img1 img1 img1

◆トップページに移動 │ ★目次のページに移動 │ ※文字列検索は Ctrl+Fキー  

通達:看護師等の「雇用の質」の向上のための取組について

 

看護師等の「雇用の質」の向上のための取組について

平成23年6月17日基発0617第2号・職発0617第2号・雇児発0617第4号

(各都道府県労働局長あて厚生労働省労働基準局長・職業安定局長・雇用均等・児童家庭局長通知)

 

平成22年6月に閣議決定された「新成長戦略」において、医療・介護・健康関連産業は、「日本の成長牽引産業」として位置づけられるとともに、質の高い医療・介護サービスを安定的に提供できる体制を整備することとされている。

しかしながら、保健師、助産師、看護師及び准看護師(以下「看護師等」という。)については、夜勤を含む交代制勤務等により、厳しい勤務環境に置かれている者も多く、「新成長戦略」に掲げた戦略を実現するためには、必要な人材の確保を図りながら、看護師等が健康で安心して働ける環境を整備し、「雇用の質」を高めていくことが喫緊の課題である。

このため、本省では、「看護師等の『雇用の質』の向上に関する省内プロジェクトチーム」を設置して、必要な施策の検討を行い、このほど、今後の対応を含め、検討結果を取りまとめた。

下記の第2の1の基本的な考え方に示したとおり、看護師等の勤務環境の改善を図り、看護業務が「就業先として選ばれ、健康で生きがいを持って能力を発揮し続けられる職業」となることを進めるためには、医療行政と労働行政が共通認識を持ち、関係者がそれぞれの立場で、勤務環境の改善等に向けて可能なものから取り組んでいく必要がある。厚生労働省としては、関係団体との密接な連携の下、医療関係者の間で既に進められている主体的な取組の幅広い展開に向けた支援を行うとともに、従来から取り組んできた政策について、より効果的な促進等に取り組む必要がある。

貴職におかれても、地域の実情を考慮の上、下記の第2の2の平成23年度の取組に示した事項を中心に、看護師等の「雇用の質」の向上に向けた取組について、効果的かつ着実な実施を図られたい。

なお、当該取組を進めていくに当たっては、医療行政と労働行政が協働し、看護師等の「雇用の質」の向上に向けた取組の推進体制を地域において構築することが必要かつ有効であることから、各局においては、労働基準部、職業安定部及び雇用均等室が相互に連携を図るとともに、都道府県や地域の関係団体等と協力し、地域における推進体制を構築するよう併せてお願いする。

なお、本件については、別紙のとおり都道府県知事及び関係団体に対し協力を依頼していることを申し添える。

 

第1 看護師等の勤務環境等の現状・課題等(要点)

1 就業状況

平成21年において、看護師等の就業者数は、実人員ベースで約143万4千人となっており、このうち病院(病床数20床以上の施設)で約89万2千人、診療所(19床以下の施設)で約30万4千人となっている。新規資格取得者は約4万6千人となっており、離職者数は約12万5千人と推計される。

看護師等が挙げる退職理由(退職希望の理由を含む。)の上位には、結婚・出産・育児等など生活上の理由や、超過勤務が多い・休暇がとれない・とりづらいなど業務の過重性に関する理由が含まれている。

また、看護師等の資格を有しながら就業していない者(潜在看護師等)が多数に上るが、看護師等については、一旦就業を中断すると、医療技術の進歩に対する不安等から、再就業が円滑に進まない傾向があるとの指摘もなされていることから、潜在看護師等の再就業の促進はもとより、現に就業している看護師等の定着の促進及び離職の防止に一層重点を置いた対策を進めることが課題であると言える。

特に、その多くが夜勤を含む交代制を伴う勤務を行っている病院(病棟)勤務の看護師等については、30代以降でその割合が著しく低下している現状があることにかんがみ、病院での重点的な取組が求められる。

2 労働時間等

看護師等の労働時間、休日、休暇等(以下「労働時間等」という。)については、看護業務の特性により、時間帯によって必要な人員が異なることに加え、多くの場合に夜勤を含むローテーションによる交代制勤務が避けられないこと等の事情がある。

交代制勤務においては、所定時間外労働の発生と相まって、十分な勤務間隔(インターバル)の確保が難しいことが指摘されており、また、二交代制勤務においては、夜勤の勤務時間が長時間となっているとの調査結果もある。

