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障害者雇用継続助成金制度の創設について
昭和62年7月1日職発第428号
(各都道府県知事あて労働省職業安定局長通達)
身体障害者雇用促進法の一部を改正する法律(昭和六二年法律第四一号)(以下「改正法」という。)の施行については、昭和六二年七月一日付け労働省発職第一七一号をもつて労働事務次官より貴職あて通達されたところであるが、昭和六二年七月一日から改正法のうち障害者雇用継続助成金の支給に係る部分が施行となり、また、これに伴い身体障害者雇用促進法施行令の一部を改正する政令(昭和六二年政令第二四二号)及び身体障害者雇用促進法施行規則等の一部を改正する省令(昭和六二年労働省令第二五号)が施行となるので、その施行に当たつては、同通達によるほか、左記事項に御留意の上、遺憾のないよう特段の御配慮をお願いしたい。
記
Ⅰ 障害者雇用継続助成金制度の趣旨
近年、離職する障害者が増加する等障害者の雇用の安定が大きな問題となつているところであるが、中でも、企業に採用された後、労働災害、交通事故等により障害を有するに至つたいわゆる中途障害者については、障害のため離職を余儀なくされる場合が少なくなく、また、離職には至らないまでも雇用を継続するための事業主の負担は重いものとなつているところである。
これら中途障害者の雇用の継続に係る指導については、従来から、公共職業安定所(以下「安定所」という。)において事業主に対して必要な指導を行う等の対策を講じてきたところであるが、事業主が中途障害者の雇用を継続するための経済的な負担について助成措置を講ずることが強く求められていたところである。しかし、現在の身体障害者雇用納付金制度に基づく助成金による障害者の雇用に係る事業主に対する助成措置は、事業主が新たに障害者を雇い入れる場合の助成を中心としており、中途障害者の雇用の継続及び社会復帰を図る事業主に対して経済的な援助ができない状況にあつた。
そこで、今回の身体障害者雇用促進法の改正により、新たに障害者雇用継続助成金制度を設け、事業主が中途障害者の雇用の継続を図るため、作業施設・設備の改善、職場復帰に当たつて必要かつ適切な職場適応措置を実施する場合には、助成金の支給等を行い、もつて労働災害による被災労働者を含む中途障害者の雇用の安定及びその社会復帰に資することとしたものである。
Ⅱ 障害者雇用継続助成金制度の概要
1 障害者雇用継続助成金関係業務の執行体制
障害者雇用継続助成金(以下「助成金」という。)の支給に関する業務及びこれに附帯する業務(以下「障害者雇用継続助成金関係業務」という。)は、改正後の身体障害者雇用促進法(以下「新法」という。)第五九条により身体障害者雇用促進協会(以下「中央協会」という。)が行うこととされているものであり、その詳細は中央協会の障害者雇用継続助成金関係業務方法書(以下「業務方法書」という。)、障害者雇用継続助成金支給要領(以下「支給要領」という。)等で規定されている。
また、障害者雇用継続助成金関係業務は、中央協会が行うものであるが、一部の業務は都道府県心身障害者雇用促進協会又は県雇用開発協会(以下「都道府県協会」という。)に委託することとしている。中央協会が都道府県協会に委託する障害者雇用継続助成金関係業務は次のとおりである。
イ 障害者雇用継続助成金関係業務の対象事業主(以下「対象事業主」という。)の調査・把握並びに対象事業主に対する障害者雇用継続助成金制度の普及及び関係事務の指導
ロ 対象事業主台帳作成のための基礎資料その他業務の運営に必要な資料の作成及び関係事務の指導
ハ 障害者雇用継続助成金の支給申請書、受給資格認定書、支給請求書、これらの添付書類及び助成事業実施報告書(以下「申請書等」という。)の用紙の対象事業主に対する送付又は配付
ニ 申請書等の受理及び点検
ホ 地方協会が受理点検した申請書等の中央協会に対する送付
ヘ 中央協会が発行する障害者雇用継続助成金に係る受給資格認定通知書及び支給決定通知書の対象事業主に対する送付
ト 前各号の業務に附帯する業務
2 障害者雇用継続助成金の内容
助成金は、新法第五九条第一項第三号の二の給付金にあたるものであり、支給の対象となる雇用の促進のため事業主の講ずる措置については改正後の身体障害者雇用促進法施行令(昭和三五年政令第二九二号)第二二条に、その要件、額その他の支給基準については改正後の身体障害者雇用促進法施行規則(昭和五一年労働省令第三八号)第三四条の五から第三四条の七までに、さらに支給基準の詳細については業務方法書で定められているところである。
助成金は、事業主の講ずる措置の種類により中途障害者作業施設設置等助成金及び重度中途障害者職場適応助成金に区分されており、事業主が作業施設又は設備(以下「作業施設等」という。)の設置又は整備を行う場合には中途障害者作業施設設置等助成金が、事業主が職場適応措置を行う場合には重度中途障害者職場適応助成金がそれぞれ支給されるものである。
