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駐留軍関係離職者就職指導業務実施要領について
昭和41年9月17日業指発第98号
(労働主管部長あて労働省職業安定局業務指導課長通達)
駐留軍関係離職者等臨時措置法に基づく就職指導の実施については別添の要領により実施することとするので、その適正な実施に遺憾のないようご配慮願いたい。
別添
駐留軍関係離職者就職指導業務実施要領
昭和四一年八月職業安定局
目次
第一 概要
一 就職指導の意義
二 就職指導の内容
三 公共職業安定所における駐留軍関係離職者の就職指導関連業務分担
第二 進路決定のための指導
一 進路決定のための指導の意義
二 進路決定のための指導の大要
三 進路決定のための指導課程および個人別指導計画
四 求職者および家族についての理解
五 諸検査の実施
六 職業情報の提供
七 進路決定のための相談
八 集団指導の実施
九 就職指導会議の開催
第三 紹介相談および職業訓練等に関する相談
一 紹介相談
二 職業訓練に関する相談
三 進路決定後の待機者に対する援助
四 就職後の指導
五 委嘱または移管の措置等
第四 駐留軍関係離職者就職指導記録票
一 様式および記入要領
二 保管整理
第一 概説
一 就職指導の意義
駐留軍関係施設等の整備に伴い、多数の駐留軍関係離職者の発生が余儀なくされているが、これら駐留軍関係離職者の再就職にあたつては、今後駐留軍関係離職者に対して就職指導票を交付するとともに、いわゆるケースワーカーである就職促進指導官を公共職業安定所に配置して、駐留軍関係離職者である求職者を個人別に担当させ、個別的かつ綿密な就職指導を行なうこととし、一方においては、就職促進手当の支給等の援助措置により、安定的職業への就職を促進することとなつた。この場合、これらの援護措置は就職促進指導官の行なう就職指導と有機的に結合して行なわれるものであり、就職促進指導官の就職指導を受けることを拒み、またはその指示に従わない駐留軍関係離職者に対しては、認定を取消し、交付した駐留軍関係離職者就職指導票を返納させ、就職促進手当の支給等の援護措置をも停止することとしている。このように就職促進指導官の行なう就職指導は、駐留軍関係離職者対策の支点ともなる重要な意義を有するものである。
二 就職指導の内容
就職指導は、個々の駐留軍関係離職者の個別的事情に即応して、その再就職上の諸問題の把握から解決に至るまでの一連の過程を個別的かつ継続的に処理するいわゆるケースワーク方式により行なうものとする。そして就職指導の内容は、計画的に就職を促進する方策としての進路決定のための相談及び指導、的確な職業紹介を行なうための紹介相談、職業訓練を受けさせるための相談および指導等とするが、これらの実施過程を通じて職業適性検査等を積極的に実施するほか、家庭をも含めた全般的な生活指導をも必要に応じて行なうものとする。
なお、就職指導は、駐留軍関係離職者と認定した者に対して実施するものである。したがつて安定した職業に就職することにより、当該認定が失効した者に対して行なう就職後の定着指導等は概念的には駐留軍関係離職者等臨時措置法でいう就職指導の範囲外であり、これらの業務は一般職業指導業務として行なうこととなるものである。しかし就職後の定着指導に関する業務は、就職指導と極めて密接に関連して行なわれるべきものであるから、便宜上本要領において記述するものとする。
三 公共職業安定所における駐留軍関係離職者の就職指導関連業務分担
管轄公共職業安定所における駐留軍関係離職者と認定した者に対する就職指導業務は、就職促進指導官が行なうものとする。管轄公共職業安定所における就職指導関連業務の分担を示すと概ね次のとおりである。
公共職業安定所における就職指導関連業務分担
担当者 |
業務内容 |
受付及び新規面接担当者 |
1 求職票用紙の交付 2 求職の受理 3 認定申請書その他証明書の提出指導 4 認定申請書の受理 |
主管課長 |
1 受持就職促進指導官の決定 |
就職促進指導官 |
