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通達:港湾労働法の施行について

 

港湾労働法の施行について

昭和63年12月23日発職第242号

(各都道府県知事あて労働事務次官通達)

 

港湾労働法については、第一一二回国会において、昭和六三年五月一一日に一部修正の上成立し、五月一七日に昭和六三年法律第四〇号として公布され、昭和六四年一月一日から施行されることとなった。

また、港湾労働法施行令及び港湾労働法の施行に伴う関係政令の整備に関する政令が、昭和六三年一二月一三日にそれぞれ昭和六三年政令第三三五号及び昭和六三年政令第三三六号として公布され、昭和六四年一月一日から施行されることとなった。

この港湾労働法は、港湾労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上等に関する措置を講ずることにより、港湾運送に必要な労働力の確保に資するとともに、港湾労働者の雇用の安定その他の港湾労働者の福祉の増進を図ろうとするものであり、その主たる内容は下記のとおりであるので、その趣旨を十分理解の上、その施行に万全を期されたく、命により通達する。

なお、この港湾労働法の施行に伴い、港湾労働法(昭和四〇年法律第一二〇号)及び港湾労働法施行令(昭和四〇年政令第三六一号)は廃止されるので、申し添える。

 

第一 港湾労働法関係

Ⅰ 趣旨

この法律は、近年の港湾運送における輸送革新の進展等に伴う労働力の需給構造の変化等に即応しつつ、港湾運送に必要な労働力の確保に資するとともに、港湾労働者の雇用の安定その他福祉の増進を図るため、港湾労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上に関する措置を講ずるとともに、労働大臣が公益法人を港湾労働者雇用安定センターとして指定することができることとし、港湾労働者雇用安定センターが港湾運送の業務に関する労働者派遣の業務等を行うものとすることとしたものである。

Ⅱ 概要

一 目的(第一条関係)

この法律は、港湾労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上等に関する措置を講ずることにより、港湾運送に必要な労働力の確保に資するとともに、港湾労働者の雇用の安定その他の港湾労働者の福祉の増進を図ることを目的とすること。

二 定義(第二条関係)

この法律において、用語の意義は、次に定めるところによること。

イ 港湾 政令で指定する港湾(その水域は、政令で定める区域とする。)をいうこと。

ロ 港湾運送 港湾において行う行為であって、次のいずれかに該当するものをいうこと。

① 港湾運送事業法第二条第一項に規定する港湾運送のうち、同項第二号から第五号までのいずれかに該当する行為

② ①に規定する行為に準ずる行為であって政令で定めるもの

ハ 事業主 次のいずれかに該当する者をいうこと。

① 港湾運送事業法第三条第一号から第四号までに規定する事業の事業主

② ロの②に規定する行為を行う事業の事業主

ニ 港湾労働者 港湾運送の業務に従事する労働者をいい、船員職業安定法第六条第一項に規定する船員を除くこと。

三 港湾雇用安定等計画(第三条関係)

(一) 労働大臣は、港湾ごとに、港湾労働者の雇用の安定その他の港湾労働者の福祉の増進に関する港湾雇用安定等計画を策定するものとすること。

(二) 港湾雇用安定等計画に定める事項は、当該港湾における次の事項とすること。

イ 港湾労働者の雇用の動向に関する事項

ロ 労働力の需給の調整の目標に関する事項

ハ 港湾労働者の雇用の改善並びに能力の開発及び向上を促進するための方策に関する事項

(三) 労働大臣は、港湾雇用安定等計画を策定し、又は変更しようとするときは、あらかじめ、中央職業安定審議会及び港湾調整審議会の意見を聴くほか、必要があると認めるときは、関係都道府県知事その他関係行政機関の意見を聴くものとすること。

(四) 労働大臣は、港湾雇用安定等計画を策定し、又は変更したときは、遅滞なく、これを公表するものとすること。

四 港湾労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上等

(一) 関係者の責務(第四条及び第五条関係)

イ 事業主は、募集、雇入れ及び配置を計画的に行うことその他の港湾労働者の雇用の改善に資する措置を講ずるとともに、港湾運送の業務の遂行に必要な能力を付与するための教育訓練を行うことにより、港湾労働者の安定した雇用の確保その他の港湾労働者の福祉の増進に努めなければならないこと。

