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告示:特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針

 

特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針

令和六年五月三十一日厚生労働省告示第二百十二号

 

特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和五年法律第二十五号)第十五条の規定に基づき、特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針を次のように定め、同法の施行の日(令和六年十一月一日)から適用する。

特定業務委託事業者が募集情報の的確な表示、育児介護等に対する配慮及び業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関して適切に対処するための指針

目次

 第1 はじめに

 第2 募集情報の的確な表示

 第3 妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮

 第4 業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等

 

第1 はじめに

この指針は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(令和5年法律第25号。以下「法」という。)第12条に規定する募集情報の的確な表示、法第13条に規定する妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮及び法第14条に規定する業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等に関し、特定業務委託事業者が適切に対処するために必要な事項について定めたものである。

 

第2 募集情報の的確な表示

1 概要

(1) 法第12条の規定に基づき、特定業務委託事業者は、広告等((3)に掲げる方法によるものをいう。以下同じ。)により、業務委託に係る特定受託事業者の募集に関する情報((4)に掲げるものをいう。以下「募集情報」という。)を提供するときは、当該募集情報について虚偽の表示又は誤解を生じさせる表示をしてはならず(法第12条第1項)、また、正確かつ最新の内容に保たなければならない(同条第2項)。

(2) 「業務委託に係る特定受託事業者の募集」とは、特定受託事業者に業務委託をしようとする者が自ら又は他の事業者に委託して、特定受託事業者になろうとする者に対して広告等により広く勧誘することをいうものである。

結果として募集に応じて業務委託をした相手方が特定受託事業者であったか否かにかかわらず、募集情報の提供時点において特定受託事業者に業務委託をすることが想定される募集をいう。

一方、募集の内容から、専ら、①労働者の募集や、②従業員(法第2条第1項第1号に規定する従業員をいう。)を使用する事業者に業務委託をすることが想定される募集であって、特定受託事業者に業務委託をすることが想定されない募集は「業務委託に係る特定受託事業者の募集」には含まれない。

(3) 的確表示の対象となる募集情報の提供方法は、①新聞、雑誌その他の刊行物に掲載する広告、②文書の掲出又は頒布、③書面の交付、④ファクシミリ、⑤電子メール等、⑥著作権法(昭和45年法律第48号)第2条第1項第8号に規定する放送、同項第9号の2に規定する有線放送又は同項第9号の5イに規定する自動公衆送信装置その他電子計算機と電気通信回線を接続してする方法その他これらに類する方法である。なお、⑤について、「電子メール等」とは「電子メールその他のその受信する者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信」をいい、「その他のその受信する者を特定して情報を伝達するために用いられる電気通信」とは、具体的にはSNS(ソーシャル・ネットワーク・サービス)等のメッセージ機能等を利用した電気通信が該当すること。⑥について、テレビやラジオ、インターネット上のオンデマンド放送や自社のホームページ、クラウドソーシングサービス等が提供されるデジタルプラットフォーム等が該当する。

(4) 的確表示の対象となる募集情報(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律施行令(令和6年政令第200号)第2条)の具体的な内容としては、例えば、次に掲げるものがある。

・「業務の内容」に関する事項とは、業務委託において求められる成果物の内容又は役務提供の内容、業務に必要な能力又は資格、検収基準、不良品の取扱いに関する定め、成果物の知的財産権の許諾・譲渡の範囲、違約金に関する定め(中途解除の場合を除く。)等をいう。

・「業務に従事する場所、期間又は時間に関する事項」とは、業務を遂行する際に想定される場所、納期、期間、時間等をいう。

・「報酬に関する事項」とは、報酬の額(算定方法を含む。)、支払期日、支払方法、交通費や材料費等の諸経費(報酬から控除されるものも含む。)、成果物の知的財産権の譲渡・許諾の対価等をいう。

・「契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。)に関する事項」とは、契約の解除事由、中途解除の際の費用・違約金に関する定め等をいう。

・「特定受託事業者の募集を行う者に関する事項」とは、特定業務委託事業者となる者の名称や業績等をいう。

2 募集情報に係る虚偽の表示の禁止

(1) 特定業務委託事業者は、広告等により特定受託事業者の募集に関する情報を提供するに当たっては、虚偽の表示をしてはならない。

例えば、特定受託事業者の募集情報を提供するときに意図して募集情報と実際の就業に関する条件を異ならせた場合や実際には存在しない業務に係る募集情報を提供した場合等には、虚偽の表示に該当する。

