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通達:障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則の一部を改正する省令等の施行について

 

障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則の一部を改正する省令等の施行について

平成28年3月23日職発0323第26号

(各都道府県労働局長あて厚生労働省職業安定局長通知)

 

障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律(平成25年法律第46号。以下「改正法」という。)については、平成25年6月19日付け職発0619第2号及び平成27年6月16日付け職発0616第1号により、貴職宛て通達したところであるが、本日、改正法の施行に伴い、障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則の一部を改正する省令(平成28年厚生労働省令第11号。以下「改正省令」という。)を公布し、平成28年4月1日から施行することとしたところである。

改正法のうち紛争の解決に係る規定並びに改正省令の内容及び取扱いは下記のとおりであるので、その円滑な実施を図るよう配慮されたい。

 

第1 助言、指導及び勧告(改正法による改正後の障害者の雇用の促進等に関する法律(昭和35年法律第123号。以下「法」という。)第36条の6及び改正省令による改正後の障害者の雇用の促進等に関する法律施行規則(昭和51年労働省令第38号。以下「則」という。)第46条)

法第36条の6の規定に基づき、雇用の分野における障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供義務の施行に関し、必要があると認めるときに事業主に対して助言、指導又は勧告を行う厚生労働大臣の権限を、都道府県労働局長及び公共職業安定所の長に委任すること。ただし、厚生労働大臣が自らその権限を行うことを妨げるものではないこと。

 

第2 紛争の解決の援助(法第3章の2第1節)

1 苦情の自主的解決(法第74条の4)

(1) 企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使間で自主的に解決することが望ましいことから、事業主は、法第35条及び第36条の3に定める事項に関し、障害者である労働者から苦情の申出を受けたときは、労使により構成される苦情処理機関に苦情の処理を委ねる等その自主的な解決を図るよう努めなければならないこととしたものであること。

(2) 本条は、苦情処理機関に苦情の処理を委ねることが最も適切な苦情の解決方法の一つであることから、これを例示したものであること。

(3) 「苦情の処理を委ねる等」の「等」には、事業所の人事担当者による相談等障害者である労働者の苦情を解決するために有効であると考えられる措置が含まれるものであること。

(4) 苦情処理機関においては、障害者である労働者に対する差別や合理的配慮の提供に関する苦情のみを取り扱うのではなく、その他の事案についても、必要に応じ、関係部署との連携を保ちつつ、適切に対処することが望ましいものであること。

(5) 法では、障害者である労働者と事業主との間の個別紛争の解決を図るため、本条のほか、法第74条の6第1項において都道府県労働局長による紛争解決の援助を定め、また、法第74条の7第1項においては紛争調整委員会(以下「委員会」という。)による調停を定めているが、これらはそれぞれ紛争の解決のための独立した手段であり、本条による自主的解決の努力は、都道府県労働局長の紛争解決の援助や委員会による調停の開始の要件とされているものではないこと。しかしながら、企業の雇用管理に関する労働者の苦情や労使間の紛争は、本来労使で自主的に解決することが望ましいことに鑑み、まず本条に基づき企業内において自主的解決の努力を行うことが望まれるものであること。

2 紛争の解決の促進に関する特例(法第74条の5)

(1) 雇用の分野における障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供に関する障害者である労働者と事業主との間の紛争については、「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)」第4条、第5条及び第12条から第19条までの規定は適用せず、法第74条の6から第74条の8までの規定によることとしたものであること。

(2) 「紛争」とは、雇用の分野における障害者に対する差別の禁止及び合理的配慮の提供に関して障害者である労働者と事業主との間で主張が一致せず、対立している状態をいうものであること。

3 紛争の解決の援助(法第74条の6)

(1) 紛争の解決の援助(法第74条の6第1項)

法第34条、第35条、第36条の2及び第36条の3に定める事項に係る障害者である労働者と事業主との間の個別具体的な私法上の紛争の迅速かつ円満な解決を図るため、都道府県労働局長は、当該紛争の当事者の双方又は一方からその解決について援助を求められた場合には、必要な助言、指導又は勧告をすることができることとしたものであること。

イ 「紛争の当事者」とは、現に紛争の状態にある障害者である労働者及び事業主をいうものであること。したがって、労働組合等の第三者は紛争当事者にはなり得ないものであること。

ロ 「助言、指導又は勧告」は、紛争の解決を図るため、当該紛争の当事者に対して具体的な解決策を提示し、これを自発的に受け入れることを促す手段として定められたものであり、紛争の当事者にこれに従うことを強制するものではないこと。

(2) 紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(法第74条の6第2項)

