訓練を受ける期間及び受け終わった日後の期間に限る。)については、給付制限の対象としないこととすること。(雇用保険法第33条第1項関係)

イ 教育訓練給付の対象となる教育訓練その他の厚生労働省令で定める訓練(以下「対象教育訓練」という。)を離職日前1年以内に受けたことがある受給資格者

ロ 対象教育訓練を離職日以後に受ける受給資格者

(2) (1)の改正と併せて、通達を改正し、正当な理由なく自己の都合により退職した受給資格者に係る給付制限の期間を原則2箇月から1箇月に変更し、5年以内に2回を超えて正当な理由なく自己の都合により退職した場合には、引き続き3箇月の給付制限の対象とする予定であること。

2 就業促進手当の見直し(令和7年4月1日施行)

(1) 安定した職業以外の職業に就いた受給資格者であって、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上であるものに対して支給される就業促進手当(就業手当)を廃止するものとすること。(雇用保険法第56条の3第1項関係)

(2) 安定した職業に就き就業促進手当(再就職手当)の支給を受けた者であって、同一の事業主の適用事業にその職業に就いた日から引き続いて6箇月以上雇用される者のうち一定の要件を満たした者に対して支給される就業促進手当(就業促進定着手当)の支給限度額を、基本手当日額に基本手当の支給残日数に相当する日数に10分の2(現行は10分の4又は10分の3)を乗じて得た数を乗じて得た額とすること。(雇用保険法第56条の3第3項関係)

3 教育訓練給付金の給付率引上げ等(令和6年10月1日施行)

(1) 教育訓練給付金の受講費用に対する給付率の最高限度を100分の70から100分の80に引き上げること。(雇用保険法第60条の2第4項関係)

具体的には、雇用保険法施行規則(昭和50年労働省令第3号)を改正し、イ及びロの見直しを行う予定であること。

イ 特定一般教育訓練給付金について、資格取得し、就職等したことを要件とした追加給付を行うこと。

ロ 専門実践教育訓練給付金について、教育訓練の受講後に賃金が一定割合上昇したことを要件とした追加給付を行うこと。

(2) 専門実践教育訓練給付金について賃金上昇を要件とした追加給付を行うことを予定しているところ、被保険者又は被保険者であった者が教育訓練給付を受けるために必要な証明書の交付を当該被保険者等を雇用し、若しくは雇用していた事業主又は労働保険事務組合に請求したときは、当該事業主等は、その請求に係る証明書を交付しなければならないこととすること。(雇用保険法第76条第4項関係)

4 基本手当の支給に関する暫定措置の改正(令和7年4月1日施行)

特定理由離職者(厚生労働省令で定める者に限る。)である受給資格者を特定受給資格者とみなして基本手当の支給に関する規定を適用する暫定措置について、令和9年3月31日以前の離職者まで適用するものとすること。(雇用保険法附則第4条第1項関係)

5 給付日数の延長に関する暫定措置(地域延長給付)の改正(令和7年4月1日施行)

雇用機会が不足している地域として厚生労働大臣が指定する地域内に居住する特定理由離職者(厚生労働省令で定める者に限る。)である受給資格者及び特定受給資格者に係る基本手当の給付日数の延長に関する暫定措置について、令和9年3月31日以前の離職者まで対象としうるものとすること。(雇用保険法附則第5条第1項関係)

6 教育訓練支援給付金の改正(令和7年4月1日施行)

教育訓練支援給付金の額について、賃金日額に100分の50から100分の80までの範囲で厚生労働省令で定める率を乗じて得た金額に100分の60を乗じて得た額とするとともに、令和9年3月31日以前に教育訓練を開始した者に対して支給できるものとすること。(雇用保険法附則第11条の2第1項及び第3項関係)

7 国庫負担の改正(公布日(令和6年5月17日)施行)

(1) 育児休業給付に要する費用に係る国庫の負担額について、暫定措置を廃止し、国庫は、育児休業給付に要する費用の8分の1を負担するものとすること。(雇用保険法附則第13条及び第14条関係)

(2) 介護休業給付に要する費用に係る国庫の負担額について、暫定措置を延長し、令和8年度までの各年度における国庫の負担額については、国庫が負担すべきこととされている額の100分の10に相当する額とするものとすること。(雇用保険法附則第14条関係)

(3) 雇用保険の国庫負担については、引き続き検討を行い、令和9年4月1日以降できるだけ速やかに、安定した財源を確保した上で、雇用保険法附則第13条に規定する国庫負担に関する暫定措置を廃止するものとすること。(雇用保険法附則第15条関係)

8 その他

その他所要の改正を行うこと。

 

第2 雇用保険法の一部改正(改正法第2条)

1 雇用保険の適用対象者の範囲の拡大(令和10年10月1日施行)

(1) 雇用保険の適用対象としない者を、1週間の所定労働時間が10時間未満の者とすること。(雇用保険法第6条関係)