1 就職指導票の交付および交付台帳の作成 2 就職指導記録票の作成 3 進路決定のための相談および紹介相談の実施 4 職業適性検査その他必要な諸調査の実施 5 職業訓練所との連絡 6 職業訓練所入所の指示 7 就職指導票の返納命令 8 他安定所への委嘱および移管 9 求職状況の紹介係、求人係への連絡 10 紹介状の発行 11 家族との相談 12 自管内の求人先事業所との連絡 13 自管内採否確認 14 自管内定着指導 15 手当受給要件の確認 16 手当日額の算定 17 交付台帳の作成、保管 18 自己の労働による収入の認定 19 手当の支給停止処分 20 手当の返還命令 21 審査請求の受理 |
支給係 |
1 手当の支給 |
経理係 |
1 返還される手当の受理 |
事業所係 |
1 就職促進指導官と協力しての定着指導 2 求人受理及び求人開拓 |
第二 進路決定のための指導
一 進路決定のための指導とは、求職者が自らの力によつて将来の進路の計画を決め、自らが選んだ職業分野に進み、そこで適応することのできるよう指導を行なうことである。
進路決定のための指導とは、職業の選択はもちろんのこと、職業生活適応のための指導、就職の準備過程としての職業訓練等の進路を決定させるための指導を含むものであつて、その求職者にとつて、望ましい職場への就職、職場での成功の可否を左右する最も重要な要素である。したがつて、進路決定のための指導は、求職者個人別に作成された長期的な指導計画に従い計画かつ継続的に行なわれるものでなければならない。
二 進路決定のための指導の大要
進路決定のための指導の大要は、おおむね次のとおりである。
(一) 進路決定のための指導を一般指導と特別指導とに分ける。一般指導はすべての求職者を対象として行なう指導をいい、その期間は、求職受理後六週間以内とし、この期間内にできるだけはやく今後の進路を求職者自らに決定させることを目標として行なう指導で、三に示す「進路決定のための指導課程」の一般指導の項目によるものとする。
また、特別指導は、進路を決定したがその進路についてさらに細部の指導が必要な求職者(職業訓練所への入所時期まで待機している者を除く。)に対して行なう指導であり、その期間は求職受理後おゝむね三ケ月以内とし、以後は、紹介相談が行なわれるよう努めるものとする。特別指導において行うべき指導は、三の「進路決定のための指導課程」の特別指導の項目によるものとする。
(二) 指導は、ケースワーク方式で行なわれる。即ちケースワーク方式による指導は、求職者の個性を把握分析し、把握された求職者に関する各種の情報資料を検討総合し、職業能力、適性および指導を必要とする問題などを診断し、個人別指導計画を作成し、それに従つて必要な助言処置を行なうものである。
(三) 指導は、求職者個人との相談を通じて、個別的に実施するものとする。ただし、主として一般指導の段階において、たとえば、職業情報や産業情報の提供等のように、これを集団的に実施してもその効果を十分期待できるものについては集団指導によつても差しつかえない。
(四) 指導は、その求職者を担当する就職促進指導官が実施するものとするが、その具体的内容及び方法については就職指導会議(ケース会議)にはかつたうえ決定するものとする。
(五) 求職者に対する進路決定のための指導は、定期出頭日に行なうほか、必要に応じて、随時、呼出しまたは家庭訪問等を行ない実施するものとする。
三 進路決定のための指導課程および個人別指導計画
(一) 進路決定のための指導課程の内容
進路決定のための指導課程の内容は、次のとおりとする。
進路決定のための指導課程
区分 |
指導項目 |
具体的内容 |
一般指導 |
個人及び家族についての理解 |
家族状況の聴取 技能知識の聴取 身体条件の聴取(身体検査の実施) 本人希望事項の聴取 職業興味調査の実施 経験職業調査の実施 就職相談調査の実施 技能測定口頭試問の実施 |
簡易心理検査の実施職業情報の提供 |
職業能力検査の実施 雇用条件に関するもの 労働市場状況に関するもの 職業、職務の解説 産業の解説 職場の生活に関するもの 主要需要地の生活に関するもの 職業訓練に関するもの 雇用促進事業団の援護措置に関するもの 適職、転換可能職種についての相談 |
|
進路決定のための相談 |
進路計画についての相談 あつせん予定事業所の内容等についての相談 |
|
(紹介相談) |
(就職あつせん、職業訓練所入所指示) |
|
特別指導 |
職業情報の提供 |
一般指導において提供する情報のうち特に必要と認めるもの |
