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通達:中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の施行について

 

中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法の施行について

昭和46年9月17日発職第132号

(各都道府県知事あて労働事務次官)

 

中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法は、去る五月二五日、昭和四六年法律第六八号として公布され、来る一○月一日から施行されることとなり、また、これに伴い、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法施行令が九月四日に政令第二八二号として公布され、中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法施行規則及び職業安定法施行規則等の一部を改正する等の省令も九月八日にそれぞれ労働省令第二四号及び第二五号として公布され、いずれも来る一○月一日から施行されることとなつたので、下記の事項について十分理解のうえ、所期の目的を達成するようその実施に万全を期せられたく、命により通達する。

 

第一 趣旨

この法律は、経済の高度成長に伴い、雇用失業情勢が著しく改善され、全般的に労働力不足が一層進行しつつあるにもかかわらず、中高年齢者等の就職はなお困難な状況にあり、また、今後労働力人口の高齢化が予測されるので、中高年齢者等がその能力に適合した職業につくことを促進し、その能力を有効に発揮することができるようにする必要があることにかんがみ、中高年齢者の適職の研究、求人者等に対する指導・援助、雇用率の設定とその達成のための措置、雇用奨励措置、中高年齢失業者等求職手帳制度の新設とこれによる就職促進の措置の実施、中高年齢者の就職が著しく困難な特定地域についての対策の強化等のきめ細かな措置を総合的、計画的に講じ、中高年齢者等の雇用の促進を図ることとしたものである。

また、このような措置を講ずることにより、今後新たに発生する失業者は、従来のように失業対策事業に依存することなく、通常の雇用に就職することが期待できることとなるので、この法律の附則において緊急失業対策法の効力を規制し、現行の失業対策事業は、この法律の施行時における一定の就労者のみを対象として実施していくこととし、今後新たに発生する失業者はこれに就労させないこととしている。

以上のように、この法律は、わが国の雇用失業情勢の現状と見通しのうえにたち、従来の施策についての実績をふまえて、雇用失業対策の制度に刷新改善を加え、その飛躍的な拡充を図つたものであり、同時に、職業安定行政が、労働力政策として、情勢の変化に即応しつつ求人と求職の結合を図るという本来の使命に徹することができるよう、その体制の整備を図つたものであつて、今後の雇用政策の推進にあたつて画期的な意義を有するものである。さらに、ときあたかも国際経済の変動に伴い雇用失業面への影響が予想され、特に中高年齢者の就職が困難な事態にたち至ることも考えられるが、その場合には、この法律は一層重大な役割を担うこととなろう。

 

第二 概要

一 中高年齢者に対する特別措置について

(一) 中高年齢者(四五歳以上の者)の適職、労働能力の開発方法等中高年齢者の雇用の促進に関し必要な事項について、調査、研究及び資料の整備に努めるとともに、中高年齢者についての職業紹介体制の整備を図り、

(二) 事業主に対して求人条件や雇用の管理、職場環境等の指導、援助を行ない、中高年齢者の受入れ体制の改善、整備を図るとともに、中高年齢者の適職について雇用率を設定し、雇用率未達成職種の事業主に対してはその未達成職種について中高年齢者でないことを条件とする求人の申込みを受理しないことができることとし、また、一定の事業主に対しては雇用率達成のために必要な措置を講ずることを要請することができることとし、

(三) 中高年齢者が雇用率設定職種に雇用されることを奨励・援助するため、事業主に対して、職場適応訓練費の額及び労働福祉施設に対する融資について優遇措置を講ずることとしている。

二 中高年齢失業者等に対する特別措置について

(一) 中高年齢失業者等求職手帳(以下「手帳」という。)の制度を新設し、中高年齢失業者等(四五歳以上六五歳未満の失業者及び身体障害者等就職が特に困難な六五歳未満の失業者)で一定の要件に該当するものに対して手帳を発給し、手帳の有効期間中、手当を支給しながら就職促進の措置を実施し、その再就職を強力に進めることとしている。

(二) 手帳の有効期間については、年齢、地域の雇用失業情勢に応じて延長することができることとし、その間きめ細かな施策を講ずることとしている。

(三) なお、就職促進の措置が効果的に関連して実施されるための計画が別添(一)のとおり定められ、また、手帳の発給を受ける者に対する職業指導及び職業紹介を専門的に行なう就職促進指導官に関する規程が別添(二)のとおり定められた。

三 特定地域における措置について

(一) 都道府県の申請により、中高年齢者である失業者の就職が著しく困難な地域を特定地域として指定することとし、

(二) 特定地域に居住する中高年齢失業者等については、前記の手帳の有効期間の延長措置のほか、公共事業における中高年齢失業者等の吸収率を設定し、公共事業への就労の促進を図るとともに、

(三) 必要に応じて特定地域開発就労事業を実施し、当該地域の開発に寄与するとともに雇用の増大を図ることとしている。

(四) なお、これらの特定地域における措置を総合的、効果的に講ずるための計画が別添(三)のとおり定められた。

 

