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通達:今後の外国人雇用対策における重点的な事項について

 

今後の外国人雇用対策における重点的な事項について

平成24年6月29日職発0629第2号

(都道府県労働局長あて厚生労働省職業安定局長通知)

 

外国人に対する雇用対策については、平成19年4月1日付け職発第0401003号「今後の外国人雇用対策の重点について」(以下「重点通達」という。)に基づいて実施してきたところであるが、今般、外国人雇用対策における重点的な事項について下記のとおり定めたので通知する。なお、本通達の施行に伴ない重点通達は廃止する。

 

第1 改正雇用対策法(平成19年10月1日施行)における外国人雇用対策の位置付け

平成19年当時において、経済社会の国際化の進展に伴い、我が国で就労する外国人労働者は増加しており、その就労状況をみると、雇用が不安定であること、社会保険の未加入が多いこと等の問題があるほか、労働市場に悪影響を及ぼす不法就労も依然として多い状況にあったことから、こうした状況の改善に向け、外国人雇用対策を国が講ずべき雇用対策の一つとして明確に位置付け、外国人雇用に関する基本ルールを整備すべく、雇用対策法が改正され平成19年10月1日より施行されたところである(別紙1)。

改正法では、高度の専門的な知識又は技術を有する外国人労働者(以下「専門的・技術的分野の外国人労働者」という。)の就業促進、在留資格の範囲内で適法に労働に従事する外国人労働者に係る雇用管理の改善及び再就職の促進に係る施策を総合的に講ずることとされたところであるが(法第4条第1項第10号)、これらの施策を的確に講ずるためには、外国人労働者の就業状況の的確な把握や、きめ細かな事業主指導や公共職業安定所(以下「安定所」という。)における求職者支援等を実施することが必要である。このため、改正法においては、外国人労働者を雇用する事業主からの届出制度(法第28条第1項)や、外国人労働者の雇用管理の改善及び再就職の促進に関する事業主の努力義務(法第8条)等を創設するとともに、当該努力義務を具体化する「外国人労働者の雇用管理の改善等に関して事業主が適切に対処するための指針(以下「外国人指針」という。)」が定められた。

 

第2 外国人雇用状況の届出制度について

外国人雇用状況の届出制度(以下「届出制度」という。)は、在留資格の範囲内で外国人労働者が能力を発揮できる環境の整備に向けた雇用管理指導など、外国人雇用対策を推進する上での基礎となるものであり、その確実な履行が求められている。

都道府県労働局においては、こうした趣旨を踏まえ、特に以下の事項に重点をおき届出制度の適正な運用に努めること。

1 届出の履行促進及び届出制度の周知・啓発

(1) 届出の履行促進

届出制度は、外国人労働者(「外交」又は「公用」の在留資格の者及び特別永住者を除く。以下同じ。)の雇入れ又は離職の際、その氏名、在留資格などの届出を求め、雇用管理の改善等の取組を実施するための基礎とするとともに、不法就労の防止を図るものである。

平成19年10月以降届出制度の周知が図られ届出件数も着実に伸びているところであるが、引き続き事業所訪問等の機会を活用し届出の確実な履行確保に努めること。また、その際には、雇入れの時点のみではなく、離職時にも確実に届出を行うよう事業主に対して指導を行うこと。

(2) 届出制度の周知・啓発

本省においては、毎年度、外国人指針の周知や届出履行を促進するため、事業主向けのパンフレットを作成し、自治体や経済団体等にも協力頂きながら届出制度の周知・啓発に取り組んでいるところである。

都道府県労働局においても、引き続き、局の職員や公共職業安定所長等が率先して、事業主や地元経済団体等に対し、直接訪問によるほか、各種会議、求人受理、求人開拓等の機会を活用して、積極的な周知・啓発に努めること。また、その際には、届出義務の履行確保と併せ、外国人労働者の雇用管理改善に係る事業主の努力義務や、不法就労に当たる外国人を雇い入れ、その雇用を継続してはならないことについても併せて指導を行うこと。

2 届出情報の適正な管理

外国人雇用状況の届出は、外国人労働者の氏名、在留資格等の個人情報からなるものであり、その管理に当たっては、外国人労働者のプライバシーの保護の観点から適正な対応が求められる。

このため、届出情報を取扱う職員による秘密の保持や、当該個人情報の目的外利用の制限など、関連法令の定めるところに従い適正な情報管理を行うこと。

3 管内における外国人雇用状況の的確な把握

外国人雇用状況の届出を通じ、管内における外国人雇用の状況や、産業ごとの雇用状況などの地域特性を把握するとともに、主要な外国人雇用企業や、在留資格別の就労状況等の把握に努め、適正な外国人雇用対策の実施に役立てるよう努めること。

 

第3 専門的・技術的分野の外国人の就業促進について

専門的・技術的分野の外国人の就業促進については、平成22年6月に閣議決定された「新成長戦略」(別紙2)においても、優秀な海外の人材を我が国に引き寄せることや質の高い外国人留学生の受入れ促進が盛り込まれるなど国が行うべき重要な施策に位置付けられており、今後、なお一層の就業促進の取組が求められている。

これらを踏まえ、今後、以下の事項に重点をおき「専門的・技術的分野」の外国人の就業促進を図ること。

1 専門的・技術的分野の外国人に対する就業促進

専門的・技術的分野の外国人に係る職業相談、職業紹介や、雇用管理に関する指導、援助などを専門的に行う施設として、東京、愛知、大阪に外国人雇用サービスセンター(以下「外セン」という。)を設置しているところである。

外センについては、専門的・技術的分野の外国人労働者の受入れを促進するための中核的施設として設置されたものであり、こうした点にも改めて留意し、専門性の確保に努めるとともに、必要な業務体制を確保し、以下の事項に重点をおき、専門的・技術的分野の外国人の就業促進を図ること。

