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通達:改正身体障害者雇用促進法の施行について

 

改正身体障害者雇用促進法の施行について

昭和51年10月1日職発第447号

(各都道府県知事あて労働省職業安定局長通達)

 

身体障害者雇用促進法及び中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律(昭和五一年法律第三六号)の施行については、昭和五一年一〇月一日付け労働省発職第一九四号をもつて労働事務次官から貴職あて通達されたところであるが、同法によつて改正された身体障害者雇用促進法の施行に当たつては、同通達によるほか、左記事項に御留意の上、遺憾なきよう特段の御配意をお願いする。

なお、従前の関係通達の整理については別途通知する。

 

第一 基本理念

(一) 法律の目的の改正

今回の改正において、身体障害者の雇用に関する事業主の社会連帯責任の理念を明らかにし、その理念に基づき、事業主の身体障害者雇用義務を強化するとともに、事業主間の身体障害者雇用に伴う経済的負担の調整等を図るための身体障害者雇用納付金制度の創設等を行つたところである。これに伴い、身体障害者雇用促進法(以下「法」という。)は「身体障害者の雇用に関する事業主の責務を定め、身体障害者雇用納付金制度により身体障害者の雇用に伴う経済的負担の調整等を図るとともに、身体障害者がその能力に適合する職業に就くことを促進するための措置を講じ、もつてその職業の安定を図ることを目的とする」こととしたものである(法第一条)。

二 関係者の責務

(一) 事業主の責務

身体障害者の福祉の基本は職業を通じての自立にあり、そのためには労働の意思と能力を有する身体障害者に適当な雇用の場が確保されなければならないが、職場を直接管理しているのは事業主のみであることにかんがみ、労働者を雇用して事業を行う事業主は、社会連帯の理念に基づき身体障害者に適当な雇用の場を与えるべき共同の責務を有するものであることを明らかにし、進んで身体障害者の雇入れに努めなければならないこととしたものであること(法第二条の二)。

この理念は、すべての事業主が平等の割合で身体障害者を雇用すべきものとする身体障害者雇用率に現われており、既に旧法の背景にある理念であるが、今回の改正においてはそれを明記するとともに、雇用義務の強化及び身体障害者雇用納付金制度の創設によつて、その責務の履行を強く求めることとしたものである。

(二) 職業人としての自立への努力

今回の改正において、事業主に対し、身体障害者の雇用義務を強化するとともに、身体障害者雇用納付金制度を創設し、身体障害者の雇用に関する社会連帯責任の履行を強く求めることとしているが、これに応じ、身体障害者自身も、労働を提供して対価を受ける職業人としての自覚を持ち、自ら進んでその能力の開発・向上を図り、職業人として自立するように努めるべきであるという原則を明らかにしたものである(法第二条の三)。

(三) 国及び地方公共団体の責務

身体障害者の雇用の促進について国及び地方公共団体は、広い範囲にわたつて重要な責任を有するところであり、このため、①事業主をはじめ広く社会一般に対する法の趣旨の徹底を図ることによつて、身体障害者の雇用促進について国民の理解と協力を得るよう啓発活動を行うこと、②事業主に対し、身体障害者の雇用に関する各種の援助措置を講ずること、③就職を希望する身体障害者に対し、必要な各種の援助措置を講ずること、④身体障害者について、的確な能力判定、適職判定等を行い、身体障害者の身体的条件に配慮した職業紹介及び職業訓練を実施すること等の施策を総合的かつ効果的に推進するよう努めることとしたものである(法第二条の四)。

 

第二 身体障害者及び重度障害者の範囲

(一) 改正の趣旨及び概要

今回の改正により、法の対象とする身体障害者の範囲を身体障害者福祉法に規定する身体障害者の範囲に一致するように改めた(法第二条第一項及び別表)。

これは、①厚生省の福祉行政と労働省の雇用行政の一体化を図ることにより総合的かつ効果的な身体障害者対策を推進する必要があること、②身体障害者の雇用義務の強化、身体障害者雇用納付金制度の創設等に伴い法的公平性と安定性を確保するため、対象とする身体障害者を明確かつ容易に判定することができるようにする必要があること等を理由とするものである。なお、身体障害者福祉法においては、その主たる対象とする身体障害者を同法第一五条に規定する身体障害者手帳(以下「身体障害者手帳」という。)の交付を受けた者に限つているところであるが、同法別表に掲げる身体上の障害を有する者のすべてが必ずしも身体障害者手帳の交付を受けているものではないこと等にかんがみ、この法の対象となる身体障害者であるか否かの確認は、身体障害者手帳によるほか、法別表に掲げる身体障害を有することの医師の診断書によつて行うものとする。

二 身体障害者の範囲

この法の対象とする身体障害者は、法別表に掲げる身体障害がある者とされているが、これは別紙身体障害者障害程度等級表(以下「障害程度等級表」という。)の一級から六級までに掲げる身体障害がある者及び七級に掲げる身体障害が二以上重複している者をいうものである。これは、身体障害者福祉法施行規則別表第五号「身体障害者障害程度等級表」に掲げる範囲と合致するものである。なお、障害程度等級表七級に該当する障害については、二以上重複する場合に六級とすることとしており、したがつて七級相当の障害を有する者については、七級相当の障害が二以上重複している場合に限つて身体障害者の範囲に含まれることとなる。

また、改正前の身体障害者の範囲も、身体障害者福祉法の身体障害者の範囲を基調として定められていたので、次の(一)及び(二)に述べる部分に係るものを除いては、対象とされる身体障害の範囲については、今回の改正によつて変更されるものではない。

(一) 今回の改正により対象外となる身体障害

イ 例えば、一眼の視力が〇・〇七以下であつて、他眼の視力が〇・六を超えるもの等の視覚障害(従来は一眼の視力が、〇・〇七以下の障害であれば、他眼の視力が正常であつても身体障害者の範囲に含まれたが、今後は、両眼の視力が一定以下であることが条件となり、したがつて、例えば一眼の視力が正常な者は、身体障害者の範囲に含まれないこととなる。)

ロ 一耳の聴力損失が八〇デシベル以上であつて、他耳の聴力損失が四〇デシベル未満のもの(従来は一耳の聴力損失が八〇デシベル以上の障害であれば他耳の聴力が正常であつても身体障害者の範囲に含まれたが、今後は、両耳の聴力損失が条件となり、したがつて一耳の聴力が正常な者は身体障害者の範囲に含まれないこととなる。)

ハ そしやく機能の著しい障害であつて永続するもの

ニ 一上肢のひとさし指を指中手骨関節で欠くもの

ホ 一下肢の第一指を指中足骨関節で欠くもの

ヘ 一下肢のすべての指の機能を喪失したもの

(二) 今回の改正により新たに対象となる身体障害

障害程度等級表の七級に相当する障害が二以上重複するもの(一下肢のすべての指を欠くもの等一部を除く。)

三 身体障害者であることの確認

身体障害者であることの確認は、原則として身体障害者手帳によつて行うものとするが、身体障害者手帳を所持しない者については、次の(一)及び(二)による医師の診断書によつて確認するものとする(別添の「参考身体障害者障害程度等級表判定基準」を参照のこと)。このため、職業安定機関においても、身体障害者はできる限り身体障害者手帳の交付を受けるように指導することが望ましい。なお、事業主及びその雇用する身体障害者に対しては、身体障害者手帳の所持の有無の確認を行うとき、又は医師の診断書を得ようとするときに、当該身体障害者の人権上の問題を引き起こすことのないよう、個人の秘密の保持に留意し、この法の身体障害者全体の雇用の促進を図ろうとする趣旨の周知徹底を行うこと。

また、身体障害者を雇用する事業主に対して、当該身体障害者が勤務する事業所ごとに、当該身体障害者の氏名、性別、年齢、障害の種類及び程度、身体障害者手帳の交付番号等を記載した身体障害者名簿(労働省告示第  号様式第七号(二)を参照のこと。)を備え付けておくよう指導すること。この場合、身体障害者手帳を所持しない者については、左記による医師の診断書(写も可)を当該事業所に備え付けておかなければならない(身体障害者雇用促進法施行規則(以下「則」という。)第四五条)。

(一) 身体障害者福祉法第一五条の規定により都道府県知事の定める医師(以下「福祉法一五条指定医」という。なお、身体に障害がある者が身体障害者手帳の交付を受けようとするときは、この医師の診断書を添えて都道府県知事に申請しなければならないこととされている。)又は労働安全衛生法第一三条に規定する産業医による法別表に掲げる身体障害を有するとの診断書(ただし、心臓、じん臓又は呼吸器の障害については、当分の間、福祉法一五条指定医によるものに限る。)を受けること。

