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通達:公共職業安定所における職種に係るミスマッチ等の問題点に対する積極的対応について

 

公共職業安定所における職種に係るミスマッチ等の問題点に対する積極的対応について

昭和60年6月6日職発第315号・能発第132号

(各都道府県知事あて労働省職業安定局長、労働省職業能力開発局長通達)

 

近年、労働市場においては、需給両面にわたり多様な変化が生じ、そのため、需給間に構造的なミスマッチが拡大しており、公共職業安定所(以下「安定所」という。)における職業紹介にも種々影響を及ぼしている。特に、最近の産業構造の変化、技術革新の進展等の影響により、求人側において個々の職種に対する需要量に変化が生じ、変化の生じた職種では、求人・求職の量的なミスマッチが見られ、また、求人・求職が量的に適合していても、求人側の要求する知識・技能を求職者が十分充たしていないという質的なミスマッチも顕著となつている。

これらとともに、職種によつては、多くの求人がありながら、求人側の雇用管理等の問題によつて、求職と円滑に結合しないといつたミスマッチ以外の問題も生じている。

このように、職種に係るミスマッチ等の問題は、職業紹介を進める上で様々に影響しており、職種ごとに問題を把握し、それぞれの問題に即してきめ細かに対応することが必要になつている。

また、職種に係るミスマッチを解消するためには、職業安定機関と職業能力開発行政機関との連携協力のもとに求職者の職業能力の開発向上を図ることが必要であり、特に、先般、委託訓練制度が改正され昭和六〇年度から、より機動的、弾力的な訓練の活用が図られることとなつたこともあり、職業能力開発制度を積極的に活用することが重要となつている。

ついては、今後、求人・求職の円滑な結合を図るため、左記により、ミスマッチをはじめとする職種に係る問題に的確に対処することとしたので、その効果的な推進が図られるよう特段の御配慮をお願いする。

 

第一 ミスマッチ等の実態の把握・分析

職種に係るミスマッチ等求人・求職の円滑な結合を妨げる原因は様々であり、地域ごとにもその実態は一様でないことから、まず、安定所ごとに管下の求人・求職の実態をよく把握するとともに主要な職種におけるミスマッチ等の状況を分析し、その結果を安定所内関係各部門、職業安定主管課、公共職業訓練施設(以下「訓練施設」という。)等に提供して、求人・求職者に対する指導及び地域の職業訓練計画に反映させること。

なお、大都市圏のように、安定所ごとに把握・分析を行うことが労働市場の実態を必ずしも正しく反映しない場合には、職業安定主管課が調整を行つて労働市場圏ごとに把握・分析を行うこと。

(1) 実施時期

把握・分析は、年間の職業紹介業務計画及び職業訓練計画に反映させるために当該計画の策定に併せて行うほか、随時必要に応じて行うこと。

(2) 方法

① 別添様式又は既存の様式等を用いて、定例業務報告第一二〇号等安定所で把握している職種別の統計により一定期間の職種別職業紹介状況の把握を行うこと。また、必要に応じ、年齢及び地域の要素を加味すること。

② ①により、次のような問題があると思われる職種を把握すること。

イ 求人倍率が著しく高い職種(求職者が不足)

ロ 求人倍率が著しく低い職種(求人が不足)

ハ 就職率、充足率ともに低い職種

ニ 求人倍率が高いにもかかわらず就職率が低い職種

ホ 求人倍率が低いにもかかわらず充足率が低い職種

ヘ 現在の職業紹介状況が過去と比較して大きく変動している職種

③ 問題があると思われる職種については、当該職種に係る求人票・求職票をチェックする等して問題点を分析するとともに、地域企業の採用動向のような当該職種についての管下の需給の具体的な実態を把握すること。その際、次の点に留意すること。

イ 需給の量的問題か質的問題か

(すなわち、求人・求職の円滑な結合を妨げている原因が、求人の不足や求職の不足といつた需給の量的な不均衡にあるのか、左記ロ、ハのような求人・求職の質的な不適合にあるのか。)

ロ 求人条件・求職条件の間で大きな隔たりがないかどうか。

ハ 求職者の有する知識・技能が求人側の要求するものと適合するかどうか。

④ 前記の分析とともに、事業主又は事業主団体との会合、事業所訪問等を通して、地域の企業が求職者に対して求めている知識・技能の質的、量的程度を的確に把握すること。

 

