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通達:職業安定法等の改正に伴う建設労働者の雇用の改善等に関する法律の運用について

 

職業安定法等の改正に伴う建設労働者の雇用の改善等に関する法律の運用について

平成11年12月1日建港発第14号

(都道府県労働主管部(局)長あて労働省職業安定局建設・港湾対策室長通知)

 

平素より、建設労働対策について、御尽力を頂いていることを感謝申し上げる。

さて、標記について、平成11年11月17日付け職発815号「職業安定法等の一部を改正する法律、関係政省令等の施行について」(以下「安定法通達」という。)により、昭和51年9月7日付け職発第409号「建設労働者の雇用の改善等に関する法律の施行について」(以下「建労法通達」という。)の一部改正が行われたところであるが、その運用に当たっては同通達を踏まえ、下記に留意の上、遺漏なきよう特段の御配慮をお願いする。

 

1 建設労働者の雇用の改善等に関する法律(以下「建労法」という。)第6条の改正について(別添参照)

(1) 建設労働者の募集において届出を要する場合

通勤圏内外を問わず、特定区域内で、新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出若しくは頒布又は自動公衆送信装置(インターネット)その他の電子計算機と電気通信回線を接続してする方法(パソコン通信等)以外の方法において、事業主がその被用者(雇用する労働者)に建設労働者の募集を行わせる場合となったこと。

(2) 届出の手続き

イ 方法

通勤圏内外を問わず、募集区域を管轄する公共職業安定所長に建設労働者募集届(建設労働者の雇用の改善等に関する法律施行規則(以下「則」という。)様式第1号)を提出することによって行うこと。

ロ 募集届を提出する公共職業安定所

募集届を提出する公共職業安定所は、建労法通達により周知されているところであるが、実際の届出に際しては、下表の右欄によるものであること。

また、日雇労働者以外の労働者を主として募集する場合は、(  )内によるものとなること。

募集区域

労働者募集届提出先

東京都 新宿区

高田馬場労働出張所

台東区

玉姫労働出張所

江東区

深川労働出張所(木場公共職業安定所)

荒川区

河原町労働出張所

神奈川県 横浜市中区

横浜港労働出張所

愛知県 名古屋市中村区

名古屋中公共職業安定所

大阪府 大阪市西成区

あいりん労働公共職業安定所(阿倍野公共職業安定所)

兵庫県 尼崎市

尼崎公共職業安定所

(3) 募集届の提出期限

募集届の提出期限は、原則として、当該募集を行う前に提出しなければならないこと。

(4) 留意事項

当該届出を行おうとする事業主に対して、建労法通達第3の2の(3)のホに掲げる事項を十分に周知させること。

2 建労法第12条の改正について(別添参照)

建労法第12条第1項から第3項に該当する場合の罰金額が、10万円から30万円に引き上げられたこと。

3 建設事業主等に対する建労法の周知徹底

建労法の一部改正については、建設雇用改善推進会議をはじめ、建設労働者の求人受理等あらゆる機会において、建設事業主等の関係者に対して、周知啓発指導に努められたいこと。

 

(別添)<編注:略>(昭和51年改正法律第33号官報)


(参考)

図1


(参考) 昭和51年9月7日付け職発第409号「建設労働者の雇用の改善等に関する法律の施行について」(抜粋、平成11年11月17日現在)

第1 用語の定義(法第2条関係)

この法律において用いられる用語のうち、実質的にこの法律の適用範囲を規定する基本的な用語である「建設事業」、「建設労働者」及び「事業主」について、次のとおり定義していること。

1 建設事業

(1) 種類

「建設事業」とは、土木、建築、その他工作物の建設、改造、保存、修理、変更、破壊若しくは解体又はその準備の事業をいうものであること(第1項)。

これは、いわゆる土木建築事業であり、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(以下「徴収法」という。)第12条第4項第3号に掲げる事業と同じものであること。

(2) 事業の概念

ここでいう「事業」の概念は、徴収法における解釈と同じく、営利の目的をもって行われるか否かを問わず、一定の場所において一定の組織のもとに有機的に相関連して行われる一体的な経営活動をいうものであること。

したがって、この法律における「建設事業」は、原則として雇用保険率が1,000分の14.5とされている建設の事業(徴収法第12条第4項第3号)と同じものとなること。

