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大量の雇用変動の場合の届出等について
昭和42年1月13日職発第22号
(各都道府県知事あて労働省職業安定局長通達)
雇用対策法第二一条の規定に基づいて、生産設備の新設等による雇用量の変動であつて、事業主又は国若しくは地方公共団体の任命権者(委任を受けて任命権の行使を行なう者を含む。)が届出又は通知をすることを必要とするもの及び事業主が届出をする場合の手続を定めた雇用対策法施行規則の一部を改正する省令(昭和四二年労働省令第一号・別紙一)、同条に規定する雇用量の変動について国又は地方公共団体の任命権者が通知する場合の手続を定めた雇用対策法施行令の一部を改正する政令(昭和四二年政令第四号・別紙二)並びに国又は地方公共団体の任命権者が大量の雇用変動を通知する場合の様式を定めた告示(昭和四二年労働省告示第一号・別紙三)が昭和四二年一月一二日付けをもつて公布され、雇用対策法第二一条の規定の施行の日である昭和四二年一月二一日から施行されることとなつた。
本条は、大量の雇用変動があり、関係地域の労働力需給に影響を及ぼすおそれがある場合に、職業安定機関が可及的すみやかに情報をは握し、広範囲にわたる求人・求職の開拓・職業紹介活動の実施等このような事態に対処するために必要な措置を迅速かつ的確に講じようとする趣旨のものである。
ついては、下記に御留意のうえ遺憾のないよう御配意をお願いする。
記
第一 大量の雇用変動
一 届出又は通知の対象となる雇用量の変動
(一) 事業主が雇用対策法(以下「法」という。)第二一条第一項の規定に基づいて届出を、国又は地方公共団体の任命権者が法第二一条第二項の規定に基づいて通知をそれぞれしなければならない雇用量の変動は、雇用対策法施行規則(以下「則」という。)第八条に規定する雇用量の変動であつて、雇入れに係る雇用量の変動(則第八条第一項)と離職に係る雇用量の変動(則第八条第二項)とがあること。
(二) 雇入れに係る雇用量の変動又は離職に係る雇用量の変動に該当するかどうかは別個に判断するものであつて、同一の事業所で、同一の期間に、雇入れと離職があり、総体として事業主が雇用する労働者の数に変化はなくても、雇入れ及び離職がそれぞれ則第八条第一項又は第二項に該当するときは、雇入れに係る雇用量の変動及び離職に係る雇用量の変動の届出又は通知が必要となること。
二 雇用量の変動をみる単位及び期間
(一) 雇入れに係る雇用量の変動も、離職に係る雇用量の変動も、ともに同一の事業所において、一月以内の期間でみるものであること。
(二) この場合において、「同一の事業所」であるか否かの判断は、次の基準によつて行なうものであり、おおむね失業保険において事業主が被保険者の資格の得喪に関する届出等の事務を処理する単位の事業所と同じであること。
イ 場所的に他の(主たる)事業所から独立していること。
ロ 経営(又は事務)単位としてある程度の独立性を有すること。
ハ 一定期間継続し、施設としての持続性を有すること。
これを具体的にみると、民間においては本社、支店、工場等がそれぞれの一の事業所であり、国又は地方公共団体においては本省(庁)、地方機関(例都道府県労働基準局、通商産業局)、第一線機関(例公共職業安定所、税務署、地方事務所、保健所)が、それぞれ一の事業所となるものであるが、上記基準により難いときは、社会保険における取扱い、労働者名簿及び賃金台帳の備付けの状況等も考慮して判断すること。
(三) 事業所単位で雇用量の変動をみるものであるから、事業主が数個の事業所を有する場合、又は任命権者が所轄する事業所が数個ある場合において、具体的に事業所ごとに何人雇い入れるかを明示して募集又は求人の申込みをするときは、雇入れの直後集合して研修をすることがあつても、当該事業所における雇用量の変動であるが、一括して雇い入れた後に所属を決定するようなときは、その事業主又は任命権者が所在する事業所における雇用量の変動とみること。
(四) 「一月以内の期間」の一月は暦の上の一月・二月・三月の一月ではなく、暦に従つて計算をする一月であること。
三 大量の雇用変動に該当する場合
(一) 雇入れに係る雇用量の変動
イ 雇入れに係る雇用量の変動とは、同一の事業所において、一月以内の期間に、則第八条第一項第一号から第七号までに掲げる者を除いて、①雇い入れようとする者の数が五〇以上となつた場合、又は②すでに雇い入れた者の数と雇い入れようとする者の数を合算した数が五〇以上となつた場合であること(則第八条第一項)。
「雇い入れようとする者の数が五〇以上となつた」とは、人事について権限ある者又は機関が五〇人以上の雇入れをすることを決定したことをいうものであること。従つて、五〇人以上の雇入れの目標又は見通しを決定した程度ではこれに該当しないものであること。
「すでに雇い入れた者の数と雇い入れようとする者の数を合算した数が五〇人以上となつた場合」とは、例えば三〇人雇い入れた後、一月以内に、更に二〇人以上の雇入れを決定した場合等を考慮しているものであること。