また、安定所においても、外国人求職者を適切に受け入れることができると判断される事業所の専門的・技術的分野の外国人に係る求人の積極的な確保と適格紹介を実施すること。

① 全国ネットワークの拠点としての外センの機能強化

専門的・技術的分野の求人の積極的な確保及び外国人求職者に対する適格紹介の積極的な実施に努めること。また、職業紹介に際しては、平成24年度より掲載を開始した「しごと情報ネット」の留学生等外国人向け求人情報を積極的に活用すること。

② コンサルティング機能の充実

外国人労働者専門官や外国人雇用管理アドバイザーを中心に、外国人が有する能力を有効に発揮し、職業に適応するための雇用管理の改善に向けた事業主指導・援助を実施すること。その際には、外国人指針に基づく助言・指導を的確に行い、企業における雇用管理の改善を通じた専門的・技術的分野の就業促進が図られるよう積極的に取り組むこと。

③ 入管行政との連携

外センであっせんする留学生を含めた求職者に関する在留資格の変更等の手続が円滑になされるための支援を、必要に応じ管轄の地方入国管理局と連携のうえ実施すること。

④ 外センの周知・啓発、積極的な利用勧奨

各種会議、セミナーなど事業主と接する様々な機会を捉えて、外センの周知・啓発を図るとともに、大学や留学生に対しても、外センの積極的な利用を働きかけること。

2 留学生に対する就職促進

経済社会の国際化が進展する中で、日本の大学などで学ぶ留学生が増加するとともに、学んだ知識や技術を生かし、卒業後も日本で就職することを希望する留学生が多数存在している。一方、事業活動の国際化や新規事業の展開に伴い、留学生が持つ専門性に期待する企業も相当数存在している。

しかしながら、①留学生採用の経験が乏しく職場適応などの不安感があることなどから、留学生を実際に採用しようとする企業は必ずしも多くないこと、②留学生にとって、日本における学生採用に関する慣行についての情報や就職活動に必要な情報が不足していること、③留学生が描く就職後のキャリアについての意識と、事業主が描く採用後の人材戦略との間にミスマッチが存在することなどの理由により、円滑に就職へ結びついていないとの指摘もなされているところである。

これらのような状況を踏まえ、専門的・技術的分野の労働者として、我が国での就職を希望する留学生を着実に国内就職へつなげていくため、前述「1」による支援のほか、以下の(1)から(3)の取組を通じ、積極的な求人開拓、留学生に対する就職活動や就職支援に関する情報の積極的な提供及び全国ネットワークも活用したマッチングを図る。

なお、福岡新卒応援ハローワークを九州及び周辺地域における留学生の就職支援の拠点として位置付けているところである。

(1) 外センにおける積極的な就職支援の実施

外センに配置した職業相談員(外国人担当)を活用し、留学生が応募可能な「専門的・技術的分野」に係る求人を積極的に確保するとともに、全国の留学生に対して、安定所及び新卒応援ハローワークの全国的ネットワークも駆使することにより、適格な職業紹介によって着実に就職まで至るよう努めること。また、メール、ハガキ等を活用し、留学生、大学、事業主等と連携し留学生の就職状況を把握するための取組を推進すること。

なお、求人開拓に当たっては、外国人指針において、「留学生であることを理由として、新規学卒採用等の対象から除外しないようにすること」、「企業の活性化・国際化を図るためには、異なる教育、文化等を背景とした発想が期待できる留学生向けの募集・採用を行うことも効果的であること」が盛り込まれており、これを踏まえた助言・指導を的確に行い、留学生の募集・採用に対する企業の意識改革を進める。

また、別紙3「ビジネス・インターンシップ実施要領」に示すビジネス・インターンシップの実施により、留学生と企業の相互理解の促進や卒業後の本格就労に向けた実践的な準備機会の提供を図り、企業における高度な外国人材の活用促進及び留学生の国内就職の促進に一層取り組む。

さらに、求職登録を行った留学生に対し、その後の利用状況を勘案しつつ、状況に応じ外セン、新卒応援ハローワーク、安定所の利用勧奨や、登録留学生の求職条件に適合する求人情報の提供を行う。また、外センが行う各種イベント等の情報を逐次連絡すること。

これに加え、別紙4「留学生を参集して行う各種支援の強化について」具体的に示すとおり、外センが実施している留学生を参集して行う就職ガイダンス及び留学生合同就職面接会についての機能強化を図る。

なお、面接会の実施に際しても、留学生、事業所とよく連携のうえ留学生の就職状況の把握に努めること。

(2) 新卒応援ハローワーク及び安定所における積極的な就職支援の実施

新卒応援ハローワーク及び安定所の学生担当窓口においても、ジョブサポーター等を活用して外セン又は外国人雇用サービスコーナーの支援を得ながら、留学生を積極的に採用する求人の確保や職業紹介につとめる等留学生に対する積極的な就職支援を実施すること。

(3) 大学等と連携した就職支援の強化

イ 留学生の就職支援に関する周知・広報の徹底について

都道府県労働局においては、外国人雇用対策担当者と学卒業務担当者が連携し、大学(大学院を含む。)、短期大学、高等専門学校、専修学校(以下「大学等」という。)の就職支援担当者を訪問することにより、留学生に対する外セン、新卒応援ハローワークの活用勧奨の要請及び未内定留学生の把握を行っているところであるが、今後も、大学等を積極的に訪問するなど情報交換を緊密に行い、連携して留学生の就職支援に取り組むこと。

ロ 大学等の就職支援担当者との連絡会議の開催

外センにおいては、留学生の就職に係る問題意識や情報の大学等との共有、効果的な留学生支援を図るため、留学生を受け入れている大学等の就職支援担当者との連絡会議を開催し、留学生インターンシップの情報など留学生の就職に関する基本的事項、就職状況などの情報提供を行なうとともに、留学生の就職希望状況を把握し今後の対策を協議すること。

