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介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律の施行について
平成4年7月1日発職第165号
(各都道府県知事あて労働事務次官通達)
「介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「法」という。)」については、第一二三回通常国会において、平成四年五月二〇日、全会一致で可決成立し、五月二七日、平成四年法律第六三号として公布され、七月一日から施行されることとなった。
また、これに伴い、「介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行令(以下「令」という。)」が平成四年政令第二三三号として公布され、七月一日から施行されることとなった。
この「介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律」は、介護労働者について、その雇用管理の改善、能力の開発及び向上等に関する措置を講ずることにより、介護業務に係る労働力の確保に資するとともに、介護労働者の福祉の増進を図ろうとするものであり、その主たる内容は下記のとおりであるので、その趣旨を十分理解の上、その施行に万全を期されたく、命により通達する。
記
第一 介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律関係
1 目的
この法律は、我が国における急速な高齢化の進展等に伴い、介護業務に係る労働力への需要が増大していることにかんがみ、介護労働者について、その雇用管理の改善、能力の開発及び向上等に関する措置を講ずることにより、介護業務に係る労働力の確保に資するとともに、介護労働者の福祉の増進を図ることを目的とすること。(法第一条関係)
2 定義等
(1) 定義
イ この法律において「介護業務」とは、身体上又は精神上の障害があることにより日常生活を営むのに支障がある者につき入浴、排せつ、食事その他の介護を行う業務をいうこと。(法第二条第一項関係)
ロ この法律において「介護労働者」とは、専ら介護業務に従事する労働者をいうこと。(法第二条第二項関係)
ハ この法律において「事業主」とは、介護労働者を雇用して、専ら介護業務を業として行う者をいうこと。(法第二条第三項関係)
ニ この法律において「職業紹介事業者」とは、介護労働者について労働大臣の許可を受けて有料の職業紹介事業を行う者をいうこと。(法第二条第四項関係)
(2) 関係者の責務
イ 事業主は、その雇用する介護労働者について、労働環境の改善、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善を図るために必要な措置を講ずることにより、その福祉の増進に努めるものとすること。(法第三条第一項関係)
ロ 職業紹介事業者は、その行う職業紹介事業に係る介護労働者及び介護労働者となろうとする求職者について、これらの者の福祉の増進に資する措置を講ずるように努めるものとすること。(法第三条第二項関係)
ハ 国は、介護労働者の雇用管理の改善の促進、介護労働者の能力の開発及び向上その他の介護労働者の福祉の増進を図るために必要な施策を総合的かつ効果的に推進するように努めるものとすること。(法第四条第一項関係)
ニ 地方公共団体は、介護労働者の福祉の増進を図るために必要な施策を推進するように努めるものとすること。(法第四条第二項関係)
(3) 適用除外
この法律は、国家公務員及び地方公務員並びに船員については、適用しないこと。(法第五条関係)
3 介護雇用管理改善等計画
(1) 介護雇用管理改善等計画の策定
イ 労働大臣は、介護労働者の福祉の増進を図るため、介護労働者の雇用管理の改善、能力の開発及び向上等に関し重要な事項を定めた介護雇用管理改善等計画を策定するものとすること。(法第六条第一項関係)
ロ 介護雇用管理改善等計画に定める事項は、次のとおりとすること。(法第六条第二項関係)
(イ) 介護労働者の雇用の動向に関する事項
(ロ) 介護労働者の雇用管理の改善を促進し、並びにその能力の開発及び向上を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項
(ハ) その他介護労働者の福祉の増進を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項
ハ 労働大臣は、介護雇用管理改善等計画を策定し、又は変更する場合には、あらかじめ、厚生大臣と協議するとともに、中央職業安定審議会の意見を聴くこととし、介護雇用管理改善等計画を策定し、又は変更したときは、遅滞なく、その概要を公表しなければならないこと。(法第六条第三項から第五項関係)
(2) 要請
労働大臣は、介護雇用管理改善等計画の円滑な実施のため必要があると認めるときは、事業主、職業紹介事業者その他の関係者に対し、介護労働者の雇用管理の改善、介護労働者の能力の開発及び向上その他の介護労働者の福祉の増進に関する事項について必要な要請をすることができること。(法第七条関係)
4 介護労働者の雇用管理の改善等
(1) 改善計画の認定等
イ 事業主のうち政令で定める事業を行う特定事業主は、その雇用する介護労働者の福祉の増進を図るために実施する労働環境の改善、教育訓練の実施、福利厚生の充実その他の雇用管理の改善に関する措置についての改善計画を作成し、都道府県知事に提出して、その改善計画が適当である旨の認定を受けることができること。(法第八条第一項関係)