①及び②のいずれの場合も、その一月に雇い入れようとする者又は雇い入れた者がすでに五〇人以上あつて、その雇い入れに関して法第二一条第一項又は第二項の規定に基づいて届出又は通知が行なわれているときは、その届出又は通知に係る者の数を除いて計算するものであること。従つて一月以内の期間に五〇人以上の雇入れを決定して、その旨を届出又は通知をした後は、その後の四九人までの雇入れの決定については、届出又は通知をしなくてもよいが、五〇人以上となる雇入れを決定したときは、さきに届出又は通知をした後の五〇人以上の雇入れの決定について届出又は通知をする必要があること。
ロ 則第八条第一項第一号から第六号までに掲げられた者については、次のことに留意されたいこと。
(イ) 「期間を定めて雇用される者」とは、通常は一年以内の期間を定めて雇用される者であるが、有期の事業に雇用される者については、当該事業の完了までに必要な期間であれば、一年をこえる期間を定めて雇用される者があること(労働基準法第一四条参照)。
なお、雇用期間が明示されていなくても、一定の工事又は作業の終了までという定めで雇用される者も、ここにいう「期間を定めて雇用される者」であること。
(ロ) 「常時勤務に服することを要しない者」とは、審議会の委員、非常勤講師のように毎日勤務に服することを要しない者であつて、嘱託等の名称は用いられていても毎日勤務に服することを要する者は、ここにいう常時勤務に服することを要しない者ではないこと。
(ハ) 「新たに学校を卒業して雇用される者」とは、いわゆる新規学校卒業者であつて、中学校・高等学校・高等専門学校、大学等を卒業して卒業時期に雇用される者をいい、中途退学者は含まないものであること。
(ニ) 「法令の規定に基づいて行なわれる公開の競争試験により雇用される者」とは、国家公務員法第三六条、地方公務員法第一七条第三項、自衛隊法第三五条第一項等の規定に基づいて行なわれる競争試験に合格して雇われる者をいい、選考により雇われる者は含まれないものであること。法令の規定に基づく試験であつても資格を附与するための試験(例無線従事者国家試験、建築士試験、クレーン運転手試験)はここにいう競争試験ではないものであること。
(ホ) 「教育公務員特例法第四条第一項(同法第二二条において準用する場合を含む。)又は同法第一三条第一項(同法第二二条において準用する場合を含む。)の規定に基づいて行なわれる選考により雇用される者」とは、国立学校及び公立学校の学長、校長(園長を含む。)、教員(教授、助教授、教諭、助教諭、養護教諭及び(講師)及び助手、国公立の各種学校の校長及び教員並びに文部省設置法第一四条に掲げる機関(日本ユネスコ委員会、国立教育研究所、国立科学博物館、国立近代美術館、国立西洋美術館、国立社会教育研修所、緯度観測所、統計数理研究所、国立遺伝学研究所、国立国語研究所、日本学士院)、国立博物館及び国立文化財研究所の長及びその職員のうちもつぱら研究又は教育に従事する者であること。
ハ 則第八条第一項第七号の労働大臣が定める者としては、昭和四二年一月二一日付けをもつて裁判官として雇用される者及び大学又は高等専門学校の学長(校長を含む。)、教授、助教授、助手若しくは講師として雇用される者等が定められる予定であること(別紙四)。
(二) 離職に係る雇用量の変動
イ 離職に係る雇用量の変動とは、同一の事業所において、一月以内の期間に、則第八条第二項第一号から第四号までに掲げる者を除いて、自己の都合又は自己の責めに帰すべき理由によらないで離職した者であつて、当該離職の際に労働者として雇われる意思を有するものの数が五〇以上となつた場合であること(則第八条第二項)。
この場合において、一月以内の期間に、則第八条第二項に規定する離職者が五〇人以上あり、その離職に関してすでに法第二一条第一項又は第二項の規定に基づいて届出又は通知が行なわれた後に、更に則第八条第二項に規定する離職者がでても上記の届出又は通知に係る者は雇用量の変動となる数から除かれるので、離職に係る雇用量の変動について届出又は通知をした後、離職者が四九人に達するまでは届出又は通知を必要としないが、五〇人以上となつたときは、さきに届出又は通知をした後の五〇人以上の離職について届出又は通知を必要とするものであること。
ロ 則第八条第二項の「自己の都合」又は「自己の責めに帰すべき理由」によらない離職には定年退職も含むものであること。退職が形式的に依願退職の形をとつていても、実態が「自己の都合」による離職である場合のほかは、則第八条第二項の離職に該当するものであること。
ハ 「当該離職の際に労働者として雇用される意思を有する」者のみが、則第八条第二項の離職者に該当する者であつて、離職の後自営業を営もうとする者、家事に専念する者、隠居する者等は則第八条第二項の離職者ではないものであること。
ニ 則第八条第二項第一号から第四号までに掲げる者については、次のことに留意されたいこと。