ハ 大学等に対するメールマガジンの配信

外セン及び新卒応援ハローワークが、大学等に対して、留学生その他の学生の就職や雇用に関する動向や各種施策に関する情報をメールにより随時提供することによって、留学生や大学等の理解を促進するとともに、外セン、新卒応援ハローワークと大学等との連携・協力関係の強化を図ること。

 

第4 雇用管理の改善を通じた外国人の適正就労の促進について

外国人の適正就労の促進に向けた取組については、安定所における計画的な事業所訪問により行う外国人指針に基づく雇用管理指導や、雇用管理アドバイザーによる専門的な雇用管理相談、雇用管理セミナーの開催などにより実施しているところである。

しかしながら、現在も特に日系人を中心として、しばしば雇用が安定しない、労働条件が低い、安全衛生対策が不十分、社会保険に加入していない等の種々の問題が指摘され、適切な雇用管理の改善及び適正な労働条件の確保の推進に向けた事業主指導が重要な課題となっていることに加え、現下の雇用情勢の下、派遣・請負等の不安定な雇用形態で働く者が多いことから、以下の事項に重点をおき外国人労働者に対する雇用管理の改善や再就職を促進するための施策を継続していく必要がある。

1 外国人指針の周知及び雇用管理指導の実施

(1) 事業所訪問などによる外国人指針の周知及び雇用管理指導

都道府県労働局においては、外国人労働者専門官など安定所において事業主に対する雇用管理指導を担当する職員が、外国人雇用状況の届出により把握した事業所を訪問し、外国人指針の周知に努め、その理解を求めるとともに、当該事業所の雇用管理の状況について、改善が必要と判断される場合には、助言又は指導を行うこと。

事業所訪問は、管内における外国人雇用の状況や、産業別の雇用状況等の地域特性を踏まえ、届出により初めて外国人雇用が確認された等、従来職業安定行政との接点が少なかった事業所や以下の事業所を中心に、特に指導の必要性の高い事業所を選定し、重点的かつ計画的に指導すること。なお、事業所訪問計画の策定に当たっては、管内の外国人を雇用している事業所数を勘案し、適切な訪問計画を策定するとともに計画数を達成できるようしっかり取り組むこと。

イ 外国人を多数雇用している派遣・請負業の事業所

ロ 一定期間に多数の外国人が離職した事業所

ハ 短期間に外国人の入離職が繰り返される事業所

ニ 過去に事業所訪問指導を行い問題が見られた事業所

ホ 本省が示す要件に該当する事業所(必要に応じ別途示す。)

なお、事業所訪問に際しては、あらかじめ、事業所に雇用される外国人労働者の在留資格、国籍などを確認し、その特性に応じた的確な雇用管理指導が行えるように努めること。

具体的には、外国人指針において示された雇用管理の改善等に関する事項の取組状況を確認し、在留資格の範囲内で多様な人材の能力が発揮される雇用管理がなされるよう助言・指導を行うこと。

特に、外国人の雇用管理指導に際して、雇用保険、社会保険の適用促進が依然として進んでいない状況を念頭におき重点的に事業主指導を実施すること。

なお、事業所訪問にあたっては、必要に応じ、雇用管理アドバイザーを帯同し、より専門的な相談にも対応できるようにするなど、きめ細かく対応すること。

また、都道府県労働局、安定所においては、説明会や集団指導、広報活動など、様々な機会を捉えて、外国人指針の周知及び啓発・指導に努めること。

(2) その他指導に当たっての留意事項

外国人労働者について、「安い労働力」と見なす傾向や、勤務形態も含め、日本人とは異なる雇用管理の下で処遇している事業主が少なからず存在しているという実態も踏まえ、外国人労働者に対しても労働関係・社会保険関係法令が日本人と等しく適用されることや、当該関係法令に基づく事業主の責務を遵守すべきことについても、改めて周知徹底すること。

特に、事業主に対しては、事業所規模を縮小・廃止する場合であっても、外国人労働者を安易に解雇することのないよう指導するとともに、雇用調整助成金等を活用し、雇用維持を図るよう指導すること。また、労働者にとってのセーフティーネットである労働・社会保険について未加入等の疑いがある事案を把握した場合には、2に従い、関係行政機関に速やかに遺漏無く情報提供を行うこと。

2 関係行政機関への情報提供及び方法

事業所訪問による外国人指針の周知、雇用管理指導を実施する中で以下のような事案を把握した場合は、各々の事案に応じ、当該事案に係る事業所の所在地を管轄する都道府県労働局、日本年金機構ブロック本部、労働基準監督署、地方入国管理局・支局、本省職業能力開発局へ速やかかつ確実に情報提供を行うこと。

なお、日本年金機構ブロック本部、地方入国管理局・支局又は本省職業能力開発局への情報提供は、都道府県労働局を通じて行うこととする。

○ 労働保険、社会保険未加入の疑いがある事案

○ 偽装請負の疑いのある事案

○ 労働条件の確保等対処することが必要な事案

○ 出入国管理法令違反の疑いがある事案

○ 技能実習の適正な実施の確保など対処することが必要な事案

なお、公共職業安定所からの情報提供を受けた都道府県労働局、日本年金機構ブロック本部、労働基準監督署又は本省職業能力開発局においては、必要に応じ、加入勧奨、監督指導、集団指導等を行うなど、事案に応じた適切な処理を行うこととされていることから、安定所において関係機関へ情報提供を行った場合には、その結果について必ず関係機関に確認を行うこと。

 

第5 外国人雇用状況の届出に基づき国が行う再就職援助

外国人雇用状況の届出に基づき安定所においては、以下の取組を通じ外国人労働者の再就職の促進を図ること。

1 事業主に対する再就職援助に係る指導

改正雇用対策法により、事業主は事業主都合で離職した外国人労働者であって再就職を希望する者に対して、再就職の援助を行うことが努力義務とされている。

また、外国人指針において、事業主は、再就職希望者に対し、関連企業へのあっせん、教育訓練の実施・受講あっせん、求人情報の提供など必要な援助に努めるとともに、実施にあたっては安定所からの指導を踏まえ、適切に対応することとされている。