看護師等の勤務環境は、診療科、地域等により一様ではないが、医療従事者は日々患者の生命に関わる仕事に携わっていることから、交代制勤務等に伴う負担をできる限り軽減することにより心身の健康を確保することが求められる。これは、医療安全の確保の観点からも重要である。

看護師等の労働時間等の管理については、各病院等の事情を踏まえつつ、診療報酬の算定を含めた多岐にわたる事項を考慮する必要があり、一般的な労働者の労働時間等の管理に比べ、高度な労務管理が要請される。

しかしながら、従来、シフト表の作成を始めとする日常の労働時間等の管理の在り方が十分に組織化・体系化されておらず、各看護師長等の経験に依存している場合もあるとの指摘がある。

こうした場合、まずは、病院等の内部において、労務管理の視点の重要性について十分に認識を共有し、労働時間等の管理体制を確立することにより、個々の看護師等の労働時間等に関する適正な把握及び管理を進める必要がある。その上で、労使双方が協力し、労働時間等の設定の改善及びこれを通じた交代制勤務の負担軽減に向けて、それぞれの現場の実態に即した取組を主体的に進めることが必要である。

これに加え、健康に不安を感じている看護師等が多いこと等にかんがみ、病院等において、メンタルヘルス対策を含めた看護師等の健康保持に向けた取組を推進することも重要である。

3 業務の効率性等

近年、医療の高度化や患者・家族の医療への主体的な参画が進展する中で、病院内の各種委員会活動が頻繁となるとともに、医療関係記録の作成も増加し続けている。

このため、病院等において、看護師等の業務を一層効率化する観点から、業務の見直し等の取組等を支援し、働きやすい職場環境を整備していく必要がある。

4 多様な働き方

健康問題とともに育児等との両立の困難さが離職等の大きな要因の一つとなっていること等を踏まえ、看護師等の離職を防止するとともに、再就業を促進するため、ワーク・ライフ・バランスに配慮した多様な働き方(短時間正規雇用、出退勤時間の柔軟化、夜勤を伴わない就業区分の導入等)を可能とする環境を整備することも重要である。

病院等において多様な働き方を導入しようとする場合に、障害となる要因として、労務管理を担当する者(看護師長等)に多元的な労務管理を行う上で前提となる知識が不足していること等が指摘されている。また、一部の病院等で取り組まれている好事例が他の病院等において必ずしも知られていないことなども、導入が進まない要因と考えられる。

このため、労務管理を担当する者に対し、各制度を導入する際の課題とその解決策について、先行事例の普及啓発等により、多様な働き方の導入を推進するための環境整備を図っていく必要がある。

また、病院内保育所の運営や施設整備に対する補助、短時間正規雇用等の多様な勤務形態導入の支援等、医療現場のニーズに応じた支援施策の強化を図っていく必要がある。

5 キャリア形成

病院等において、看護師等の資質・専門性の向上を図るための研修の実施等、継続的なキャリア形成支援を行うことは、看護業務を専門職として、より働きがいのある魅力的な職業とすることはもとより、医療機関等にとっても、量のみならず質も含めた人材の確保に資するものと考えられる。

 

第2 当面の対応

1 基本的な考え方

高齢化の進展による医療需要の増大に対応し、持続可能で質の高い医療提供体制を確保するため、看護師等の勤務環境の改善等を図ることにより、看護業務が「就業先として選ばれ、健康で生きがいを持って能力を発揮し続けられる職業」となることが求められ、それなくして、持続可能な医療提供体制や医療安全の確保は望めない。

この点について、医療現場とともに、医療行政と労働行政が共通認識を持ち、それを国民全体に広げていくことがまず重要である。その上で、関係者がそれぞれの立場で、整合的に看護師等の勤務環境の改善等に向けて可能なものから取り組んでいく必要がある。

特に、その多くが夜勤を含む交代制を伴う勤務を行っている病院勤務の看護師等については、重点的な取組が求められる。

医療機関等においては、看護師等の確保に向けた勤務環境の改善等について、既に様々な主体的な取組が進められてきている。厚生労働行政としては、関係団体との密接な連携の下、こうした医療界の取組の幅広い展開や効果的な促進等に取り組む。