心理検査の実施 |
一般職業適性検査の実施 特殊性能検査の実施 その他必要な検査の実施 |
|
進路決定のための相談 |
進路計画についての相談 |
|
(紹介相談) |
(就職あつせん・職業訓練所入所指示) |
(二) 進路決定のための個人別指導計画の作成
進路決定のための個人別指導計画は、求人状況を考慮したうえで個々の求職者ごとに指導課程に基づいて作成するものとする。
イ 進路決定のための指導には、常に紹介相談が結びついているものである。すなわち、一般指導の全課程が終了しなければ紹介相談を行ないえないものではなく、第一回~第二回定期出頭日のごとく、一般指導の初期の段階においても、紹介相談に移る者もある。また、求職者に適当とみられる求人がある場合、職業訓練所の入所日が迫つている場合等には紹介相談をかねた進路決定のための指導を行なうよう個人別指導計画を作成するものとする。
ロ 特別指導の対象となる求職者のもつ問題は、多様かつ、複雑であるため、この段階の指導においては、求職者の特質および問題について入念に把握し、綿密な指導を行なうよう個人別指導計画書を作成するものとする。
ハ 個人別指導計画は就職指導者会議の結論、その他事情の変化等により変更する必要のあるときは、その都度修正するものとする。
四 求職者および家族についての理解
家族状況、技能知識、身体条件、本人希望事項等の聴取および経験職業調査の実施ならびに技能測定口頭試問等は、一般指導の初期、すなわち、第一~二回定期出頭日に実施するものとする。求職者の個人理解のための情報は、進路決定のための指導課程に従い、面接あるいは各種検査の実施を通じて把握しその内容を就職指導票および同就職指導記録票の関係欄に記録するものとする。
なお、身体障害者については、そのほかに身体障害者求職登録票を併用するものとする。
面接によつて求職者に関する情報を聴取する場合に、特に留意すべき点は次のとおりである。
(一) 家族の状況
駐留軍関係離職者においては、家族をもつ者が多いと思われるので、家族構成およびその就職状況、就職希望の有無、子弟の就学状況、家庭の経済的事情、別居の可否、家族特に配偶者の意向その他特殊事情等について入念かつ的確に把握すること。
(二) 技能、知識
離職時に従事していた職務の内容のほか、他の職務の経験の有無およびその内容についても聴取する必要がある。
特定の職務については、その技能、知識がそのまま他の産業、事業所の職務に生かすことができるから、前歴における仕事の内容から本人の有する技能、知識を明確に把握し、転職可能職種発見の手がかりとすることが必要である。
(三) 身体状況
面接時において健康状況、身体的能力、身長、体重等の身体状況、考慮すべき既往症、疾病および身体障害の有無等を聴取するほか、体格等も観察して、身体状況を把握するものとする。また、特に必要がある場合には、身体検査等を実施するものとする。なお、離職した事業所において実施した定期健康診断の結果を入手して活用することが望ましい。
(四) 精神的能力、性格、行動特徴
進路決定のための指導課程において調査および検査結果により、知的能力等の精神的諸能力、職業興味、運動能力、職業意識等を客観的に把握するとともに相談過程から得られる個人情報、特に職業経歴、余暇活動、働らくことについての意識あるいは本人のいだいている一貫した考え方等を総合して、求職者が就職する職場に適応するうえに必要な心理的要因を確認するものとする。
(五) 求職者本人の希望事項およびこれに関連する家族の希望事項
職業、就職地、賃金額、住宅等についての求職者の希望を面接時において聴取する等の方法により、必ず家族、特に配偶者の意向をも確認するよう努めることが必要である。
五 諸検査の実施
求職者の個人的特質を把握するために、心理的調査および検査ならびに技能測定検査を次により実施するものとする。
なお、実施した検査および調査の名称を就職指導記録票に記入しておくものとする。
(一) 心理的調査および検査の実施
経験職業調査および職業能力検査ならびに就職相談調査はすべての求職者に対して一般指導期間中の第二~三回までの定期出頭日に実施することとする。
また、特別指導期間中に実施する検査の対象となる求職者は次のとおりであるが、これらの検査は必要に応じて一般指導期間中に実施するよう配意することが必要である。