(1) 中途障害者作業施設設置等助成金
中途障害者作業施設設置等助成金は、作業施設等の設置又は整備の方法により第一種作業施設設置等助成金及び第二種作業施設設置等助成金に区分されており、事業主が作業施設等の設置(賃借による設置を除く。)又は整備を行つた場合には第一種作業施設設置等助成金が、作業施設等の賃借による設置を行つた場合には第二種作業施設設置等助成金がそれぞれ支給されるものである。
イ 支給対象事業主
中途障害者作業施設設置等助成金は次のいずれの要件にも該当する事業主に対して支給されるものである。
(イ) 中途障害者(雇用されている労働者で当該労働者を雇用している事業主に雇用された後に身体障害者となつた者をいう。以下同じ。)の職場復帰(労働者が身体障害者となつた後に当該労働者となつた時に雇用している事業主の事業所において就労することをいう。以下同じ。)を促進するため、当該身体障害者の作業を容易にするために必要な作業施設等の設置(賃借によるものを除く。以下同じ。)又は整備を行うものであること。
(ロ) 作業施設等の設置又は整備を行わなければ中途障害者の雇用を継続することが困難であると公共職業安定所長(以下「安定所長」という。)が認めるものであること。
(ハ) 作業施設等の設置又は整備を行つた後一年以上当該作業施設等の設置又は整備に係る中途障害者の雇用を継続するものであること。
ロ 支給額及び支給期間
(イ) 第一種作業施設設置等助成金の支給額は、作業施設等の設置(賃借による設置を除く。)又は整備に要する費用の額に三分の二を乗じて得た額で、その限度額は二五〇万円に当該設置又は整備に係る中途障害者の数を乗じて得た額(その額が一事業所当たり一の会計年度(四月一日から翌年三月三一日までをいう。以下同じ。)につき、二、五〇〇万円を超えるときは、一事業所当たり一の会計年度につき、二、五〇〇万円)であること。
(ロ) 第二種作業施設設置等助成金の支給額は、作業施設等の賃借に要する費用の額に三分の二を乗じて得た額で、その限度額は、一箇月につき二〇万円であること。
支給対象となる期間は、作業施設等の賃借が行われた日の属する翌月から起算して三年のうち、当該作業施設等を当該支給に係る中途障害者が使用している期間であること。
(2) 重度中途障害者職場適応助成金
イ 支給対象事業主
重度中途障害者職場適応助成金は次のいずれの要件にも該当する事業主に対して支給するものである。
(イ) 重度障害者等(新法第二条第二項に規定する重度障害者及び四五歳以上の身体障害者をいう。)の職場復帰を促進するため、重度障害者等職場適応措置(重度障害者等である労働者についての職務開発、能力開発その他職場への適応を促進するための措置に関する計画を作成し、当該計画に基づいて当該措置を行うことをいう。)を実施するものであること。
なお、「重度障害者等」にあたるか否かの判断は、職場復帰の時点で行うものであること。
(ロ) 重度障害者等職場適応措置を実施しなければ、重度障害者等の雇用を継続することが困難であると安定所長が認めるものであること。
(ハ) 重度障害者等職場適応措置の終了後六箇月以上当該重度障害者等職場適応措置に係る重度障害者等の雇用を継続するものであること。
ロ 支給額及び支給期間
重度中途障害者職場適応助成金の支給額は、重度障害者等職場適応措置に係る重度障害者等一人当たり一箇月につき三万円であること。
支給対象となる期間は、重度障害者等が職場復帰をした日の属する月の翌月から起算して三年のうち、当該重度障害者等職場適応措置を実施している期間であること。
3 助成金の支給申請の手続等
助成金の支給申請の手続は、中央協会の業務方法書及び支給要領に定められているが、その概要は次のとおりである。
(1) 中央協会は、助成金の支給を受けようとする事業主から助成金の受給資格の認定について申請を行わせ、当該事業主が受給資格を有するものとして認定した場合には、当該事業主から助成金の支給について申請させるものとする。
(2) 助成金の受給資格の認定についての申請は、当該助成金の支給に係る中途障害者が職場復帰をした日から起算して三箇月以内に、助成金受給資格認定申請書に助成金の支給の必要性の有無等に関する安定所長の意見書等必要書類を添付して行うものとする。
(3) 助成金の受給についての申請は、助成金支給申請書に、必要書類を添付して行うものとする。
(4) 助成金の受給資格の認定についての申請及び助成金の受給についての申請は、都道府県協会を通じて中央協会に対して行うものとされている。
(5) 助成金の支給申請の手続を示すと別添(参考(略))のとおりである。
Ⅲ 障害者雇用継続助成金制度の運用方針
1 運用方針