具体的な取組としては、“魅力ある職業”のための「職場づくり」、「人づくり」、「ネットワークづくり」を推進することとする。

まず、「職場づくり」として、勤務環境の改善を図るため、①労働時間等の改善、②看護業務の効率化、③多様な働き方が可能な環境の整備、の3つの視点が重要である。

すなわち、夜勤や交代制勤務は、看護師等の職業の特性から生ずる避けがたい要素であるが、医療現場の実情に即した段階的・漸進的なアプローチを基本とし、業務の効率化等を進めつつ、負担を少なくする工夫を行うなどの改善を図り(下記2(1)①・②)、少子化により労働力の供給制約が強まる中、看護師等が、子育て期や高齢期を含めできる限り就業を中断することなく活躍できるようにする(下記2(1)③)必要がある。

次に、「人づくり」として、質と量の両面で人材確保を図る観点から、看護師等が医療の高度化に対応するとともに、将来のキャリアの展望を持ち、希望を持って働き続けられるようにするため、体系的な教育体制や、能力に応じた処遇システムの整備等を図る(下記2(2)①)必要がある。また、人材の採用に苦慮している医療機関等も多く見られ、それが勤務環境の改善が進まない大きな原因ともなっていることから、人材採用の円滑化等、就業の促進(下記2(2)②)が必要である。

最後に、「ネットワークづくり」として、取組の推進体制を整備するため、医療行政、労働行政及び関係者の協働を地域レベルも含めて深化させることが求められている。

以上の基本的な考え方に従い、以下のとおり、共同の取組を、平成23年度から速やかに開始し、フォローアップを行いながら、24年度以降も継続実施する。

なお、特に平成23年度については、被災地支援への優先的かつ緊急的な取組の必要性を十分念頭に置き、可能なところから着実な推進を図っていくものとする。

2 平成23年度の取組

(1) 勤務環境の改善(職場づくり)

① 労働時間等の改善

イ 医療機関等における取組

医療機関等で労務管理を行う責任者の立場にある者(医療機関等の実情に応じ、院長、事務長、看護部長、看護師長等)を「労働時間管理者」として明確化した上で、労働時間の適正な管理はもとより、現場の実情に応じた労働時間等の設定改善策の検討、推進等を図る。

※ 労働時間等の設定改善とは、労働時間、休日数、年次有給休暇を与える時季その他の労働時間等に関する事項について、労働者の健康と生活に配慮するとともに、多様な働き方に対応したものへ改善することをいう。看護師等に関する具体的な改善策としては、交代制の運用面の工夫、所定時間外労働の削減等が考えられる。

このような取組を行うことにより、「複数を主として月八回以内の夜勤体制」を基本としつつ、十分な勤務間隔(インターバル)の確保を含め、より負担の少ない交代制に向けた取組を着実に進めることが望まれる。

このため、例えば、管理的立場にある医師や看護師等に対する教育研修等の機会において、労務管理や労働関係法令等に関する内容の充実を図ることなどにより、労働時間等の設定改善への積極的な取組を促すことが適当である。

さらに、医療機関等においては、労働時間等の設定改善に加え、メンタルヘルス不調の予防等の観点を含む健康確保も重要であり、病院で健康管理を担う産業医に対する研修会等の取組の充実も望まれる。

ロ 行政における取組

行政としては、医療現場の労使の主体的な取組を促進する観点から、労働基準法令の遵守等に関する研修会の開催及び労働時間設定改善コンサルタントによる支援等を実施する。

なお、これらの取組は、労働時間等労働条件の確保に関する従来の主な手法である法違反に対する監督指導とは異なり、労働者の健康と生活への配慮や、多様な働き方への対応に資する改善を側面から援助する手法であるが、医療機関等の業務の特性を踏まえ、現場の実情に即した労務管理について支援を行う必要があることから、関係職員等は、業務を適切に遂行するための研鑽に努めることとし、厚生労働本省は、都道府県労働局に対し必要な援助を行うものとする。

(イ) 労働基準法令の遵守等に関する研修会の開催

都道府県労働局労働基準部は、職業安定部及び雇用均等室並びに都道府県(保健福祉担当部局等)と連携し、関係団体等の協力も得ながら、以下により研修会を開催する。

(i) 実施時期・地域

平成23年度後半に各都道府県において実施する。(被災地への緊急的対応の必要性に照らし、実施が困難な県を除く。)