イ 職業適性検査
下記のいずれかに該当する三五歳未満の離職者には一般職業適性検査(第二)を、三五歳以上の離職者に対しては、中高年齢者用職業適性検査をそれぞれ実施するものとする。
(イ) 駐留軍関係施設等において従事していた職種と関連した職種に転職する者
(ロ) 従前に全く経験のない職種に就職する者
(ハ) 職業訓練を受けようとする者
(ニ) その他職業的能力を判定すべき客観的資料が不足している者、希望職種が能力の点からみて妥当であるか疑わしい者等就職あつせん上、特に、この検査による職業的能力の測定を必要とする者
ロ 職業興味検査
(イ) 職業に対する興味が明確でなく、希望する職業が全くない者
(ロ) 従前に全く経験のない職種に就職を希望する者
(ハ) 進路決定のための指導の過程において転職の分野を全く決めることができない者
ハ 特殊性能検査
(イ) 職業訓練を受けようとする者で、とくにこの検査による職業的能力の測定を必要とする者
(ロ) 身体障害者
(ハ) 転職する職種からみて特に精密な能力の測定を必要とする者
ニ その他必要な検査
上記イ~ハ以外の検査を必要とする者
(二) 技能測定
離職前の職種の内容から活用されると認められる知識、技能をもつ者および職歴において技能的職務に従事していた者に対しては、その技能の程度をはあくするため該当する職種の「技能測定口頭試問」を実施するものとする。
六 職業情報の提供
職業情報の提供は、求職受理当日および各回定期出頭日に計画的に実施するものとする。この情報提供上の留意事項および情報の種類は次のとおりとする。
(一) 情報提供上の留意事項
求職者に対する情報提供については特に次の点に留意すること。
イ 求職者が必要としている情報は求職者個人によつて異なるものであるから、それに適合する情報を提供すること。
ロ 求職者が自らの力で進路の計画をたてる動機を与えるような情報から提供すること。
ハ 求職者のもつ就職阻害要因をとりのぞくことができるような情報から提供すること。
ニ 進路決定のための指導の時間性(タイミング)を考慮し最も適切な時期に必要な情報を提供すること。
ホ 情報提供にあたつては、図表、写真の利用等その方法に工夫をこらすこと。
(二) 情報の種類
求職者に提供すべき情報は、おおむね次のごときものとし常時活用し得るよう収集又は作成しておくものとする。
イ 職業に関するもの
転換可能職種と種類、仕事の内容、その作業に従事するため必要な要件と方法、資格要件、作業環境、その職業のある事業所の所在地に関する情報等
ロ 産業に関するもの
産業の種類、産業の性質および地位、産業の将来性、雇用の見込みに関する情報等
ハ 労働市場状況に関するもの
一般求人、求職、就職状況駐留軍関係離職者の求人求職就職状況ならびに産業別、職業別就職状況、広域求人の地域別の状況、事業所規模別求人、就職状況等
ニ 雇用条件に関するもの
一般求人における賃金、各種手当、賃金手取総額、昇給、労働時間、休日、福利厚生その他の労働条件、現有の求人の雇用条件等
ホ 応募手続その他に関するもの
公共職業安定所の行なう広域職業紹介の方法および応募にあたつての必要書類の種類と内容、その他準備すべき一般的事項
ヘ 職場の生活に関するもの
一般産業における職場の機構と組織、従業員としての就業態度、職場における人間関係、労使関係、住宅宿舎の状況、余暇活動、就職後における不適応事例と処置の仕方等
ト 主要需要地の生活に関するもの
需要地における生活態度、都会地における住宅事情や交通事情、需要地における収入と支出、職業生活と娯楽に関する情報等
チ 職業訓練に関するもの
職業訓練所における訓練種目と内容、職業訓練所の所在地と申込みの方法に関する情報等
リ 海外移住に関するもの
移住地の状況と移住の形態、募集と応募方法、必要経費と融資、補助金、移住前の教育訓練、海外移住状況等
ヌ 雇用促進事業団援護業務に関するもの
各種手当の支給、就職、生業、移住などの各種資金の支給、訓練所への入所、短期宿泊所、移転就職者用宿舎、児童婦人福祉センター等の利用などの雇用促進事業団が行なつている援護業務に関する情報
ル その他
その他求職者が必要としている特別の情報
七 進路決定のための相談