中央協会及び都道府県協会は、障害者雇用継続助成金関係業務として助成金の支給業務のほか助成金に係る広報・普及・支給業務に必要な資料の収集等の業務を行うものであるが、これらの業務を円滑に行うためには、助成金の支給対象とするか否かについての判断、中途障害者の雇用状況の把握等について職業安定機関による援助、協力が不可欠である。このため、安定所その他職業安定機関は、従来から実施されてきた身体障害者雇用納付金関係業務の場合と同様中央協会及び都道府県協会が行う障害者雇用継続助成金関係業務に積極的に援助・協力を行うとともに、相互の連絡・協力体制の確立を図るものとする。
2 公共職業安定所の業務
安定所においては、助成金の支給を受けようとする事業主が支給申請を行う場合は、当該助成金の必要性の有無等に関する安定所長の意見書を必要とすることとしているので、当該意見書の作成を求められた安定所長は、必要事項を記載した意見書を次により作成するものとする。
(1) 安定所長の意見書の請求の手続
イ 安定所長の意見書を請求しようとする事業主については、意見書を請求するための様式に必要事項を記載させた上、当該助成金の受給資格認定申請書の写を添付させて安定所長に提出させること。
ロ イの場合における安定所長は、当該助成金の支給に係る中途障害者を雇用する事業所を管轄する安定所長(以下「管轄安定所長」という。)であること。
(2) 公共職業安定所における事務処理
イ 管轄安定所長は、事業主から、(1)のイにより、安定所長の意見書を請求された場合には、当該意見書の請求に用いた様式の内容について、労働者名簿、賃金台帳、身体障害者であることを証明する書類等の提示を求めて確認するとともに、同様式に添付された助成金受給資格認定申請書の写の「事業概要、身体障害者雇用状況等」の内容についても確認し、併せて左記(3)に従い、助成金の支給の必要性の有無について審査(必要に応じて実地調査を行うこと。)すること。
ロ イの審査の結果、当該助成金が必要であると認められるか否かについて管轄安定所長の意見書を作成し、これを当該事業主に交付すること。この場合における安定所長の意見書は、事業主が意見書の請求に用いた様式によること。
ハ ロの文書については、その写を控として作成しておくこと。
(3) 助成金の支給の必要性の有無等に関する調査
助成金の支給の必要性の有無等に関する審査に当たつては、次に掲げる一般的事項に留意するほか4に掲げる運用上の個別的留意事項に留意することとし、これらの事項が満たされている場合には、助成金の支給の必要性があると判断して差し支えないこと。
イ 中途障害者の雇用を継続する事業主であること。
ロ 当該事業主が、その雇用する中途障害者の障害の状況を熟知していること。
ハ 当該事業主が障害者の雇用の安定に十分配慮しており、その定着状況が良好であること。
3 都道府県労働主管部(局)の業務
都道府県職業安定主務課においては、助成金の受給資格の認定申請及び助成金の支給申請の直接の窓口となる各都道府県協会に対し、当該申請の受理等に係る事務が円滑に行われるよう指導すること。指導に当たつては、次に掲げる事項について、当該協会が事業主に対して適切な説明、指導等を行うこととなるよう留意すること。
(1) 障害者雇用継続助成金制度の趣旨及び助成金の内容に関すること。
(2) 助成金の支給手続一般に関すること。
(3) 助成金受給資格申請書及び助成金支給申請書の記入、作成に関すること。
(4) 安定所長の意見書の請求手続一般に関すること。
(5) 支給要領様式(意見の請求に係るもの)の記入、作成に関すること。
4 運用上の個別的留意事項
障害者雇用継続助成金制度の運用に関しては、2の(3)に掲げた事項以外のものについては、この運用上の個別的留意事項によるものとすること。
(1) 中途障害者作業施設等設置等助成金
イ 支給対象となる作業施設等
中途障害者作業施設設置等助成金の支給対象となる作業施設等は、次のとおりである。
(イ) 作業施設
作業施設とは、中途障害者の能力に適合する作業を容易にするために必要な施設をいう。
(例)車いす使用者のための作業場の新築、作業工程の変更に伴う増築、安全施設の拡張・改善のための改築
(ロ) 附帯施設
附帯施設とは、中途障害者がその障害を克服し、就労することを容易にするために必要な玄関、廊下、階段、トイレ等の施設をいう。
(例)安全装置、手すり、点字ブロック等の設置、トイレの改造、玄関等のスロープ化、ドアの自動化、床面の平坦化
(ハ) 作業設備
作業設備とは、中途障害者の能力に適合する作業を容易にするために必要な設備、機械をいう。
なお、作業設備は、中途障害者の能力に適合する作業を容易にするために必要なものであれば足り、特別な改造を行うことは必ずしも必要とされないものである。
(例)盲人用ワードプロセッサ、オプタコン、盲人用電話交換台、改造自動車、作業用車いす等