(二) (一)の診断書は、障害の種類及び程度並びに法別表に掲げる障害に該当する旨を記載したものとすること。

四 重度障害者の範囲

今回の改正においては、重度の身体障害を有する者について特に重点を置いてその雇用の促進を図るため、一定範囲の重度障害者を定め、身体障害者雇用率の算定等に当たつてその一人を二人の身体障害者とみなして取り扱うこととする等特別の措置を講ずることとしたところである。

重度障害者の範囲は、則第一条及び別表第一に定めるところであるが、これは障害程度等級表の一級又は二級に該当する障害を有する者及び同表の三級に該当する障害を二以上重複して有することによつて二級に相当する障害を有するとされる者である。

なお、障害程度等級表における異なる等級(例えば三級と四級)に該当する障害を二以上重複して有する者であつて、地方社会福祉審議会の意見を聴いて、その障害が障害程度等級表の一級又は二級に相当するものとされて一級又は二級の身体障害者手帳を交付されたものは、当然重度障害者として取り扱う(則別表第一第五号)。

五 重度障害者であることの確認

重度障害者であることの確認は、前記三と同様、身体障害者手帳を所持する者については当該手帳によるものとし、同手帳を所持しない者については福祉法一五条指定医又は産業医(心臓、じん臓又は呼吸器の障害については、当分の間福祉法一五条指定医に限る。)の診断書によるものとする。

 

第三 身体障害者の雇用に関する国等の義務

一 概要

① 国や地方公共団体は、労働者を使用する面から見れば一般の民間事業主と同じ立場にあるのであつて、法第二条の二(事業主の責務)の規定は国や地方公共団体にも適用され、したがつて民間事業主と同様に、身体障害者を一定の割合で雇用する連帯責任を有するものである。

一方、国や地方公共団体は、国民や住民の福祉の向上を図るべき責務を有するものであり、その一環として身体障害者の雇用を促進すべき重要な任務を有する。したがつて国や地方公共団体は、民間事業主に身体障害者の雇用について協力を求める以上、自ら、率先垂範して身体障害者の雇用を実行すべき立場にあることは当然であり、今回の改正において、国、地方公共団体等の雇用率については民間事業主の身体障害者雇用率以上の率とすべきことを明らかにしたところである。

② その他重度障害者の雇用の促進を図るため、雇用率の算定に当たつては重度障害者一人を二人の身体障害者として計算することとし、また、従来一〇月一日現在で行つてきた身体障害者雇用状況調査について、労働大臣又は都道府県知事に対する六月一日現在の身体障害者の任免状況の通報として法定する等の改正を行つた。

二 国等に係る雇用率

国及び地方公共団体並びに日本専売公社、日本国有鉄道及び日本電信電話公社(以下「国等」という。)に係る雇用率については、国等が一般の民間企業に率先して身体障害者の雇用を促進すべき立場にあることにかんがみ、民間企業に適用される雇用率以上の率を定めるべきものとしたところである(法第一一条第一項)が、今回、民間企業に係る身体障害者雇用率を一・五%と定めたことに伴い、従来の民間企業に係る身体障害者雇用率と国等に係る雇用率との差を維持することとし、国等の非現業部門に係る雇用率は従来の一・七%から一・九%に、現業部門に係る雇用率は従来の一・六%から一・八%にそれぞれ引き上げたところである(身体障害者雇用促進法施行令(以下「令」という。)第二条)。

また、雇用率の算定に当たつては、従来障害の程度の区別なく一律に取り扱つてきたところであるが、今後は特に重度障害者の雇用の促進に重点を置く必要があることにかんがみ、前記第二の四に定める重度障害者である職員は、その一人を二人の身体障害者である職員に相当するものとみなして雇用率を算定することとした(法第一一条第二項及び令第五条)。

三 除外職員

国等に係る除外職員の制度は、国等の職種区分が民間企業のそれよりも明確である等の理由により、従来どおり存続させることとしたが除外職員には、防衛医科大学校の学生及び高等専門学校の教育職員を加えたところである(令第一条及び別表第一)。

四 身体障害者の採用に関する計画

(一) 採用計画の作成

国等の任命権者等は、六月一日現在における身体障害者である職員の任免に関する状況の通報制度(後記五参照)を活用し、各年六月一日現在において雇用率を達成していないことが明らかになつた場合には、下記(二)のロの基準により一定の時期までに身体障害者の採用に関する計画(以下「採用計画」という。)を作成しなければならない(法第一一条第一項)。

なお、改正法施行時において雇用率が未達成である国等の任命権者等は、昭和五二年一月一日までに採用計画を作成するものとする。

(二) 採用計画の始期及び終期

採用計画の始期及び終期については、労働大臣が定める基準によることとしている(令第三条第二項)が、その基準は次のとおりである(労働省告示第一〇七号)。

イ 改正法の施行の際雇用率が未達成である国等の機関についての採用計画の始期は、昭和五二年一月一日とし、その終期は、同日から起算して三年、二年又は一年を経過した日とする。

この終期については、雇用率を達成するために採用しなければならない身体障害者数、採用を予定する職員数とそのうちの身体障害者数の割合等の状況を総合的に勘案し、合理的な採用計画となるように定めるものとする。

ロ イの機関以外の機関については、任免状況の通報の基礎となる六月一日現在における調査で雇用率が未達成である場合に、当該機関の採用計画の始期をその翌日から起算して七カ月以内の日とし、その終期を、始期から起算して一年を経過した日とする。

なお、採用計画の始期及び終期の基準を改正したのは、国等における採用の多くは四月に行われることにかんがみ、四月を採用計画期間の中に含むこととし、できる限り実効ある計画を作成しようとするためである。

(三) 採用計画の協議及び通報

① 今回の改正により、次の特別地方公共団体の任命権者等に係る採用計画の協議及び通報は、従来の市町村についての取扱いと同様都道府県知事に対して行うべきことを明らかにした(令第四条第二項並びに法第一二条第一項及び令第七条)。

イ 特別区

ロ 地方公共団体の組合(都道府県が加入する組合を除く。)

ハ 財産区

ニ 地方開発事業団(都道府県又は都道府県及び市町村が設ける地方開発事業団を除く。)

② 採用計画の実施状況の通報は、従来、毎年三月三一日現在について行うこととしていたが、おおむね採用計画期間の中途における状況をは握し、当該計画の適正な実施を期すため、今回の改正により、毎年六月一日現在における実施状況について労働大臣の定める様式(労働省告示第一一二号様式第二号)により通報することに改めた(令第六条第二項)。また、この通報は、毎年七月一五日までに行うよう指導するものとする。

③ 採用計画の終期における実施状況については、当該計画の終期後四五日以内にその状況を通報するよう指導するものする。

五 身体障害者である職員の任免に関する状況の通報

① 労働大臣は、この法の施行を担当する官庁であるから、国等における身体障害者の雇用についても、この法の実施状況を常には握しておく必要があり、特に雇用率未達成の任命権者等が生じないよう十分留意する必要があるので、任命権者等は、毎年一回その機関における身体障害者である職員の数その他身体障害者である職員の任免に関する状況を労働大臣に通報しなければならないこととした(法第一三条及び令第八条)。

なお、市町村及び前記四の(三)の(1)の特別地方公共団体に係る通報については、都道府県知事に機関委任している。

② 任免状況の通報は、毎年六月一日現在における職員の総数とそのうちの身体障害者の数、重度障害者である職員の数、除外職員の状況、障害の種類別身体障害者数等について、労働大臣の定める様式(労働省告示第一一二号様式第三号)により行うものである。また、この通報は、毎年七月一五日までに行うよう指導するものとする。

③ 通報の提出先は、採用計画の通報と同様に、国等の機関の区分に応じ、それぞれ労働大臣又は都道府県知事とする。

 

第四 一般事業主の雇用義務

一 趣旨及び概要

① 事業主は、一定の雇用関係の変動がある場合には、その常時雇用する身体障害者の数が、その常時雇用する労働者の総数(除外率に相当する数を除いた数)に身体障害者雇用率(以下「雇用率」という。)を乗じて得た数以上であるようにしなければならないこととし、従来の努力義務を今回法的義務に強化した(法第一四条第一項)。