なお、虚偽の表示でなくとも、一般的・客観的に誤解を生じさせるような表示は、3の誤解を生じさせる表示に該当する。

(例)

・実際に業務委託を行う事業者とは別の事業者の名称で業務委託に係る募集を行う場合

・契約期間を記載しながら実際にはその期間とは大幅に異なる期間の契約期間を予定している場合

・報酬額を表示しながら実際にはその金額よりも低額の報酬を予定している場合

・実際には業務委託をする予定のない特定受託事業者の募集を出す場合

(2) 当事者間の合意に基づき、募集情報から実際の契約条件を変更することとなった場合は虚偽の表示には該当しない。

(3) 特定業務委託事業者が、他の事業者に広告等による募集を委託した場合(募集情報の提供を委託する場合を含む。以下同じ。)であって他の事業者が虚偽の表示をしていることを認識した場合、他の事業者に対し、情報の訂正を依頼するとともに、他の事業者が情報の訂正をしたかどうか確認を行わなければならない。なお、情報の訂正を繰り返し依頼したにもかかわらず他の事業者が訂正しなかった場合、特定業務委託事業者は法第12条違反となるものではない。

3 募集情報に係る誤解を生じさせる表示の禁止

(1) 特定業務委託事業者は、広告等により特定受託事業者の募集に関する情報を提供するに当たっては、誤解を生じさせる表示をしてはならない。

一般的・客観的に誤解を生じさせるような表示は、誤解を生じさせる表示に該当する。

(2) 特定業務委託事業者は、特定受託事業者に誤解を生じさせることのないよう、次に掲げる事項に留意する必要がある。

・関係会社を有する者が特定受託事業者の募集を行う場合、業務委託を行う予定の者を明確にし、当該関係会社と混同されることのないよう表示しなければならないこと。

・特定受託事業者の募集と、労働者の募集が混同されることのないよう表示しなければならないこと。

・報酬額等について、実際の報酬額等よりも高額であるかのように表示してはならないこと。

・職種又は業種について、実際の業務の内容と著しく乖離かいりする名称を用いてはならないこと。

(3) 特定業務委託事業者が、他の事業者に広告等による募集を委託した場合であって他の事業者が誤解を生じさせる表示をしていることを認識した場合、他の事業者に対し、情報の訂正を依頼するとともに、他の事業者が情報の訂正をしたかどうか確認を行わなければならない。なお、情報の訂正を繰り返し依頼したにもかかわらず他の事業者が訂正しなかった場合、特定業務委託事業者は法第12条違反となるものではない。

4 募集情報に係る正確かつ最新の表示の義務

特定業務委託事業者は、特定受託事業者の募集に関する情報を正確かつ最新の内容に保つに当たっては、次に掲げる措置を講ずる等適切に対応しなければならない。

・特定受託事業者の募集を終了した場合又は募集の内容を変更した場合には、当該募集に関する情報の提供を速やかに終了し、又は当該募集に関する情報を速やかに変更すること。

・広告等により募集することを他の事業者に委託した場合には、当該事業者に対して当該情報の提供を終了するよう依頼し、又は当該情報の内容を変更するよう依頼するとともに、他の事業者が当該情報の提供を終了し、又は当該情報の内容を変更したかどうか確認を行わなければならない。なお、情報の変更等を繰り返し依頼したにもかかわらず他の事業者が変更等をしなかった場合、特定業務委託事業者は法第12条違反となるものではない。

・特定受託事業者の募集に関する情報を提供するに当たっては、当該情報の時点を明らかにすること。

5 特定業務委託事業者が、広告等により、募集情報を提供するときに望ましい措置

特定業務委託事業者が広告等により特定受託事業者の募集に関する情報を提供するに当たっては、当事者間の募集情報に関する認識の齟齬そごを可能な限りなくすことで、当該募集情報に適する特定受託事業者が応募しやすくなり、業務委託後の取引上のトラブルを未然に防ぐことができることから、1(4)の「的確表示の対象となる募集情報」に掲げている事項を可能な限り含めて提供することが望ましいこと。あわせて、募集に応じた者に対しても1(4)に掲げている事項を明示するとともに、当該事項を変更する場合には変更内容を明示することが望ましいこと。

 