(2) 基本手当の被保険者期間の計算に当たっては、賃金の支払の基礎となった日数が6日以上であるもの又は賃金の支払の基礎となった時間数が40時間以上であるものを1箇月として計算するものとすること。(雇用保険法第14条第1項及び第3項関係)

(3) 基本手当の日額の算定に用いる賃金日額の下限額を1,230円(その額が雇用保険法第18条の規定により変更されたときは、その変更された額)とすること。(雇用保険法第16条第1項、第17条第4項及び第18条第4項関係)

(4) 受給資格者が失業の認定に係る期間中に自己の労働によって収入を得た場合の基本手当の減額等に関する規定を、削除するものとすること。(雇用保険法第19条関係)

2 教育訓練休暇給付金の創設(令和7年10月1日施行)

(1) 教育訓練休暇給付金を創設し、教育訓練給付の一類型に位置付けること。(雇用保険法第10条第5項関係)

(2) 一般被保険者が、職業に関する教育訓練を受けるための休暇(以下「教育訓練休暇」という。)を取得した場合に、当該教育訓練休暇を開始した日(以下「休暇開始日」という。)から起算して1年の期間内の教育訓練休暇を取得している日について、当該一般被保険者を受給資格者と、休暇開始日の前日を受給資格に係る離職の日とみなした場合に支給されることとなる基本手当の日額に相当する額の教育訓練休暇給付金を、特定受給資格者以外の受給資格者に対する所定給付日数に相当する日数分を限度として、支給するものとすること。ただし、次のイ又はロのいずれかに該当するときは、この限りでないものとすること。(雇用保険法第60条の3関係)

イ 休暇開始日前2年間におけるみなし被保険者期間が通算して12箇月に満たないとき。

ロ 当該一般被保険者を受給資格者と、休暇開始日の前日を受給資格に係る離職の日とみなした場合の算定基礎期間に相当する期間が、5年に満たないとき。

(3) 基本手当の支給に当たって、教育訓練休暇給付金の支給を受けたことがある場合には、休暇開始日前における被保険者であった期間は被保険者期間に含めないものとし、休暇開始日前の被保険者であった期間及び当該教育訓練休暇給付金の支給に係る休暇の期間は算定基礎期間に含めないものとすること。ただし、介護休業給付金、育児休業給付金又は出生時育児休業給付金の支給に当たっては、教育訓練休暇給付金に係る休暇開始日前の被保険者であった期間及び当該給付金の支給に係る休暇の期間をみなし被保険者期間の計算に当たり除外しないものとすること。(雇用保険法第14条第2項、第22条第3項、第61条の4第2項、第61条の7第3項及び第61条の8第3項関係)

(4) 教育訓練休暇給付金の支給を受け、休暇開始日から、当該教育訓練休暇給付金に係る教育訓練休暇を終了した日から起算して6箇月を経過する日までに特定受給資格者となる離職理由により離職した者であって受給資格者以外の者に対して基本手当を支給することとし、その所定給付日数は90日(障害者等の就職困難者にあっては、150日)とすること。(雇用保険法第60条の4関係)

3 国庫負担の改正(令和7年10月1日施行)

国庫は、教育訓練給付(教育訓練休暇給付金に限る。)について、求職者給付に要する費用に係る国庫の負担額と同様に、当該教育訓練給付に要する費用の4分の1又は40分の1を負担するものとすること。(雇用保険法第66条第1項関係)

4 その他

その他所要の改正を行うこと。

 

第3 労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和44年法律第84号)の一部改正(改正法第3条及び第4条)

1 雇用保険率の改正(令和7年4月1日施行)

(1) 育児休業給付に要する費用に対応する部分の雇用保険率を、1,000分の5とすること。(労働保険の保険料の徴収等に関する法律(以下「徴収法」という。)第12条第4項関係)

(2) 厚生労働大臣は、毎会計年度において、イに掲げる額がロに掲げる額の1.2倍に相当する額を超えるに至った場合において、必要があると認めるときは、労働政策審議会の意見を聴いて、1年以内の期間を定め、育児休業給付に要する費用に対応する部分の雇用保険率を1,000分の4とすることができるものとすること。(徴収法第12条第8項関係)

イ (イ)に掲げる額を(ロ)に掲げる額に加減した額

(イ) 当該会計年度の翌年度における、育児休業給付に充当するために徴収する保険料額(以下「育児休業給付費充当徴収保険料額」という。)の見込額及び当該会計年度の翌年度における育児休業給付額の予想額(以下「翌年度育児休業給付額予想額」という。)に係る国庫の負担額の見込額の合計額と、翌年度育児休業給付額予想額との差額を、当該会計年度末における育児休業給付資金に加減した額

(ロ) 当該会計年度の翌々年度における育児休業給付費充当徴収保険料額の見込額及び当該会計年度の翌々年度における育児休業給付額の予想額(以下「翌々年度育児休業給付額予想額」という。)に係る国庫の負担額の見込額の合計額ロ翌々年度育児休業給付額予想額