第二 求人・求職に対する指導の充実

1 雇用職業情報の的確な収集、提供

求人・求職者に対する雇用職業に関する情報の提供は、求職者が適格な職業を選択したり職業を転換する上で、また、求人者が適正な求人条件を設定する上で極めて有効であり、求人・求職の結合の促進に資するものであることから、雇用職業情報の的確な収集、提供に努めることとする。特に、職業(職務内容及び必要な知識・技能)についての正確な情報を効果的に提供するため、職業ハンドブック及び職業ガイダンスビデオの積極的な活用を図ること。

2 求職者に対する職業指導の充実

(1) 適正な求職条件の設定のための助言・指導

① 求人・求職の結合を妨げている原因が求職者の側にある職種においては、就職可能性が高まるような求職条件が設定できるように助言・指導を行うこと。その際、職種別等に計画的、集団的な指導も積極的に行うこと。

特に、「販売の職業では、日曜日以外の曜日を休日としている場合が多い。」というように、職種によつては特殊な求人条件を設定せざるを得ないものもあるので、職種ごとの求人条件の傾向を求職者によく理解させることが必要である。

② 再就職促進講習においては、必須科目として「地域の企業における求人職種の職務内容、労働条件その他労働市場の実情」等適正な条件設定指導を行う場合に参考となるものが含まれているので、同講習の積極的な活用を図ること。

(2) 職業転換指導

① 求職者が、求人の不足している職種(全国的には、管理的職業、事務的職業、単純労働の職業等)を希望する場合は、積極的な情報提供を行いながら当該職業への就職促進に努めなければならないが、その上でなお、当該職種への就職が困難な場合は、求職者の希望、職業的資産等を把握した上で、求職者が不足している職種(全国的には、技能・生産工程の職業、サービスの職業等)等他職種への職業転換指導を積極的に行うこと。

② 指導に当たつては、転換先職種ごとに説明会の開催や能力再開発適応講習又は再就職促進講習の積極的活用を図り、職業転換の必要性、転換先職種の労働条件、仕事の内容、必要な知識・技能、職業訓練の活用等の説明を行うこと。

(3) 職業能力開発向上のための指導

技術革新の進展する中で、求職者の就職可能性を高めるためには、求職者の有する職業能力の開発向上を図ることが重要であり、安定所において、次によりこの面での指導・援助の充実を図ること。

① 求職者に対する知識・技能の付与に当たつては、訓練施設における職業訓練を積極的に活用することはもちろんのこと、当該訓練だけに限ることなく、求職者が必要とする知識・技能の質的、量的程度をよく把握し、速成訓練、委託訓練、職場適応訓練、能力再開発適応講習等の中から効果的な方法を選定すること。

② 再就職促進講習においては、短期間ではあるが技能を追加付与する機能を有する講習コースを実施することも可能であるので、同講習の活用も図ること。

③ 訓練施設の状況、訓練科目の内容等職業能力開発に関する情報を求職者に対し積極的に提供すること。その際、専修学校、各種学校等教育機関の講座の中には求職者に対する技能付与に資するものもあると思われるので、当該講座の内容についても必要に応じて情報提供に努めること。

3 求人者に対する指導の充実

(1) 適正な求人条件の設定のための助言・指導

求人条件と求職条件を比較して、求人条件の方に問題があり、そのため結合が妨げられている職種に係る求人については、次の点に留意して、充足可能性が高まるような適正な求人条件を設定できるよう助言・指導に努めること。

① 「営業職を希望する求職者は求人選定の際に賃金の水準、安定性を重視する傾向がある。」というような、職種ごとの労働時間、賃金、職務内容等の具体的な求職条件の特徴、傾向をよく把握したうえで指導を行うこと。

② 個別の求職者の紹介に当たつて、求人条件の変更指導が容易にできるよう、求人者が重視している条件(条件変更ができない項目)とそれ以外の条件(条件変更が可能な項目)を把握しておき、条件変更が可能な項目については紹介求職者の求職条件に応じて弾力的な取扱いをするよう求人者を指導すること。例えば、求人者が技能を重視しており、当該技能を有している高齢求職者が存在する場合に、求人者に求人年齢の緩和を指導することが考えられる。

③ 「賃金額は、他の職業と比較して高くはないが、安定した賃金が得られ労働時間の管理も適正に行われている。」というように、求職者に求人を紹介する際に当該求人のセールスポイントを示すことができるようにし、そのため、求人の積極的な特性が捉えられるような求人内容となるよう指導すること。

④ 求人内容が明確に示されていない場合は、事業所や職務内容等のイメージがわかず求職者がその求人を敬遠するといつたことが多く見受けられることから、明確・具体的な、また、求職者に理解できるような求人票作成を指導すること。

