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通達:雇用対策法及び雇用促進事業団法の一部を改正する法律の施行について

 

雇用対策法及び雇用促進事業団法の一部を改正する法律の施行について

昭和48年10月1日発職第149号

(各都道府県知事あて労働事務次官通知)

 

雇用対策法及び雇用促進事業団法の一部を改正する法律(昭和四八年法律第一〇七号)は、本日公布され、これに伴い、雇用対策法施行令の一部を改正する政令(昭和四八年政令第二八九号)、雇用促進事業団法施行令の一部を改正する政令(昭和四八年政令第二九〇号)、雇用対策法施行規則の一部を改正する省令(昭和四八年労働省令第二八号)、雇用促進事業団法施行規則の一部を改正する省令(昭和四八年労働省令第二九号)及び労働大臣が定める大量の雇用変動の場合の通知の様式を定める告示の一部を改正する件(昭和四八年労働省告示第五八号)も同日公布された。

今回の改正は、最近における雇用の動向にかんがみ、定年の引上げの円滑な実施及び定年に達する労働者の再就職の促進を図るための措置大量の雇用変動に対処するための措置、心身障害者の雇用の促進を図るための措置等を充実し、もつて高年齢者、大量の雇用変動に係る離職者、心身障害者等に関する雇用対策の充実を図ろうとするものである。

ついては、今回の改正の趣旨が生かされるよう下記に御留意のうえ、上記の法令の施行に万全を期せられたく、命により通達する。なお、上記の法令は、原則として、公布の日(昭和四八年一〇月一日)から施行することとされているか、大量の雇用変動の場合の届出又は通知に係る規定は、公布の日から起算して六月を経過した日(昭和四九年四月一日)から施行することとされているので申し添える。

 

第一 高年齢者の職業の安定を図るための施策の充実

高年齢者については、雇用が全体的に改善されたなかで、なお就職が困難な状況にあるが、とくに五五歳を中心とする定年制が高年齢者の生活の安定やその能力の有効発揮にとつて少なかさる障害となつており、今後、労働力人口の高齢化が急速に進むことを考慮すると、高年齢者の職業の安定を図ることがますます重要となつてきていること。

このため、以下のとおり高年齢者の職業の安定を図るための施策を講ずるものであること。

一 定年の引上げの促進

国は、高年齢者の職業の安定を図るため、定年の引上げの円滑な実施を促進するために必要な施策を充実するものとしたこと(雇用対策法(昭和四一年法律第一三二号。以下「法」という。)第三条第一項第四号の二)及び当該施策の一環として、国は、事業主その他の関係者に対して、定年の引上げを促進するため、資料の提供その他の援助を行うようにしなければならないものとしたこと(法第二〇条の二)。

定年の引上げについては、さきに昭和四八年五月一八日付け労働省発基第四八号「定年延長の促進について」をもつて、当面、今後五年間程度の間に六〇歳定年の以上が一般化することを目標とすること、定年の引上げは労使当事者の自主的努力により実現されることが望ましく、労使の自主的努力を助長し、定年の引上げの動きを促進することが基本である等その基本的な考え方当面の目標及び行政指導にあたつての留意点に関し通達したところであるが、今後は、法において、高年齢者の職業の安定を図るため定年の引上げの円滑な実施を促進することが国の講ずるべき施策として明示されたことにかんがみ、前記通達の趣旨に沿い、一層の御努力を願いたいこと。

なお、本年度から具体的施策の一つとして定年の引上げを行つた中小企業の事業主に対して、定年延長奨励金を支給することとしているので、この制度を十分活用されたいこと。

二 定年に達する労働者の再就職等の促進

高年齢者の職業の安定を図るために、定年の引上げを促進するほか、定年に達する労働者の再就職等の促進を図るため、次に掲げる措置を講ずることとしたこと。

事業主による定年に達する労働者の再就職の援助等に関する計画(以下「再就職援助計画」という。)の作成及び再就職援助担当者の選任の措置は事業主が再就職の援助等を行うことについての自主的努力を促すとともに、在職中からの計画的な再就職促進措置の実施に関する国と事業主との間の協力体制を強化するためのものであること。

(一) 再就職援助計画の作成

イ 公共職業安定所長は、定年に達する労働者の職業の安定を図るため必要があると認めるときは、当該労働者を雇用する事業主に対して、再就職援助計画の作成を要請することができるものとしたこと(法第二〇条の三第一項)及び当該要請があつた場合には、当該事業主は、再就職援助計画を作成し、これを公共職業安定所長に提出するものとしたこと(法第二〇条の三第二項)。