これらを踏まえ、求人開拓、事業主指導など様々な機会を捉え、外国人指針の内容についての周知を図るとともに、事業主からの求めに応じ、求人情報や受講可能な職業訓練情報の提供を行うなど、事業主の再就職援助の取組を支援する。

2 外国人求職者に対する職業紹介

外国人求職者に対しては、これまで外セン、安定所において、全国ネットワークの強みを活かし、職業相談、職業紹介に取り組んでいるところである。

外国人労働者の離職に係る届出受理の機会を捉えて、離職に係る事業所を通じ、離職する外国人労働者本人への求職登録勧奨を行なうとともに、登録を受けた外国人労働者に対しては、当該外国人労働者の希望、知識経験などを踏まえて、きめ細かに職業相談を行うとともに、在留資格に応じた求人開拓、職業紹介を行い、在留資格の範囲内で、その能力を活かした形での再就職が可能となるよう努めること。なお、外国人労働者には非正規雇用で働く者も多いことから、ハローワークにおける正社員向けの求人開拓や、各種奨励金の支給等により、その正社員就職・正社員転換や処遇の改善に積極的に取り組むこと。

3 外国人求職者に対する職業訓練

離職した外国人労働者に対する再就職支援に際して、公的職業訓練の受講の必要がある外国人求職者を把握した場合には、当該外国人の在留資格、知識・経験などを踏まえつつ、適切な職業訓練についての受講あっせんを行うこと。

また、日系人求職者を対象として就労に向けた日本語コミュニケーション能力や就労に必要な知識やスキルを習得するための就労準備研修を平成21年度から実施しているが、関係都道府県労働局にあっては、就労準備研修終了後に求職者の特性、日本語能力などを踏まえ、定住外国人向けの公共職業訓練に円滑に受講あっせんができるよう、都道府県職業能力開発主管課や就労準備研修実施主体との間で相談を行い、より就職につながる取組を推進すること。

なお、今後、関係都道府県労働局にあっては、定住外国人が集住している地域(市町村)からの要望も把握し、当該地域においてより安定的な雇用につながると見込まれる、日本語能力に配慮した定住外国人向けの公共職業訓練の設定が行われるように、職業訓練ニーズを都道府県職業能力開発主管課に伝え、必要な相談、調整を行うこと。

 

第6 日系人の就業支援及び安定した雇用の確保について

日本に在住する日系人をとりまく状況については、平成20年秋以降の経済危機により、再就職が難しいなどの理由により生活困難な状況におかれる者が増加し、帰国者が多数生じ、ブラジル国籍者でみるとピーク時(平成19年末)の32万人から平成23年12月末で21万人と約10万人も減少しているが、日本での暮らしが長期に及んでいる者はそのまま定住を希望している傾向にある。

また、外国人集住都市会議等からの要望を受けて関係省庁連携のもと、政府において日系定住外国人施策推進会議を開催し平成22年8月に「日系定住外国人施策に関する基本指針」(別紙5)がとりまとめられ、当該指針において、「就職に必要な日本語能力や職業能力の向上」や「多言語での職業相談、日本語能力に配慮した職業訓練の実施」を国の重要な施策として位置付けているところである。近年、いわゆる「生活者としての外国人」については、日系人を中心に減少傾向にあるものの未だに不安定雇用や労働環境の問題も指摘されており、現状のままでは、将来、年金などの社会保障や子弟の教育などについて深刻な問題を惹起する恐れがある。

このような状況を踏まえ、職業安定行政としては、日系人が集住する地域を中心に、地方自治体の取組などと連携し、日系人就業支援事業や日系人就職支援プログラムを実施しているほか、また、現下の雇用情勢の下、派遣・請負の雇用形態で働く日系人等が厳しい雇用調整の対象とされ、日本語能力の不足や我が国の雇用慣行に不案内に加え、職務経験も十分ではないため、再就職が極めて厳しい状況にあることから、相談員・通訳の積極的配置や市町村と連携した相談窓口の設置、各種助成金や住宅確保に関するメニューの活用等、地域の実情に応じた相談・支援体制の機動的な強化と併せて、3の日系人就労準備研修事業の実施により、就労に必要な知識やスキルを習得させ、早期の安定就労の促進を図ることとしている。また、このような厳しい再就職環境に置かれる日系人等については、雇用保険法(昭和49年法律第116号)附則第5条に定める、年齢や地域等を踏まえて行う個別延長給付の対象となり得るものであることから、同準備研修の受講期間中の者を含め、当該離職者への支援状況の情報を、雇用保険部門に情報提供する等の連携を図ることとする。

さらに、第5の3により、日系人等の定住外国人向けの職業訓練の活用等、職業能力開発行政との連携を強化することで、日系人の就業支援及び安定した雇用の確保に向けた総合的な取組みを強力に推進することとする。

1 日系人就業支援事業の実施

日系人が集住する地域においては、学齢期に就学しなかったことなどにより就労可能な年齢に達しても就労しないあるいは就労できないという問題、日本語に不慣れなこと及び職業能力が不足していることなどによる再就職が困難な日系人求職者の滞留問題などが発生している。

これらの問題に対応するため、別紙6「日系人就業支援事業実施要領」に基づき、日系人の集住する地域において、地方自治体等と連携した取組を行うことで、就業意識の啓発、就職促進を図る。

2 日系人就職支援プログラムの実施

日系人の雇用の安定の確保のためには、第4における事業主指導の取組みとともに、日系人求職者のうち、安定した雇用を希望する者に対して、希望に添った就職が実現するような支援を提供していくことが必要となる。