ロ 事業主及びその団体は、港湾労働者の安定した雇用の確保その他の福祉の増進に関し、相互に協力するように努めなければならないこと。

ハ 国及び地方公共団体は、事業主及びその団体の自主的な努力を尊重しつつ、その実情に応じてこれらの者に対し必要な援助を行うこと等により、港湾労働者の雇用の安定その他の港湾労働者の福祉の増進に努めなければならないこと。

ニ 国及び雇用促進事業団は、港湾労働者に対し事業主が行う教育訓練の円滑な実施に資するため、必要な職業訓練の効果的な実施について特別の配慮をするものとすること。

(二) 雇用管理者(第六条関係)

イ 事業主は、次に掲げる事項を管理させるため、雇用管理者を選任しなければならないこと。

① 港湾労働者の募集、雇入れ及び配置に関する事項

② 港湾労働者の教育訓練に関する事項

③ その他港湾労働者の雇用管理に関する事項

ロ 事業主は、雇用管理者について、必要な研修を受けさせる等イに掲げる事項を管理するための知識の習得及び向上を図るように努めなければならないこと。

(三) 雇用管理に関する勧告等(第七条関係)

イ 公共職業安定所長は、当該港湾に係る港湾雇用安定等計画に定める事項に照らして、雇用管理の改善を図る必要があると認める事業主に対し必要な勧告をすることができること。

ロ イの勧告を受けた事業主は、必要に応じ雇用管理に関する計画を作成するものとすること。

ハ 公共職業安定所長は、イの勧告並びにロの計画の作成及び実施に関し、必要な助言その他の援助を行うものとすること。

(四) 職業紹介(第八条関係)

公共職業安定所は、港湾運送の業務に関する職業紹介については、当該港湾に係る港湾雇用安定等計画の定めるところに即して、迅速かつ的確に行うよう努めなければならないこと。

(五) 港湾労働者の雇用の届出等(第九条関係)

イ 事業主は、その雇用する労働者(日々又は二月以内の期間を定めて雇用する労働者(以下「日雇労働者」という。)を除く。)を港湾運送の業務に従事させようとするときは、その氏名、港湾運送の業務に従事させる期間その他の事項を公共職業安定所長に届け出なければならないこと。

ロ 公共職業安定所長は、イの届出に係る労働者であって常時港湾運送の業務に従事するものに対し、港湾労働者証を交付すること。

ハ ロにより港湾労働者証の交付を受けた労働者は、港湾運送の業務に従事するときは、港湾労働者証を携帯し、公共職業安定所の職員の求めに応じてこれを提示しなければならないこと。

(六) 日雇労働者の雇用(第一〇条関係)

イ 事業主は、公共職業安定所に日雇労働者に係る求人の申込みをしたにもかかわらず適格な求職者の紹介を受けることができない場合等を除き、公共職業安定所の紹介を受けて雇い入れた者でなければ、日雇労働者として港湾運送の業務に従事させてはならないこと。

ロ 事業主は、イの除外事由に該当する場合において、公共職業安定所の紹介を受けないで日雇労働者を雇い入れようとするときは、その旨を公共職業安定所に届け出なければならないこと。

(七) 事業主の報告(第一一条関係)

事業主は、港湾労働者の雇入れの状況その他の労働省令で定める事項を、定期的に、公共職業安定所長に報告しなければならないこと。

五 港湾労働者雇用安定センター

(一) 港湾労働者雇用安定センターの指定等(第一二条及び第一三条関係)

イ 労働大臣は、港湾労働者の雇用の安定その他の港湾労働者の福祉の増進を図ることを目的として設立された民法第三四条の法人であって、次の①及び②に適合すると認められるものを、申請により、(二)に掲げる業務を行う者(以下「港湾労働者雇用安定センター」という。)として各港湾について、指定することができること。

① 業務の実施に関する計画が適正であり、かつ、経理的及び技術的な基礎を有すると認められること。

② 業務の運営が適正かつ確実に行われ、港湾労働者の雇用の安定その他の港湾労働者の福祉の増進に資すると認められること。

ロ 労働大臣は、現に当該港湾について他に指定した者があること等イの申請が一定の要件に該当するときは、イの指定をしてはならないこと。

ハ 労働大臣は、イの指定をしたときは、港湾労働者雇用安定センターの名称及び住所並びに事務所の所在地を公示しなければならないこと。

ニ イの指定には、条件を付し、及びこれを変更することができること。

(二) 港湾労働者雇用安定センターの業務(第一四条関係)

