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通達:身体障害者雇用促進法及び中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律の施行について

 

身体障害者雇用促進法及び中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律の施行について

昭和51年10月1日発職第194号

(各都道府県知事あて労働事務次官通達)

 

身体障害者雇用促進法及び中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部を改正する法律は、去る五月二八日、昭和五一年法律第三六号として公布され、本日(一〇月一日)から施行されることとなつた。また、これに伴い、身体障害者雇用促進法施行令の一部を改正する政令(昭和五一年政令第二五一号)、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法施行令(昭和五一年政令第二五二号)、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令(昭和五一年労働省令第三七号)及び雇用対策法第二〇条の規定に基づき中高年齢者の能力に適合すると認められる職種を定める告示(昭和五一年労働省告示第一〇〇号)が九月二八日に、身体障害者雇用促進法施行規則(昭和五一年労働省令第三八号)が九月三〇日にそれぞれ公布された。

今回の改正は、最近における厳しい雇用失業情勢、さらには今後における安定成長経済への移行や労働力の高齢化等の状況の中にあつて、雇用対策上の最重点課題となつていた身体障害者及び高年齢者の雇用対策を、身体障害者雇用率制度の刷新強化、身体障害者雇用納付金制度の創設、高年齢者雇用率制度の創設等の措置を講ずることにより、抜本的に強化しようとするものである。

ついては、その主たる内容は、左記のとおりであるので、その趣旨を十分理解の上、その施行に万全を期せられたく、命により通達する。

 

第一 身体障害者雇用促進法の一部改正関係

Ⅰ 改正の趣旨

身体障害者の雇用対策については、従来から身体障害者雇用促進法に基づく雇用率制度を基礎として、身体障害者の雇入れに関する計画制度の積極的活用、身体障害者の雇用に消極的な事業所名の公表等の行政措置の強化を図るとともに、一方では事業主及び身体障害者に対する雇用奨励金その他の各種の援護助成措置の充実を図ることにより、その雇用の促進に努めてきたところである。

しかしながら、身体障害者雇用促進法の施行後一六年を経過した今日においても、身体障害者の雇用の状況は未だ十分ではなく、身体障害者の就職率は一般に比べかなり低く、また雇用率未達成の事業所が三割を超え、しかも大規模事業所ほど雇用割合が低い状況にある。さらに、今後における身体障害者の増加傾向や我が国の経済基調の変化を考え合わせるならば、その対策を抜本的に強化する必要がある。

そこで、今回、事業主に対する身体障害者雇用義務の強化及び身体障害者雇用納付金制度の創設を中心とする抜本的な改正を行い、身体障害者の雇用対策の飛躍的拡充を図ることとしたものであること。

Ⅱ 改正の概要

一 法律の目的の改正

雇用義務の強化、身体障害者雇用納付金制度の創設等に伴い、法律の目的を改正し、「この法律は、身体障害者の雇用に関する事業主の責務を定め、身体障害者雇用納付金制度により身体障害者の雇用に伴う経済的負担の調整等を図るとともに、身体障害者がその能力に適合する職業に就くことを促進するための措置を講じ、もつてその職業の安定を図ることを目的とする。」ものとしたこと。

二 身体障害者の範囲

(一) 身体障害者の範囲を改正し、身体障害者福祉法の身体障害者の範囲に合わせることとしたこと。

(二) 重度障害者については、その雇用の促進を図るため、その一人をもつて、二人の身体障害者とみなして、身体障害者雇用率(以下「雇用率」という。)、身体障害者雇用納付金(以下「納付金」という。)、身体障害者雇用調整金(以下「調整金」という。)及び報奨金の算定を行う特別の取扱いをすることとしたが、重度障害者の範囲は、身体障害者福祉法施行規則別表第五号に掲げる障害等級が一級又は二級に該当する身体障害を有する者としたこと。

三 関係者の責務

すべて事業主は社会連帯の理念に基づき身体障害者の雇用に関し、適当な雇用の場を与える共同の責務を有することを明らかにするとともに、身体障害者自身も職業人としての自覚を持ち、能力の開発向上を図り、有為な職業人として自立するように努めるべきであることを明らかにしたこと。なお、これは、今回の改正法の基本理念ともいうべき重要な考え方であること。

