今回の基本方針は、基本的な枠組みや項目建てはこれまでの基本方針と同様としつつ、平成六年の高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下「法」という。)の改正等を踏まえて内容の見直しを行ったものである。

ついては、貴職におかれても、今後は、この基本方針に基づき、計画的な高年齢者の雇用・就業対策を推進していただくこととなるので、左記事項に御留意の上、事業主及びその団体をはじめとする関係者に周知するとともに、関係行政機関、高年齢者雇用開発協会等との連携を密にしつつ、高年齢者の雇用・就業対策の一層の推進に当たるよう特段の御配意をお願いする。

記

Ⅰ　基本方針のねらい及び運営期間

基本方針は、高年齢者の雇用・就業についての目標及び基本的考え方を労使はじめ国民に示すとともに、事業主が行うべき職業能力の開発及び向上並びに作業施設の改善その他の諸条件の整備に関して指針を示すこと等により、高年齢者の雇用・就業機会の確保の促進を図るものであること。

運営期間は、平成七年度から平成一一年度までの五年間であること。

Ⅱ　基本方針の概要

第一　高年齢者等の就業の動向に関する事項

人口及び労働力人口の高齢化、高年齢者をめぐる雇用失業情勢、六〇歳定年の実施状況、勤務延長制度・再雇用制度の実施状況等について示したものであること。

第二　高年齢者の雇用の機会の増大の目標に関する事項

平成六年の法改正を受けて、六〇歳定年を基盤とした六五歳までの継続雇用を柱としつつ、高年齢者の就業ニーズに応じた多様な形態による雇用機会の確保を推進することとしたこと。

一　六〇歳定年の定着に関する目標

六〇歳未満の定年を定める企業が、法により六〇歳定年が義務化される平成一〇年四月前のできるだけ早い時期に六〇歳定年に移行するようにすることとしたこと。

二　六五歳までの雇用機会の確保に関する目標

原則として希望者全員を対象とする六〇歳を超える年齢までの継続雇用制度の普及を図るとともに、高年齢者の就業ニーズに応じた多様な形態による雇用機会の確保を図ることにより、六五歳までの雇用機会の顕著な増加を図ることとしたこと。

第三　事業主が行うべき諸条件の整備等に関して指針となるべき事項

事業主が法第二条の三の諸条件の整備等を実施する際のガイドラインを示したものであり、事業主は、それぞれの企業における高年齢者の雇用を阻害していると思われる要因を分析し、その実情に応じ、労使間で十分な協議を行いつつ、次に示す諸条件の整備等に努めることとしたこと。

一　職業能力の開発及び向上に関すること

二　作業施設の改善に関すること

三　職務の再設計に関すること

四　労働時間の短縮及び勤務時間の弾力化に関すること

五　賃金・退職金制度を含めた人事管理制度の見直しに関すること

第四　高年齢者等の職業の安定を図るための施策の基本となるべき事項

高年齢者の職業の安定を図るために講ずる国の施策の基本的考え方を示したものであり、以下に示された考え方に沿って、各般の施策を講ずることとしたものであること。

六五歳までの雇用・就業の場を確保するため、高年齢者の雇用・就業の促進について国民的コンセンサスの形成を図るとともに、以下の施策を展開すること。

一　高年齢者がその経験や能力を活用するためには、同一企業又は同一企業グループ(いわゆる子会社等をいい、下請け関係にある企業は含まない。)内においてその雇用を維持していくことが重要であるため、次の施策を講ずること。

①　六〇歳定年未達成の企業が、法により六〇歳定年が義務化される平成一〇年四月前のできるだけ早い時期に六〇歳定年に移行するよう、法の周知に努めるとともに、強力な指導を実施すること。

②　六五歳までの継続雇用を促進するため、希望者全員を対象とする六〇歳を超える年齢までの継続雇用制度の導入を促進することとすること。このため、継続雇用制度の導入についての啓発や取組の促進を図るための指導を積極的に行うとともに、その実施状況や継続雇用制度の普及状況も踏まえつつ法に定められた行政措置その他の指導を実施すること。

また、適正な賃金・人事管理制度の在り方等条件整備に必要な相談・援助を推進し、併せて高年齢者雇用に関する各種助成金制度の効果的活用を図ること。

さらに、雇用保険制度において支給される高年齢雇用継続給付制度の適正な運営を図ること。

二　高年齢者の多様な形態による雇用・就業を促進すること。

①　再就職を希望する高年齢離職者の早期再就職を促進すること。

②　高年齢者に係る労働者派遣事業の特例制度の適正な運営に努めるとともに、高年齢者職業経験活用センターの活用により短期的な雇用による就業機会の提供を促進すること。

③　シルバー人材センターの活用により定年退職後等における臨時、短期的な就業の場の提供を促進すること。

三　高齢期の雇用・就業に対する援助を行うこと。

労働者の高齢期における職業生活の設計のための助言、指導の実施に努めること。

四　職業能力の開発及び向上並びに労働者の自己啓発を促進すること。

五　高年齢者の雇用機会の確保、高年齢者にも働きやすい職場環境の実現等に配慮しつつ、労働時間短縮を推進すること。

六　勤労者財産形成年金貯蓄制度及び中小企業における退職金制度の普及促進を図ること。

七　高年齢者の労働災害防止対策や高年齢者が働きやすい快適職場づくりを推進すること。