このことから、安定所に来所する日系人求職者及び日系人就業支援事業の対象者であった日系人不就労者のうち、同職種の日本人労働者と均等の労働条件が確保され、雇用保険の適用事業所であり、期間を定めない雇用契約の締結が見込まれるなど、安定した就労が見込まれる求人条件への就職を希望する者に対し、別紙7「日系人就職支援プログラム実施要領」に基づき、担当者制による個別支援を行うことで、日系人の安定した雇用の確保に努めること。

3 日系人就労準備研修事業の実施

日系人労働者については、その集住する地域において、派遣・請負といった不安定な雇用形態で働く者を中心に、厳しい雇用調整の対象とされる恐れがある。これらの者は、日本語能力の不足や我が国の雇用慣行などに不案内であることに加え、職務経験も十分ではないため、一旦離職した場合には再就職が極めて厳しい状況におかれることとなる。

こうしたことから、日系人が集住する地域において、安定就労への意欲及びその必要性の高い日系人求職者を対象に、日本語コミュニケーション能力の向上、我が国の労働法令、雇用慣行、労働・社会保険制度等に関する知識の習得に係る講義・実習を内容とした就労準備研修を実施することにより、円滑な求職活動を促進し、もって安定雇用の促進を図るものとする。

なお、当該事業の実施にあたっては、都道府県労働局、安定所は当該事業の委託先、実施自治体と連携を図り、求職者に対する募集の働きかけや研修修了者への職業訓練へのあっせん、日本語能力を踏まえた職業紹介の積極的な推進を行い、事業の効果が最大限得られるよう努めること。

 

(別紙1)

◎ 雇用対策法(昭和四十一年法律第百三十二号)(抄)<編注:略>


(別紙3)

ビジネス・インターンシップ実施要領

1 趣旨・目的

留学生と企業の相互理解の促進や、卒業後の本格就労に向けた実践的準備の機会の提供を通じ、企業における高度外国人材の活用促進を図るため、留学生に対するインターンシップを実施する。

2 ビジネス・インターンシップの実施について

(1) 実施体制

ビジネス・インターンシップは、外国人雇用サービスセンターの職員及び本要領別添により設置するビジネスインターンシップ・コーディネーターが実施する。

(2) 実施時期・期間等

大学の休校期間に当たる7月から9月までの間及び2月から3月までの間を中心に、企業の意向によっては時期を限定せず年間を通じて実施する。

インターンシップ実施期間は、1、2週間程度とする。また、実施中は、無報酬とする。

(3) 参加留学生

参加留学生は、最終学年在籍中以外の大学生又は大学院生を対象とし、近隣労働局管内を含め広く募集することとする。なお、留学生と企業のマッチングを行うに当たり、(4)の受入れ企業側のニーズも十分把握した上で、効果的に進めるよう努める。

参加留学生は、外国人雇用サービスセンター又は福岡学生職業センター(以下「外国人センター等」という。)に求職登録をした後、インターンシップに参加するものとする。

(4) インターンシップ参加企業

専門的・技術的分野の職種においてインターンシップを実施することができる企業とする。また、参加企業の開拓及び確保に当たっては、予め大学側のニーズを十分把握し、近隣労働局との連携も図りつつ年間スケジュールを策定する等計画的に進めるとともに、労働局幹部自らが積極的に企業幹部を訪問し、参加に対する理解と協力を得るよう努める。

3 支援協議会の開催

インターンシップの実施に当たって、企業側及び大学側の要望を把握し、インターンシップ参加企業の開拓につなげるほか、インターンシップ実施で得られた経験・ノウハウ等を広く共有するため、地域の事情に即し、必要に応じて支援協議会を開催する。

外国人センター等は、経営者団体、大学等の関係者を参集して支援協議会等を開催し、次の事項について協議・協力を求める。

(1) インターンシップ参加企業又は留学生の募集、企業と留学生のマッチング等の実施に向けたスケジュールの説明

(2) 重点的に開拓する参加企業の業界、職種の決定及びそれらの経営者団体から傘下企業への協力要請

(3) インターンシップ実施で得られた経験・ノウハウ等を広く共有するとともに、次回のインターンシップ実施に反映するため、参加企業・留学生からの体験談発表等を行うインターンシップ実施報告会の実施

なお、インターンシップ参加企業又は留学生の参加勧奨に当たっては、支援協議会に参加しているか否かにとらわれることなく広く行う。

4 インターンシップ実施後のフォローアップ

インターンシップ参加企業又は留学生に対し、外国人センター等が行う次の各種サービス等を提供する。

(1) 参加企業に対し、求人開拓の実施や、留学生合同就職面接会への参加案内を行うほか、専門的・技術的分野の外国人労働者の雇用管理に係るアドバイスの実施

(2) 参加留学生に対し、卒業年次に至るまでの複数年にわたる就職支援を行うため、別紙4に定める就職ガイダンスの実施や、集いの場の提供のほか、留学生合同就職面接会への参加案内

5 関係機関との連携

インターンシップ実施に当たっては、地域の活性化・国際化のため留学生の就職促進を図っている地方自治体の要望を把握するとともに、(独)日本学生支援機構等の留学生の支援を行っている関係機関と連携してインターンシップ事業の周知を図る。

 

(別紙3別添)

ビジネスインターンシップ・コーディネーター設置要領

ビジネスインターンシップ・コーディネーター(以下「コーディネーター」という。)の設置については、職業相談員規程(平成13年1月6日厚生労働省訓第57号)によるほか、この要領に定めるところによる。