第三 運用の方針

一 この法律に規定されている以上の諸施策を活用することによつて、今後中高年齢者の就職の確保に最大限の努力を傾注しなければならないが、特に、

(一) 今後の経済情勢の変動によつて雇用失業情勢が一時的に悪化することも予想されるので、このような事態に対処するためにも、手帳制度による就職促進の措置を積極的、かつ、公正に推進し、

(二) 中高年齢者を雇い入れる事業主に対する援助を強化し、受入れを容易にするための行政指導を積極的に展開することとされたい。

(三) なお、特定地域における対策については、広域職業紹介活動を一層強力に進めるとともに、実情に応じて公共事業への吸収を図るほか、これらの措置でなお十分でない場合には特定地域開発就労事業の実施によつて中高年齢失業者等の臨時的な就労の機会の確保を図る等万全を期されたい。

二 この法律の施行に伴つて、本年一○月一日以降においては、緊急失業対策法による失業対策事業への新たな就労は認めないこととなるが、

(一) 現在の就労者については、就職支度金の増額等の措置を講じ、その活用により、極力その自立化を促進し、

(二) 自立困難な残余の就労者を対象とする失業対策事業については、事業種目の選定、事業の管理運営に当り、就労者の実態に応じて適切な方策を講ぜられたい。

 

別添一

○中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法第一五条第一項の規定に基づく就職促進の措置に関する計画

昭和四六年九月一七日

労働省公示

中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法(昭和四六年法律第六八号)第一五条第一項の規定に基づき、就職促進の措置に関する計画を次のように定め、昭和四六年一○月一日から適用することとしたので、公示する。

中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法第一五条第一項の規定に基づく就職促進の措置に関する計画

第一 総則

中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法(以下「法」という。)第一二条の中高年齢失業者等求職手帳(以下「手帳」という。)の発給を受けた者(以下「手帳所持者」という。)に対しては、この計画で定めるところに従つて就職促進の措置を実施することを原則とするものとする。

第二 進路の決定

公共職業安定所長は、手帳の申請を受理したときは、当該申請をした者を担当する就職促進指導官を定め、当該申請が手帳の発給の要件に該当するかどうかの審査を行ない、当該要件に該当すると認めたときは、すみやかに当該申請をした者に対し実施すべき就職促進の措置を決定し、手帳の発給と同時に、法第一六条第一項の指示をするものとする。

第三 就職促進の措置

一 就職促進の措置は、次の各号に掲げる措置のうち手帳所持者の知識、技能、職業経験等の状況に応じ最も効果的である措置を中心として実施するものとする。

(一) 長期職業訓練(職業訓練法(昭和四四年法律第六四号)に基づいて公共職業訓練施設の行なう職業訓練で訓練期間が六月ないし一年のものをいう。)

(二) 短期職業訓練(職業訓練法に基づいて公共職業訓練施設の行なう職業訓練で訓練期間がおおむね三月のものをいう。)

(三) 職場適応訓練(法第一五条第一項第三号に掲げる訓練で失業者に作業環境に適応することを容易にさせるために行なわれるものをいう。)

(四) 職業講習(法第一五条第一項第三号に掲げる訓練で失業者に就職のため必要な知識及び技能を習得させるために行なわれるもの及び雇用促進事業団法(昭和三六年法律第一一六号)第一九条第一項第六号の講習をいう。)

(五) 就職指導措置(失業者に対して就職促進指導官が労働省職業安定局長が定めるところに従つて計画的に行なう職業指導及び職業紹介をいう。)

二 長期職業訓練、短期職業訓練、職場適応訓練又は職業講習を実施するまでの間において必要がある場合には、就職指導措置を実施するものとする。

三 長期職業訓練、短期職業訓練又は職業講習を実施した後において必要がある場合には職場適応訓練又は就職指導措置を、職場適応訓練を実施した後において必要がある場合には就職指導措置を実施するものとする。

四 法第一三条第二項の規定により手帳の有効期間が延長される場合における当該延長期間に係る就職促進の措置は、延長前に実施された就職促進の措置の効果等を考慮して、長期職業訓練、短期職業訓練又は職場適応訓練を中心として実施するものとする。

五 長期職業訓練、短期職業訓練、職場適応訓練又は職業講習が実施されている期間であつても、手帳所持者の就職を促進するため必要がある場合には、その者に対して職業指導又は職業紹介を行なうものとする。

第四 就職促進の措置の期間

一 就職促進の措置の期間は、次の各号に掲げるところによるものとする。

(一) 長期職業訓練又は短期職業訓練については、その訓練期間

(二) 職場適応訓練については、おおむね六月

(三) 職業講習については、おおむね二月

(四) 就職指導措置については、六月以内

二 前項の規定にかかわらず、前記第三の三により就職促進の措置を実施しようとするとき、法第一六条第三項の規定により指示を変更しようとするとき、又は従前法第一六条第一項若しくは第二項の規定により指示した就職促進の措置を受けた者に対して新たに法第一六条第一項の指示をしようとするときは、その就職促進の措置の期間について、それまでの就職促進の措置の効果等を考慮して特別の取扱いをすることができるものとする。