② このほか、一般事業主の雇用義務に関し、次の四点について改正を行つたところである。

(一) 身体障害者の雇用義務が具体的に生ずる場合を、現行の労働者の雇入れのときのほか、労働者を解雇するときにも拡大したこと。

(二) 雇用率の適用単位を事業所単位から企業単位に改めたこと。

(三) 除外労働者制度について、現行の職種によつて個々の労働者ごとに判定する方式から、業種別の除外率による方式に改めたこと。

(四) 雇用率の算定に当たつて、重度障害者は、その一人をもつて、二人の身体障害者とみなす特例措置を設けたこと。

二 雇用義務の対象となる労働者の範囲

雇用義務の対象となるのは「常時雇用」する「労働者」に限定されており、この解釈については基本的には従来どおりであるが、なお以下の労働者の取扱いに留意すること。

(一) 出向中の労働者

出向中の労働者は、原則として、その者が生計を維持するに必要な主たる賃金を受ける事業主の労働者として取り扱うこととする。

なお、いずれの事業主において労働者として取り扱うかは、雇用保険の取扱いにおいていずれの事業主の被保険者としているかによつて判断することとして差し支えない。

(二) 海外勤務労働者

日本国の領域外にある支社、支店、出張所等に勤務している労働者は、この労働者が日本国内の事業所から派遣されている場合に限り、その事業主の雇用する労働者として、雇用義務の算定の基礎となる労働者総数に算入する。したがつて、現地で採用している労働者は、労働者総数に算入しない。

(三) 生命保険会社の外務員等

生命保険会社の外務員、損害保険会社の外務員、証券会社の外務員等については、雇用関係が明確である場合は、労働者として取り扱う。雇用関係の有無については、職務内容等により実態的に判断されるべきものであるが、会社への出社義務があり、固定給の支給があり、また会社に対する損害や成績不良につき一般社員と同様に制裁が課される等の事実がある場合には、雇用関係があると判断される。なお、この判断基準は、雇用保険の被保険者の判断基準と同一に解するので、雇用保険の被保険者として取り扱われる者のうち、この法の「常用」労働者に該当するものは、この法の労働者として取り扱うこととする。

(四) パートタイム労働者

パートタイム労働者については、その者の労働時間、賃金その他の労働条件が就業規則において明確に定められている場合であつて、一日の所定労働時間が、おおむね、六時間以上であること等の一定の要件に該当する、いわゆる「常用パート」に限り、労働者として取り扱うこととする。

なお、この判断基準も、雇用保険の被保険者の判断基準と同一に解するものであるので、雇用保険の被保険者として取り扱われる者のうち「常用」労働者に該当するものは、この法の労働者の範囲に含めることとする。

三 事業主

(一) 雇用率の適用単位の改正

民間事業主に対する雇用率の適用は、従来事業所を単位としていたが、これを改め、事業主が有するすべての事業所を総合して、つまり企業全体を一の単位として雇用率を適用することとした(法第一四条第一項)。

これは、現行の事業所単位の適用方式には、①大企業であつても比較的小規模の事業所を多数有する形態の企業である場合には、その労働者総数に比し雇用義務身体障害者数はごく少数となること、②一の企業内における各事業所の業務の実態に応じて弾力的に身体障害者を配置することを妨げている面が見られること等の問題があり、これを解決するため、企業全体を一つの単位として雇用率を適用する方式に改めることとしたものである。

(二) 事業主の範囲

①「事業主」とは、常時雇用される労働者を雇用する事業主(国等を除く。)をいい、個人企業にあつてはその企業主個人、会社その他の法人組織を有するものにあつてはその法人そのものをいう。

② 国等については、旧法と同様の別個の体系により雇用義務が課せられているので、ここでいう「事業主」には国等は含まれないが、それ以外の事業主はすべて含まれることとなる。なお、身体障害者雇用納付金制度については、一定の特殊法人は国等と同様に取り扱われ、制度の対象からは除外されているが、雇用義務関係規定の適用については、納付金制度の対象とならない一定の特殊法人も、一般事業主として取り扱われることとなつているので、この点に十分留意する必要がある。

(三) 子会社の特例的取扱い

① 身体障害者の雇用に関する法律上の具体的義務は、個々の事業主ごとに課せられるので、例えば、いわゆる親会社と子会社との関係にある企業であつても法人格が異なれば当然別々に取り扱う必要がある。

しかし、いわゆる親会社が身体障害者の雇用に特別の配慮をした工場等を別の法人であるいわゆる子会社として設立し、そこに身体障害者を集中的に雇用する例などが見られるが、このような場合に、一定の要件の下において、子会社を親会社と同一の事業主体と擬制し、そこに雇用率制度を適用することとすれば、当該会社における身体障害者の雇用の推進のためにかなりの効果があるものと期待され、また、身体障害者の雇用に特別の配慮がなされた工場であれば、身体障害者自身にとつても、その有する能力を最大限に発揮する機会が増大することとなり、この法の目的にも合致するものである。

② 以上の趣旨にかんがみ、下記の要件のすべてを充たす子会社に限つて特例的に雇用率制度及び身体障害者雇用納付金制度の適用上同一の事業主とみなすものとする。

イ その出資金の全部又は大部分が親会社の出資によるものであること。

ロ 常用の身体障害者を多数雇用していること。

ハ 身体障害者のために作業施設や作業設備を改善し、かつ、身体障害者専任指導員を設置する等身体障害者のためのきめ細かな雇用管理を行い、身体障害者の雇用に特別の配慮を行つているものであること。

上記により、子会社について特例的取扱いを受けようとする事業主は、親会社の主たる事務所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に申請書を提出し、当該公共職業安定所長の承認を受けなければならない。

なお、申請の手続及び様式、公共職業安定所における処理体制等については、別途通達するところによる。

四 雇用義務の生ずる場合

(一) 雇用義務の生ずる場合の拡大

身体障害者の雇用義務が具体的に生ずることとなる場合を、従来の労働者の雇入れのときのほかに、労働者を解雇(労働者の責めに帰すべき理由による解雇を除く。)する場合にも拡大し、原則として事業主は、常態として雇用率を達成、維持すべき義務を有すべきこととした(法第一四条第一項)。労働者を解雇する際にも雇用義務が生ずることとしたことに伴い、雇用率未達成の事業主又はその身体障害者を解雇することによつて雇用率未達成となる事業主は、身体障害者を解雇することによつて法違反の状態となるものであることに留意し、十分事業主を指導する必要がある。

(二) 労働者の責めに帰すべき理由による解雇

労働者を解雇する場合のうち、労働者の責めに帰すべき理由により解雇する場合は、その解雇によつて雇用率未達成となることとなつても、その責任を事業主に求めることは無理であるので、雇用義務が具体的に生ずることとなる場合から除くこととしたものである。

なお、「労働者の責めに帰すべき理由」とは、労働者の故意、過失又はこれと同一視すべき理由であるが、労働者の地位、職責、勤務年数、勤務状況等を考慮して総合的に判断すべきものである。

五 除外率制度

(一) 除外率制度の趣旨及び概要

① すべての事業主が平等の割合で身体障害者を雇用するという社会連帯の理念に立てば、個々の事業主が雇用すべき身体障害者の数は、原則として各事業主が雇用する労働者の総数に雇用率を乗じて算定すべきものと考え得る。

しかし、その職務の性格から一律に雇用率を適用し雇用義務を定めることにはなじまない職種があるため、旧法においては「労働者」とは、「坑内労働者、船員その他労働省令で定める労働者」を除外した労働者をいうものとして坑内労働者等を雇用率算定の対象としないこととしていたところであり、この除外すべき労働者は個々に判断することになつていたが、この個別判定方式には、我が国の民間企業では一般に職種区分が必ずしも明確でない等のため、運営上問題がみられるところである。

② 本来除外労働者制度は、当該職種には身体障害者が全く就き得ないということではなく、一律に雇用率をもつて雇用を義務づけることが困難な面があり、また、それらの職種がある程度多くなるとそれ以外の職種での身体障害者雇用の負担が重くなることを考慮して、その人数を除外して事業主の雇用すべき身体障害者数を定めようとする趣旨によるものである。この趣旨により、旧法施行時の昭和三五年一一月二八日の次官会議においては、「除外職種についても、特別の支障のない限り、適当と認められる身体障害者を採用するよう」申合わせが行われているところである。つまり、除外労働者制度は、社会連帯による平等負担の原則と実際の雇用における難易との調和を図るためのものであつて、除外労働者数は、必ずしも個別労働者ごとに判定して算出する必要はない。