(3) 国又は地方公共団体の直営事業

国又は地方公共団体の直営事業である建設事業は、この法律における「建設事業」から除かれていること。

なお、直営事業とは、自ら労働者を使用して行う事業という意味であり、他人に請け負わせて行う事業は、直営事業とはならないこと。

2 建設労働者

「建設労働者」とは、1の「建設事業」に従事する労働者をいうものであること(第2項)。したがって、国又は地方公共団体に使用される者は、その身分の種類を問わず、この法律における「建設労働者」とはならないこと。

なお、船員職業安定法第6条第1項に規定する船員については、第9条の規定を除き、「建設労働者」とはならないこと。

3 事業主

「事業主」とは、2の「建設労働者」を雇用して1の「建設事業」を行う者をいうものであること(第3項)。したがって、国及び地方公共団体並びに建設労働者を雇用しないで自ら建設事業を行ういわゆる一人親方は、この法律における「事業主」とはならないこと。

 

第3 建設労働者に係る雇用管理の改善のための措置(法第5条から第8条まで関係)

1 雇用管理責任者の設置(法第5条関係)

(1) 性格

雇用管理責任者は、各企業の内部において、建設労働者に係る雇用管理に関する事項を管理させるために、事業主が選任するものであること。また、法令上事業主に義務づけられている雇用管理に関する事項についての責任が雇用管理責任者に移行するというものではないこと。

(2) 選任

イ 選任の単位

雇用管理責任者は、建設事業を行う「事業場」ごとに選任しなければならないこと(第1項)。

(イ) 事業場の概念

選任の単位となる「事業場」とは、第1の1の(2)の「事業」を場所的、施設的な面においてとらえたものであり、労働基準法第107条(労働者名簿)及び第108条(賃金台帳)の「事業場」と同一の概念であること。すなわち、各建設現場が、原則としてそれぞれ独立した事業場となるが、その規模が小さく、組織的関連、事務能力等からみて、一の事業場という程度の独立性を有しないものは、直近上位の機構と包括して一の事業場として取り扱うこととなること。

なお、この事業場の単位は、各事業主について判断すべきであり、複数の事業主が参加して一の建設工事を施工している建設現場においては、各事業主ごとに、当該建設現場が独立した事業場となるか否かを判断しなければならないものであること。

(ロ) 具体例

(イ) 建設現場に現場事務所等を有し、当該現場で働く建設労働者の労働時間、賃金等の管理を、当該事務所等で行っている場合は、当該現場が独立した一の事業場となること。

(ロ) 建設現場で働く建設労働者の雇用管理を、支店等上位の機構で包括して行っている場合は、当該現場及び支店等を包括したものが一の事業場となっていること。

図3

ロ 選任の方法

雇用管理責任者の選任の方法については、法令上特に規定されておらず辞令交付による任命、口頭による任命等その方法は事業主に任されていること。

ハ 資格

雇用管理責任者の資格については、法令上特に規定されていないが、適正な雇用管理の実効を期するため、たとえば社会保険労務士など労働に関する資格を有する者や雇用管理について相当の実務経験を有する者などが望ましいものであること。

ニ 小規模事業主の場合

特に小規模な企業において、事業主又はその代表者が自ら建設労働者の雇用管理を行うことができる場合は、自ら雇用管理責任者としてその職務を行うこととして差し支えないこと。

(3) 職務

雇用管理責任者が管理すべき事項は、次に掲げる事項のうち法令により、又は企業経営上その選任に係る事業場において処理すべきこととされている事項であること。

なお、雇用管理に関する事項を管理するとは、これらの事項が適正に処理されることについて責任を持って管理するという意味であって、必ずしも、自らこれらの事項を処理しなければならないものではないこと。

イ 建設労働者の募集、雇入れ及び配置に関すること(第1項第1号)