港湾労働者雇用安定センターは、(1)のイの指定に係る港湾における港湾労働者又は事業主に関し、次に掲げる業務を行うものとすること。

① 港湾労働者の雇用の安定に関する調査研究を行うこと。

② 事業主に対し、港湾労働者の雇用管理に関する技術的事項について相談その他の援助を行うこと。

③ 雇用管理者に対する研修を行うこと。

④ 港湾労働者に対する訓練を行うこと。

⑤ 当該港湾における港湾運送の業務に関し、労働者派遣(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)第二条第一号に規定する労働者派遣をいい、船員職業安定法第六条第一項に規定する船員を対象とするものを除く。以下同じ。)を行うこと。

⑥ 前各号に掲げるもののほか、港湾労働者の雇用の安定その他の港湾労働者の福祉の増進を図るための業務を行うこと。

(三) 労働者派遣業務の業務方法等(第一五条から第一七条まで関係)

イ 港湾労働者雇用安定センターが行う(二)の⑤の労働者派遣業務に関しては、労働者派遣法第二章(第二四条を除く。)の規定並びに労働者派遣法第二六条第二項から第四項まで及び第四八条第二項の規定は適用しないものとし、労働者派遣法の他の規定の適用については港湾労働者雇用安定センターを労働者派遣法第二三条第一項に規定する派遣元事業主とみなすこと。

ロ 港湾労働者雇用安定センターが行う労働者派遣は、その常時雇用する労働者を派遣することにより行われなければならず、その常時雇用する労働者のみの派遣によっては労働者派遣の需要に応じられない場合等には、その常時雇用する労働者以外の労働者であって労働大臣が定める基準に適合するものを派遣することができること。

ハ 港湾労働者雇用安定センターは、正当な理由がある場合を除き、事業主から労働者の派遣を求められたときは、労働者派遣を拒んではならないこと。

ニ 港湾労働者雇用安定センターは、労働者派遣業務に関する労働者派遣規程を定め、労働大臣の認可を受けなければならないこと。

ホ 労働者派遣規程には、労働者派遣業務の実施方法、労働者派遣に関する料金その他の事項を定めておかなければならないこと。この場合において、当該料金は、能率的な業務運営の下における適正な原価を償う限度のものであり、かつ、公正妥当なものでなければならないこと。

ヘ 労働大臣は、認可をした労働者派遣規程が労働者派遣業務の適正かつ確実な実施上不適当となったと認めるときは、労働者派遣規程の変更を命ずることができること。

(四) 区分経理(第一八条関係)

港湾労働者雇用安定センターは、労働者派遣業務に係る経理とその他の業務に係る経理とを区分して整理しなければならないこと。

(五) 事業計画書等(第一九条関係)

イ 港湾労働者雇用安定センターは、労働者派遣の対象となる常時雇用する労働者の数等を記載した事業計画書及び収支予算書を作成し、労働大臣の認可を受けなければならないこと。

ロ 港湾労働者雇用安定センターは、毎事業年度終了後、事業報告書、貸借対照表、収支決算書及び財産目録を作成し、労働大臣に提出しなければならないこと。

(六) 国の補助(第二〇条関係)

国は、港湾労働者雇用安定センターに対し、政令で定めるところにより、予算の範囲内において、その行う業務に要する費用の一部を補助することができること。

(七) 役員の選任及び解任の認可等(第二一条関係)

イ 港湾労働者雇用安定センターの役員の選任及び解任は、労働大臣の認可を受けなければ、その効力を生じないこと。

ロ 港湾労働者雇用安定センターの役員が、港湾労働者雇用安定センターに関する規定に違反する行為をしたとき等一定の要件に該当するときは、労働大臣は、当該港湾労働者雇用安定センターに対し、その役員を解任すべきことを命ずることができること。

(八) 監督(第二二条及び第二三条関係)

イ 労働大臣は、港湾労働者雇用安定センターの業務の適正な運営を確保するために必要な限度において、当該業務の状況に関し必要な報告をさせ、又は所属の職員に、港湾労働者雇用安定センターの事務所に立ち入り、業務の状況若しくは帳簿、書類その他の物件を検査させることができること。

ロ 労働大臣は、港湾労働者雇用安定センターに対し、(二)に掲げる業務に関し監督上必要な命令をすることができること。

(九) 指定の取消し等(第二四条関係)