第3 妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮

1 概要

(1) 特定業務委託事業者は、その行う業務委託(政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)に限る。以下「継続的業務委託」という。)の相手方である特定受託事業者からの申出に応じて、当該特定受託事業者(当該特定受託事業者が法第2条第1項第2号に掲げる法人である場合にあっては、その代表者)が妊娠、出産若しくは育児又は介護(以下「育児介護等」という。)と両立しつつ当該継続的業務委託に係る業務に従事することができるよう、その者の育児介護等の状況に応じた必要な配慮をしなければならない(法第13条第1項)。

(2) 継続的業務委託以外の業務委託の場合には、特定業務委託事業者は必要な配慮をするよう努めなければならない(同条第2項)。

(3) 「継続的業務委託」とは、6か月以上の期間行う業務委託又は当該業務委託に係る契約の更新により6か月以上の期間継続して行うこととなる業務委託を指す。

継続的業務委託の期間の算定は、業務委託に係る契約を締結した日を「始期」、業務委託に係る契約が終了する日を「終期」とする。よって、「継続的業務委託の相手方である特定受託事業者」とは、業務委託をした日から6か月以上を経過した特定受託事業者に限るものではなく、6か月を経過せずとも「始期」から「終期」までの期間が6か月以上であることが見込まれる特定受託事業者をいう。

業務委託に係る給付に関する基本的な事項についての契約(以下「基本契約」という。)を締結し、基本契約に基づいて業務委託を行う場合においては、継続的業務委託の期間の算定は、基本契約を締結した日を「始期」、基本契約が終了する日を「終期」とする。

契約の更新により継続して行うこととなる業務委託の期間については、最初の業務委託又は基本契約の始期から最後の業務委託又は基本契約の終期までを算定する。「契約の更新により継続して行うこととなる」と判断されるためには、①契約の当事者が同一であり、その給付又は役務の提供の内容が少なくとも一定程度の同一性を有し、②前の業務委託に係る契約又は基本契約が終了した日の翌日から、次の業務委託に係る契約又は基本契約を締結した日の前日までの期間の日数が1か月未満であること、という2つの要件を満たす必要がある。給付等の内容の一定程度の同一性の判断に当たっては、機能、効用、態様等を考慮要素として判断する。その際、原則として「日本標準産業分類」の小分類(3桁分類)を参照し、前後の業務委託に係る給付等の内容が同一の分類に属するか否かで判断する。それが適当ではないと考えられる事情がある場合には、上記の考慮要素から、個別に判断する。適当ではないと考えられる事情とは、例えば、当事者間のこれまでの契約や当該特定業務委託事業者における同種の業務委託に係る契約の状況等に鑑み、通常、前後の業務委託は一体のものとしてなされている状況がある場合などである。

なお、「終期」が定められていない業務委託又は基本契約は継続的業務委託に含まれるが、法第3条において、特定受託事業者に対し業務委託をした場合に、当該特定受託事業者の給付を受領し、又は役務の提供を受ける期日(期間を定めるものにあっては、当該期間)等を明示することとなっている点に留意すること。

(4) 「育児」とは、小学校就学の始期に達するまでの子を養育することを指し、「子」とは、特定受託事業者と法律上の親子関係がある子(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育介法」という。)第2条第1号に規定する「子」と同様に、養子に加え、養子縁組里親である特定受託事業者に委託されている児童等を含む。)をいう。

(5) 「介護」とは、要介護状態(負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上にわたり常時介護を必要とする状態)にある特定受託事業者の家族(育介法第2条第4号に規定する「対象家族」と同様に、配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。以下同じ。)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹又は孫をいう。)の介護その他の世話を行うことをいう。

(6) 法第13条の規定に基づき育児介護等に対する配慮の申出ができる者は、特定業務委託事業者と業務委託に係る契約を締結している特定受託事業者であって育児介護等と両立しつつ業務に従事する特定受託事業者であるが、現に育児介護等を行う者でなくとも、育児介護等を行う具体的な予定のある者も含まれる。

2 特定業務委託事業者がすべき育児介護等に対する配慮

(1) 特定業務委託事業者は、特定受託事業者が育児介護等と両立しつつ業務委託に係る業務に従事することができるよう、当該特定受託事業者が法第13条第1項の継続的業務委託の相手方である場合には次のイからニまでの配慮をしなければならず、当該特定受託事業者が法第13条第2項の継続的業務委託以外の業務委託の相手方である場合には次のイからニまでの配慮をするよう努めなければならない。