(イ) 法第6条の規定による募集に関する事項の届出、公共職業安定所に対する求人申込み、募集活動等建設労働者の募集に関すること。

(ロ) 法第7条の規定による雇用に関する文書の交付、労働基準法第15条第1項の規定による労働条件の明示等建設労働者の雇入れに関すること。

(ハ) 職業適性検査、職場適応訓練の実施、配置転換等建設労働者の配置に関すること。

ロ 建設労働者の技能の向上に関すること(第1項第2号)。

(イ) 技能実習その他の職業訓練の実施

(ロ) 職業訓練又は技能検定への建設労働者の派遣

(ハ) その他建設労働者の技能の向上に関すること

ハ 建設労働者の職業生活上の環境の整備に関すること(第1項第3号)。

(イ) 作業員宿舎等現場福祉施設の管理運営

(ロ) その他建設労働者の職業生活上の環境の整備に関すること

ニ 労働者名簿及び賃金台帳に関すること(則第1条第1号)。

(イ) 労働基準法第107条の規定による労働者名簿の調製及び記入

(ロ) 同法第108条の規定による賃金台帳の調整及び記入

ホ 労働者災害補償保険、雇用保険及び中小企業退職金共済制度その他建設労働者の福利厚生に関すること(則第1条第2号)。

(イ) 労働者災害補償保険及び雇用保険に係る手続きに関すること。

(ロ) 中小企業退職金共済法の規定による特定業種(建設業)退職金共済契約に係る手続に関すること。

(ハ) 健康保険、厚生年金保険その他の社会保険に係る手続に関すること。

(ニ) レクリエーションの実施、建設労働者の相談に応ずることその他建設労働者の福利厚生に関すること。

(4) 建設労働者に対する周知

イ 概要

事業主は、雇用管理責任者を選任したときは、その氏名を、当該事業場の建設労働者に周知させるように努めなければならないこと(第2項)。

ロ 周知の方法

周知の方法としては、法第5条第2項に例示しているように事業場に氏名を掲示する方法のほか、雇用管理責任者にその氏名及び事業主名を記載した腕章等つけさせ或いは、法第7条の規定による文書に雇用管理責任者の氏名を記載して建設労働者に交付する等の方法が考えられること。

(5) 雇用管理責任者の資質の向上

イ 概要

事業主は、雇用管理責任者について、必要な研修を受けさせる等雇用管理を行うための知識の習得及び向上を図るように努めなければならないこと(第3項)。

ロ 指導

この指導に当たっては、雇用・能力開発機構が実施する雇用管理研修又は事業主団体等が同機構の助成を受けて実施する研修を受講するよう指導すること。

2 募集に関する事項の届出(法第6条関係)

(1) 概要

事業主は、労働省令で定める区域内においてその被用者に、建設労働者を新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出若しくは頒布又は自動公衆送信装置その他の電子計算機と電気通信回線を接続してする方法以外の方法で募集をさせようとするときは、当該被用者の氏名等を公共職業安定所長に届け出なければならないこと。

(2) 届出を要する場合

イ 労働省令で定める区域内における募集であること。

法第6条の規定が適用される区域は、次のとおりである(則第3条、別表)。

(イ) 東京都 新宿区、台東区、江東区及び荒川区

(ロ) 神奈川県 横浜市中区

(ハ) 愛知県 名古屋市中村区

(ニ) 大阪府 大阪市西成区

(ホ) 兵庫県 尼崎市

ロ 被用者に行わせる募集であること。

法第6条は、事業主が自ら行う募集には適用されないこと。

なお、「被用者」とは、職業安定法第36条の「被用者」と同意義であって、事業主と雇用関係に立つ者で雇用に関係ある労働法規の適用を受けるものであること。

ハ 新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出若しくは頒布又は自動公衆送信装置その他電子計算機と電気通信回線を接続してする方法以外の方法による募集であること。

本条の規制の対象となる募集方法は、新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、文書の掲出若しくは頒布又は自動公衆送信装置その他電子計算機と電気通信回線を接続してする方法以外の方法による募集であること。

(3) 届出の手続(則第2条及び附則第2項)

イ 方法

本状の規定による届出は、建設労働者募集届(則様式第1号。以下「募集届」という。)を公共職業安定所長に提出することによって行わなければならないこと。

ロ 募集届の提出安定所

募集届を提出する公共職業安定所は、募集区域ごとに次のとおりであること。

ただし、日雇労働者以外の労働者を主として募集させようとする場合は、それぞれ括弧内の公共職業安定所となること。

募集区域

公共職業安定所

東京都 新宿区

新宿公共職業安定所

台東区

上野公共職業安定所

江東区

木場公共職業安定所

荒川区

足立公共職業安定所

神奈川県 横浜市中区

横浜公共職業安定所

愛知県 名古屋市中村区

名古屋中公共職業安定所

大阪府 大阪市西成区

あいりん労働公共職業安定所(阿倍野公共職業安定所)