労働大臣は、港湾労働者雇用安定センターが次のいずれかに該当するときは、指定を取り消し、又は期間を定めて業務の全部若しくは一部の停止を命ずることができること。

① (二)に掲げる業務を適正かつ確実に実施することができないと認められるとき。

② 指定に関し不正の行為があったとき。

③ 港湾労働者雇用安定センターに関する規定又は当該規定に基づく命令若しくは処分に違反したとき。

④ 指定の条件に違反したとき。

⑤ 認可を受けた労働者派遣規程によらないで労働者派遣業務を行ったとき。

(一〇) 聴聞(第二五条関係)

労働大臣は、次の処分をしようとするときは、あらかじめ、期日及び場所を指定して、聴聞を行わなければならないこと。

① 役員の解任命令

② 指定の取消し又は業務の全部若しくは一部の停止命令

六 雑則

(一) 労働者派遣に係る事業主の義務(第二六条関係)

事業主は、五の(一)のイの指定に係る港湾において、その常時雇用する労働者以外の者を港湾運送の業務に従事させようとするときは、港湾労働者雇用安定センターに対し、労働者の派遣を求めなければならないこと。

(二) 経過措置の政令への委任(第二七条関係)

二のイ又は二のロの②の規定に基づいて政令を制定し、又は改廃する場合には、政令で、その制定又は改廃に伴い合理的に必要と判断される範囲内において、所要の経過措置を定めることができること。

(三) 労働省令への委任(第二八条関係)

この法律の実施のために必要な手続その他の事項は、労働省令で定めること。

七 罰則(第二九条から第三二条まで関係)

四の(五)のイに違反した者、四の(六)のイに違反した者、五の(八)のイの報告をしなかった者等及び五の(八)のロの命令に違反した者に対し所要の罰則を科すこと。

八 施行期日等

(一) この法律は、昭和六四年一月一日から施行すること。(附則第一条関係)

(二) 港湾労働法(昭和四〇年法律第一二〇号)は、廃止すること。

(附則第二条関係)

(三) この法律の施行に際し、必要な経過措置及び暫定措置を定めること。(附則第三条から第一二条まで関係)

(四) 職業安定法、地方税法、港湾運送事業法、労働保険審査官及び労働保険審査会法、所得税法、印紙税法、社会保険労務士法、労働者派遣法、総理府設置法及び労働省設置法について所要の規定の整備を行うこと。(附則第一三条から第二六条まで関係)

(五) 政府は、この法律の施行後三年を経過した場合において、この法律の施行の状況を勘案し、必要があると認めるときは、この法律の規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとすること。(附則第二七条関係)

 

第二 港湾労働法施行令関係

一 港湾及びその水域(第一条関係)

港湾労働法の適用の対象となる港湾として、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸及び関門を指定するとともに、その水域を定めること。

二 港湾運送事業法に規定する港湾運送に準ずる行為(第二条関係)

第一のⅡの二のロの①に規定する行為に準ずる行為として港湾労働法の適用を受ける行為を、次のように定めること。

(一) 船積貨物の固定等

(二) 船倉の清掃

(三) 船舶等により運送された貨物の港湾倉庫への搬入、船舶等により運送されるべき貨物の港湾倉庫からの搬出又は貨物の港湾倉庫における荷さばき

(四) 車両等により運送された貨物の港湾倉庫若しくは上屋その他の荷さばき場への搬入又は車両等により運送されるべき貨物の港湾倉庫若しくは上屋その他の荷さばき場からの搬出

三 国の補助(第三条関係)

国は、港湾労働者雇用安定センターに対し、第一のⅡの五の(二)の③及び⑤の業務に要する費用の一部を補助することができること。

四 施行期日等

(一) この政令は、昭和六四年一月一日から施行すること。(附則第一条関係)

(二) 港湾労働法施行令(昭和四〇年政令第三六一号)は、廃止すること。(附則第二条関係)

(三) 港湾労働法施行に伴う暫定措置に係る所要の規定を定めること。(附則第三条及び第四条関係)

 

第三 港湾労働法の施行に伴う関係政令の整備に関する政令関係

一 関係政令の整備(第一条から第四条まで関係)

地方税法施行令、雇用促進事業団法施行令、港湾調整審議会令及び労働省組織令について所要の規定の整備を行うこと。

二 施行期日(附則関係)

この政令は、昭和六四年一月一日から施行すること。