③ そこで、新法においては、除外労働者数を、個別労働者ごとに判断して算出する方法を改め、あらかじめ、「身体障害者が就業することが困難であると認められる職種」が相当の割合を占める業種ごとに平均的な除外率を定め、その率によつて除外すべき労働者数を算定し、雇用すべき身体障害者数を明確に算定できるようにしたものである(法第一四条第一項)。

(二) 除外率設定業種及び除外率

除外率設定業種及び当該業種に係る除外率は、則別表第二に掲げるとおりであるが、これは次の基準により定めたものである。

イ 除外率設定の基礎となる「身体障害者が就業することが困難であると認められる職種」とは、当面、原則として坑内労働者、船員及び今回の改正前の身体障害者雇用促進法施行規則別表に掲げる労働者が従事する職種(以下「除外職種」という。)とすること。

ロ 業種の分類は、原則として、日本標準産業分類(昭和二六年統計委員会告示第六号。以下「産業分類」という。)の中分類によるものとすること。ただし、当該中分類の中に、除外職種の労働者の割合が相当程度高い小分類が含まれるときは、当該小分類を特掲する等産業の実態に即し大きな不均衡が生じないよう配慮すること。

ハ 除外率設定業種は、除外職種の労働者の割合が一〇%以上である業種とするものとし、当該割合を基準として、五%ごとの区分で除外率を定めるものとすること。

(三) 除外率の適用単位

① 除外率は原則として事業所ごとに適用し、それぞれの事業所において除外すべき労働者数を算出してこれを総計した労働者数を当該事業主の総常用労働者数から控除した数を法定雇用身体障害者数(事業主がこの法により雇用していなければならないとされる身体障害者の数をいう。以下同じ。)の算定の基礎とするものである。

なお、各事業所ごとの除外すべき労働者数は、当該事業所の常用労働者数に当該事業所の業種について定められた除外率を乗じて得た数(一人未満の端数があるときは、切り捨てる。)とする(法第一四条第一項)。

②事業所とは、本店、支店、工場、鉱山、事務所等のごとく、一つの経営組織として独立性をもつたもの、つまり、一定の場所において一定の組織のもとに有機的に相関連して行われる一体的な経営活動が行われる施設又は場所をいう。

したがつて、一の事業所であるか否かは、通常、場所的見地から決定することができ、同一場所にあるものは原則として分割することなく一の事業所とし、場所的に分離されているものは原則として別個の事業所として取り扱うこととする。

(一)の事業所として取り扱うべきか否かは、通常次の見地から判断するものとする。

イ 場所的に他の事業所から独立しているかどうか。

ロ 組織的に一つの単位体をなし、経理、人事若しくは経営(業務)上の指揮監督又は作業工程において独立性があるかどうか。

ハ 施設として相当期間継続性を有するかどうか。

ただし、場所的に分散しているものであつても、出張所、支所等で、規模が小さく、その上部機関等との組織的関連ないし事務能力からみて一の事業所という程度の独立性がないものについては、直近上位の組織に包括して全体を一の事業所として取り扱う。

③ 船舶その他の船(自力で運行する能力をもたないしゆんせつ船等を含む。以下「船舶等」という。)は、一の事業所として取扱う。

したがつて、漁業、水産養殖業、水運業等の事業を行う事業主に属する船舶等は、当該事業主に属する他の事業所と独立した一の事業所として取り扱うものとする。

なお、船舶等の事業所の労働者とは、当該船舶等によつて常時船舶の運行、漁労、水産加工等の業務を行う者をいい、船員法(昭和二二年法律第一〇〇号)第二条第二項に規定する予備船員を含むものである。

(四) 除外率設定業種の業種区分

除外率設定業種は、原則として産業分類により区分される。しかし、「船員等による船舶運航等の事業」は独立の分類によるものであり、船舶等により旅客又は貨物の運送を行う事業、船舶等により海面等において水産動植物を採捕する事業、船舶等により海面等において水産動植物を養殖する事業等船舶等によつて行われるすべての事業をいうものである。ただし、港湾において行われる船内荷役及び沿岸荷役の事業はこれに含まれない。

なお、これ以外の則別表第二の備考欄に掲げる業種、例えば「非鉄金属製造業(非鉄金属第一次製錬・精製業を除く。)」については、産業分類中分類の非鉄金属製造業から小分類の非鉄金属第一次製錬・精製業を除いたものである。

(五) 業種の判定

事業所の業種の判定については、次の点に留意されたい。

イ 一の事業所において二以上の業種を行う場合の判定

(一)の事業所において二以上の業種にわたる事業が行われている場合には、当該事業に従事する労働者の数が最も多い事業を当該事業所の事業とすること。ただし、労働者の数によつて判定することが困難な場合は、当該事業に帰属する過去一年間の総収入額又は総販売額の最も多い事業を当該事業所の事業とする。

ロ 本社等の業種の判定

いわゆる本社、支店等の事業所であつて、企画、立案、会計、管理、契約その他これに類する事務的な事業を主として行うものは、除外率設定業種に属する事業を行う事業所ではない。したがつて、企業全体とすれば除外率設定業種に属する事業を行つていても、主としてこれらの管理的な事務の事業が行われる本社等の除外率は零として取り扱うこととする。

なお、一の事業所において、これらの事務的事業と除外率設定業種に属する事業が行われている場合の業種の判定は前記イと同様に行うものとする。

六 身体障害者雇用率

(一) 雇用率の設定基準

雇用率の定め方については、旧法では特段の規定を設けていなかつたが、今回の改正に当たつては、雇用義務の強化及び納付金制度の創設に伴い、雇用率の設定の基準を法律で明記したところである。雇用率は、「すべて事業主は、社会連帯の理念に基づき身体障害者の雇用に関して共同の責務を負う」という基本理念に基づき、身体障害者に健常者と同水準の雇用を保障するため、事業主が常用労働者数に応じて平等に負担すべき割合とすることが妥当であるので、全常用労働者(失業者を含む)数に占める全常用身体障害者(失業者を含む。)数の比率を目安として定めることとした(法第一四条第二項)。

(二) 今回定められた新しい雇用率は、次のとおりである(令第九条)。

イ 純粋の民間の事業主 一〇〇分の一・五

(国等の機関及び下記ロが適用される法人以外の事業主)

ロ 一定の特殊法人 一〇〇分の一・八

(令別表第二に掲げる特殊法人)

なお、一〇〇分の一・八が適用される特殊法人は、国や地方公共団体によつて、国や地方公共団体が行うべき事業を代わつて行うために設立され、その財政的基盤も国や地方公共団体の財政と一体的となつているものであるから、国等が率先して身体障害者を雇用すべきこととしたのと同様の趣旨から、その雇用率を国等に準ずることとしたものである。

七 雇用率の算定に係る重度障害者に関する特例

軽・中度の身体障害者については、就職援護対策や事業主に対する行政指導の強化もあつて、その雇用状況にも相当の改善がみられるところであるが、重度障害者については、その就業率や雇用者比率が軽・中度の身体障害者の状況に比し、かなり低いなどその雇用の改善は立ち遅れている。

そこで、今後は特に重度障害者の雇用の促進に重点を置いていく必要があることにかんがみ、今回の改正において、雇用率の算定に当たつては、重度障害者は、その一人をもつて、二人の身体障害者に相当するものとみなして雇用率を算定することとした。なお、重度障害者のダブルカウント方式は、雇用率の算定の場合のほか、納付金、調整金及び報奨金の額の決定の場合にも適用があるものである。

八 身体障害者の雇用に関する状況の報告

(一) 趣旨及び概要

この法の適切な施行に資するため、一定規模以上の事業主は、毎年六月一日現在における身体障害者の雇用に関する状況を翌月一五日までに、労働大臣の定める様式により、その主たる事務所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に報告することを義務づけている(法第一四条第四項、則第七条及び則第八条)。

(二) 報告義務者

報告義務のある事業主は、その雇用する常用労働者の数から除外率により除外すべき労働者数を控除した数が六七人(令別表第二に掲げる法人にあつては、五六人)以上の事業主であるが、これは法定雇用身体障害者数が一人以上である事業主、つまり、一人以上の身体障害者を雇用すべき事業主である(則第七条)。