兵庫県 尼崎市

尼崎公共職業安定所

ハ 募集届の提出期限

募集届は、当該募集を行わせる前に提出しなければならないこと。ただし、天災、その他やむを得ない理由により募集を行わせる前に提出することができないときは、その理由がやんだ後遅滞なく、その理由を付して、提出すれば足りること。

ニ 経過措置

昭和51年10月1日現在行われている募集であって、法第6条の規定に該当するものについては、同月7日までに、募集届を提出しなければならないこと。

ホ 留意事項

募集届の提出については、次の点に留意し、事業主に対して周知を図ること。

(イ) 募集届は、募集担当被用者及び募集区域ごとの単記式のものであり、複数の被用者に募集させようとするときは各被用者ごとに、また、1人の被用者であっても前記ロの募集区域が2以上にわたるときは、各募集区域ごとに作成しなければならないこと。

(ロ) 募集届に記載する募集期間は、募集開始日から6箇月を超える期間とすることはできないこと。したがって、募集期間が6箇月を超えるときは、まず、当該募集の開始日から6箇月の期間について募集届を提出し、当該6箇月の募集期間が経過する前に、当該募集期間後の期間について新たに募集届を提出しなければならないこと。

(ハ) 募集届の提出に当たって、事業主は当該募集に従事する者がその被用者であることを証明できる労働者名簿、賃金台帳等の書類又はその写しを提示しなければならないこと。

(4) 募集届に関する事務処理

イ 募集届の内容の確認

募集届の提出を受けた公共職業安定所長は、次の事項を確認しなければならないこと。

(イ) 募集従事者が当該事業主の被用者であること。

(ロ) 募集区域が前記(2)のイの区域に該当していること。

(ハ) 募集期間が6箇月以内であること。

(ニ) 募集従事者の写真が2枚添付されていること。

ロ 建設労働者募集従事者台帳への記載

前記イの確認をしたときは、募集届の受付番号順に、建設労働者募集従事者台帳(別紙様式第1。以下「台帳」という。)に必要な事項を記載するとともに、当該添付された写真の1枚を貼付すること。

ハ 建設労働者募集従事者証の作成及び交付(則第4条)。

前記イの確認をしたときは、建設労働者募集従事者証(則様式第2号。以下「従事者証」という。)に必要な事項を記載するとともに、写真を貼付し、押印をした上届出事業主に交付すること。

なお、従事者証の「No.」欄には、台帳の番号を記載すること。

ニ 募集届(事業主用控)の返付

従事者証を交付する際は、募集届(事業主用控)に受付印を押して、返付すること。

ホ 留意事項

従事者証の交付に当たっては、次の点を事業主に告知すること。

(イ) 従事者証は、①欄の者に、③欄の募集区域内において募集をさせる場合に、携帯させること。

(ロ) 次の場合には、速やかに従事者証を公共職業安定所に返還すること。

a ①欄の者に、建設労働者の募集をさせなくなった場合

b ③欄の募集区域内で、建設労働者の募集をさせなくなった場合

c ④欄の募集期間が経過した場合

(5) 従事者証の返還に係る事務処理

イ 返還

従事者証の返還を受けた公共職業安定所長は、台帳の「返還」欄に、当該返還の年月日を記載するとともに、朱字で「返還済」と記入すること。

ロ 返還の催促

台帳については、常時点検を行い募集期間が経過した従事者証であって、返還されていないものがあるときは、事業主に催促するとともに、台帳の処理欄に、朱字で「失効」と記入すること。

3 雇用に関する文書の交付(法第7条関係)

(1) 概要

事業主は、建設労働者を雇い入れたときは、速やかに、雇用に関する文書を交付しなければならないこと。

(2) 文書に記載すべき事項

この文書において明らかにしなければならない事項は、次のとおりであること。

イ 事業主の氏名又は名称

事業主が個人である場合はその氏名、法人である場合はその名称をいうものであること。

ロ 雇入れに係る事業場の名称及び所在地

当該建設労働者を雇い入れた際、その事務処理を行った事業場の名称及び所在地をいうものであること。すなわち、その者に係る雇用管理を行っている事務所等の置かれている場所をいうものであること。