ロ 再就職援助計画は、次に掲げる事項を含むものであること(雇用対策法施行規則(昭和四一年労働省令第二三号。以下「則」という。)第七条の三第一項)。

(イ) 六〇歳未満の年齢を定年とされている労働者であつて再就職援助計画の作成の日が属する年度(四月一日から翌年三月三一日までの期間をいう。以下同じ。)の翌年度中に当該定年に達するもの(以下「援助計画対象者」という。)の総数

(ロ) 援助計画対象者について事業主が講じようとする再就職の援助等に関する措置の種類及び当該措置の種類別の援助計画対象者の数

(ハ) 援助計画対象者のうち公共職業安定所、公共の職業訓練機関等の行う定年に達する労働者の再就職を促進するための措置を受けることが必要であると認められる者の氏名、性別、年齢、職種及び離職することとなる日並びにその者について事業主が講じようとする再就職の援助に関する措置の内容

なお、本年度及び昭和四九年度に定年に達する労働者についても、再就職援助計画の対象とすることができるよう所要の経過措置を設けたこと(雇用対策法施行規則の一部を改正する省令(以下「改正省令」という。)附則第二項)。

ハ 公共職業安定所長が定年に達する労働者の職業の安定を図るため必要があると認めて事業主に対して再就職援助計画の作成を要請することができるのは、当該事業主の事業所が六〇歳未満の年齢を定年としている事業主の事業所であつて、当該年齢を定年とされている労働者を常時一〇〇人以上使用するものであるとき又は一の年度中に当該定年に達する労働者を相当数使用するものであるときであること(則第七条の二)。

再就職援助計画の作成を要請することができる場合を当該事業主の事業所が六〇歳未満の年齢を定年としている事業所であるときとしたのは、再就職援助計画の作成が定年の引上げの当面の目標である六〇歳定年が一般化するまでの間のいわば経過的な状態に対処するための措置であることによるものであること。

ニ 再就職援助計画の作成及び提出の期限については、作成すべき期限を指定して要請を行うものとし、提出は作成後遅滞なく行うものとしたこと(則第七条の二、則第七条の四)。

ホ 事業主は、再就職援助計画の作成にあたつては、当該再就職援助計画に係る援助計画対象者及びその者が加入している労働組合の意見をきくものとしたこと(則第七条の三第二項)。

(二) 再就職援助担当者の選任

イ 再就職援助計画を作成した事業主は、その雇用する者のうちから、再就職援助担当者を選任し、その者に、当該計画に基づいて、公共職業安定所と協力して、定年に達する労働者の再就職の援助のための業務を行わせるものとしたこと(法第二〇条の三第三項)。

ロ 再就職援助担当者の業務の範囲は、次に掲げるものであること(則第七条の五第一項)。

(イ) 援助計画対象者に係る求人の開拓及び援助計画対象者に係る求人に関する情報の収集並びにこれらによつて得た求人に関する情報の援助計画対象者に対する提供

(ロ) 援助計画対象者に対する再就職を容易にするために必要な相談の実施

(ハ) 援助計画対象者の再就職の援助に関する公共職業安定所、公共の職業訓練機関等との連絡

(ニ) その他援助計画対象者の再就職の援助のために必要な業務

ハ 事業主は、再就職援助担当者に、援助計画対象者及びその者が加入している労働組合の意見をきいてその業務を行うようにさせるものとしたこと(則第七条の五第二項)。

(三) 再就職援助計画に関する援助

公共職業安定所長は、再就職援助計画を提出した事業主に対して、当該計画の円滑な実施のため必要な助言その他の援助を行うものとしたこと(第二〇条の三第四項)。

(四) 国の行う再就職促進措置

イ 国は、定年に達する労働者について職業指導、職業紹介、職業訓練その他の措置が効果的に関連して実施されるように配慮し、当該労働者の再就職を促進するように努めるものとしたこと(法第二〇条の四)

定年に達する労働者の再就職の促進に努めることは国の当然の責務でもあり、再就職を促進するための各種の措置が定年に達する労働者の知識、技能、経験等の事情に応じて効果的に関連して実施されるように配慮すべきものであること。

ロ 定年に達する労働者については、定年退職後すみやかに再就職できるようにするため、本年度から定年に達する前に、職業講習及び職業訓練を実施するとともに、当該職業講習又は職業訓練を受講する労働者に対しては受講給付金を支給することとしていること。

 

第二 大量の雇用変動の場合の届出又は通知

一 届出又は通知の期限

イ 今後、流動的な国際・国内経済環境のもとで、合理化や業種転換が従来以上に進む可能性があり、雇用対策としても、産業構造の変化や景気の変動が労働者に与えるまさつをできるだけ少なくするよう、雇用変動に迅速に対応することが必要であること。