(三) 報告の内容及び手続

身体障害者の雇用に関する状況の報告は、毎年六月一日現在における状況について労働大臣の定める様式(労働省告示第一一二号様式第六号)により行うものとするが、報告事項は、報告義務のある事業主のすべての事業所の常用雇用労働者の総数、雇用率の算定の基礎となる労働者数、身体障害者である常用労働者数及びそのうちの重度障害者の数等について、企業全体の総括的状況及び各事業所別の内訳状況である。

この報告は、毎年七月一五日までに報告義務事業主の主たる事務所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に行うものとする(則第八条)。

なお、雇用率の算定が企業単位に行われることとなつても、公共職業安定所においてはその管内の主な事業所の身体障害者雇用状況をは握し、各事業所に対しても適切な行政指導を加え、また、紹介あつせんする必要があるので、常用労働者数が一〇〇人以上(除外率による控除はしない。)規模の事業所に対しては、上記報告手続、報告様式に準じて企業全体及び当該事業所の身体障害者の雇用状況の報告を行うよう指導するものとする。

九 一般事業主の身体障害者の雇入れに関する計画

(一) 趣旨及び概要

今回の改正により、身体障害者の雇用義務は、努力義務から法的義務に強化されたところであるが、雇用率が未達成である事業主に対して、身体障害者の雇入れに関する計画(以下「雇入れ計画」という。)の作成を命ずる制度はこれを強化して存続することとした。これは、雇用義務が強化されても現実には雇用率が未達成である事業主が生ずることは当然予想されるところであり、これに対して行政措置として雇入れ計画の作成を命ずることによつて法の目的達成の完全を期そうとするものである。

この雇入れ計画作成命令制度の改正点は、雇入れ計画の作成を命ずる場合の要件を拡大したこと、雇入れ計画について適正な実施の勧告を加えたこと、雇入れ計画の作成命令に応じて計画を作成しない事業主に対して罰則を設けたこと等である。

(二) 雇入れ計画の作成命令

雇入れ計画の作成を命ずる者は、従来の公共職業安定所長から労働大臣に改められたが、実際には、この権限は命令の対象となる事業主の主たる事務所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に委任することとしている(則第四六条)。

なお、労働大臣が自ら命ずることがあることは当然である。

また、雇入れ計画の作成命令に違反して計画を作成しなかつた事業主については、新たに罰則(一〇万円以下の罰金)を設けた(法第八五条第一項第二号)。

(三) 雇入れ計画の内容

① 雇入れ計画の始期は、従来どおり、作成を命ぜられた後できるだけ早い時期(遅くとも三カ月以内)とする。また、雇入れ計画の期間は、国等に係る採用計画の始期及び終期の基準を考慮して、当面最大限三カ年とするが、法定雇用身体障害者数に不足する身体障害者の数、雇入れを予定する労働者の数等を考慮して実効ある計画となるような期間を定めるものとする。

② 雇入れ計画は、少なくとも次の事項を含んだものでなければならない(則第九条第一項)が、これらの事項について、身体障害者を雇い入れる予定のある事業所ごとにその内訳が明らかになるようなものにする必要がある。

イ 計画の始期及び終期

ロ 雇入れを予定する常用労働者の数及びそのうちの身体障害者の数

ハ 常用の身体障害者の雇入れを予定する事業所の名称及び所在地並びに当該事業所ごとの雇入れを予定する常用労働者の数及びそのうちの身体障害者の数

ニ 計画の終期において見込まれる常用労働者の総数及びそのうちの身体障害者の数

(四) 雇入れ計画の提出

事業主は、雇入れ計画を作成したときは、遅滞なく、当該事業主の主たる事務所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出しなければならない(則第九条第二項)。

なお、雇入れ計画の作成命令を発する場合、当該作成命令の附款で、雇入れ計画において身体障害者を雇い入れることを予定する事業所については、当該事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に対しても、当該事業所に係る雇入れ計画を提出すべきことを命ずるものとする。

(五) 雇入れ計画の変更の勧告及び適正実施の勧告

雇入れ計画は、その内容等については法令で定めるところにより一定の制約を受けるが、その基本は、事業主が自主的に決定し、自ら実行すべきものである。すなわち、雇入れ計画はいわば事業主が自ら設定した法規範的な意味をもつものである。

しかしながら、この雇入れ計画がこの法令の意図するところからみて著しく不適当な場合には、当該作成命令を発した公共職業安定所長はその変更を勧告し、又は適正な実施を勧告することができる(法第一五条第四項及び第五項)。特に、この雇入れ計画の適正な実施が身体障害者の雇用を促進するために重要であることにかんがみ、今回の改正により、変更の勧告に加えて、適正な実施について勧告し得るようにしたものである。

一〇 一般事業主についての公表

今回の改正で事業主の身体障害者雇用義務の履行を確保するため、前記九のとおり雇入れ計画の作成命令制度を強化したところであるが、事業主がこの雇入れ計画の変更の勧告又は適正な実施の勧告に正当な理由なく従わない場合には、身体障害者の雇用を確保することができなくなるので、その旨を公表するという社会的制裁を加えることによつて事業主に対し雇用義務の履行を求めることとし、これを法定した(法第一六条)。

すなわち、身体障害者の雇用の場を確保するのは、事業主の社会連帯責任であり、事業主はこれに基づき自らの責任分担を果たすよう自主的な努力を行わなければならないところであるが、その努力を怠り、社会連帯の趣旨に反する場合には、社会的非難が加えられてしかるべきである。

しかし、公表はあくまで事業主の自主的な努力によつて着実に身体障害者の雇用を進めるよう求めるものであるので、雇用率未達成といつた事由のみでは直に公表する制度とはしなかつたものである。

なお、この公表を行うのは労働大臣である。

 

第五 身体障害者雇用納付金制度

一 身体障害者雇用納付金制度の趣旨

① 身体障害者を雇用するには、作業施設や作業設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理等が必要とされることが多く、健常者の雇用に比べて一定の経済的負担を伴うことは否定できない。身体障害者雇用納付金制度は、このような身体障害者の雇用に伴う経済的負担に着目し、経済的側面から事業主の身体障害者の雇用に関する社会連帯責任の履行を求めようとする制度である。

すなわち、身体障害者雇用納付金(以下「納付金」という。)は、第一に雇用率を超えて身体障害者を雇用する事業主に対して、身体障害者雇用調整金を支給することにより、事業主間の身体障害者の雇用に伴う経済的負担の平等化のための調整を図り、もつて身体障害者の雇用に関する事業主の共同連帯責任の円滑な実現を目的とするものである。第二に、身体障害者を雇い入れる事業主が、作業施設や作業設備の設置等について一時に多額の費用の負担を余儀なくされる場合に、その費用について助成金を支給することにより、身体障害者の雇用を容易にし、もつて全体としての身体障害者の雇用水準を引き上げようとするものである。

② 納付金は、事業主の法定雇用身体障害者数に応じて納付すべきこととするが、実際に身体障害者を雇用している場合には、その雇用する身体障害者の数に応じて減額することとし、結果的には雇用率未達成の事業主のみから徴収されることとなるが、納付金は前述の趣旨から明らかなように、雇用率未達成であることに着目して科される罰金的な性格を有するものではなく、また、納付金の納付をもつて雇用義務を免がれるものでもない。すなわち、納付金は、一種の雇用税的色彩をもつた事業主からの拠出金である。

したがつて、納付金は、法人税法上は各事業年度の所得の金額の計算上納付金申告書の提出の日又は納入の告知があつた日を含む事業年度の損金の額に算入され、所得税法上も同様に事業所得の金額の計算上必要経費に算入されることとなる。

二 納付金制度の概要

徴収した納付金の活用による事業(以下「納付金関係業務」という。)は、雇用促進事業団(以下「事業団」という。)が行うものであり、その詳細は事業団の業務方法書等で規定されるものであるが、その概要は次のとおりである。

なお、納付金関係業務のうち一部の業務を法第六章の規定により設立が予定されている身体障害者雇用促進協会(以下第五において「認可法人」という。)及び都道府県心身障害者雇用促進協会(以下「地方協会」という。)に委託することを予定している。