ハ 雇用期間

原則として年月日により明示しなければならないが、終了時を特定することが、特に困難な場合は、終了予定日を記載し、「(予定)」を附記すること。

ニ 従事すべき業務の内容

大工、左官、建設機械運転等職種名とその具体的業務内容を記載すること。

(3) 労働基準法との関係

労働基準法の一部を改正する法律(平成10年法律第112号により、労働基準法第15条第1項が改正され、労働契約の際に使用者が書面により労働者に明示しなければならない事項が、賃金に関する事項から労働時間等主要な労働条件に関する事項に拡充されることになり、建設労働者については、法第7条及び労働基準法第15条第1項の両規定が相まって、雇用関係の明確化の実効を期することとしているものであること。

(4) 様式の指導

雇用に関する文書については、上記(3)の点も加味し、別紙様式2の「雇入通知書」を労働者に交付するよう事業主に指導勧奨すること。

なお、これについては労働基準監督機関においても、建設業の事業主に対しては同様の指導が行われるものであること。

(5) 指導の重点

この規定は、従来建設業について、行政指導により実施してきた雇入通知書を制度化したもので、その主眼は、とかく雇用関係の不明確な有期雇用労働者の雇用関係の明確化を図ることにあるので、指導に当たっては、特に、有期雇用労働者についてその趣旨が徹底するよう配慮すること。

また、雇入通知書に記載された労働条件を変更するときは、変更後の条件に基づき、新たな通知書を発行するか、又は掲示等により周知徹底を図るよう事業主に指導勧奨すること。

なお、この規定は労働契約の締結が文書で行われ、又は、採用に当たり辞令が交付され、上記(2)の事項が明らかである場合において、更に、この規定による文書を交付することを求めるものではないこと。

4 書類の備付け等(法第8条関係)

(1) 概要

建設工事が数次の請負により行われるときは、元方事業主は、関係請負人の氏名等を明らかにした書類を備えて置くとともに、関係請負人の行う雇用管理に関し助言、指導その他の援助を行うように努めなければならないこと。

(2) 元方事業主

イ 意義

「元方事業主」とは、建設工事の一部を請負人に請け負わせている事業主(請負契約が2以上あるため、その者が2以上あることとなるときは、最先次の請負契約における注文者)をいい、労働安全衛生法第15条第1項の「元方事業者」と同義であること。したがって、次の者は、「元方事業者」には該当しないこととなること。

(イ) 発注者から建設工事を請け負っても、自らは建設工事に全く参加せず、その全部を他の請負人に請け負わせる者

(ロ) 建設工事の設計監理のみを行う者

なお、現場監督等を派遣し、建設工事の施工管理を行う者は、実際の作業を行わなくとも「元方事業主」となるので、注意を要すること。

ロ 分割発注の場合

発注者が建設工事を分割発注したため、最先次の請負契約における注文者が2以上あることとなる場合は、当該2以上の注文者がそれぞれ各系列ごとに「元方事業主」となること。

(3) 関係請負人

「関係請負人」とは、元方事業主の施工する建設工事に参加する事業主(元方事業主を除く。)のうち、当該建設工事につき常態として建設労働者を雇用する事業主をいうものであること。

なお、「当該建設工事につき常態として建設労働者を雇用する」とは、当該建設工事にその雇用する建設労働者を相当期間従事させることをいい、極く短期間だけ当該工事にたずさわる請負人は除外して差し支えない趣旨であること。

(4) 建設工事の規模(則第6条)

建設工事に係る事業場における建設労働者の数が常時50人未満である場合は、法第8条第1項の規定による種類の備付けの義務は課されないこと。この場合「常時50人未満」とは、当該建設工事の施工期間中常態として50人未満であることをいうものであること。

なお、この建設労働者の数は、当該建設工事の現場全体について判断すべきものであり、元方事業主が複数あることとなる場合においても、各元方事業主の系列ごとに判断するものではないこと。