1 職務

コーディネーターは、ビジネス・インターンシップを実施するため、外国人雇用サービスセンター職員の指示の下、次の業務を実施する。

(1) インターンシップ参加企業の開拓に関すること。

(2) インターンシップ参加企業と参加留学生とのマッチングに関すること。

(3) アンケートの集計や、インターンシップ実施報告書の作成に関すること。

(4) 支援協議会開催の準備に関すること。

(5) (1)から(4)までに附帯する業務に関すること。

2 委嘱等

(1) コーディネーターは、以下の要件を具備する者のうちから、都府県労働局長が委嘱する。

イ 企業の人事労務管理に関する知識・経験を有する者、営業等の企業訪問に関する知識・経験のある者又は求人開拓に関する知識・経験のある者

ロ 社会的信望がある者

ハ 1の職務を行うに当たって、必要な熱意と見識のある者

(2) 委嘱期間は1年以内とする。ただし、再委嘱することを妨げない。

(3) 解嘱

都府県労働局長は、本人から申出のあったとき、又はその者にコーディネーターにふさわしくない非行があったときは、コーディネーターを解嘱することができるものとする。

3 研修の実施

都府県労働局長は、委嘱したコーディネーターに対して、委嘱後の早い時期に、専門的・技術的分野の外国人労働者の我が国への受入れ方針、留学生の就職状況、外国人指針の内容など職務を遂行するのに必要な知識等についての研修を行うものとする。

4 その他

この要領に定めるもののほか、コーディネーターに関し必要な事項は別途定めるものとする。

 

(別紙4)

留学生を参集して行う各種支援の強化について

1 趣旨・目的

外国人雇用サービスセンター及び福岡新卒応援ハローワーク(以下「外国人センター等」という。)において実施している留学生を参集して行う就職ガイダンス及び留学生合同就職面接会について、機能強化を図ることにより、留学生に積極的な就職活動を促すとともに、求人・求職のミスマッチの解消を促進する。

2 就職ガイダンスの機能強化

外国人センター等においては、大学等にも必要に応じ出向く等により、就職ガイダンスを実施しているところであるが、就職活動の開始が一般学生と比較して遅れてしまう留学生が依然として多数みられるところであり、これが留学生の就職促進を阻む一因となっている。

このことから、今後、大学等の協力も得ながら、在学年数が少ない(大学1年、2年生、修士1年生)留学生に対し、就職ガイダンスの参加をこれまで以上に積極的に勧奨し、上記問題に対応していくほか、ガイダンスを通じ我が国への就職意識の昂揚を図る。

3 留学生合同就職面接会の機能強化

外国人センター等においては、留学生の集団及び複数の求人企業を対象とした留学生合同就職面接会(以下「就職面接会」という。)を実施しているところであるが、これまで、この機会を利用した求職登録やフォローアップなどについての対応が十分になされてきたとはいえない。

このことから、今後、留学生に対するマッチング機能を強化するため、就職面接会については、以下の対応を行う。

(1) 会場における職業相談及び求職登録の実施

就職面接会の会場に外国人センター等の臨時窓口を設置し、外国人センター等への新規求職登録の申込み希望者に対し、職業相談を行った上で求職登録を行う。また、就職面接会に求職希望に添う求人企業が参加している場合は、当該企業ブースへの案内を行う。

(2) 登録留学生に対するフォローアップの実施

就職面接会会場において求職登録を行った留学生(以下「登録留学生」という。)の求職活動状況について、その後の利用状況を勘案しつつ、一定期間後に電話や電子メール等を通じて確認し、状況に応じ外国人センター等、新卒応援ハローワーク及び安定所の利用を勧奨する。

さらに、登録留学生の求職条件に適合する求人を全国の求人(新卒応援ハローワーク等の求人を含む。)から検索し、求人情報として提供する。

また、外国人センター等が行う各種イベント等の情報を逐次連絡する。

(3) 面接会に参加した留学生の就職状況の把握

面接会に参加した留学生に対するメール、ハガキ等による調査、面接会参加企業、大学から個別に就職状況の情報提供を受ける等、留学生、事業所、大学と連携することにより面接会に参加した留学生の就職状況をしっかり把握するよう努めること

4 留学生が集い互いに情報交換を行う場の提供

外国人センター等内に留学生が集い、留学生自らが互いに就職活動等について情報を交換し、意識啓発を図ることができる場(以下「集いの場」という。)を提供する。

集いの場は、特に、在学年数の少ない留学生の国内就職への意識を早い段階から啓発し、また、留学生の少ない大学に在籍する留学生にとって貴重な情報交換の場となることに留意し、参加者に提供するサービス内容の充実を図る。

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(別紙6)

日系人就業支援事業実施要領

1 趣旨・目的

不就労の日系人若年者及びブラジル人学校等の教育機関に在籍する日系人青少年等(以下「日系人不就労者等」という。)の就職は、我が国で就労するための基本的な知識・能力を有していないこと等により、非常に困難な状況にある。

そこで、日系人が集住する地域を管轄する安定所において、今後のキャリア形成など職業生活に関する意識を啓発し、我が国の労働慣行や日本で生活していく上での知識を身に付けるために、日系人不就労者等に対するキャリア形成支援及び個別の指導・相談による就職支援を行うとともに、地域の日系人に対する職業生活相談を行う。

なお、地域における日系人不就労者等の状況の的確な把握や日系人不就労者等に対する効果的な支援及び日系人に対する職業生活相談の実施に当たっては、関係機関や地域コミュニティとの協力が不可欠であることから、本事業はその連携の下で実施する。

2 日系人就業支援事業の実施体制について

当該事業の実施体制については、外国人労働者専門官及び本要領別添に定めるところにより設置される日系人キャリア形成専門員が実施する。

3 日系人就業支援連絡会議の設置・運営

管内の日系人不就労者等の状況、就職関連情報及び地域で生活するために必要な情報等の把握を行いつつ、具体的な支援内容を検討するため、安定所、市町村レベルの地方自治体、関係団体、地元日系人コミュニティ等を構成員とする「日系人就業支援連絡会議」を設置する。