(ii) 対象者

医療機関等において労務管理を担う責任者(院長、事務長、看護部長、看護師長等)

(iii) 研修の内容

研修は、以下を参考にしつつ、各地域の実情を踏まえた内容とする。

・「労働時間管理者」の明確化と現場の実情に応じた取組の奨励

・より負担の少ない交代制勤務についての好事例

・仕事と家庭の両立支援に関する制度、短時間正規雇用の導入に係る支援、多様な働き方の導入についての好事例等

・労働基準関係法令等の内容

・メンタルヘルス対策の推進

・ハローワークの活用、看護師等を確保するための効果的な求人の方法等

(ロ) 労働時間設定改善コンサルタントによる支援

都道府県労働局に配置されている労働時間設定改善コンサルタントを活用し、以下により個別の医療機関等への訪問等を実施する。

(i) 実施時期・地域

平成23年度においては、東京・大阪・愛知の各労働局において、先行的に実施する。

(ii) 訪問等の実施

労働時間設定改善コンサルタントが、医療機関等を訪問し、看護師等の労働時間等の設定改善に向けた課題や好事例等についてヒアリングによる現状把握を行う。

これを踏まえつつ、医療現場の実情に即した労働時間面の改善に係る知見の収集・分析を行った上で、各医療機関等の状況に応じた対応策を助言するなどの支援を行う。

(ハ) 健康の確保

上記のほか、メンタルヘルス対策を含む職場における心身の健康の確保に関し、医療機関等において、「事業場における労働者の健康保持増進のための指針」や「労働者の心の健康の保持増進のための指針」に基づき、衛生管理者、産業医、衛生委員会等の活動を通じ、職場の実態に即した形で取組が進められるよう、必要に応じ支援を行う。

② 看護業務の効率化

イ 医療機関等における取組

看護業務の効率化については、これまでも申送りの改善や電子カルテの導入など各医療機関等において取り組まれてきたところである。提供される医療サービスの内容も多様なこともあって、その進展状況も様々であり、今後とも各医療機関等の状況に応じた看護業務の効率化を図ることが望まれる。

また、「医療に従事する多種多様な医療スタッフが、各々の高い専門性を前提に、目的と情報を共有し、業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い、患者の状況に的確に対応した医療を提供する」というチーム医療を推進していく中で、従来看護師等が行っていた業務に関しても、他職種との連携・補完を進めていく必要がある。特に、医療関係事務に関する処理能力の高い事務職員(医療クラーク)の導入や、看護業務等を補助する看護補助者の活用について検討すべきである。

ロ 行政における取組

厚生労働省においては、都道府県の地域の実情に応じた効果的・効率的な看護師等確保対策に関する特別事業について助成してきたところであるが、今後も、こうした事業を通して、看護業務の効率化の観点での各医療機関等の取組やそうした取組に関する情報の共有を推進していくこととする。

また、各施設における就業環境改善の取組については、病院管理者及び看護管理者等のマネジメント能力の向上や労務管理に関する教育が不可欠であり、既存の事業を活用した管理者研修等の取組について積極的に支援していくことが求められている。

チーム医療における他職種との連携や、医療クラークの導入や看護補助者の効果的な活用については、実践的事例集の普及等を図るべきである。

③ 多様な働き方が可能な環境の整備

イ 医療機関等における取組

看護師等の離職を防止し、子育て期の看護師等も含めた様々な人材の活用を図るためには、医療機関等において、短時間正規雇用の導入、出退勤時間の柔軟化、夜勤を伴わない就業区分の導入、院内保育所の設置等、個人の置かれた状況に応じた多様な働き方を支える制度整備と利用しやすい職場風土作りが求められる。

また、多様な働き方を支える制度整備等に際しては、夜勤等の負担について不公平感が生じないよう工夫すること、また、各人の置かれた状況に配慮しながら、夜勤等の負担を職場内で適切に分かち合いサポートし合う風土を培うこと等が重要である。