(3) 厚生労働大臣は、(2)により育児休業給付に要する費用に対応する部分の雇用保険率を変更するに当たっては、育児休業の取得の状況その他の事情を考慮し、育児休業給付の支給に支障が生じないようにするために必要な額の育児休業給付資金を保有しつつ、雇用保険の事業(育児休業給付に係るものに限る。)に係る財政の均衡を保つことができるよう、配慮するものとすること。(徴収法第12条第9項関係)

2 その他

その他所要の改正を行うこと。

 

第4 職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律(平成23年法律第47号)の一部改正(改正法第7条)

1 特定求職者の範囲に関する暫定措置(令和10年10月1日施行)

当分の間、一週間の所定労働時間が10時間以上20時間未満である雇用保険の被保険者及び当該被保険者であった間の一週間の所定労働時間が10時間以上20時間未満である受給資格者についても、特定求職者となり得るものとすること。(職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律附則第4条関係)

2 その他

その他所要の改正を行うこと。

 

第5 その他

1 検討

(1) 政府は、この法律の施行後5年を目途として、この法律による改正後のそれぞれの法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律による改正後のそれぞれの法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。(改正法附則第27条第1項)

(2) 政府は、育児休業給付の財政状況について不断の検証を行い、その状況が安定的に推移している場合においては、育児休業給付の財政状況、国の財政状況等を踏まえ、この法律による改正後の育児休業給付の国庫負担その他の事項に関する検討を行い、必要があると認めるときは、その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとすること。(改正法附則第27条第2項)

2 経過措置等(改正法附則第2条から第26条まで)

(1) 自己都合離職者に係る給付制限に係る改正後の雇用保険法第33条第1項第2号及び第3号(第37条の4第6項において準用する場合を含む。)の規定は、令和7年4月1日以後に対象教育訓練を開始した受給資格者について適用すること。(改正法附則第2条)

(2) 就業促進手当に係る改正後の雇用保険法第56条の3の規定は、令和7年4月1日以後に就業促進手当の支給要件に該当することとなった者について適用し、同日前に支給要件に該当することとなった者に対する就業促進手当の支給については、なお従前の例によるものとすること。(改正法附則第3条第1項)

(3) 教育訓練給付金に係る改正後の雇用保険法第60条の2第4項の規定は、令和6年10月1日以後に教育訓練を開始した者について適用し、同日前に教育訓練を開始した者に対する教育訓練給付金については、なお従前の例によるものとすること。(改正法附則第4条)

(4) 教育訓練支援給付金に係る改正後の雇用保険法附則第11条の2第3項の規定は、令和7年4月1日以後に教育訓練を開始した者について適用し、同日前に教育訓練を開始した者に対する教育訓練支援給付金については、なお従前の例によるものとすること。(改正法附則第5条第1項)

(5) 雇用保険の適用対象者の範囲の拡大関係

イ 一週間の所定労働時間が10時間以上20時間未満である者であって、令和10年10月1日前から引き続いて雇用されているもの(改正後の雇用保険法第37条の5第1項の規定による申出をして高年齢被保険者となる者を除く。)については、同日に当該者が当該事業主の適用事業に雇用されたものとみなして、改正後の雇用保険法の規定を適用すること。(改正法附則第7条及び第15条)

ロ 改正後の雇用保険法第14条第1項及び第3項の規定は、離職日が令和10年10月1日以後である者に係る被保険者期間について適用し、離職日が同日前である者に係る被保険者期間については、なお従前の例によるものとすること。(改正法附則第8条)

ハ 離職日が令和10年10月1日前である基本手当の受給資格者に係る基本手当の日額及び賃金日額については、なお従前の例によるものとし、給付額の基礎に賃金日額を用いている各給付についても、同様の経過措置を講ずるものとすること。(改正法附則第3条第2項~第4項、第5条第2項、第9条、第12条、第13条、第16条、第17条第2項及び第18条~第23条)

ニ 令和10年10月1日前に行われた失業の認定に係る期間中に自己の労働によって収入を得た場合における基本手当及び傷病手当の支給に係る改正前の雇用保険法第19条第1項の規定等の適用については、なお従前の例によるものとすること。(改正法附則第11条)

ホ 令和10年10月1日前に改正前の雇用保険法第37条の5の規定により高年齢被保険者となり、同日まで引き続き当該被保険者である者に係る改正後の雇用保険法第6条、第14条及び第37条の5の規定の適用並びに失業等給付及び育児休業給付については、なお従前の例によるものとすること。(改正法附則第14条)

(6) 改正後の徴収法第12条第8項の規定による育児休業給付に要する費用に対応する部分の雇用保険率の変更については、厚生労働大臣は、令和7年4月1日前においても、同項の規定の例により、労働政策審議会の意見を聴くことができるものとすること。(改正法附則第25条)

3 関係法律の整備等(改正法第5条及び第6条並びに附則第28条から第34条まで)

特別会計に関する法律(平成19年法律第23号)その他関係法律の規定の整備等を行うこと。