(2) 雇用管理指導

① 労働者の受入れ体制に問題がある職種については、第三次産業等雇用管理改善指導、中小企業雇用管理改善指導等を利用した計画的な雇用管理指導を行うこと。

② 特に、第三次産業の事業主に対する指導においては、労務管理マニュアル及び「営業職求人に対する求人充足のための指導資料」を活用すること。なお、近々にパートタイマー雇用管理改善ガイドブックを配布する予定であるので、その活用も図ること。

(3) 職業能力開発制度の活用を前提とした雇用予約の勧奨

受理した求人の条件に適合する技能を有する求職者はいないが、適当な求職者に技能を付与することにより、求人と結合することが見込まれる場合、求人者に対して職業能力開発制度の活用を前提とした雇用予約の勧奨を図ること。

(4) 事業内訓練等の活用の勧奨

求職者の技能不足を企業の採用の後に効果的に補充することにより求職者の就職促進が図られるよう、事業主に対して、事業内訓練の実施の奨励、指導を行うこと。その際、同訓練を実施する場合の生涯能力開発給付金制度等国、都道府県等から提供できる助成、便宜等について周知するとともに、事業内訓練の実施に当たつては、訓練施設と連携しつつ指導・援助を行うこと。

また、職場適応訓練についても、実際の職務に沿つた技能付与ができ、結合促進に資するものであることから、助成制度の周知とともにその活用を奨励すること。

 

第三 職業能力開発制度の活用

1 公共職業訓練施設において行う職業訓練の活用

公共職業訓練施設において行う職業訓練については、求職者の早期再就職に必要な知識および技能を付与するため、その訓練科目や訓練内容を、産業構造の変化、技術革新等に対応して適宜見直すとともに、入校時期の多様化等に努めており、さらに、時代の変化に即応した訓練を弾力的に実施できるよう、今般、職業能力開発促進法が制定したところである。

したがつて、今後においては、職種別ミスマッチに対応するため、次の点に留意して、従来以上に積極的に公共職業訓練の活用を図ることとする。

① 訓練は、様々な科目、種類(養成訓練、能力再開発訓練等)、課程(普通訓練課程、専門訓練課程等)、訓練期間等に分かれているので、その内容をよく把握して求職者に対する的確な情報提供を行うとともに、求職者の適性・経験、労働市場の状況等を総合的に勘案して、最適な訓練が活用できるように努めること。なお、訓練の選定に当たつては、能力再開発適応講習推進員の積極的な協力を得ることにより、的確な選定をすることができるよう努めることとし、職業訓練への受講意欲を喚起する場合等必要に応じ能力再開発適応講習の活用を図ること。

② 雇用保険受給資格者については、職業経験を有し追加的技能の付与により再就職の促進を図ることができる者が多いので、次により訓練の効果的な活用を図り再就職の一層の促進を図ることとする。

イ 受給開始後の初期の職業相談の段階において、知識・技能付与の必要度の把握を行い、訓練の速やかな活用を図ること。

ロ 早期再就職を図るため、受給期間中に訓練が修了できるように配慮すること。

2 委託訓練の活用

(1) 委託訓練は、予測しがたい離転職者の発生や技能の急速な変化に伴う多様な職業能力開発ニーズに、公共職業訓練施設のみで対応することが施設・設備等の面で困難な場合に実施するものであるが、昭和六〇年度から、受講指示対象者以外のいわゆる一般求職者についても安定所長の推薦により同訓練を受講することができることとなるとともに、訓練内容も次のように弾力化される等機動的、弾力的な技能付与が出来るよう改正されることとなつた。

① 訓練職種の部分的な訓練又は各職種の一部分を組み合わせた訓練も実施できること。

② 訓練期間は、三か月を標準とするが必要に応じて五日(訓練時間は一二時間以上)から一年の間で定めることができること。

③ 訓練人員は、一単位概ね一〇人とするが、必要に応じて一人を単位とすることもできること。

(2) ついては、委託訓練を、公共職業訓練施設において行う職業訓練の活用とあいまつて、積極的に活用することとし、効果的な運用を図るために次の点に留意すること。

① 安定所においては、第一におけるミスマッチ等の実態の分析結果を参考にして、委託訓練を活用する必要のある求職者層及びこれらの者に対して付与すべき知識・技能の内容を検討・把握すること。