四 身体障害者雇用率制度の刷新強化

(一) 事業主の身体障害者雇用義務の強化

現行の雇用努力義務を改め、事業主は、雇用関係の変動(労働者の雇入れ及び解雇をいう。)がある場合には、その雇用する身体障害者の数が雇用率以上であるようにしなければならないこととし、その法的義務を強化したこと。

(二) 雇用率の改正

雇用率は、重度障害者の二倍計算方式の採用による加算分等を考慮して、現行の雇用率を〇・二ポイントずつ引き上げることとしたこと。その結果、新しい雇用率は次のとおりとなること。

国等の機関{/非現業的機関 一・九%(現行一・七%)/現業的機関 一・八%(〃 一・六%)/

一般の事業主{/民間の事業主 一・五%(〃 一・三%)/一定の特殊法人 一・八%(〃 一・六%)/

(三) 雇用率の適用方法の改正

雇用率の適用単位については、従来の事業所単位を改め、企業全体を一つの単位として適用することとしたこと。また、除外労働者制度については、現行の除外労働者を個別に判定する方式を改め、除外労働者が相当の割合を占める業種ごとに定める除外率によつて、除外すべき労働者を算定することとしたこと。

(四) 身体障害者の雇入れに関する計画制度の強化

事業主が身体障害者雇入れ計画作成命令に違反して同計画を作成しない場合又は同計画を提出しない場合について罰則を設けたこと。また、作成された計画については、現行の変更勧告のほか、計画の適正な実施に関する勧告の制度を新たに設けることとしたこと。

(五) 公表制度の創設

身体障害者の雇入れに関する計画の変更勧告又は適正な実施に関する勧告が行われた場合に、事業主が正当な理由がなく、これらの勧告に従わないときは、その旨を公表することができることとしたこと。

五 身体障害者雇用納付金制度の創設

身体障害者を雇用するには、作業施設や設備の改善、職場環境の整備等が必要とされることが多く、健常者の雇用に比べると経済的負担が伴うことは否定できない。このため、雇用義務を誠実に履行している事業主と履行していない事業主とでは経済的負担のアンバランスが生じているところである。そこで、身体障害者を雇用することは事業主が共同して果たしていくべき責任であるとの社会連帯責任の理念に立つて、事業主間の身体障害者の雇用に伴う経済的負担を調整するとともに、身体障害者を雇用する事業主に対する助成、援助を行うため、事業主の共同拠出による身体障害者雇用納付金制度を創設したものであること。

納付金は、事業主の身体障害者雇用義務数に応じて納付すべきこととし、現に身体障害者を雇用している場合はその人数分を減ずることとした。したがつて結果的には、納付金は雇用率未達成の事業主が納付することとなるが、納付金は、雇用率未達成であることに対して科せられる罰金的な性格を有するものではなく、また、納付金の納付によつて雇用義務が免ぜられるものでもない。すなわち、納付金は一種の雇用税的色彩を有する金銭であること。

(一) 納付金の納付

事業主は、前年度に雇用した身体障害者数が雇用率に満たないときは、その法定雇用身体障害者数に不足する人数一人につき月額三万円の納付金を雇用促進事業団に納付しなければならないこと。

ただし、常用労働者数が三〇〇人以下の事業主からは、当分の間、納付金を徴収しないこととしたこと。

(二) 納付金を使用して行う事業

イ 身体障害者雇用調整金の支給

雇用率を超えて身体障害者を雇用する事業主に対して、その超える数の身体障害者一人につき月額一四、〇〇〇円の調整金を支給すること。

ただし、常用労働者数が三〇〇人以下の規模の事業主については、当分の間、納付金を徴収しないことから、調整金は支給せず、次の報奨金を支給することとしたこと。

ロ 報奨金の支給

常用労働者数が三〇〇人以下の規模の事業主にあつて、その雇用する身体障害者の数が、労働等総数に一〇〇分の三を乗じて得た数又は七人(年度間延べでは八四人)のいずれか多い数を超えるものに対して、その超える数の身体障害者一人につき月額八、〇〇〇円の報奨金を支給すること。