ロ 改善計画には、改善措置の目標、改善措置の内容、改善措置の実施時期を記載しなければならないこと。(法第八条第二項関係)
ハ 都道府県知事は、イの認定の申請があった場合において、その改善計画が、当該特定事業主が雇用する介護労働者の雇用管理の改善を図るために有効かつ適切なものであることその他の政令で定める基準に該当するものであると認めるときは、その認定をするものとすること。(法第八条第三項関係)
ニ イの認定を受けた認定特定事業主は、当該認定に係る改善計画を変更しようとするときは、都道府県知事の認定を受けなければならないこと。(法第九条第一項関係)
ホ 都道府県知事は、認定特定事業主が認定計画に従って改善計画を講じていないと認めるときは、その認定を取り消すことができること。(法第九条第二項関係)
(2) 雇用福祉事業としての助成及び援助
政府は、認定計画に係る改善措置の実施を促進するため、当該認定計画に基づきその雇用する介護労働者の福祉の増進を図るために必要な措置を講ずる認定特定事業主に対して、雇用保険法第六四条の雇用福祉事業として、必要な助成及び援助を行うものとすること。(法第一〇条関係)
(3) 指導及び助言
国及び都道府県は、認定特定事業主に対し、認定計画に係る改善措置の的確な実施に必要な指導及び助言を行うものとすること。(法第一一条関係)
(4) 報告の徴収
都道府県知事は、認定特定事業主に対し、認定計画に係る改善措置の実施状況について報告を求めることができること。(法第一二条関係)
(5) 職業訓練の実施
労働大臣は、介護業務の遂行に必要な労働者の能力の開発及び向上を図るため、必要な職業訓練の効果的に実施について特別の配慮をするものとすること。(法第一三条関係)
(6) 職業紹介の充実等
労働大臣は、介護労働者になろうとする者がその有する能力に適合する職業に就く機会を与えるため、及び介護業務に係る労働力の充足を図るため、雇用情報の提供、職業指導及び職業紹介の充実等必要な措置を講ずるように努めるものとすること。(法第一四条関係)
5 介護労働安定センター
(1) 指定等
イ 労働大臣は、介護労働者の福祉の増進を図ることを目的として設立された民法第三四条の法人であって、(2)のイの業務に関し次の(イ)及び(ロ)に適合すると認められるものを、その申請により、全国に一を限って、当該業務を行う介護労働安定センターとして指定することができること。(法第一五条関係)
(イ) 職員、業務の方法その他の事項についての業務の実施に関する計画が適正なものであり、かつ、経理的及び技術的な基礎を有すると認められること。
(ロ) その他業務の運営が適正かつ確実に行われ、介護労働者の福祉の増進に資すると認められること。
ロ イの指定には、条件を付け、及びこれを変更することができること。(法第一六条関係)
(2) 業務等
イ 介護労働安定センターは、次に掲げる業務を行うものとすること。(法第一七条関係)
(イ) 介護労働者の雇用及び福祉に関する情報及び資料を総合的に収集し、並びに事業主、職業紹介事業者その他の関係者に対し提供すること。
(ロ) 職業紹介事業者の行う職業紹介事業に係る介護労働者に対し、その負傷、疾病等に関する援助その他のその職業生活の安定を図るために必要な援助を行うこと。
(ハ) ロの業務を行うこと。
(ニ) その他介護労働者の福祉の増進を図るために必要な業務を行うこと。
ロ 労働大臣は、介護労働安定センターに雇用保険法第六四条の雇用福祉事業のうち次のいずれかに該当するものに係る業務の全部又は一部を行わせるものとすること。(法第一八条関係)
(イ) 事業主に対して支給する給付金であって労働省令で定めるものを支給すること。
(ロ) 介護労働者の雇用及び福祉に関する調査研究を行うこと。
(ハ) 介護労働者の福祉の増進を図るための措置について、事業主、職業紹介事業者その他の関係者に対して相談その他の援助を行うこと。
(ニ) 職業事業者の行う職業紹介事業に係る介護労働者等に対して、必要な知識及び技能を習得させるための研修を行うこと。
(ホ) 職業紹介事業者についての情報を収集整理し、及び介護労働者を雇用しようとする者に対して、その希望に応じたものを提供すること。
(ヘ) その他介護労働者の福祉の増進を図るために必要な事業を行うこと。
ハ 介護労働安定センターは、ロの雇用福祉事業関係業務に関する業務規程を作成し、又は変更しようとするときは、労働大臣の認可を受けなければならないこと。(法第一九条第一項関係)
ニ 労働大臣は、ハの業務規程が雇用福祉事業関係業務の適正かつ確実な実施上不適当となったと認めるときは、その業務規程を変更すべきことを命ずることができること。(法第一九条第二項関係)
ホ 介護労働安定センターは、ロの(イ)の給付金業務を行う場合において必要があると認めるときは、事業主に対し、必要な事項について報告を求めることができること。(法第二〇条関係)
(3) 事業計画等
イ 介護労働安定センターは、毎事業年度、事業計画書及び収支予算書を作成し、又は変更しようとするときは、労働大臣の認可を受けなければならないこと。(法第二一条第一項関係)
ロ 介護労働安定センターは、毎事業年度終了後、事業報告書、貸借対照表、収支決算書及び財産目録を作成し、労働大臣に提出し、その承認を受けなければならないこと。(法第二一条第二項関係)
ハ 介護労働安定センターは、雇用福祉事業関係業務に係る経理とその他の業務に係る経理とを区分して整理しなければならないこと。(法第二二条関係)