(一) 進路決定のための相談に当たつては、次により準備を行なうものとする。
イ 進路決定のための相談を開始する前に一般求職票により、氏名、年齢、現住所、学歴、前歴、家族状況等を確認する。
また、求職者個人に対し、具体的相談の進め方、重点のおきどころ等について一貫した計画をもつことが必要で、このため指導の内容、提供すべき情報等について、おそくとも各定期出頭日の前日までに検討を行ない、必要とする参考資料を整える等相談準備を十分に行なうことが必要である。
ロ 進路決定のための指導の結果に基づき求職者の適職を決定するとともに、次に掲げる分類と基準に従つて求職者の進路を決定するものとする。
なお、中高年齢層離職者の適職の決定に当たつては「中高年齢者の適職」(身体障害者については、職業別障害部位別就業可能職種一覧表を併用すること。)を使用して転換可能職種を検討するとともに求職者の個人的特質、希望および労働市場状況等を併せて総合判断して決定するものとする。
(イ) 直ちに就職あつせんを行なうことが適当な者
a 一般産業において直ちに活用できる技能、知識、資格を有する者
b 特別の技能知識資格などを要しない職業への就職を希望しており、かつその職業が適している者
c 適職と認められる職業の雇用機会(求人)が多く、就職後職場において技能を習得することが容易な者
d 家族の状況、住宅事情等からみて、直ちに就職することが可能あるいは必要な者
(ロ) 職業訓練所への入所あつせんが適当な者
a 職業訓練を受けることを希望し、かつ適当な者
b 職業訓練を受けない限り、就職困難であると認められる者
c 就職すべき職務について、特に技能習得を必要とする者
d 技能を習得することによつて、より有利な就職が可能となることが明らかである者
e 子弟の教育、家族の就業状況などの家庭的事情により、直ちに移転就職することが不可能であり、移転が可能になるまでの間に技能を習得することが適当な者
(ハ) その他
a その他長期にわたる指導の必要な者
b 海外移住を希望し、かつ適当な者
c 上記(イ)~(ハ)のいずれにも該当しない者
ハ 進路は求職者自らに決定させることが原則であるが進路を決定すべき段階においても進路の決定をなし得ない求職者については、次のような場合に該当しないかどうかを検討し、そのような場合にはそれぞれの問題点を解明したうえでさらに進路決定のための相談を行ない、態度を明確ならしめることが必要である。
(イ) 家族の状況についての理解の不足や求職者が表明しない特殊事情があり、指導が問題の核心にふれない場合
(ロ) 技能、知識、身体状況についてのはあくが不充分なため、本人の能力水準以上、あるいは能力水準以下の指導が行なわれている場合
(ハ) 本人の希望する方向とちがつて進路についての指導が行なわれている場合及び相談面接に欠陥がある場合
(ニ) 本人に就職する意志が十分あるかどうかはあくが不充分な場合
(ホ) 本人の性格についてはあくが不十分な場合
(ヘ) 本人の意志と家族特に配偶者の意思が一致せず、配偶者に対する措置が不足している場合
(二) 進路決定のための相談における問題と処理
イ 問題点の発見
進路決定のための相談の過程において面接、家庭訪問、検査等により特別に指導を要する問題の原因を見分け、問題点の発見に努めるものとする。
特別に指導を要する問題の原因と考えられるものを例示すると次のとおりである。
(イ) 新しい分野に対する能力不足と自信の喪失
(ロ) 一般産業、一般社会についての理解不足又は偏見
(ハ) 本人の希望と家族の意向のくいちがい
(ニ) 情報提供の不足
(ホ) 指導内容を誤解したり、納得していない場合
(ヘ) 就職意欲の低調
ロ 処理
イにより特別に指導を要する問題点を発見したときは、家庭事情、本人の諸能力、職業経験、自己理解の程度、検査結果、その他入手しうるかぎりの資料で問題点解決のため効果的対策を講じ、かつその対策を十分求職者に理解させ、改めて再相談を行なうものとする。
(三) 進路を自ら決定できない者に対する措置
一般指導終了時において、前記(二)のロの処置を行なつたにかかわらず、なお自己の進路を決定しえない求職者に対しては、公共職業安定所が本人にかわつてその進路を決定指示するものとし、その内容を就職指導記録票及び就職指導票に記録するものとする。なお、この進路の決定は、手当の支給要件に関連する重要な意義をもつものであるから、就職指導会議においてこの措置について十分検討するとともに求職者にとつてもつとも適した進路を決定するよう留意することが必要である。