なお、設置に当たっては、当該構成員等で構成され、類似の目的を持つ既存の会議等の組織を活用しても差し支えない。

4 日系人就業支援ガイダンス、個別職業意識啓発指導等の実施

(1) 日系人就業支援ガイダンスの実施

3により日系人不就労者等のニーズを把握した上で、日系人就業支援ガイダンス(以下「ガイダンス」という。)を開催する。

ガイダンスの内容については、地域の実情により決定することとし、関係行政機関等にも働きかけを行い、日系人不就労者等のニーズに対応したガイダンスの開催に努める。

また、ガイダンスの開催に当たっては、地元日系人コミュニティや地元市町村が実施する在住外国人に対する日本語教室等のサービス提供の場に出向いて開催することを原則とするが、在住外国人支援に係る各種イベント等を活用して開催しても差し支えない。

(2) 個別職業意識啓発指導の実施

ガイダンス出席者を対象として、職業適性検査や職業意識についてのカウンセリング等を行い、職業能力に応じた個別職業意識啓発指導を実施するとともに、必要に応じて安定所への来所を勧奨する。

(3) 安定所における職業指導等の実施

安定所来所者に対しては、必要に応じて、職業能力の向上を図るための職業指導・相談等を実施する。

(4) 職業生活相談の実施

地域における日系人からの職業選択、求職活動、労働条件に関する疑問、事業主との摩擦等に関する相談等を実施する。

 

(別紙6別添)

日系人キャリア形成専門員設置要領

日系人キャリア形成専門員の設置については、職業相談員規程(平成13年1月6日厚生労働省訓第57号)によるほか、この要領に定めるところによる。

1 職務

日系人キャリア形成専門員は、以下の業務を行う。

(1) 日系人就業支援連絡会議の運営に係る業務

(2) 日系人就業支援ガイダンスの開催に関する業務

(3) 日系人不就労者等の状況に応じた個別の指導・相談に関する業務

(4) 日系人からの職業生活相談に関する業務

2 委嘱等

(1) 日系人キャリア形成専門員は、我が国及び南米諸国の労働慣行、生活習慣、職業能力開発等に関する知識及び経験を有し、ポルトガル語又はスペイン語による資料作成及び口頭説明が可能で、地域の日系人コミュニティ等との意思疎通が円滑に行える者で、日系人不就労者等に対する情報提供及び個別指導・相談業務を適格に遂行できるもののうちから、都道府県労働局長が委嘱する。

(2) 日系人キャリア形成専門員の委嘱期間は1年以内とし、再度の委嘱を妨げないものとする。

(3) 都道府県労働局長は、本人からの申出のあったとき、又は、その者に日系人キャリア形成専門員としてふさわしくない非行があったときは、日系人キャリア形成専門員を解嘱することができる。

3 その他

この要領に定めるもののほか、日系人キャリア形成専門員に関し必要な事項は、別途定めるものとする。

 

(別紙7)

日系人就職支援プログラム実施要領

1 趣旨・目的

日系人求職者のうち特に就職の意欲が高く、自ら熱心に求職活動を行う用意のある者等の求職者(以下「支援対象者」という。)に対し、担当制により、同職種の日本人労働者と均等の労働条件が確保され、雇用保険等の適用事業所であり、期間を定めない雇用契約の締結が見込まれる等により、安定した就労が可能となる就職(以下「安定した就労」という。)の実現のために公共職業安定所(以下「安定所」という。)が提供しうる多様な手段を総合的に活用しながら、その個々のニーズを踏まえた計画的で一貫した支援を行うことによって、支援対象者の支援開始後2~3ヶ月間での就職を実現するために、日系人就職支援プログラム(以下「日系人支援プログラム」という。)を実施する。

2 日系人支援プログラムの実施体制

(1) 日系人支援プログラムは、安定所の職員との緊密な連携を図りつつ、本要領別添により設置する日系人就職促進ナビゲーター(以下「日系人支援ナビゲーター」という。)が実施すること。

(2) 日系人支援プログラムを効果的に実施するため、安定所の外国人就職支援担当職員は、支援対象者の履歴書を利用した求人開拓を実施すること。

3 支援対象者について

(1) 支援対象者の要件

支援対象者は次のイからニまでの要件をすべて満たす者を対象とすること。

イ 日本に長期在留する予定(概ね3年以上)の日系人

ロ 安定所の職業紹介業務、事業主指導業務、日系人就業支援事業等により、把握した以下のいずれかの者のうち、安定した就労の必要性が特に高い者

① 不就労日系人若年者

② 日系人求職者

③ 労働条件が低い、労働保険・社会保険に未加入等の事業所に雇用され、転職を希望する日系人求職者

ハ 安定所への求職申込み後、自ら進んで安定所を訪れ職業相談を受ける等就職への意欲が高いと認められること。

ニ 日系人支援プログラムを効果的に運用するために、日系人支援ナビゲーターが支援対象者に実施を求める事項を積極的に実施することに同意すること。

(2) 支援対象者の選定

日系人支援プログラムに参加することにより安定した就労が可能となる就職が実現できるか否かの判断を行うため、要件に該当し、日系人支援プログラムへの参加を希望する者に対し、時間を確保した綿密な相談を実施すること。これにより、支援対象者とする必要がないと判断される場合は、今後の求職活動方法等について助言を行い、通常の求職支援を行うこと。なお、雇用保険受給資格者等公共職業訓練の受講が可能で、なおかつ訓練の受講が必要であると判断される場合には、プログラムの対象とはせず、公共職業訓練の受講あっせんを行うこと。

また、日系人支援プログラムへの参加の必要性が認められた者については、支援対象者に登録し、ハローワークシステムの求職管理情報にその旨を記録すること。

(3) 登録期間

日系人支援プログラムの登録期間は3ヶ月間とするが、できる限り早期の安定した就労が可能となる就職を目指すものとすること。

4 日系人支援プログラムの内容

(1) 計画的な就職支援の実施

日系人支援ナビゲーターは、支援対象者の希望を十分に聴取した上で安定した就労が可能となる就職のための計画を策定し、時間を確保しての就職支援を行うこととし、例えば次のようなマンツーマンの支援を行う。