ハ 助成金の支給

(イ) 身体障害者又は精神薄弱者(以下「身体障害者等」という。)を雇い入れる事業主に対して、身体障害者作業施設設置等助成金、身体障害者等住宅確保助成金及び身体障害者等専任指導員設置助成金を支給すること。

(ロ) 重度障害者等を多数雇用する事業所の事業主であつて、その事業所の新設又は拡充を行うものに対して、重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金を支給すること。

(ハ) 身体障害者の雇用の促進に係る事業を行う事業主の団体に対して、身体障害者職域拡大等研究調査助成金及び身体障害者雇用管理等講習助成金を支給すること。

六 身体障害者雇用促進協会

身体障害者雇用促進協会は、各都道府県に設立されている心身障害者雇用促進協会等を会員とし、全国を通じて一個を限り、労働大臣の許可を受けて設立されるいわゆる認可法人であること。

この身体障害者雇用促進協会は、身体障害者の雇用の促進を目的とする事業主の団体の中核的団体として、行政機関、雇用促進事業団等と協力し、納付金関係業務を始めとする身体障害者の雇用を促進するための諸事業を推進するものであること。

七 身体障害者職業生活相談員の選任

事業主は、身体障害者等を五人以上雇用する事業所について、身体障害者職業生活相談員資格認定講習を修了した者その他一定の資格を有する者のうちから、その雇用する身体障害者の職業生活全般についての相談及び指導を行わせる者を選任しなければならないこと。

八 解雇の届出

身体障害者等の早期再就職を図るため、事業主は、身体障害者等を解雇する場合(本人の責めに帰すべき理由により解雇する場合又は天災事変その他やむを得ない理由のために事業の継続が不可能となつたことにより解雇する場合を除く。)には、速やかに、公共職業安定所長にその旨を届け出なければならないこと。

九 精神薄弱者に対する適用

精神薄弱者については、雇用に適するかどうかの判定が困難であること等の事情から今直ちに身体障害者と同様に雇用を義務づけることはできないが、就職に当たつてハンデイキヤツプを有する面では精神薄弱者も身体障害者と同様であるという基本的な認識に立つて、今回の法改正により身体障害者雇用促進法の規定のうち身体障害者の雇用による納付金の減額、助成金、職業生活相談員その他の雇用の促進に関する規定については精神薄弱者に対しても適用したところであること。

Ⅲ 運用上の留意事項

一 今回の改正法においては、身体障害者雇用義務の強化、身体障害者雇用納付金制度の創設等により、身体障害者の雇用に関する事業主の義務を拡充・強化したところであるので、職業安定機関としては、事業主の雇用義務の履行を容易にするためにも雇用促進のための諸条件を整備することがぜひとも必要である。このため、職業安定機関は、就職を希望する身体障害者の完全なは握に努めるとともに、各種援護措置、特に今回創設された納付金制度の活用により雇用の促進に努め、適切な職業紹介、職業指導等を行いうる体制の確立に万全を期すこと。

二 身体障害者の雇用促進対策を円滑に推進するためには、関係機関の密接な連絡協力が不可欠であることはいうまでもないが、とくに、今回の法改正によつて、雇用促進事業団及び身体障害者雇用促進協会は、重要な身体障害者雇用促進業務を新たに行うこととなつたところであるので、職業安定機関においては、これらの機関が行う業務に積極的な協力、援助を行うとともに、相互の連絡・協力体制の確立を図ること。

三 身体障害者の雇用に関する事業主の義務が大幅に強化されたところであるが、職業生活上、各種のハンデイキヤツプを有する身体障害者の真の雇用の促進と安定を期すためには、最終的には、事業主の深い理解と積極的な協力とがなければならないところであるので、職業安定機関においては、このことの十分な理解の上に立つて、事業主指導に努めること。

 