八 集団指導の実施
求職者に対する進路決定のための指導は原則としてケース・ワーク方式によるものであるが、その業務の一部を集団的に実施することが、実効をあげうると認められるときには、一定数の求職者に対して、集団指導の方式をもとり入れることとする。この場合、次の点に留意して実施することが必要である。
(一) 集団指導は、情報の提供を主たる内容とし、一般指導、特別指導のいずれの段階においても必要により随時実施すること。
(二) 集団指導を効果的に実施するためには、直ちに就職することを適当とする者
職業訓練を受けることを適当とする者のごとく、七の(二)により分類された離職者群ごとに、六の(二)に示す情報のうち、それぞれの進路にもつとも関連のある情報を整理し提供することが必要であること。この場合さらに同一需要地に就職しようとする者、類似した職業を選択している者等のごとく、その対象を限定することがより有効であること。
(三) 集団指導において提供される情報は、できるだけ図表、掛図等視覚的情報資材を用いることが効果的であり公共職業安定所で作成するもののほか、指導用カラースライドを適宜活用することが必要であること。
九 就職指導会議の開催
求職者に対し、もつとも適切な指導の計画をたて、その内容及び方法の充実を図るために、次により就職指導会議(ケース会議)を開催するものとする。
(一) 構成員
就職指導会議は、所長、次長、職業(業務)課長、就職促進指導官をもつて構成するものとするが、必要により紹介担当者、雇用主業務担当者等関係職員を参加せしめるものとする。
(二) 会議の開催
就職指導会議は少くとも一週間に一回開催するほか、緊急を要する場合等には随時開催するものとする。
(三) 会議の内容
就職指導会議においては、個々の求職者についての指導の計画、指導効果の確認及び反省等問題点の検討と、それに対する処置を決定するほか、集団指導及び心理的検査実施に当つての担当者の決定並びに労働市場に関する情報の交換等を行なうものとする。
なお、就職指導会議の運営については、上記のほか、昭和三九年七月一〇日付業指発第九一号に「炭鉱離職者及び中高年齢失業者等に関する就職指導会議の運営について」によるものとする。
第三 紹介相談および職業訓練等に関する相談
一 紹介相談
(一) 紹介相談の意義
紹介相談は、求職者の各人に適当と認められる特定の求人について、その求人内容を提示し、当該求人者のその労働条件で就職する意志があるか否かを確めながら、その求職条件を現実の求人条件に適合せしめるように指導し、紹介求人者を決定し、適確な就職の実現をはかるための相談である。
(二) 紹介相談の時期
紹介相談は、当該求職者の定期出頭日に行なうことを原則とするが、求人に対してその充足を急ぐとき、また二人以上の求職者を同時に紹介する必要がある場合は、当該求職者を定期出頭日以外の日に出頭を求め、臨時の紹介相談を行なうこととする。
(三) 紹介相談の要領
イ 照合、選定
紹介相談は、当該求職者に対する適当な求人を選定し、それをもとにして相談、指導を行なうこととなるので、次の要領により、当該求職者の求職票と有効求人票とを照合し、適格と認められる求人と求職との結合を行なうものとする。
(イ) 求職者の定期出頭日の前日までに照合を行なうこと。
(ロ) 照合にあたつては、求職者を主体とし、個々の求職者に適合する求人を、有効求人の中から選定する方法によること。
(ハ) 照合の基準となる要素の重要なものを列記すれば次のとおりである。照合はこの順序により行なうものとする。
a 本人の有する技能、知識、学歴、資格、その他の職業能力と求人者が要求する職業遂行能力との関係
b 本人の年齢、身体条件と求人者が要求する年齢、体力、健康等身体的能力等の関係
c 求職者が要求している賃金その他の労働条件と求人者の提示している労働条件との関係
d 求職者の家族構成および住宅等の所要条件とこれに対する求人者の受入れ条件等との関係
(二) 照合に際して留意すべき事項は次のとおりである。
a 求職者の進路決定のための指導の際に問題となつた事項(たとえば最低確保収入額)については十分照合すること。
