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通達:労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律の施行について

 

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律の施行について

平成27年9月30日職発0930第22号

(各都道府県労働局長あて厚生労働省職業安定局長通知)

 

「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律」(平成27年法律第73号。以下「改正法」という。)については、平成27年9月11日に成立し、9月18日に公布され、更に、法の施行に関し、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律の施行に伴う関係政令の整備及び経過措置に関する政令(平成27年政令第340号)」等の関係政省令・告示が同年9月29日に公布され、同日付け厚生労働省職発0929第17号によりその概要を通達したところである。

なお、参議院厚生労働委員会において、別添のとおり附帯決議が付されたところであり、下記に十分留意の上、改正法の円滑な施行に万全を期されたく、通達する。

 

第1 労働者派遣法の原則について

① 派遣就業は臨時的・一時的なものであるべきとの基本原則については改正法施行後も変わらないことに十分留意し、かつ、派遣労働が企業にとって単純な労働コストの削減や雇用責任の回避のために利用されてはならないことを踏まえ、労働者派遣法の規定の運用に当たること。

② 労働者派遣法の根本原則である常用代替の防止は、派遣労働者が現に派遣先で就労している常用雇用労働者を代替することを防止するだけでなく、派遣先の常用雇用労働者の雇用の機会が不当に狭められることを防止することを含むものであることに十分留意し、労働者派遣法の規定の運用に当たること。

 

第2 労働者派遣事業について

① 今般、特定労働者派遣事業と一般労働者派遣事業との区分を撤廃し、全ての労働者派遣事業を許可制とすることとした改正法の趣旨を踏まえ、派遣労働者の基本的権利や労働者としての尊厳、更には正当な労働の対価の支払や雇用の安定を無視して利益確保に走るような派遣元事業主が派遣事業が続けられなくなるよう許可制を適切かつ確実に運用すること。

② 法令違反を繰り返す派遣元事業主に対しては、厳正なる指導監督の強化、許可の取消しを含めた処分の徹底を行うこと。

③ 無許可で労働者派遣事業を行う事業主に対しては、許可の取消し等の措置を採ることができないことに鑑み、刑事告発を行うことも視野に、指導監督に万全を期すとともに、企業名の公表を行うこと。

 

第3 期間制限について

① 施行日前に締結された労働者派遣契約に基づき行われる労働者派遣については、派遣労働者の保護に欠けることのないよう、改正法による改正前の労働者派遣法第40条の4の規定等に基づく指導・助言を徹底するとともに、それに従わない派遣先に対しては勧告や公表も含め、厳しく対処すること。

② 改正後の労働者派遣法第40条の2第4項の規定に基づき、過半数代表者から意見聴取を行うときには、過半数代表者が管理監督者である場合、投票、挙手等の民主的な方法によらず使用者の指名等の非民主的・恣意的方法により選出されたものである場合等については、意見聴取手続が適正でないと判断されることに鑑み、過半数代表者の適正かつ民主的な選出について、厳正な確認、必要な指導等を行うこと。また、労働者が過半数代表者であること若しくは過半数代表者になろうとしたこと又は過半数代表者として正当な行為をしたことを理由として不利益な取扱いをした際には、厳正に対処すること。

 

第4 雇用安定措置について

① 雇用安定措置については、派遣労働者の年齢や業務等によってその雇用の継続が困難な場合も含め、派遣元事業主の履行を確保するよう厳正な指導等を行うこと。

② 雇用安定措置の実効性ある実施が派遣労働者の保護の観点から最も重要であることに鑑み、派遣元事業主が個々の派遣労働者に対して実施した雇用安定措置については、その内容を派遣元管理台帳に記載することで、派遣労働者に対するキャリア・コンサルティングや雇用安定措置に係る派遣労働者の意向の確認等にも積極的に活用するよう、派遣元事業主に対して指導すること。

 

第5 派遣労働者の待遇について

① 派遣労働者が待遇に関する事項等の説明を求めたことを理由として不利益な取扱いをしないように、派遣元事業主に対し厳正な指導監督等を行うこと。

② 派遣労働者が安心して働くことができる環境を整備するため、派遣労働者を労働・社会保険に加入させることなく事業を行う派遣元事業主に対して指導監督等を強化するなど、派遣労働者に対する労働・社会保険適用の促進を図ること。

 

第6 キャリアアップ措置について

① 段階的かつ体系的な教育訓練等のキャリアアップ支援については、派遣労働者の正社員化や賃金等の待遇改善という成果につながるものとなるよう、派遣元事業主に対して助言等を行うこと。

② 派遣元事業主に義務付けられる教育訓練の実施状況については、事業報告、派遣元管理台帳等によって確認し、その実施について適切な指導監督等を行うとともに、事業許可の更新の際には重要なチェック項目としてその適性かつ誠実な実施を確認し、基準を満たさない場合には更新をしないことも含め厳正に対処すること。

③ 派遣元事業主に義務付けられる教育訓練の実施に当たっては、必ず有給かつ無償で行わなければならないものであり、その義務違反に対しては、許可の取消しや更新をしないことを含め、厳正に対処すること。

④ 派遣労働者のキャリアアップのためには、キャリア・コンサルティングが効果的であることに鑑み、派遣労働者の意向に沿ったキャリア・コンサルティングが実施されるよう、派遣元事業主に対し指導等を行うこと。

⑤ 派遣先が派遣労働者を正社員として採用するなど直接雇用しようとする際、それを派遣元事業主が禁止したり妨害したりすることは労働者派遣法の趣旨に反するものであり、そのような派遣元事業主に対しては、厳正な指導を行うこと。

 

第7 その他

① 個々の派遣労働者についての派遣元管理台帳の保管については、派遣労働者のための雇用安定措置、キャリアアップ措置等の着実かつ適正な実施を確保する観点から適切に行わせること。

② 無期雇用派遣労働者の募集に当たっては、正社員の募集と誤認させることがないよう指導等を徹底すること。

③ 職業安定法第44条の規定による労働者供給事業の禁止については、行政による刑事告発を行うなど、指導監督に万全を期すこと。