第二 中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の一部改正関係

Ⅰ 改正の趣旨

先般来の厳しい経済情勢の下において、定年前後の高年齢者を取りまく雇用状況は深刻なものがあり、いつたん離職するとその再就職は困難な情勢にある。しかも、我が国の人口構成は、昭和三五年には一二・七%であつた五五歳以上の高年齢者の構成比が、昭和五〇年には一五・九%となり、さらに昭和七〇年代には約二五%にまで達すると見込まれるなど、今後急速に高年齢化することが予測されている。このような諸情勢の中にあつて、高年齢者に安定した雇用の場を確保することは、今後の雇用政策上の最大の課題となつているところである。

ところで、高年齢者の雇用を不安定にしている大きな原因の一つが、現在なお支配的な五五歳定年制にあることは周知の事実であることを考えると、高年齢者に安定した雇用の場を確保するためには、何よりも先ず当面六〇歳定年の実現を推進することが必要である。

このためには、事業主が進んでその自主的努力により、定年延長その他高年齢者の雇用の維持安定に努めることが肝要である。そこで、政府としては、定年延長奨励金制度その他各種の助成措置の拡充に努めてきたところであるが、さらに今回の改正では、高年齢者雇用率制度を創設することとし、この雇用率を目標として、定年延長の実施その他高年齢者に安定した雇用の場を確保することについて事業主の自主的努力を促すこととしたものである。今後は、この高年齢者雇用率制度を軸として、六〇歳定年の実現その他高年齢者の雇用の安定を図るための施策を推進するため一層の努力を傾注する必要がある。

Ⅱ 改正の概要

一 高年齢者雇用率制度の創設

(一) 高年齢者雇用率

イ 事業主は、雇用関係の変動、(労働者の雇入れ及び離職をいう。)がある場合には、六%の高年齢者雇用率以上の高年齢者(五五歳以上の者をいう。)を雇用するように努めなければならないこと。なお、高年齢者雇用率の適用単位は、従来の中高年齢者雇用率の事業所単位の適用方式と異なり、企業全体を一つの単位として適用するものであること。

ロ 高年齢者雇用率制度の創設に伴い、現行の職種別の中高年齢者雇用率制度を廃止したこと。ただし、国、地方公共団体及び一定の特殊法人については、その職員の身分が安定していること等を考慮し、高年齢者雇用率制度を適用せず、現行の中高年齢者雇用率制度を維持することとしたこと。

(二) 高年齢者雇用率達成計画等

高年齢者雇用率制度の実効性を確保するため、公共職業安定所長は、高年齢者雇用率未達成の事業主について、正当な理由がなく高年齢者でないことを条件とする求人申込みの不受理、高年齢者雇用率達成計画の作成命令及び同計画に関する変更又は適正な実施の勧告並びに特に必要がある場合の高年齢者の雇入れその他高年齢者の雇用の安定に関する必要な措置の要請等を行うことができることとしたこと。

二 中高年齢者の適職に関する措置

公共職業安定所は、雇用対策法第二〇条の規定に基づき選定された中高年齢者の能力に適合する職種(選定職種)について、正当な理由がなく中高年齢者でないことを条件とする求人の申込みを受理しないことができるものとしたこと。また、公共職業安定所は、事業主等に対して、中高年齢者を選定職種に雇い入れることを促進するため必要な指導を行うことができるものとしたこと。

Ⅲ 運用上の留意事項

一 高年齢者雇用率制度は、今後増加する高年齢者の雇用の安定を図るため、事業主が自主的、計画的に努力することを促すための目標として定めたものであり、産業、業種の別を問わず一律に設定したものであるので、その運用に当たつては、その趣旨を十分に理解した上、産業、企業の実態を十分は握し、その実情に即して適切かつ効果的な運用に努めるものとすること。

二 高年齢者雇用率を達成し、高年齢者の雇用の安定を図るためには、定年延長を促進することが極めて重要である。

定年制については、年功序列賃金体系等永年にわたつて培われてきた我が国特有の雇用賃金慣行に深く根ざしていることに十分配慮しつつ定年の延長を図るよう関係労使の理解を得るよう努めること。