なお、短時間勤務等の導入が、これらの制度を利用しない者の負担増にならないよう、多様な働き方の導入に当たっては、必要な人員の確保にも留意する必要がある。

ロ 行政における取組

行政としては、多様な働き方が可能な環境整備に向けて、医療機関の取組に対する支援を行う。

具体的には、労働時間設定改善コンサルタントによる助言等のほか、研修会等の機会を通じて、医療機関等に対し、両立支援に関する制度の周知啓発を図るとともに、短時間正規雇用の導入を促進する。また、これらの制度を含む多様な働き方の導入について、参考となる取組例を収集し、好事例等の普及に努める。

これまでも、国は、子どもを持つ看護師等、女性医師を始めとする医療従事者の離職防止及び再就業を促進するため、医療機関に勤務する職員の乳幼児や児童の保育を行う事業に対する支援を実施してきたところである。

多様な働き方が実現できるよう、今後もこうした取組の強化を図っていく必要があるものと考えており、平成23年度予算においては、病院内保育所の運営等に対する支援として、新たに休日保育加算を行っている。

(2) 人材の育成・確保(人づくり)

① 継続的なキャリア形成と資質の向上

イ 医療機関等における取組

看護師等は、勤務する医療機関等において、それぞれの就労経験に応じたキャリア形成を積み重ねていくことが期待される。

免許取得後初めて就労する看護師等(新人看護職員)については、各医療機関等において、後述の新人看護職員研修ガイドラインに基づいた研修を実施する等、研修体制、研修内容の充実に努めることによって、その職場定着を促すよう努めることが期待される。

さらに、医療機関等に専門性の高い看護師を積極的に配置し、活用することは、高度化する医療サービスの安全な提供に重要であるとともに、看護師等のキャリア形成にも資するものである。

ロ 行政における取組

看護師等に対しては、その資質の向上を図るための様々な施策が実施されており、それらは結果的に看護師等のキャリア形成の促進につながるものと考えられる。

(イ) 新人看護職員研修の支援拡充

厚生労働省においては、平成22年度から新人看護職員研修事業を創設し、①医療機関等が実施する新人看護職員研修ガイドラインに沿った新人看護職員研修、②都道府県が実施する医療機関等の研修責任者に対する研修、③新人看護職員研修の実施が困難な施設に対して都道府県が実施するアドバイザー派遣等に対する支援を実施している。

平成23年度予算においては、新たに、新人保健師や新人助産師の研修や教育担当者、実地指導者を対象とした研修に対する支援を行い、新人看護職員研修の充実を図ることとしている。

(ロ) 専門性の高い看護師等の養成支援

(2)①イのとおり、厚生労働省においては、平成15年から、がん性疼痛や救急看護などの看護分野において専門性の高い看護師を育成するための研修の実施に対する補助等、看護師等の資質向上に向けた様々な施策を実施しており、平成23年度においても一層の強化を図っていくこととしている。

② 就業の促進

イ 医療機関等における取組

医療機関等にとって、医療サービスの提供に必要な人材を確保し続けることは、極めて重要な課題である。このため、各医療機関等においては、看護師等の募集に当たって、どのような医療現場へ就労を求めるのか求職者に十分理解されるよう、効果的な情報提供(医療機関等の理念、地域での役割、人材育成方針など)や職場見学の機会の設定などの取組に努めることが望まれる。

また、医療機関等においては、後述の潜在看護職員復職研修事業による講習会の技術実習等の運営に積極的に協力をすることにより、潜在看護師等の再就業支援を促進するとともに、潜在看護師等に対し、現場での看護を通して看護の魅力を再発見する機会を提供することも期待される。

ロ 行政における取組

第七次看護職員需給見通しに沿った看護師等の養成を促進するため、厚生労働省においては、引き続き看護師等学校養成所の運営費補助を行うほか、再就業を支援するため、以下の取組を行う。

(イ) 潜在看護職員等復職研修事業の実施

潜在看護師等の再就業支援については、各都道府県ナースセンター等において、復職に向けた講習会が実施されているところである。

厚生労働省においては、再就業の一層の促進を図るため、平成22年度から「潜在看護職員復職研修事業」を創設し、再就業を希望する看護師等に対し、最新の看護に関する知識及び技術に関する研修の実施について支援している。

(ロ) ハローワークの利用促進等

ハローワークでは、離職後の看護師等や潜在看護師等に対して、求職申込み等来所時を活用し、「福祉人材コーナー」での支援内容等の積極的な周知及び更なる利用促進を図ることにより、それら求職者の就業を促進していく。