図4

① Aは、a、b及びcについて、Bはe及びfについては握する。

② 当該建設工事に従事する労働者(元方、下請を問わない)の総数が常時50人未満の場合は除く。

(5) 書類において明らかにすべき事項

法第8条第1項の規定による書類において明らかにすべき事項は、次のとおりであること。

イ 関係請負人の氏名又は名称

当該建設工事についての関係請負人が個人である場合はその氏名、法人である場合はその名称をいうものであること。

ロ その雇用する建設労働者を当該建設工事に従事させようとする期間

関係請負人の施工予定期間と同義であること。

ハ その選任に係る雇用管理責任者の氏名

(6) 書類の備付けの場所

この書類を備えて置かなければならない場所は、当該建設工事に係る元方事業主の事業場であること。すなわち、通常は、当該建設工事の現場に設置されている元方事業主の現場事務所となるが、現場事務所を設置していない場合は、直接、当該建設工事の施工を管理している直近上位の支店、出張所、営業所等の事務所となること。

(7) 書類の備付けの期間(則第5条及び附則第3項)

イ 原則

この書類は、当該書類に係る関係請負人の施工期間の初日から、当該建設工事全体が終了する日までの間、備えて置かなければならないこと。

ロ 経過措置

昭和51年10月1日現在建設工事の施工を行っている関係請負人に係る書類は、同日から当該建設工事全体が終了する日までの間、備えて置かなければならないこと。

図5

Aについては、必要なし。

Bについては、10月1日から昭和52年3月31日まで。

Cについては、11月1日から昭和52年3月31日まで。

(8) 書類の保管

この書類については、法第11条の規定による報告の請求との関連もあり、当該建設工事の終了後も相当期間保管するよう指導すること。

(9) 関係請負人に対する援助

イ 元方事業主は、関係請負人に対して雇用管理に関する事項の適正な管理に関し助言、指導その他の援助を行うよう努めなければならないこと(法第8条第2項)。

ロ 援助の内容としては、法第5条第1項に掲げる事項に関して、情報の提供、相談に応ずること、講習会の開催等を行うことが考えられるが、この規定は、元方事業主に当該建設工事、元方事業主及び関係請負人の実態に応じて必要かつ可能な措置を講ずるように努めることを求めるものであること。

ハ 援助の方法としては、当該建設工事の現場単位で行うことはもとより、例えば常設されている協力会、協同組合等の組織を通じて企業単位に行うことも考えられること。

5 報告

(1) 概要

公共職業安定所長は、文書により、事業主に対して建設労働者の募集に関し、また、元方事業主に対して関係請負人に係る書類の備付けに関し、必要な報告を請求することができること(法第11条及び則第7条)。

(2) 趣旨

これは、前記第3の2の建設労働者の募集の適正化及び第3の4の(8)の元方事業主による関係請負人のは握の実効を期するため、必要に応じ報告を求めようとするものであること。

(3) 報告の請求をする場合

したがって、この報告の請求は、(2)の趣旨を理解の上、関係規定の遵守を確認する等のため、必要に応じて行うこと。

 

第4 建設労働者の福祉等に関する事業の実施(法第9条及び第10条関係)

1 事業の内容

政府は、建設労働者の能力の開発及び向上並びに福祉の増進を図るため、雇用保険の三事業の一環(能力開発事業又は雇用福祉事業)として事業主、事業主の団体等に対して、次の助成を行うことができること(法第9条第1項)。

(1) 技能実習の実施、技能講習等への建設労働者の派遣などに対する助成

(2) 雇用管理に関し必要な知識を習得させるための研修の実施に対する助成

(3) 作業員宿舎の整備改善等建設労働者の福祉の増進を図るために必要な助成

2 実施組織

前記1の事業の全部又は一部は、雇用・能力開発機構が行うこととされているが、当面、すべての事業について雇用・能力開発機構が行うこと(法第9条第2項)。

なお、雇用・能力開発機構は、雇用・能力開発機構法等により、雇用管理に関し必要な知識を習得させるための研修の実施、雇用改善指導員による雇用管理の適正化のための助言等の援助などの業務を行うこととされていること。

3 実施基準

以上の雇用・能力開発機構の業務の実施基準は、同機構の業務方法書で定めるものであること。

4 費用の負担

(1) これらの事業に要する費用に充てるため、建設事業に係る雇用保険率を1,000分の1引き上げ、1,000分の14.5とすることとしていること(法附則第4条の規定による徴収法の改正)。