(一) 納付金の徴収

イ 納付金の徴収要件及び額

① 事業団は、毎年度、事業主から納付金を徴収するものであり、事業主は納付金を納付する義務を負うものである(法第二六条)。

事業主が納付すべき納付金の額は、各年度につき、調整基礎額(三〇、〇〇〇円)に、当該年度に属する各月(当該年度の中途に事業を開始し、又は廃止した事業主にあつては、当該事業を開始した日の属する月の翌月以後の各月又は当該事業を廃止した日の属する月の前月以前の各月に限る。以下同じ。)ごとの初日(当該月に属する賃金締切日(賃金締切日が当該月内に二以上あるときは、当該月の初日に最も近い賃金締切日)として差し支えない。以下同じ。)における法定雇用身体障害者数の合計数を乗じて得た額である(法第二七条、法附則第三条及び令第一七条)。すなわち、すべての事業主は、身体障害者の雇用に関する経済的負担を平等に負担するため、納付金を納付する義務を負うものである。

ただし、身体障害者である労働者を雇用している事業主については、現に身体障害者を雇用することに伴う経済的負担を負つているので、前記の納付すべき納付金の額から、調整基礎額に当該年度に属する各月ごとの初日における常用の身体障害者の数の年度間合計数を乗じて得た額を減ずるものとし、また、その額が前記の納付すべき納付金の額以上であるときは、納付金は徴収しないものであること(法第二八条第一項及び第二項)。

したがつて、納付金は、各年度につき、当該年度に属する各月ごとの初日における常用の身体障害者の数の年度間合計数が、当該年度に属する各月ごとの初日における当該事業主に係る法定雇用身体障害者数の年度間合計数を下回る事業主から、その下回る数一人につき三〇、〇〇〇円を徴収するものであり、雇用率を達成している事業主からは徴収しないものである。

② 前記(1)の身体障害者の数の算定に当たつては、重度障害者は、その一人をもつて、二人の身体障害者に相当するものとみなし(法第二八条第三項)、また、当該事業主が雇用する則第四七条に規定する精神薄弱者は、身体障害者とみなすものである(法附則第四条第三項)。

③ 前記(1)にかかわらず、当分の間、常時三〇〇人以下の常用労働者を雇用する事業主からは、納付金は徴収しない(法附則第二条第一項)。

なお、「常時三〇〇人以下」とは、常態として三〇〇人を超えない実態にあることをいうものである。

④ 国等の機関及び令別表第二に掲げる特殊法人は、その身体障害者の雇用に伴う経済的負担を民間企業との間で調整することになじまないので、納付金制度の対象としないこととした(法第一四条第一項及び第一八条第一項)。

ロ 納付金の納付方法等

① 事業主は、各年度ごとに、身体障害者雇用納付金申告書(労働省告示第一一二号様式第九号。以下「納付金申告書」という。)に身体障害者雇用状況等報告書(Ⅰ)及び(Ⅱ)(労働省告示第一一二号様式第八号)を添えて、翌年度の四月一日から五月一五日まで(ただし、昭和五一年度分(昭和五一年一〇月一日から同五二年三月三一日までに係るものをいう。以下同じ。)については昭和五二年一〇月一日から同年一一月一四日まで)に事業団に提出するとともに、当該申告に係る額の納付金を同日までに、事業団に納付しなければならない(法第二九条第一項、第二項及び第三項)。

なお、年度の中途に事業を廃止した事業主は、その廃止した日から四五日以内に、納付金申告書を提出するとともに納付金を納付しなければならない(法第二九条第一項)。

② 前記(1)の納付金申告書の提出は、地方協会及び認可法人を経由して行うことができることとする予定である。

③ 前記(1)の納付金の納付は、金融機関に設けられた事業団の口座に払い込むことによつて行うことができることとする予定である。

④ 前記(1)の申告書は、納付すべき納付金の額が零となる事業主も提出しなければならないものである。したがつて、身体障害者雇用調整金の支給を受けようとする事業主は、支給の申請を納付金申告書の提出と同時に行うことができるものである。

⑤ 納付すべき納付金の額が一〇〇万円以上である事業主は、納付金申告書を提出する際に延納の申請をした場合には、その納付金を四月一日から七月三一日まで、八月一日から一一月三〇日まで及び一二月一日から翌年三月三一日までの三期に分けて納付することができるものである。

この場合における各期に納付する額は、納付金の額を三で除して得た額とし、最初の期分の納付金については五月一五日までに、その後の各期分の納付金については、それぞれ前の期の末日までに納付しなければならない(法第三〇条及び則第二九条)。

ただし、昭和五一年度分の納付金の延納は、納付すべき納付金の額が五〇万円以上の事業主が延納の申請をした場合に、昭和五二年一〇月一日から同年一二月三一日まで及び昭和五三年一月一日から同年三月三一日までの二期分に分けて行うことができる。この場合における各期に納付する額は、納付金の額を二で除して得た額とし、最初の期分の納付金については昭和五二年一一月一四日までに、次の期分の納付金については同年一二月三一日までに納付しなければならない(則附則第六条)。

ハ 追徴金、延滞金等

① 事業団は、事業主が申告書の提出期限までに申告書を提出しないとき、又は申告書の記載に誤りがあると認めたときは、納付金の額を決定し、事業主に納入を告知するとともに、原則として、その納付すべき額(その額に一、〇〇〇円未満の端数があるときは、その端数は切り捨てる。)に一〇〇分の一〇を乗じて得た額の追徴金を徴収するものである。

この場合において、納入の告知を受けた事業主は、当該納入の告知に係る納付金の額をその通知を受けた日から一五日以内に事業団に納付しなければならないものである(法第二九条第四項及び第五項並びに法第三一条)。

② 納付金その他の徴収金を納付しない者があるときは、事業団は、期限を指定して督促しなければならないものである(法第三二条第一項)。

③ 前記(2)の督促を受けた者がその指定の期限までに納付金その他の徴収金を完納しないときは、事業団は、納付義務者の住所地又はその財産の所在地の市町村に対して、その徴収を請求することができ、この請求を受けた市町村は、地方税の滞納処分の例により、滞納処分ができる(法第三二条第三項及び第四項)。

④ 市町村が前記(3)の請求を受けた日から一月以内に滞納処分に着手せず、又は三月以内にこれを結了しないときは、事業団は、労働大臣の認可を受けて、国税滞納処分の例により、滞納処分をすることができる。すなわち、事業団は、最終的には、納付金その他の徴収金を滞納している者に対し、その財産を差し押え、これを強制的に換価することにより、強制的に徴収する権限を有するものである(法第三二条第五項)。

⑤ 前記(2)の督促をしたときは、事業団は、その督促に係る納付金の額につき年一四・五%の割合で延滞金を徴収するものである(法第三三条)。

(二) 身体障害者雇用調整金の支給

イ 支給要件及び支給額

① 身体障害者雇用調整金(以下「調整金」という。)は、雇用率を超えて身体障害者を雇用する事業主の経済的負担を軽減し、身体障害者の雇用に伴う経済的負担の調整を図るために支給するものである。

このため、調整金は、各年度ごとに、当該年度に属する各月ごとの初日における常用の身体障害者の数の年度間合計数が当該年度に属する各月ごとの初日における当該事業主に係る法定雇用身体障害者数の年度間合計数を超える事業主(すなわち、調整基礎額に各月ごとの初日におけるその雇用する身体障害者である常用労働者の数の合計数を乗じて得た額が調整基礎額に各月ごとの初日における法定雇用身体障害者数の合計数を乗じて得た額を超える事業主)に対して、当該超える数(すなわち、その差額を調整基礎額で除して得た数)に単位調整額(一四、〇〇〇円)を乗じて得た額を支給するものである(法第一九条第一項及び令第一五条)。

なお、国等の機関及び令別表第二に掲げる法人は納付金制度の対象としないので調整金は支給しない。

② 前記(1)の身体障害者の数の算定に当たつては、重度障害者は、その一人をもつて、二人の身体障害者に相当するものとみなすものである(法第一九条第三項)。

③ 前記(1)にかかわらず、常時三〇〇人以下の常用労働者を雇用する事業主については、当分の間、納付金を徴収しないこととしたので、調整金も支給しないものである。

この場合において、「常時三〇〇人以下」の意義については、納付金の場合と同様である。

ロ 支給手続、支給時期等

① 調整金の支給を受けようとする事業主は、各年度ごとに、翌年度の九月三〇日(当該年度の中途に事業を廃止した事業主にあつては、当該事業を廃止した日から四五日を経過する日)までに、身体障害者雇用調整金支給申請書(労働省告示第一一二号様式第七号)に身体障害者雇用状況等報告書(Ⅰ)及び(Ⅱ)(労働省告示第一一二号様式第八号)を添えて、事業団に申請するものである(令第一四条並びに則第一五条第一項及び第二項)。なお、雇用率を達成しているため納付金が零となる事業主も納付金申告書を提出しなければならないこととなつているので、これとあわせて身体障害者雇用調整金支給申請書を提出することが出来ることはいうまでもない。