ロ 中途障害者作業施設設置等助成金は、その雇用する中途障害者の「作業を容易にする」ために必要な作業施設等の設置又は整備を行う事業主であつて、当該作業施設等の設置又は整備を行わなければ、中途障害者の「雇用を継続することが困難」であると認められるものに対して支給するものである。
安定所長が助成金の支給申請に係る意見書を作成するに当たつては、この「雇用を継続することが困難」であるか否かの判断が求められているものであるが、この場合安定所長は、申請に係る作業施設等が(イ)及び(ロ)の要件を満たしているか否かを十分勘案しつつ適切な判断を行うよう慎重な審査を実施するものとする。
(イ) 中途障害者作業施設設置等助成金の支給対象となる作業施設等は、その雇用の継続に係る中途障害者の「作業を容易にする」ためのものであることが必要である。
(ロ) 中途障害者作業施設設置等助成金の対象となる作業施設等は、その雇用の継続に係る中途障害者の「障害」によるハンディキャップを克服し、又は軽減させることを目的として設置又は整備される「作業を容易にする」ための施設又は設備でなければならない。例えば、下肢障害者のために特別に改造された業務用自動車、聴覚障害者のための点滅ランプの設置、車いすを使用する障害者のためのドアの自動化等は、当該雇用の継続に係る中途障害者の障害と「作業を容易にする」ための措置との間に密接な関連があると認められることから、この要件を満足するものである。また、例えば、本来の機能として文字を音声化する機能を有するワードプロセッサは、特別な改造を行わなくとも視聴障害者の「障害」によるハンディキャップを克服し、又は軽減することを可能とするものであることから、この要件を満足するものである。しかしながら、聴覚障害者の雇用の継続に際し従来の作業機械より取扱いが容易な機械への買い替えを行つたような場合では、その新しい機械により一般的には作業が容易になるであろうが、その構造は聴覚の障害を克服して「作業を容易にする」ためのものとは認められないので、この助成金の対象とはならない。
ハ 調整
身体障害者雇用納付金制度に基づく重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金の支給の対象となつている事業主には、同一の事由により中途障害者雇用継続助成金は支給しないものとする。
(2) 重度中途障害者職場適応助成金
イ 支給対象となる重度障害者等職場適応措置
重度中途障害者職場適応助成金は、その雇用を継続する中途障害者のために、職場適応措置を実施する事業主であつて、当該措置を実施しなければ、当該中途障害者の「雇用の継続が困難である」と認められるものに対して、支給するものである。
安定所長が重度中途障害者雇用継続助成金の支給に係る意見書を作成するに当たつては、この「雇用の継続が困難である」か否かの判断が求められているものであるが、申請に係る措置が次の(イ)及び(ロ)の要件を満たしているか否かを慎重に審査し、実施するものとする。
(イ) その雇用の継続に係る中途障害者の「障害」によるハンディキャップを克服し、又は軽減することを目的として行われる措置であること。したがつて、「障害」と措置とが密接に関連するものであること。
例えば、視覚障害者について作業マニュアルの点字訳を行うこと、聴覚障害者について視覚を通じて作業指示等が伝達できるように工夫すること、肢体不自由者について残存機能を十分に活用できるように作業工程そのものを改善すること、内部障害者について医療措置の便宜のために勤務時間に適切な配慮ができるように事業所の仕事の流れを改善工夫すること等は「障害」と措置との間に密接な関連があると認められる。
(ロ) 職場適応のための明確な一連の措置が行われること。すなわち、雇用の継続に係る重度障害者等の「障害」を克服し、又は軽減するための作業内容の変更を行うだけでなく、その後の職場への適応の進展の段階に応じて、一連の措置が継続的かつ積極的に行われること。
ロ 調整
身体障害者雇用納付金制度に基づく重度障害者特別雇用管理助成金の支給の対象となつている事業主には、同一の事由により重度中途障害者職場適応助成金は支給しない。
5 助成金の非課税措置
従来より、身体障害者雇用納付金制度に基づく助成金については所得税及び法人税に係る非課税措置が講じられていたところであるが、障害者雇用継続助成金についても同様に非課税措置が講じられることとなつたところである。
(1) 対象事業主
障害者雇用継続助成金の支給を受ける事業主
(2) 措置の内容
助成金の支給を受けて、その支給の目的に適合した固定資産の取得又は改良を行う場合、当該固定資産の取得又は改良に充てられた助成金の額は、所得税にあつては総収入金額に不算入、法人税にあつては圧縮記帳による損金算入とする取扱いができること。