この結果、建設事業の事業主の負担は1,000分の9となること。

(2) なお、この雇用保険率の引上げについては、この法律の公布の日(昭和51年5月27日)から起算して3年以内の政令で定める日から施行することとされており、その時期は追って定めることとしていること。

5 保険料の充当

(1) 上記4の(1)により、引き上げられる1,000分の1の雇用保険率に係る保険料収入は、上記1の建設労働者の福祉等に関する事業に要する費用並びに雇用保険の能力開発事業及び雇用福祉事業のうち建設労働者に係る事業(雇用・能力開発機構の業務として行われるものに限る。)で労働省令で定めるものに要する費用に充てるものであること(法第10条)。

(2) なお、この労働省令については、当該雇用保険率の引き上げを行う際に制定することとしていること。

6 上記1から3までによる雇用・能力開発機構の業務は、この法律による建設労働者の雇用改善対策において極めて大きな意義を有するものであるが、これが円滑に遂行されるためには、職業安定機関による同機構への積極的な援助協力が必要である。

機構業務の概要は別添のとおりであるので、その内容を十分理解の上、同機構との緊密な連携のもとに、同業務に関する広報、宣伝の資料を職業安定機関に備え付ける等事業主その他の関係者に対する広報宣伝に努めること。

特に、建設業における雇用の改善を進めるためには、雇用管理責任者をはじめ、関係者の雇用管理に関する知識の向上を図ることが緊要であるので、機構が実施する雇用管理研修への参加あるいは事業主団体による雇用管理研修の実施の勧奨を積極的に行うこと。また、事業主に対して雇用管理の改善について助言するために配置する雇用改善推進員の活動についても、職業安定機関が十分協力するよう配慮すること。

 

第5 運用上の留意事項

1 関連施策の強化について

この法律は、建設労働問題の基本にある雇用関係の不明確を中心とする建設業の雇用面での立ちおくれを改善するための基礎づくりとなるものである。しかしながら、建設労働対策にとってこれが全てとなるものではなく、この法律の適切な運用に併せて既存の法制による施策を一層積極的に行うべきことは当然のことである。

職業安定行政の面においても出稼労働者をはじめとする建設労働者の就労経路の正常化、労働者募集活動の適正化、通年雇用の促進などを強化する必要があるので、これら建設労働に関連する施策をなお一層積極的に推進するよう配慮すること。

2 関係行政機関との連携について

法の目的とする建設労働者の雇用の安定を進めるためには、上記(第1から第4まで)のほか、労働条件の適正化、労働災害の防止、職業訓練等についての対策が総合的に行われることが必要である。さらに、建設労働問題は、重層下請の問題をはじめとする建設業の体質の改善と深くかかわっているところである。

このため、建設省においては、建設業の近代化を図るために、建設業の構造改善方策の策定、標準下請約款の作成、特定建設業者の下請指導要綱の策定等を進めており、また、昨年設立された(財)建設業振興基金においても金融対策を中心として建設業近代化のための事業を行っている。労働対策とこれらの諸対策とが相まって建設労働者の雇用の改善ないし建設業の近代化が進められることが期待されるところである。

従って、法の施行に当たっては、職業安定機関、労働基準監督機関、職業訓練機関及び雇用・能力開発機構相互間はもとより、建設業行政機関とも密接な連携を保ちつつ、法の円滑な施行を図るよう配慮すること。

3 雇用管理責任者の選任指導等について

雇用管理の改善に関し、事業主に雇用管理責任者の選任を義務づけた趣旨は、事業場における雇用管理体制の整備を通じて実質的に適正な雇用管理の確保を図ることにあり、雇用管理責任者を形式的に選任すれば足りるというものではないことに特に留意すること。このため雇用管理責任者について雇用管理に関する知識の向上を図るための研修の受講促進を図る等雇用管理改善指導の強化についても配慮して、雇用管理責任者制度の本旨を徹底させること。

なお、雇用管理責任者の選任指導等この法律の周知徹底に当たっては、小零細の事業が極めて多数存在している建設業界の実態にかんがみ、極力、業界団体、元方事業主による下請指導等を通じ効果的な指導を行うことが特に重要であるのでこの点に配慮すること。