② 前記①の申請は、地方協会及び認可法人を経由して行うことが出来ることとする予定である。

③ 調整金の支給は、各年度の一二月一日から同月三一日までの間に行うものである(則第一六条)。

④ 昭和五一年度分の調整金の支給の申請は、昭和五二年一二月三一日までとし、同年度分の調整金の支給は、昭和五三年二月一日から同月二八日までの間に行うものである(則附則第四条)。

(三) 報奨金の支給

イ 支給要件及び支給額

① 報奨金は、常時三〇〇人以下の常用労働者を雇用する事業主については、当分の間、納付金を徴収しないため、調整金を支給しないこととしたので、これに代えて支給することとしたものであり、各年度ごとに、当該年度に属する各月ごとの初日における常用の身体障害者の数の年度間合計数が、当該年度に属する各月ごとの初日における常用労働者の数(除外率による除外を行う。)に一〇〇分の三を乗じて得た数(その数に一人未満の端数があるときは、その端数は、切り捨てる。)の年度間合計数又は八四人(7人×12月。ただし、昭和五一年度分については、四二人(7人×6月)。)のいずれか多い数を超える事業主に対して、その超える数一人につき八、〇〇〇円を支給するものである(法附則第二条第二項から第五項まで及び則附則第三条)。

② 前記(1)の常用の身体障害者の数の算定に当たつては、重度障害者は、その一人をもつて、二人の身体障害者に相当するものとみなす(法附則第二条第四項)。

ロ 支給手続、支給時期等

① 報奨金の支給を受けようとする事業主は、各年度ごとに、翌年度の九月三〇日(当該年度の中途に事業を廃止した事業主にあつては、当該事業を廃止した日から四五日を経過した日)までに、報奨金支給申請書(労働省告示第一一二号様式第一二号)に身体障害者雇用状況等報告書(Ⅰ)及び(Ⅱ)(労働省告示第一一二号様式第八号)を添えて、事業団に申請するものである(則附則第二条第一項)。

② 前記①の申請は、地方協会及び認可法人を経由して行うことができることとする予定である。

③ 報奨金の支給時期は、調整金の場合と同様、各年一二月とする(則附則第二条第二項)。

④ 昭和五一年度分の報奨金の申請及び支給時期は、調整金の場合と同様である(則附則第八条)。

(四) 助成金の支給

① 法第一八条第一項第二号から第四号に規定する助成金は、次に掲げる種類の助成金であり、その要件、額その他の支給基準は則第一七条から第二五条に規定されているが、更にその詳細は事業団の業務方法書等で定めることとしている。

イ 身体障害者又は第七の三の(二)に述べる精神薄弱者(以下「身体障害者等」という。)を雇い入れる事業主に対する身体障害者作業施設設置等助成金、身体障害者等住宅確保助成金及び身体障害者等専任指導員設置助成金

ロ 重度障害者等を多数雇用する事業所の事業主であつて、その事業所の新設又は拡充を行うものに対する重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金

ハ 身体障害者の雇用の促進に係る事業を行う事業主の団体に対する身体障害者職域拡大等研究調査助成金及び身体障害者雇用管理等講習助成金

② 助成金の支給を受けようとする事業主が、助成金の支給申請を行う場合は、身体障害者の雇用の促進に関する当該助成金の支給の必要性の有無等に関する公共職業安定所長の意見書を必要とするものである。

③ 助成金の支給申請は、地方協会及び認可法人を経由して行うことができることとする予定である。

④ 助成金の支給は、昭和五一年度分の納付金の徴収を待つて行うものであるので、その支給の申請は昭和五二年一〇月以降とする。

三 公共職業安定所の業務

(一) 助成金の支給申請に係る公共職業安定所長の意見書の作成

助成金の支給を受けようとする事業主が、支給申請を行う場合は、当該助成金の必要性の有無等に関する公共職業安定所長の意見書を必要とすることとしているので、当該意見書の作成を求められた公共職業安定所長は別途通達するところにより必要事項を記載した意見書を作成するものとする。

(二) 事業団及び地方協会に対する情報提供

① 公共職業安定所は、毎年六月一日現在における身体障害者の雇用に関する状況の報告に基づき、別途通達するところにより、納付金制度の対象となる企業名簿を作成し、事業団及び地方協会に送付するものとする。

② 公共職業安定所は、事業団及び地方協会の求めに応じ、適宜企業の身体障害者の雇用状況等に関する情報を事業団及び地方協会に提供するものとする。

 

第六 身体障害者雇用促進協会

(一) 概要

身体障害者の雇用の促進と安定を図るためには、行政による施策の推進とともに、国民一般とりわけ身体障害者を雇用する事業主が身体障害者に対する正しい認識と理解のもとに、その雇用問題に積極的に取り組むことが是非とも必要であり、そのためには事業主によつて構成される身体障害者雇用促進団体が行政に協力しつつ、自主的活動を行うことが極めて効果的である。このため、身体障害者の雇用の促進を円滑にするための各種の事業を行う事業主による身体障害者雇用促進団体について、その育成と事業の適正な執行を確保するため、この法に基づく認可法人として身体障害者雇用促進協会を設立することとしたものである。

職業安定機関としては、この趣旨にかんがみ、身体障害者雇用促進協会と密接な連絡を図り、各種情報の提供等必要な協力を行わなければならない(法第八二条)。

二 身体障害者雇用促進協会の組織

① 身体障害者雇用促進協会は、民法上の公益法人とは異なり、この法に定めるところによつて労働大臣の設立の認可を受け、一個に限つて設立されるいわゆる認可法人(法第四十条及び第四一条)であつて、他の者がその名称中に「身体障害者雇用促進協会」にいう文字を用いることの禁止(法第四二条)、会員の資格(法第五〇条)、役員(法第五三条)、業務(法第五九条)等について法が定めている。

② 身体障害者雇用促進協会の会員は、事業主の団体であつて、身体障害者の雇用の促進に係る事業を行うものを中心とするが、その他定款で定めるものも会員とすることができる(法第五〇条第一項)。

したがつて、各都道府県に設立されている心身障害者雇用促進協会は、それぞれの地域において身体障害者の雇用促進の事業を行う事業主の団体であるから、身体障害者雇用促進協会の会員となることができる。

三 身体障害者雇用促進協会の業務

身体障害者雇用促進協会は、次の業務を行う(法第五九条第一項)。なお、(三)、(四)及び(六)の業務については、精神薄弱者に関しても行うものである(法附則第四条第五項)。

(一) 身体障害者職業生活相談員の資格認定講習を行うこと。

(二) 国からの委託を受けて、一定の身体障害者職業訓練校の運営を行うこと。

なお、ここでは、現在国で設立し、都道府県に運営を委託している身体障害者職業訓練校の委託換えを予定しているものではなく、今後新たに設立が予定される先駆的、試験的な特別の訓練校の運営委託が想定されているものである。

(三) 会員及び事業主に対して、身体障害者の雇入れ、雇用環境の整備その他身体障害者の雇用に関する技術的事項について指導及び援助を行うこと。

(四) 事業主その他の者に対して身体障害者の雇用管理に関する研修を行うこと。

(五) 身体障害者の技能に関する競技大会を開催すること。

(六) 身体障害者の雇用に関する調査、研究及び広報を行うこと。

(七) (一)から(六)の業務に附帯する業務を行うこと。

(八) その他身体障害者の雇用の促進及びその職業の安定に関し必要な業務を行うこと。なお、ここには、納付金関係業務を雇用促進事業団から委託を受けて行う業務が含まれるものである。

 

第七 その他

一 身体障害者職業生活相談員

(一) 趣旨及び概要

職業を通じて身体障害者の福祉の向上を図るためには、その雇用の促進を図ることが必要であるだけでなく、雇用関係に入つた後における身体障害者の職業生活の充実を図ることもまた必要である。

このような観点から、事業主は一定数以上の身体障害者を雇用する事業所において、身体障害者職業生活相談員(以下「相談員」という。)を選任し、その者に身体障害者の職業生活全般についての相談、指導を行わせなければならないこととすることにより、身体障害者の職場適応の向上を図り、その有する能力を最大限に発揮することができるようにしようとするものである。