また、「福祉人材コーナー」を中心に、きめ細かな職業相談・職業紹介、看護分野の求人情報の提供、ナースセンター等関係団体との連携により収集した研修情報の提供等を、積極的に行うことにより、支援の充実を図っていく。

一方、求人者に対しては、分かりやすい求人票の作成等求人充足に向けたコンサルティングや、求職者に対する求人情報の提供等を積極的に行い、求人充足支援の充実を図っていく。

さらに、労働基準法令の遵守等に関する研修会の開催時に、出席者(労働局(監督課・安定課)、都道府県(保健福祉担当部局等))が「福祉人材コーナー」を含むハローワークの取組内容に関する情報を共有し、あらゆる機会を捉えてその周知を図っていく。

(ハ) ナースセンターの役割等

ナースセンターについては、ハローワークにおける実績と比較すると職業紹介にまで至った件数は少ないものの、看護の有資格者によるきめ細かい相談を実施できることから、ハローワークを始め雇用関係部局とも連携した取組を進めることにより再就業支援の効果を一層増大させていくことが期待される。

(3) 地域における推進体制の整備(ネットワークづくり)

本プロジェクトチームでは、厚生労働本省の中で、医療行政と労働行政が垣根を越えて協働する体制を構築したが、こうした協働の枠組みは地域においても必要かつ有効なものと考えられる。

このため、都道府県労働局労働基準部は、職業安定部及び雇用均等室と連携しつつ、都道府県に加え、地域の実情に応じ、関係団体など地域の医療関係者の参加を求めて企画委員会を開催し、(1)①ロ(イ)の研修会の開催に向けた調整を行うとともに、関係者が協働して、地域の医療従事者の勤務環境の改善等に取り組む恒常的な連絡協議の場として活用する。

さらに、中長期的には、医療関係者のみならず、地域住民等の参画も図ることにより、医療についての国民の理解を深めるための仕組みとしても活用されることが考えられる。

なお、地域において、関係機関間の連絡協議のための既存の枠組みがある場合には、これによることとして差し支えないものとする。

また、東日本大震災の被災地域においては、被災者等に対する緊急的かつ優先的な対応の必要性にかんがみ、平成23年度は可能な範囲での取組を進める。

(4) その他

医療機関等においては、経営・管理層と現場スタッフとの間のコミュニケーションを密にする等を通じ、職場の人間関係の改善に努めるという視点をもって、上記の取組を進めることが重要である。

また、国民は誰もが病を得ることがあることから、医療機関等の受診に当たり、国民一人ひとりが、医療の公共的性格、医療従事者の勤務環境等への理解を深めることが望まれる。

 

第3 今後の課題と継続的な取組

1 今後の課題

本プロジェクトチームでは、医療機関職種の中で最大の人数を占めている看護師等を対象として検討を行った。一方、医師の勤務環境の厳しさについては、医療提供体制の根幹に関わる大きな問題として指摘されてきたところであり、チーム医療の観点からも、医療従事者全体の勤務環境の改善を図っていくことが求められている。これは、医師の不足・偏在の問題とも密接に関わるものであるが、今後、関係部局においては、可能なものについては医師等他職種への活用も図りつつ、第2の2に掲げる取組を推進しながら、医療現場での勤務環境の改善に向けた課題と対応に関する幅広い知見の収集及び分析に努めていくこととする。

また、中央社会保険医療協議会において、看護師等を含めた病院医療従事者の負担軽減策に関して、平成22年度診療報酬改定の結果を検証しつつ、医療従事者の勤務状況、病院内の役割分担、病院の長時間勤務に対する取組などを踏まえながら、次期診療報酬改定に向けて検討を行う。

2 平成24年度以降における取組の強化・継続

平成24年度以降においては、第2の2に掲げる平成23年度の取組の実施状況について、プロジェクトチームの構成部局等によるフォローアップを行うとともに、看護師等の業務負荷の状況についての継続的な把握、分析を行い、これを踏まえ、平成24年度以降も、関係部局が有機的に連携しつつ、有効な取組を強化・継続することとする(取組状況等については、厚生労働省ホームページ等による情報発信を行う。)。