イ 求職活動にあたっての心構えの確立や不安の解消

ロ 日本の雇用慣行、労働法規や賃金水準等、求職活動に必要な基本的知識の付与

ハ 就職に係る希望、ニーズの詳細な把握

ニ 履歴書の作成指導

ホ 支援対象者のニーズにあった求人の提示と応募する求人の決定を支援(日系人支援ナビゲーターが求人者に対し採用を直接依頼している求人への応募がある場合を除き、応募件数は制限せず、複数応募を原則とすること。)

ヘ 応募先企業に関する情報の収集方法の教示

ト 特定の求人に応募するための履歴書の個別添削

チ 受講すべき安定所、地方自治体、地元日系人コニュニティ等によるガイダンス等の選定

リ 特定の求人に応募するための面接シミュレーション

ヌ 応募に失敗した場合の理由の特定と今後の対応の検討

(2) 支援対象者に実施させること

日系人支援ナビゲーターは、支援対象者との相談の中で、例えば次のような、求職活動を効果的なものとするための課題を期日までに実施するよう、支援対象者に指導すること。

イ 履歴書の原案作成

ロ 応募先企業に求める事項の優先順位の決定

ハ 応募したい求人の検索、選定

ニ 応募先企業に関する情報の収集

ホ 応募先企業にあわせた履歴書の修正案の作成

ヘ 指定されたガイダンス等の受講

ト 応募先企業での面接を想定した想定質問への回答案の作成

チ 面接時等の様子の報告と面接の失敗に関する振り返り

(3) 以上のほか日系人支援ナビゲーターが行うこと

日系人支援ナビゲーターは、以上の他、担当する支援対象者の安定した就労が可能となる就職を実現させるために、例えば次のような活動を行うこと。

イ 支援対象者のニーズにあった求人の選定

ロ 支援対象者の履歴書(氏名・連絡先を伏せたもの)を作成し、安定所の外国人就職支援担当職員へ求人開拓を依頼、又は自ら個別求人開拓を実施

ハ 支援対象者が採用を希望する求人者に対し、支援対象者の履歴書を活用しての採用依頼

ニ 支援対象者が安定所求人以外から応募を希望する求人を見つけた場合は、当該求人者に対し、支援対象者の履歴書も活用した求人開拓及び採用依頼を実施

ホ その他、利用可能な就職支援メニューがある場合には、これらについて活用

(4) 適切なフォローアップ、計画の見直し

支援の結果、安定所に求人を申し込んだ事業所等に採用された場合、職場への定着を促進するため、必要に応じ、外国人労働者専門官や外国人雇用管理アドバイザーに支援を依頼し、事業主に対する雇用管理の改善のための指導及び援助を行うこと。

なお、支援対象者が応募に失敗した場合には、その原因を分析し、問題解決を図った上で応募・面接支援を行うなど適切なフォローアップを行うこと。

また、不調が続く場合には、日系人支援ナビゲーター、外国人労働者専門官、日系人キャリア形成専門員等が協議するなどして、当初策定した日系人支援プログラムを見直すこと。

(5) 日系人支援プログラムの終了

3(3)の日系人支援プログラムの登録期間を経過してもなお安定した就労が可能となる就職が決まらない場合は、日系人支援プログラムを終了し、通常の職業相談・職業紹介による支援に切り替えること。

なお、プログラムを終了しても就職先が決まらない者のうち、公共職業訓練の受講が可能な者については、公共職業訓練の受講の必要性について検討し、必要に応じて訓練の受講あっせんを行うこと。この場合、「公共職業訓練受講指示要領」3(4)ロ(ハ)に該当するものとして、受講指示を行うことができるものであること。

(6) 日系人支援プログラムの打ち切り

安定所は、支援対象者が、急遽帰国することになる等により安定した就労が可能となる就職を希望しなくなった場合、安定所が実施を求める事項を繰り返し実施しない場合等引き続き日系人支援プログラムを行っても効果が見込まれないと判断される場合は、日系人支援プログラムの登録を取り消し、当該支援対象者に対する日系人支援プログラムを打ち切ることができること。

 

(別紙7別添)

日系人就職促進ナビゲーター設置要領

日系人就職促進ナビゲーター(以下「日系人支援ナビゲーター」という。)の設置については、職業相談員規程(平成13年1月6日 厚生労働省訓第57号)によるほか、この要領に定めるところによる。

1 職務

日系人支援ナビゲーターは、「日系人就職支援プログラム実施要領」4に規定する日系人支援プログラムの内容を実施する。

2 委嘱等

(1) 日系人支援ナビゲーターは、以下の要件を具備する者のうちから、都道府県労働局長が委嘱する。

イ 産業カウンセラー等の資格保持者、企業の人事労務管理に関する知識・経験を有する者又は職業相談・職業紹介に関する知識・経験のある者

ロ 社会的信望がある者

ハ 1の職務を行うにあたって、必要な熱意と見識のある者

(2) 委嘱期間は1年以内とする。ただし、再委嘱することを妨げない。

(3) 解嘱

都道府県労働局長は、本人から申出のあったとき、又はその者に日系人支援ナビゲーターにふさわしくない非行があったときは、日系人支援ナビゲーターを解嘱することができるものとする。

3 研修の実施

都道府県労働局長は、委嘱した日系人支援ナビゲーターに対して、委嘱後の早い時期に、職業相談・職業指導の各種技法及び職業安定法、雇用保険法、当該地域の労働市場状況など職務を遂行するのに必要な知識等についての研修を行うものとする。

4 その他

この要領に定めるもののほか、日系人支援ナビゲーターに関し必要な事項は別途定めるものとする。