ニ 国は、予算の範囲内において、介護労働安定センターに対し、雇用福祉事業関係業務に要する費用の全部又は一部に相当する金額を交付することができること。(法第二三条関係)
ホ その他介護労働安定センターが雇用福祉事業関係業務を行う場合における介護労働安定センターの財務及び会計に関し必要な事項は、労働省令で定めること。(法第二四条関係)
(4) 役員の選任及び解任等
イ 介護労働安定センターの役員の選任及び解任は、労働大臣の認可を受けなければ、その効力を生じないこと。(法第二五条第一項関係)
ロ 介護労働安定センターの役員が、法第四章の規定に違反する行為をしたとき等一定の要件に該当するときは、労働大臣は、介護労働安定センターに対し、その役員を解任すべきことを命ずることができること。(法第二五条第二項関係)
ハ 給付金業務に従事する介護労働安定センターの役員及び職員は、刑法その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなすこと。(法第二六条関係)
ニ 労働大臣は、介護労働安定センターの業務の適正な運営を確保するために必要な限度において、当該業務若しくは資産の状況に関し必要な報告をさせ、又は所属の職員に、介護労働安定センターの事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができること。(法第二七条関係)
ホ 労働大臣は、介護労働安定センターに対し、その業務に関し監督上必要な命令をすることができること。(法第二八条関係)
ヘ 労働大臣は、介護労働安定センターが次のいずれかに該当するときは、指定を取り消し、又は期間を定める業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができること。(法第二九条関係)
(イ) 業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。
(ロ) 指定に関し不正の行為があったとき。
(ハ) 法第四章の規定又は当該規定に基づき命令若しくは処分に違反したとき。
(ニ) 指定の条件に違反したとき。
(ホ) 認可を受けた業務規程によらないで雇用福祉事業関係業務を行ったとき。
ト 労働大臣は、指定を取り消し、若しくは雇用福祉事業関係業務の全部若しくは一部の停止を命じたとき、又は介護労働安定センターが雇用福祉事業関係業務を行うことが困難となった場合において必要があると認めるときは、当該雇用福祉事業関係業務を自ら行うものとすること。(法第三〇条関係)
チ 労働大臣は、役員の解任命令又は指定の取消し若しくは業務の全部若しくは一部の停止命令をしようとするときは、あらかじめ、期日及び場所を指定して、聴聞を行わなければならないこと。(法第三一条関係)
6 雇用促進事業団の業務
(1) 雇用促進事業団は、雇用促進事業団法第一九条に規定する業務のほか、介護労働者の福祉の増進を図るため、次に掲げる業務を行うこと。(法第三二条第一項関係)
イ 特定事業主がその雇用する介護労働者の福祉の増進を図るための設備の設置又は整備を行う場合において、必要な資金の借入れに係る債務の保証を行うこと。
ロ 職業紹介事業者又はその団体が介護労働者又は介護労働者になろうとする求職者の福祉の増進を図るための施設の設置又は整備を行う場合において、必要な資金を借入れに係る債務の保証を行うこと。
ハ 介護労働安定センターに対して5の(2)のイの(ロ)の業務に関し必要な助成を行うこと。
ニ イからハまでに附帯する業務を行うこと。
ホ その他介護労働者の福祉を増進するために必要な業務であって政令で定めるものを行うこと。
(2) (1)の業務に関し雇用促進事業団法についての所要の規定の整備を行うこと。(法第三二条第二項関係)
7 罰則
4の(4)、5の(2)のホ及び5の(4)のニに違反した者等に対し所要の罰則を科すこと。(法第三三条及び第三四条関係)
8 施行期日等
(1) この法律は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること。(法附則第一条関係)
(2) この法律の施行に際し必要な経過措置を定めるとともに、関係法律について所要の規定の整備を行うこと。(法附則第二条から第五条まで関係)
第二 介護労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行令関係
1 特定事業主の範囲を定める事業
法第八条第一項の政令で定める事業は、専ら介護業務を行う事業であって、社会福祉事業法(昭和二六年法律第四五号)第二条に規定する社会福祉事業に該当するもの以外のものとすること。(令第一条関係)
2 改善計画の認定の基準
法第八条第三項の政令で定める基準は、次のとおりとすること。
(1) 改善計画が、当該特定事業主が雇用する介護労働者の雇用管理の改善を図るために有効かつ適切なものであること。(令第二条第一号関係)
(2) 当該特定事業主が改善計画を達成する見込みが確実であること。(令第二条第二号関係)
3 雇用促進事業団の業務
法第三二条第一項第五号の政令で定める義務は、介護労働安定センターが行う法第一七条第二号に掲げる業務に係る職業紹介事業者に対して、当該業務の円滑な実施を促進するために当該職業紹介事業者が行う業務に関し必要な助成を行う義務とすること。(令第三条関係)
4 施行期日等
(1) この政令は、法の施行の日(平成四年七月一日)から施行すること。(令附則第一条関係)
(2) この政令の施行に際し、労働省組織令について所要の規定の整備を行うこと。(令附則第二条関係)