b 求職者の適職、希望、条件等をきゆうくつに考えることは、照合を困難とするので、適する作業範囲、収入額等については幅広く考えること。
c 完全に適合する求人でなくとも、求職条件に近い条件の求人をも選定対象に加え、これによつて一人の求職者について最低二~三件の求人を常に準備するよう努めること。
ロ 求人の提示
(イ) 求職者に対し、求人を提示する場合、数件の求人を同時に提示する方法と、順次提示する方法とがあるが、それぞれ長短があるので、これらの求人の内容、求職者の希望、態度、反応等を考慮して、もつとも効果的な方法を用いること。
(ロ) 作業の内容、収入額および就職地の環境等について、詳細かつ的確に(たとえば、就職当時の手取賃金の試算等)説明すること。
この場合、可能な限り事業内容の説明書、事業所等の写真、生産品目、営業品目を説明する型録、就職地の地図等を準備すること。
(ハ) 求職条件に適合する求人が少ないため、紹介相談ごとに同一求人をくりかえし提示する場合には、求人の一般的状況を説明し、あわせて求職条件の緩和指導を行なうこと。
(ニ) 広域職業紹介による他地域就職希望者についてはつとめてその家族(とくに配偶者)とも同時に相談すること。
このために家庭訪問を行なうことは効果があるので、担当者自ら、または職業安定協力員をして行なわせること。
ハ 紹介
(イ) 求職者に対する指導
a 求人を提示して相談を行なつた結果、求職者が紹介を受ける意志を表明した場合には、さらに求人の内容、条件等を正しく理解しているか否かを確認すること。
b 紹介手続、求人者の選考方法、選考予定日等求職者が就職するに際して準備しなければならない事項を指導し、所要の激励を与えること。
(ロ) 求人者に対する連絡
a 紹介しようとする求職者に対する指導経過を求人者に事前に連絡し、その理解を深めておくこと。
b 紹介しようとする求職者の条件が、求人者の希望する条件と相違している場合には、とくに、その求職者を紹介するに至つた経過を説明しておくこと。
(ハ) 紹介状の交付
a 紹介に際しては、紹介状を発行し、就職促進指導官は、当該就職者を指導した経過から、適確な労働者として推せんする趣旨を記入すること。
b 紹介を行なつた場合は、当該紹介先求人者名および職種を就職指導記録票および就職指導票に記載すること。
ニ 紹介する職業につくことを拒否した場合の措置
(イ) 求職者が提示した求人に紹介を受けることを正当な理由なく断つた場合および求職者が紹介先求人者との面接にあたつて当然示すべき求職の熱意を示さず、故意に採用されないように不当に高い求職条件を申し出るなど、正当な理由なく、断つたことを求人者の採否通知で確認した場合等には、就職促進手当の支給停止の処分を厳正に行なうこと。
(ロ) 支給停止処分に関しては、別に定める「就職促進手当支給要領」によること。
(四) 求職者通報の措置
イ 求職者の就職条件が次のような場合で、有効求人中に適合する求人を見つけることが困難な場合には、積極的に求職者通報を行なうこと。
(イ) 特別な技能・技術を持ち、それを生かして就職を希望する者
(ロ) 特定の地域に就職を希望する者
(ハ) 夫婦一組等家族ぐるみ就職または家族の数人が同一地域でそれぞれ就職を希望する者
(ニ) 職業訓練等修了生で他地域において就職を希望する者、入所前に雇用予約により就業訓練所入所を希望している者
(ホ) 身体に障害のある者
(ヘ) 以上のほかに特殊な事情があつて就職促進指導官が必要と認めた者
二 職業訓練に関する相談
(一) 相談
職業訓練の進路が決定された求職者については通常その受ける訓練職種、訓練所等についても相談されているが、この段階では具体的な訓練所を提示し、入所の時期等について相談し、指導することになる。
この場合、次の諸点に留意するものとする。
イ 職業訓練の終了後の就職見込み、とくに求人条件、就職地等のほか、就職あつせん、手続等について、具体的に(たとえば好事例を提供する等)説明すること。
ロ 施設が遠隔地にある職業訓練所に入所させ、将来その土地で就職させようとする場合には、その土地の事情についてとくに重点をおいて説明すること。