知識・技能の内容の検討に当たつては、「ワードプロセッサーの操作技能」のように部分的な技能付与のみを必要とする場合もあり、訓練職種にこだわることなく、必要とする知識・技能を正確に把握すること。

② ①において検討・把握した内容に基づき、地域の専修学校及び各種学校の講座等の状況を勘案して安定所として実施することが適当な委託訓練の受講内容、人員、期間等についての構想を作成し、これを関係訓練施設及び職業安定課に提供して、都道府県の職業訓練計画策定に資すること。

③ 委託訓練は、次の場合のように、その活用により確実な就職促進を図ることができると見込まれる場合において、特に積極的活用を図ること。

イ 企業の転入等により当該地域において労働力需要が増加した職種があり、その職種への職業転換を図るために必要な知識・技能を付与しなければならない場合

ロ 技術革新等の影響のために職務内容に変化の生じた職種を希望する求職者に対して、その不足技能を補充することにより就職可能性が著しく改善される場合

④ 一般求職者については、早期就職を望む者が大部分ではあるが、技能付与によりより適格な職業に就職させる必要がある場合もあるので、その場合は委託訓練を積極的に活用することとする。

なお、安定所長の推薦による一般求職者の委託訓練の受講においては、訓練手当、技能習得手当の支給等の措置は行われないので、求職者にとつて長期間の訓練受講が困難な場合もあり、求職者の実態を把握して必要に応じ短期間の訓練の活用を図ること。

 

第四 様務推進体制の確立

1 所内連携体制の確立

職種に係るミスマッチ等の問題に対しては、安定所の職業紹介、職業相談業務を担当する各部門が相互に密接に連携しながら対応していく必要があることから、関係職員で構成する連絡会議を設置し又は既設置の職業紹介関係の会議を利用して、管内の職種別問題点の分析及び職種別の職業紹介の進め方についての検討を行うほか求人部門・求職部門相互の情報交換を行う等随時会議を開催し、業務の円滑な推進を図ること。

その場合、いわゆる求人型安定所のように求人の充足を図ることが重要な課題となつている安定所においては求人部門が中心となるというように、各安定所の職業紹介の実情に応じ最も適当であると思われる部門又は職員が、この業務の連絡、調整に当たること。

また、職業能力開発制度を活用することもミスマッチ対策の一つとして重要であり、そのため、上記部門等において、同制度活用の基本的運営及び他部門との連携調整、さらには訓練施設との連絡業務を行う等して、職業紹介各部門が職業能力開発関係業務を統一的、効果的に行えるような体制の整備を図ること。

2 職業能力開発行政機関との連携体制の確立

職業安定機関は、職業訓練の効果的な活用による職種別ミスマッチの解消を図るため、次により職業能力開発行政機関との密接な連携を図ること。

(1) 都道府県における協力体制

① 職業安定主管課は、管下安定所より、第一のミスマッチ等の実態の分析結果その他職業訓練を活用するために参考となる情報を収集の上、職業訓練計画及び職業訓練受講計画を策定するに当たつて当該情報を十分反映させることとし、そのため、職業能力開発主管課と必要な情報の交換、協議、連絡調整に努めること。

② 職業安定主管課は、安定所が職業訓練を機動的、効果的に活用できるよう、職業能力開発主管課と随時協議しつつ、職業訓練受講に係る計画及びその運用について、安定所間の調整を行うこと。

(2) 安定所と公共職業訓練施設との連携

① 安定所は、訓練施設と、職業訓練計画の策定にあわせ又は必要に応じて連絡会議を開催する等し、求人・求職の動向及び職種に係るミスマッチの状況、求職者の不足技能の状況等職業訓練を活用する上で必要な情報を提供するとともに、当該地域の職業訓練計画に係る方針を協議すること。

② 訓練を受講する求職者に関する職業相談記録等の詳細な情報を入校の都度訓練施設に提供すること。

③ 訓練終了間際の者に対しては、当該訓練施設を通じて求人情報等の提供を積極的に行うこと。

3 ミスマッチ対策についての情報交換

ブロック別会議、県内安定所長会議、所内連絡会議等諸会議において、ミスマッチ等の実態、対応策の実施状況、創意工夫の事例等についての情報交換及び意見交換を行い、以後の業務の推進に資すること。

また、産業構造の変化や技術革新の進展が急激に進行する中で、事業所の実態や事業所内の職務内容の詳細を的確に把握しておくことが重要であることから、安定所においては、求人事業所に関する情報交換や事業所見学等により事業所に関する情報の収集・分析に努めること。

 

別添

続紙