また、この相談員制度は、後記三の(二)に述べる精神薄弱者に対しても適用する。

なお、従来行政措置により進めてきた心身障害者雇用推進員制度については、この相談員制度と重複する面もあるが、心身障害者雇用推進員のうち相談員の資格を有する者については相談員と併任させること等により両制度の調整を図りつつ、少くとも既に選任されている心身障害者雇用推進員については、引き続きその趣旨を活かした活用を図るものとする。相談員制度が創設されたことに伴う心身障害者雇用推進員制度の整理については、別途通達する。

(二) 職務

相談員の職務は、おおむね次のような事項について常用の身体障害者等から相談を受け、又はこれを指導することである(法第七九条第一項及び附則第四条第三項)。

イ 身体障害者等の適職の選定、能力の開発向上等身体障害者等が従事する職務の内容に関すること。

ロ 身体障害者等の障害に応じた施設設備の改善等作業環境の整備に関すること。

ハ 労働条件や職場の人間関係等身体障害者等の職場生活に関すること。

ニ 身体障害者等の余暇活動に関すること。

ホ その他身体障害者等の職場適応の向上に関すること。

(三) 相談員の選任

相談員を選任しなければならない事業所は常用の身体障害者等を五人以上雇用する事業所とする(則第三九条)。

このような事業所を有する事業主は、相談員を選任すべき理由が発生した日から三月以内に、下記(四)の資格を有する者のうちから相談員を選任しなければならない(則第四一条第一項)。

また、相談員を選任したときは、遅滞なく、次の事項を記載した届書を当該事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に提出するものとする(則第四一条第二項)。

イ 相談員の氏名

ロ 相談員の資格を有することを明らかにする事実

ハ 当該事業所の常用労働者の総数及びそのうちの身体障害者等の数

(四) 相談員の資格

相談員の資格を有する者は、身体障害者職業生活相談員資格認定講習を修了した者及び次のいずれかに該当する者とする(則第四〇条)。

イ 大学又は高等専門学校(旧専門学校を含む。)の卒業者で、一年以上身体障害者等の職業生活に関する相談及び指導の実務経験(心身障害者雇用推進員は当然この実務経験があるものと考えられる。)を有する者

ロ 高等学校(旧中等学校を含む。)の卒業者で、二年以上身体障害者等の職業生活に関する相談及び指導の実務経験(心身障害者雇用推進員は当然この実務経験があるものと考えられる。)を有する者

ハ その他の者で、3年以上身体障害者等の職業生活に関する相談及び指導の実務経験(心身障害者雇用推進員は当然この実務経験があるものと考えられる。)を有する者

ただし、相談員の資格認定講習は、法施行後直ちに実施できないので、昭和五二年九月三〇日までは、次のいずれかに該当する者も資格を有するものとし、相談員の要件を緩和している(則附則第七条)。

イ 大学又は高等専門学校(旧専門学校を含む。)の卒業者で、二年以上労務に関する事項についての実務経験を有する者(労務課担当者等)

ロ 高等学校(旧中等学校を含む。)の卒業者で、三年以上労務に関する事項についての実務経験を有する者(労務課担当者等)

ハ その他の者で、四年以上労務に関する事項についての実務経験を有する者(労務課担当者等)

(五) 公共職業安定所と相談員との連携

公共職業安定所は、相談員と次のような事項について連絡をとり、適宜適切な指導、助言等を行うことによつて、身体障害者等の職場適応の向上に努めるものとする。

イ 身体障害者等の職場適応の状況

ロ 作業環境の整備状況

ハ 相談員が身体障害者等から受けた相談の状況及びそれに対して講じた措置の状況

二 解雇の届出

(一) 趣旨及び概要

解雇の届出義務については、身体障害者は就職するに当たつて各種のハンデイキヤツプを有し、再就職は一般に困難であることにかんがみ、事業主が身体障害者を解雇しようとする場合には、その旨を速やかに公共職業安定所に届け出させることにより、公共職業安定所はあらかじめその者に適した求人の開拓、職業指導等を積極的に行い、早期の再就職を図ろうとするものである。なお、後記三の(二)の精神薄弱者を解雇する場合も同様とされている(法附則第四条第二項)。

(二) 届出の要件及び手続

① 事業主は、常用の身体障害者等を解雇する場合(労働者の責めに帰すべき理由により解雇する場合又は天災事変その他やむを得ない理由のために事業の継続が不可能となつたことにより解雇する場合を除く。)には、速やかに次の事項を記載した届書を、その身体障害者等が雇用されている事業所の所在地を管轄する公共職業安定所の長に届け出なければならない(則第四三条)。

イ 解雇する身体障害者等の氏名、性別、年齢及び住所

ロ 解雇する身体障害者等が従事していた職種

ハ 解雇の年月日及び理由

② 身体障害者等の再就職は一般に困難であるので、解雇されることが明らかになつたときは、公共職業安定所も含めて速やかに当該身体障害者等の再就職に努める必要があるという趣旨から、解雇の届出の規定が設けられたことにかんがみ、この解雇の届出は、解雇の効力が生ずる前に出来るだけ早く行われる必要がある。

したがつて、事業主は、解雇の告知後速やかに届け出なければならないものとする。

(三) 公共職業安定所の措置

解雇の届出があつたときは、公共職業安定所は、その者に適した求人の開拓、職業指導等を積極的に行い早期再就職を図るよう努めるものとする。

また、その解雇によつて雇用率を下回ることとなるような場合には、雇用率制度の趣旨にかんがみ、継続雇用や新規雇用等について必要な指導を行うものとする。

三 精神薄弱者の取扱い

(一) 精神薄弱者に対する法の適用

精神薄弱者については、①適用に適するかどうかについての判定が困難であること、②適職の開発が進んでいないこと、③社会生活指導の面で特別の配慮を必要とすること等の事情にあることから、今直ちに身体障害者と同様に雇用を義務づけることはできないので、雇用率制度や納付金制度の直接の対象とすることはできない。しかし、精神薄弱者も身体障害者と同様に就職に当たつてハンデイキヤツプを有するものであり、その雇用を積極的に援助する必要がある。

このため、精神薄弱者については、次のように定められた。

イ 精神薄弱者の雇用の促進に関する検討

精神薄弱者の雇用の促進については、その職能的諸条件に配慮して適職に関する調査研究を推進するとともに、その雇用について事業主その他国民一般の理解を高めることに努めるものとし、その結果に基づいて、必要な措置を講ずるものとする(法附則第四条第一項)。

ロ 精神薄弱者に対する適用

イの措置が講じられるまでの間は、法の規定のうち、職業紹介、適応訓練、納付金の減額(雇用されている精神薄弱者は、身体障害者とみなして、納付金が減額される。)、納付金により事業団が行う雇用助成業務、身体障害者職業生活相談員及び解雇の届出に関する規定は、精神薄弱者に対しても適用することとする(法附則第四条第二項から第四項まで)。

また、身体障害者雇用促進協会は、精神薄弱者についても一定の業務を行うことができることとした(法附則第四条第五項)。

(二) 精神薄弱者の範囲及びその確認

前記(一)のロに述べた一定の法の規定(納付金の減額関係(法第二九条第三項)、助成金関係(法第一八条第一項第二号から第四号まで、法第二〇条)、相談員関係(法第七九条)及び解雇の届出関係(法第八〇条)の規定)について身体障害者と同様に取り扱うこととする精神薄弱者とは、児童相談所、精神薄弱者更生相談所、精神衛生センター又は精神衛生鑑定医(以下「精神薄弱者判定機関」という。)により精神薄弱者と判定された者とする(則第四七条)。

この精神薄弱者であることの確認は、都道府県知事が発行する療育手帳によつて行うものとする。

また、療育手帳を所持しない者については、精神薄弱者判定機関の判定書(様式は任意とするが、知能指数及び身辺処理能力に関する意見を記入したもの)をもつて確認するものとする。

なお、精神薄弱者(児)を対象とする養護学校若しくは特殊学級に在学していた者若しくは卒業した者又は精神薄弱児施設、精神薄弱児通園施設若しくは精神薄弱者援護施設に入所していた者については、当該学校長又は施設長の証明書(当該学校、学級若しくは施設に在籍していたこと又は卒業したことを証明するもの)及び意見書(知能指数及び身辺処理能力に関する意見を記入したもの)をもつて、また、心身障害者職業センターにおいて精神薄弱者であると判定された者については、同センターの長の意見書をもつて、精神薄弱者であることの確認を行つて差支えない。

 

別紙(障害程度等級表)

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参考(身体障害者障害程度等級表判定基準)

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