(イ) 「日日又は期間を定めて雇用される者」については、日日又は期間を定めて雇用されている者でも、日日又は六月以内の期間を定めて雇用された者が、同一の事業主に六月をこえて引き続き雇用されるに至つたとき及び六月をこえる期間を定めて雇用された者が、同一の事業主に当該期間をこえて引き続き雇用されるに至つたときは、それぞれその後のその者の離職が「自己の都合」又は「自己の責めに帰すべき理由」によらないときは、則第八条第二項の離職に該当するものであること。
(ロ) 「港湾労働法第二条第六号の常用港湾労働者」とは、港湾労働法の指定港湾における常用港湾労働者であること。
第二 届出又は通知の方法及び期限
一 届出又は通知を行なう者
雇用量の変動に関して、届出をする者は事業主であり(法第二一条第一項)、通知を行なう者は国又は地方公共団体の任命権者又はその委任を受けて任命権を行使する者である(法第二一条第二項)が、事業主又は任命権者は代理人によつて届出又は通知をさせて差しつかえないものであること。従つて、事業所の長、事業所の人事担当部門の責任者等事業主又は任命権者のためにすることが明らかな者の名において届出書又は通知書の提出があつたときは、受理して差しつかえないものであること。
国又は地方公共団体の事業所において異なる任命権者にかかる職員の変動を合計して大量の変動に該当する場合の通知も、当該事業所の長又は当該事業所の人事担当の責任者の名において行なわれれば差しつかえないものであること。
二 届出又は通知の期限
(一) 雇入れに係る雇用量の変動についての届出又は通知は、則第八条第一項に該当する雇用量の変動があつた後遅滞なく行なうものであるが(政令第四条・則第九条)、「遅滞なく」とは、正当又は合理的な理由がない限り直ちにの意であるから、則第八条第一項に該当する雇用量の変動があつた後遅滞なくとは、通常の場合においては、五〇人以上の雇入れを決定して職業紹介機関に求人の申込みを行なうか又は募集を行なう前であること。
(二) 離職に係る雇用量の変動については、則第八条第二項に該当する雇用量の変動があつた日の翌日から起算して一〇日以内に届出又は通知を行なうものであるが(政令第四条・則第九条)、離職者の就職の促進のためにはでき得る限り早期に届出又は通知を行なわせることが望ましいので、労使間に人員整理に関する協定が整つた場合等労使双方にとつて支障のない限り、則第八条第二項に規定する雇用量の変動が生じる前に届出又は通知をさせるよう指導すること。
三 届出又は通知の様式等
事業主が行なう届出は、雇入れに係る雇用量の変動については大量雇入届(則様式第一号)を、離職に係る雇用量の変動については大量離職届(則様式第二号)を、国又は地方公共団体の任命権者が行なう通知は、雇入れに係る雇用量の変動については大量雇入通知書(告示様式第一号)を、離職に係る雇用量の変動については大量離職通知書(告示様式第二号)を、それぞれ雇用量の変動があつた事業所の所在地を管轄する公共職業安定所(労働公共職業安定所を除く。)の長に行なうものであること(政令第四条、則第九条)。
第三 経過措置
昭和四二年一月二一日以前に雇い入れようとした者、雇い入れた者及び離職した者は、則第八条の規定の適用については、すでに法第二一条の規定に基づいて行われた届出又は通知に係る者とみなされるので(則附則第二項)、法第二一条の規定は、同日以降の雇い入れの決定雇入れ又は離職から適用されるものであること。
第四 届出又は通知を受理する組織及びその後の措置
雇用量の変動についての届出又は通知は、公共職業安定所の事業所関係課において受理するものとし、届出又は通知を受理したときは、事業所関係課と職業紹介関係課との連絡を密にし、次の措置を講ずること。
雇入れに係る届出又は通知を受けたときは、当該地域の労働力需給の状況に応じて、事業主に対し、必要な労働力の確保について指導するとともに、管轄区域内の求職の開拓に努めるほか、必要に応じ他地域の公共職業安定所に求人に関する情報として通報すること等により、広範囲にわたり、当該雇入れに適合する求職者のは握に努め、求人の受理後迅速かつ的確に職業紹介が行なわれるよう配意すること。
離職に係る届出又は通知を受けたときは、管轄地域内の求人開拓に努めるほか、必要に応じ、他地域の公共職業安定所に求職者に関する情報として通報する等により、広範囲にわたり当該離職者に適合する求人のは握に努め、求職の申込みが行なわれた場合に迅速に適職への再就職が図られるよう配意すること。
なお、広範囲にわたる情報の伝達については、データ伝送システムを活用するものとするが、その詳細については別途指示する予定であること。
おつて、法第二一条第三項にいう離職者の就職の促進と労働力の確保は、届出又は通知に係るものについて特に他に優先して行なうという趣旨ではなく、大量の労働力需要又は大量の離職者が発生することによつて当該労働市場に累積する労働力需要又は離職者の全体について、労働力の確保と離職者の就職の促進を図ることにあることに留意されたいこと。
別紙(略)