イ 法第74条の6第1項の紛争の解決の援助により、紛争の当事者間に生じた個別具体的な私法上の紛争を円滑に解決することの重要性に鑑みれば、事業主に比べ弱い立場にある労働者を事業主の不利益取扱いから保護する必要があることから、障害者である労働者が紛争の解決の援助を求めたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することとしたものであること。

ロ 「理由として」とは、障害者である労働者が紛争の解決の援助を求めたことが、事業主が当該労働者に対して不利益な取扱いを行うことと因果関係があることをいうものであること。

ハ 「不利益な取扱い」とは、配置転換、降格、減給、昇給停止、出勤停止、雇用契約の更新拒否等がこれに当たるものであること。

なお、配置転換等が不利益な取扱いに該当するかについては、給与その他の労働条件、職務内容、職制上の地位、通勤事情、当人の将来に及ぼす影響等諸般の事情について、旧勤務と新勤務とを総合的に比較考慮の上、判断すべきものであること。

 

第3 調停(法第3章の2第2節)

1 調停の委任(法第74条の7)

(1) 紛争の委任(法第74条の7第1項)

イ 紛争の当事者(以下「関係当事者」という。)間の個別具体的な私法上の紛争について、当事者間の自主的な解決、都道府県労働局長による紛争解決の援助に加え、公正、中立な第三者機関の調停による解決を図るため、法第74条の5の紛争のうち募集及び採用に関する紛争を除いたものについて、関係当事者の双方又は一方から調停の申請があった場合において当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、都道府県労働局長は、委員会に調停を行わせるものとすることとしたものであること。

ロ 「関係当事者」とは、現に紛争の状態にある障害者である労働者及び事業主をいうものであること。したがって、労働組合等の第三者は関係当事者にはなり得ないものであること。

ハ 「調停」とは、紛争の当事者の間に第三者が関与し、当事者の互譲によって紛争の現実的な解決を図ることを基本とするものであり、行為が法律に抵触するか否か等を判定するものではなく、むしろ行為の結果生じた損害の回復等について現実的な解決策を提示して、当事者の歩み寄りにより当該紛争を解決しようとするものであること。

ニ 次の要件に該当する事案については、「当該紛争の解決のために必要があると認め」られないものとして、原則として、調停に付すことは適当であるとは認められないものであること。

① 申請が当該紛争に係る事業主の措置が行われた日(継続する措置の場合にあってはその終了した日)から1年を経過した紛争に係るもの

② 申請に係る紛争が既に司法的救済又は他の行政的救済に係属しているもの及び集団的な労使紛争に絡んだもの

ホ 都道府県労働局長が「紛争の解決のために必要がある」か否かを判断するに当たっては、ニに該当しない場合は、法第74条の4による自主的解決の努力の状況も考慮の上、原則として調停を行う必要があると判断されるものであること。

(2) 調停の申請をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いの禁止(法第74条の7第2項)

法第74条の7第1項の調停により、関係当事者間に生じた個別具体的な私法上の紛争を円滑に解決することの重要性に鑑みれば、事業主に比べ弱い立場にある障害者である労働者を事業主の不利益取扱いから保護する必要があることから、障害者である労働者が調停の申請をしたことを理由とする解雇その他不利益な取扱いを禁止することとしたものであること。

「理由として」及び「不利益な取扱い」の意義は、それぞれ第2の3(2)ロ及びハと同じであること。

2 調停(法第74条の8の規定により準用する雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号。以下「均等法」という。)第19条、第20条第1項及び第21条から第23条)

(1) 法第74条の8の規定により読み替えて準用する均等法第19条第1項では、調停は、3人の調停委員が行うこととされているが、簡易迅速な手続の実施の観点から、則第36条の15により読み替えて準用する雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則(昭和61年労働省令第2号。以下「均等則」という。)第10条第1項では、調停手続の一部を特定の調停委員に行わせることができることとしたものであること。

均等則第10条第1項の「調停の手続の一部」とは、現地調査や、提出された文書等の分析・調査、関係当事者等からの事情聴取等が該当するものであること。

なお、調停案の作成及び受諾の勧告は、調停委員の全員一致をもって行うものであること。

(2) 法第74条の8の規定により読み替えて準用する均等法第20条第1項の関係当事者又は障害者の医療に関する専門的知識を有する者その他の参考人(以下「関係当事者等」という。)の「出頭」は強制的な権限に基づくものではなく、相手の同意によるものであること。これらの出頭については、必ず関係当事者等(法人である場合には、委員会が指定する者)により行われることが必要であること。