このため、従来、離職に係る大量の雇用変動の場合の届出又は通知の時期は、法においてすべて政令又は労働省令に委ねられ、政令又は労働省令において大量の雇用変動のあつた後に行うこととされていたのを改め、法自体において、大量の雇用変動のある前に行うべきこととしたこと(法第二一条第一項及び第二項)。

なお、大量の雇用変動の場合の届出又は通知に係る規定は、雇用対策法及び雇用促進事業団法の一部を改正する法律(以下「改正法」という。)の施行の日から起算して六月を経過した日(昭和四九年四月一日。以下「施行日」という。)から施行するものとするとともに、大量の雇用変動に係る離職の全部が施行日以後であるものについて適用し、離職の全部又は一部が施行日前であるものについては、なお従前の例によることとしたこと(改正法附則第一項及び第二項)。

ロ 届出又は通知を行うべき時期は、具体的には、大量の雇用変動に係る離職がある日(その変動に係る離職の全部が同一の日に生じない場合にあつては、その変動に係る最後の離職が生じる日)の少なくとも一月前としたこと(雇用対策法施行令第四条、則第九条)。

なお、届出又は通知を行うべき一月前の日が施行日前であるときは、届出又は通知は、施行日に行うべきこととしたこと(雇用対策法施行令の一部を改正する政令附則第二項、改正省令附則第四項)。

ハ 届出又は通知を大量の雇用変動の前に行うべきものとしたことに伴い、大量の雇用変動を構成する離職者の範囲から、試の使用期間中の者(同一の事業主に一四日をこえて引き続き雇用されるに至つている者を除く。)及び天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつたことにより離職する者を除くとともに、当該範囲から炭鉱離職者臨時措置法(昭和三四年法律第一九九号)第二条第一項の炭鉱労働者として雇用されていた者及び港湾労働法(昭和四〇年法律第一二〇号)第二条第六号の常用港湾労働者として雇用されていた者を除かないこととしたこと。また、離職の際に労働者として雇用される意思を有する者以外の者も当該範囲に含めることとしたこと(則第八条第二項)。

なお、改正前の則第八条第二項の規定に該当する離職者は、改正後の同項の規定の適用については、改正後の同項の規定に該当する離職者とみなすこととしたこと(改正省令附則第三項)。

二 国の行う再就職促進措置

離職に係る大量の雇用変動の場合の届出又は通知があつたときは、国は職業安定機関による広範囲にわたる職業紹介の措置のほか、公共の職業訓練機関による職業訓練の措置により、離職者の就職促進に努めるものとしたこと(法第二一条第三項)。なお本年度から、離職に係る大量の雇用変動の場合の届出又は通知に係る労働者のうち一定の要件に該当するものが職業訓練を受講する場合には、受講給付金を支給することとしていること。

 

第三 心身障害者の職業の安定を図るための施策の充実

心身障害者の雇用の状況は、健常者の場合に比べ、依然として改善が遅れており、心身障害者に職業の場を提供し、健常者に伍して社会経済活動に参加する機会を拡大することが必要であること。

このため、雇用促進事業団の業務を拡充し、心身障害者を多数雇用する事業所(モデル工場)の事業主に対して、その事業所の事業の用に供する施設又は設備の設置又は整備に要する資金の貸付けを行うものとしたこと(雇用促進事業団法(昭和三六年法律第一一六号)第一九条第三項第四号)。

この資金の貸付けの対象となるモデル工場とは、中小企業の事業主の事業所であつて、常時雇用する心身障害者の数が一〇人以上であり、かつ、これらの者の常時雇用する労働者のうちに占める割合が二分の一以上であるものをいうものであること(雇用促進事業団法施行令(昭和三六年政令第二〇六号)第七条)。また、この場合における心身障害者とは、身体障害者雇用促進法に規定する身体障害者及び児童相談所、精神衛生センター又は精神衛生鑑定医により精神薄弱者と判定された者をいうものであること(雇用促進事業団法施行規則(昭和三六年労働省令第一九号)第二四条)。

モデル工場の設置を推進する趣旨は、一般企業においても心身障害者が健常者と同様に生産活動に参加し得るという具体的なケースを示すことによつて、他の企業への心身障害者の雇用の促進の波及を図ろうとするものであるので、当該制度の積極的活用を図るほか、その他の援護助成措置の活用によつてモデル工場の健全な発展が促進されるよう努めること。

 

第四 移転就職者用宿舎の有効活用

移転就職者用宿舎は、公共的資産としての性格を有することにかんがみ、その有効活用を図ることが必要であること。

このため、雇用促進事業団は、移転就職者用宿舎を、住居の移転を余儀なくされたこと等に伴い職業の安定を図るために宿舎の確保を図ることが必要であると公共職業安定所長が認めるものに、移転就職者の利用に支障がない限り、貸与することができるものとしたこと(雇用促進事業団法第一九条第五項)。