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通達:建設労働者の雇用の改善等に関する法律の施行について

 

建設労働者の雇用の改善等に関する法律の施行について

昭和51年9月7日発職第172号

(各都道府県知事あて労働事務次官通達)

 

建設労働者の雇用の改善等に関する法律(以下「法」という。)は、去る五月二七日、昭和五一年法律第三三号として公布され、来る一〇月一日から施行され、これに伴い、建設労働者の雇用の改善等に関する法律施行規則(昭和五一年労働省令第二九号。以下「則」という。)も、一〇月一日から施行されることとなったので、左記の事項について十分御理解の上、所期の目的を達成するようその施行に万全を期せられたく、命により通達する。

 

第一 法律の趣旨

我が国の建設業は、生産面においても、また、雇用面においても、国民経済の中で大きな比重を占めているが、今後においても高福祉社会実現のための社会資本の充実という社会的要請のもとに、基幹産業としての地位は一層重要なものとなると考えられる。

そこに働く建設労働者については、建設生産が有期の注文生産であること、屋外作業が中心となること等に加え、実際の建設工事が複雑な下請関係のもとで小零細企業によって行われる場合が多いという我が国特有の事情から、労働面で、雇用関係の不明確、雇用形態の不安定、賃金不払い及び労働災害の多発、技能労働者の不足、福祉の立ちおくれ等多くの問題がみられる。

この法律は、このような建設労働の実情にかんがみ、その基本的な課題である雇用関係の明確化と雇用管理体制の整備を推進し、併せて建設労働者の技能の向上及び福祉の増進のための措置を積極的に促進し、その改善を図ろうとするものである。

 

第二 法律の概要

一 総則関係

(一) 目的

この法律は、建設労働者についてその雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進を図るための措置を講ずることにより、その雇用の安定に資することを目的とすること(法第一条)。

(二) 定義

「建設事業」、「建設労働者」及び「事業主」について、定義に関する規定を設けたこと(法第二条)。

二 建設雇用改善計画の策定等

(一) 策定

建設労働者の雇用の改善等を図るためには、各種の施策を長期的に実施する必要があるところから、労働大臣が建設労働者の雇用の改善、能力の開発及び向上並びに福祉の増進に関し重要な事項を定めた建設雇用改善計画を策定することとしたこと(法第三条)。

(二) 勧告等

労働大臣は、建設雇用改善計画の円滑な実施のため必要があると認めるときは、事業主、事業主の団体その他の関係者に対し、必要な勧告又は要請をすることができることとしたこと(法第四条)。

三 建設労働者に係る雇用管理の改善のための措置

(一) 雇用管理責任者の選任等

建設労働者についての雇用関係の不明確、雇用管理の不適正等の問題の改善を図るために、事業場における雇用管理の体制を明確にする必要があるところから、事業主は事業場ごとに建設労働者の雇用管理に関する事項を管理させるため、雇用管理責任者を選任しなければならないこととしたこと(法第五条及び則第一条)。

(二) 募集に関する事項の届出

現在、通勤圏内における労働者の直接募集については職業安定法上自由に行えるところから、一部の地域のいわゆる青空市場における募集活動については、実態は握も不十分で指導監督が困難な状況にある。このため、事業主はその被用者に、通常出勤することができる地域から建設労働者を募集させようとするときは、事前に、建設労働者募集届を公共職業安定所長に届け出なければならないこととしたこと。なお、この届出を要するのは、則別表に掲げる区域内において建設労働者の募集を行おうとする場合に限定されていること(法第六条及び則第二条から第四条まで)。

(三) 雇用に関する文書の交付

建設労働者については、特に小零細の下請企業を中心として、雇用関係の有無、雇用期間等についてしばしば問題が発生しているところから、事業主は、建設労働者を雇い入れたときは、速やかに、事業主の氏名又は名称、事業場の名称及び所在地、雇用期間並びに従事すべき業務の内容を明示した文書を交付しなければならないこととしたこと(法第七条)。

(四) 関係請負人に関する書類の備付け及び援助

建設工事が複雑な下請関係において行われる場合には、雇用か請負か不分明になるなど、特に雇用関係が不明確になりがちで種々の問題が発生しているところである。このため、元方事業主は当該建設工事について関係請負人ごとに、その氏名又は名称、作業予定期間及び雇用管理責任者の氏名を明示した書類を事業場に備えて置くとともに、関係請負人に対し雇用管理の適正化についての助言・指導等の援助を行うように努めなければならないこととしたこと(法第八条並びに則第五条及び第六条)。

四 建設労働者の福祉等に関する事業の実施

(一) 政府は、建設労働者の能力の開発及び向上並びに福祉の増進を図るため、雇用保険の能力開発事業又は雇用福祉事業として、次の事業を行うことができることとし、その全部又は一部を雇用促進事業団に行わせることとしたこと(法第九条)。

イ 事業主等に対して、建設労働者の技能の向上を推進するために必要な助成を行うこと。

ロ 事業主等に対して、雇用管理に関し必要な知識を習得させるための研修を実施するために必要な助成を行うこと。

ハ 事業主等に対して、作業員宿舎の整備改善その他建設労働者の福祉の増進を図るために必要な助成を行うこと。

(二) 労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正により事業主から新たに徴収することとなる一、〇〇〇分の一の率の部分に相当する額は、(一)の事業及び労働省令で定める事業に要する費用に充てるものとすること(法第一〇条)。

五 雑則関係

(一) 報告の請求

公共職業安定所長は、文書により事業主又は元方事業主に対して建設労働者の募集又は関係請負人に関する書類の備付けに関し必要な報告を求めることができることとしたこと(法第一一条及び則第七条)。

(二) 罰則

建設労働者の募集の届出、関係請負人に関する書類の備付け及び公共職業安定所長に対する報告について、所要の罰則を設けたこと(法第一二条及び第一三条)。

六 その他

(一) 施行期日

この法律は、昭和五一年一〇月一日から施行すること。ただし、雇用保険率の引上げに関する規定(法第一〇条及び法附則第四条から第六条まで)は、公布の日(昭和五一年五月二七日)から起算して三年を超えない範囲内において政令で定める日から施行すること(法附則第一条)。

(二) 雇用促進事業団法の一部改正

雇用促進事業団が行う業務として、次の業務を加えることとしたこと(法附則第二条)。

イ 四の(一)のイからハまでに掲げる事業を行うこと。

ロ 建設労働者に係る雇用管理に関し必要な知識を習得させるための研修を行い、及び雇用管理の改善について助言すること。

(三) 労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正

建設の事業に係る雇用保険率を一、〇〇〇分の一五から一、〇〇〇分の一六に引き上げ、当該引き上げた部分については、事業主が負担することとしたこと(法附則第四条)。

なお、この部分の施行期日については、追って政令で定めるものであること。