ハ 他地域において、職業訓練を受けることについて、家族の生活上の問題等のため本人の意志が定らない場合は、訓練中の生計維持に関する援護措置、その間の家族の就職計画等について相談し、その解決を図るよう援助すること。
ニ 雇用予約されている職業訓練の受講について相談する場合には、その予約求人者の求人内容および賃金、労働時間その他の労働条件を紹介相談の要領によつて提示し、訓練修了後、当該求人者に就職する意志を確認すること。
また、雇用予約はその求職者が当該訓練所に入所することが決定したときに成立するものであること等、雇用予約制度について十分説明しておくこと。
(二) 指示
イ 相談の結果、受講する職業訓練が決定した場合は、職業訓練の施設、職種、期間等を定め、職業訓練を受講することを指示し、これを就職指導記録票および就職指導票に記録するものとする。
ロ 指示した職業訓練を受けることを拒否した場合は、その理由を検討し、根拠が薄弱な場合は反省を求めつつ、さらに指導し、正当な理由なく拒否した場合は、就職指導票認定の失効処分を厳正に行なうこと。
三 進路決定後の待機者に対する援助
進路決定のための指導の結果、直ちに就職を適当とする者で、たまたま適当な求人がないため待機せざるを得ない場合がある。
また、職業訓練を受けるよう指示したものについても、直ちに訓練所に入所し得る場合と、入所時期の関係でかなりの期間待機せざるを得ない場合もある。
このように待機せざるを得ない者に対しては、自己の進路についての自信を強めさせ、進路を変更しないよう指導することが必要である。
このため待機者に対しては、次のような点について指導と援助を行なわなければならない。
(一) 本人の家族、とくに配偶者の決意が変らないよう指導すると共に、常に生活環境、心境の変化等について留意すること。
(二) 就職しようとする地域での生活事情、産業、職務の内容、職業訓練の内容等詳細な情報の提供を行なうとともに、求職者が就職しようとする産業、または類似した産業の事業所見学を行なわせることも効果的であること。
(三) 就職及び職業訓練所入所までの間に準備すべき事項について指導助言すること。
(四) 就職予定の職種に関連する心理検査(例、特殊性能検査等)を実施し、その結果を活用して、求職者が自己の進路について、さらに自信を強くするよう激励すること。
四 就職後の指導
(一) 就職後の定着指導は、就職地公共職業安定所において行なうことを原則とするが、就職指導業務の一連のつながりとして、就職促進指導官がこれを行なうことも効果的なので、手紙等によつて指導激励することが好ましい。
この場合、就職後の生活状況等を向い合わせて、その実情を知ることは、その後の就職指導の貴重な資料となる。
五 委嘱または移管の措置等
認定を受けた者が、交通機関の状況等の理由により、管轄公共職業安定所以外の公共職業安定所において、就職指導を受けることを申し出たときにおいて、その申出の理由があると認められる場合、管轄公共職業安定所において、天災事変、その他の理由によつて、他の公共職業安定所において就職指導を受けさせた方がよいと判断した場合及び他管内訓練所に入所した場合には、就職指導に関する事務を行なうことを他の公共職業安定所に委嘱することができる。
また、認定を受けた者が、住所を移転した場合及び公共職業安定所の管轄区域が変更された場合、その者の管轄を移す必要がある。
これら委嘱又は移管を行なう際は、就職指導記録票及び就職指導票交付台帳、就職促進手当支給台帳の写を委嘱先又は移管先の公共職業安定所に送付するものとする。
なお、認定を受けた者が遠隔地へ就職した場合は、求職票及び就職指導票交付台帳、就職促進手当支給台帳はそのまま手許に保管し、就職指導記録票をその者の就職地を管轄する公共職業安定所へ送付するものとする。
第四 駐留軍関係離職者就職指導記録票
一 様式および記入要領
駐留軍関係離職者就職指導記録票及び記入要領は中高年齢者就職指導記録票に準ずるものとする。
様式及び記入要領等については、昭和四一年四月一日付け職発二〇六号「中高年齢失業者等の認定及び就職指導関係業務実施要領等の一部改訂について」を参照のこと。
二 保管整理
指導記録票は、担当する指導官別にフアイル(書類挾み)を使用し、求職受付番号順に綴り込み保管整理する。
なお、実施した検査結果記録及びその他の関係資料は該当求職者の指導記録票に挾み込み、あわせて保管整理するものとする。