別添二 (略)

 

別添三

○中高年齢者等の雇用の促進に関する特別措置法(昭和四六年法律第六八号)第二一条の規定に基づき、特定地域に居住する中高年齢失業者等の雇用の促進に関する計画を次のように定める。

昭和四六年九月一七日

労働省公示

特定地域に居住する中高年齢失業者等の雇用の促進に関する計画

第一 基本方針

特定地域における中高年齢失業者等に係る雇用失業情勢の現状にかんがみ、特定地域に居住する中高年齢失業者等の雇用を促進するため、通常の施策に加えて特に手厚い施策を講ずるものとする。

すなわち、特定地域においては、まず、中高年齢失業者等の特性を十分考慮しつつ、広域職業紹介活動を積極的に推進するほか、中高年齢失業者等に対する職業指導及び職業紹介並びに職業訓練の充実を図るものとし、これらの施策によつてもなお中高年齢失業者等の就職が困難な場合には、公共事業における中高年齢失業者等の吸収率を設定して、まず公共事業への就労を積極的に推進し、さらに、必要に応じ、特定地域開発就労事業を実施するものとする。

なお、これらの施策は、地方公共団体等が行なう地域開発や企業誘致等の関連施策との有機的な連携を図りつつ、この計画に準拠して計画的に、かつ、地域の実情に応じて最も効果的に実施するものとする。

第二 施策

一 職業指導及び職業紹介並びに職業訓練の充実

(一) 中高年齢失業者等の求人―特に、新規立地企業、農村地域への導入工業に係る求人―の積極的な開拓、確保に努める。

(二) 求人者等に対する指導及び援助の強化、雇用率の達成の促進、雇用奨励措置や職業転換給付金制度の積極的活用等により、中高年齢失業者等の雇用の促進を図る。

(三) 就職促進指導官等専門職員を重点的に配置して、きめ細かな職業指導及び職業紹介を実施するとともに、必要に応じ巡回職業相談を実施し、あるいは市町村等の協力を得て職業相談を実施する等地域の事情に応じて機動的に職業紹介業務を実施する。

(四) 中高年齢失業者等求職手帳制度を活用し、就職促進の措置を積極的かつ効果的に実施する。なかでも、職場適応訓練は、中高年齢失業者等の就職の促進に特に効果的であることにかんがみ、これを積極的かつ重点的に活用する。

(五) 中高年齢失業者等の特性に応じた職業訓練を行なう訓練施設の設置、これらの者に適した職種に係る訓練科の増設、訓練定員の拡大、委託訓練の活用等職業訓練の拡充を図り、地域の実情に応じてその弾力的な運営を行なう。

二 公共事業における中高年齢失業者等の吸収率の設定と公共事業への就労の積極的な促進

中高年齢失業者等の就職の状況等からみて特に必要があると認めるときは、特定地域において計画実施される公共事業について、当該地域における中高年齢失業者等に係る雇用失業情勢、当該公共事業における中高年齢失業者等の雇用の状況等を考慮しつつ、中高年齢失業者等の吸収率を設定し、これらの者の公共事業への就労を積極的に促進する。

なお、中高年齢失業者等に係る雇用失業情勢が著しく悪化している地域については、必要に応じ、公共事業に準ずる事業についても公共事業の場合と同様の効果をあげるため必要な措置を講ずるよう関係地方公共団体等に要請するものとする。

三 特定地域開発就労事業の実施

特定地域のうち地理的条件等からみて開発の可能性を有すると認められ、かつ、中高年齢失業者等が多数居住する地域において、当該地域の開発に寄与するとともに、産業振興の進展により雇用需要が増大するまでの間臨時的に就業の機会を提供することを目的とする特定地域開発就労事業を実施する。

この事業は、地域の開発に寄与する事業であるという性格のほか、失業対策としての性格を有するものであることにかんがみ、当該地域の雇用失業情勢の推移、当該地域における中高年齢失業者等の実態等に応じて弾力的に実施するものとする。

また、この事業に就労する者に対しては、この事業に就労している間に、再就職に必要な技能を習得し、あるいは職業紹介の実施等により安定した雇用に再就職することができるよう配慮するものとする。

四 公共事業の実施と特定地域開発就労事業の実施との調整

特定地域開発就労事業は、公共事業への就労とあいまつて、中高年齢失業者等に対し臨時的に就業の機会を提供することにより、これらの者の生活の安定を図るものであることにかんがみ、当該地域における公共事業への就労の積極的な促進に努めるとともに、その状況と十分調整を図りつつ、適切かつ効果的に実施するものとする。

五 地方公共団体等関係機関との有機的な連携、協力の確保

前記の諸施策は、地方公共団体等関係機関との有機的な連携のもとに、あるいはこれらの機関の十分な協力を得て、これらの機関が行なう地域開発、企業誘致(農村地域への工業の導入を含む。)、住民福祉等の関連施策を十分考慮しつつ、実施するものとする。