(3) 則第36条の15の規定により読み替えて準用する均等則第8条第1項の「補佐人」は、関係当事者等が事情の陳述を行うことを補佐することができるものであること。補佐人の陳述は、関係当事者等が直ちに異議を述べ又は訂正しない限り、関係当事者等本人の陳述とみなされるものであること。

なお、補佐人は、意見の陳述はできないものであること。

(5) 則第36条の15の規定により読み替えて準用する均等則第8条第3項の代理人は、意見の陳述のみを行うことができるものであること。

(6) 法第74条の8の規定により準用する均等法第21条の「主要な労働者団体又は事業主団体が指名する関係労働者を代表する者又は関係事業主を代表する者」とは、主要な労働者団体が指名する関係労働者を代表する者又は主要な事業主団体が指名する関係事業主を代表する者の意であること。

(7) 則第36条の15の規定により読み替えて準用する均等則第11条の関係労使を代表する者の指名は、事案ごとに行うものであること。指名を求めるに際しては、管轄区域内の全ての主要な労働者団体及び事業主団体から指名を求めなければならないものではなく、調停のため必要と認められる範囲で、主要な労働者団体又は事業主団体のうちの一部の団体の指名を求めることで足りるものであること。

(8) 法第74条の8の規定により準用する均等法第22条の「受諾を勧告する」とは、両関係当事者に調停案の内容を示し、その受諾を勧めるものであり、その受諾を義務付けるものではないこと。

則第36条の15の規定により準用する均等則第12条第3項の「書面」は、関係当事者が調停案を受諾した事実を委員会に対して示すものであって、それのみをもって関係当事者間において民事的効力をもつものではないこと。

(9) 法第74条の8の規定により準用する均等法第23条の「調停による解決の見込みがないと認めるとき」とは、調停により紛争を解決することが期待し難いと認められる場合又は調停により紛争を解決することが適当でないと認められる場合がこれに当たるものであり、具体的には、調停開始後長期の時間的経過をみている場合、当事者の一方が調停に非協力的で再三にわたる要請にもかかわらず出頭しない場合のほか、調停が当該紛争の解決のためでなく労使紛争を有利に導くために利用される場合等が原則としてこれに含まれるものであること。

3 時効の中断(法第74条の8の規定により準用する均等法第24条)

法第74条の8の規定により準用する均等法第24条は、同法第23条により調停が打ち切られた場合に、当該調停の申請をした者が打ち切りの通知を受けた日から30日以内に調停の目的となった請求について訴えを提起したときは、調停の申請の時に遡り、時効の中断が生じることを定めるものであること。

「調停の申請の時」とは、申請書が現実に都道府県労働局長に提出された日であって、申請書に記載された申請年月日ではないこと。

また、調停の過程において申請人が調停を求める事項の内容を変更又は追加した場合にあっては、当該変更又は追加した時が「申請の時」に該当するものと解されること。

「通知を受けた日から30日以内」とは、民法の原則に従い、文書の到達した日は期間の計算に当たり参入されないため、書面による調停打ち切りの通知が到達した日の翌日から起算して30日以内であること。

「調停の目的となった請求」とは、当該調停手続において調停の対象とされた具体的な請求(地位確認、損害賠償請求等)を指すこと。本条が適用されるためには、これらと訴えに係る請求とが同一性のあるものでなければならないこと。

4 訴訟手続の中止(法第74条の8の規定により準用する均等法第25条)

法第74条の8の規定により準用する均等法第25条は、関係当事者が調停による紛争解決が適当であると考えた場合であって、調停の対象となる紛争のうち民事上の紛争であるものについて訴訟が係属しているとき、関係当事者が和解交渉に専念する環境を確保することができるよう、受訴裁判所は、訴訟手続を中止することができることとする規定を設けたものであること。

5 資料提供の要求等(法第74条の8の規定により準用する均等法第26条)

法第74条の8の規定により準用する均等法第26条の「関係行政庁」とは、例えば、国の機関の地方支分部局又は都道府県等の地方自治体が考えられるものであること。

「その他必要な協力」とは、情報の提供や便宜の供与等をいうものであること。

 

第4 報告等(法第82条第1項及び則第46条)

法第82条第1項の規定に基づき、法を施行するため必要な限度において、事業主等に対し、障害者の雇用の状況その他の事項についての報告を命じ、又はその職員に、事業主等の事業所等に立ち入り、関係者に対して質問させ、若しくは帳簿書類その他の物件の検査をさせる厚生労働大臣の権限を、都道府県労働局長に委任するものであること。ただし、厚生労働大臣が自らその権限を行うことを妨げるものではないこと。

なお、当該権限は法第82条第1項に基づき公共職業安定所長も有するものであること。

 

第5 適用時期

この通達は、平成28年4月1日から適用すること。