イ 配慮の申出の内容等の把握

特定受託事業者から育児介護等に対する配慮の申出を受けた場合には、話合い等を通じ、当該者が求める配慮の具体的な内容及び育児介護等の状況を把握すること。なお、申出の内容等には特定受託事業者のプライバシーに属する情報もあることから、当該情報の共有範囲は必要最低限とするなど、プライバシー保護の観点に留意すること。

ロ 配慮の内容又は取り得る選択肢の検討

特定受託事業者の希望する配慮の内容、又は希望する配慮の内容を踏まえたその他の取り得る対応について行うことが可能か十分に検討すること。

ハ 配慮の内容の伝達及び実施

具体的な配慮の内容が確定した際には速やかに申出を行った特定受託事業者に対してその内容を伝え、実施すること。

なお、特定受託事業者の希望する配慮の内容とは異なるものの、特定受託事業者が配慮を必要とする事情に照らし、取り得る対応が他にもある場合、特定受託事業者との話合いを行うなどにより、その意向を十分に尊重した上で、特定業務委託事業者が、より対応しやすい方法で配慮を行うことは差し支えない。

ニ 配慮の不実施の場合の伝達・理由の説明

特定受託事業者の希望する配慮の内容やその他の取り得る対応を十分に検討した結果、業務の性質や実施体制等に照らして困難であること、当該配慮を行うことにより、業務のほとんどが行えない等、契約目的が達成できなくなること等、やむを得ず必要な配慮を行うことができない場合には、特定受託事業者に対して配慮を行うことができない旨を伝達し、その理由について、必要に応じ、書面の交付や電子メールの送付により行うことも含め、わかりやすく説明すること。

なお、育児介護等に対する配慮が円滑に行われるようにするためには、特定受託事業者が、速やかに配慮の申出を行い、具体的な調整を開始することができるようにすることが必要であり、そのためには、特定受託事業者が申出をしやすい環境を整備しておくことが重要である。具体的には、①配慮の申出が可能であることや、配慮を申し出る際の窓口・担当者、配慮の申出を行う場合の手続等を周知すること、②育児介護等に否定的な言動が頻繁に行われるといった配慮の申出を行いにくい状況がある場合にはそれを解消するための取組を行うこと等の育児介護等への理解促進に努めることが望ましい。

(2) 特定受託事業者からの配慮の申出に対し、特定業務委託事業者が配慮を実施する場合の具体例としては、以下が挙げられる。

なお、申出や配慮の内容は、個々の特定受託事業者の状況や業務の性質、特定業務委託事業者の状況等に応じて異なるものであり、多様かつ個別性が高いものである。したがって、記載されている例は例示であり、実際に、特定受託事業者から申出があった場合には、(1)イからニまでの事項に基づき個別に対応を検討することが必要である。

(申出に対する配慮の例)

① 妊婦健診がある日について、打合せの時間を調整してほしいとの申出に対し、調整した上で特定受託事業者が打合せに参加できるようにすること。

② 妊娠に起因する症状により急に業務に対応できなくなる場合について相談したいとの申出に対し、そのような場合の対応についてあらかじめ取決めをしておくこと。

③ 出産のため一時的に特定業務委託事業者の事業所から離れた地域に居住することとなったため、成果物の納入方法を対面での手渡しから宅配便での郵送に切り替えてほしいとの申出に対し、納入方法を変更すること。

④ 子の急病等により作業時間を予定どおり確保することができなくなったことから、納期を短期間繰り下げることが可能かとの申出に対し、納期を変更すること。

⑤ 特定受託事業者からの介護のために特定の曜日についてはオンラインで就業したいとの申出に対し、一部業務をオンラインに切り替えられるよう調整すること。

なお、特定受託事業者が元委託事業者(他の事業者から業務委託を受けた特定業務委託事業者が、当該業務委託に係る業務の全部又は一部について特定受託事業者に再委託をした場合における他の事業者をいう。以下同じ。)の事業所において業務を行う場合には、特定受託事業者からの申出内容について当該元委託事業者に対して調整を依頼することを含む。

3 特定業務委託事業者による望ましくない取扱い

法第13条における申出及び配慮の趣旨を踏まえれば、特定業務委託事業者による次のイ及びロに掲げる行為は望ましくない取扱いであることに留意する必要がある。

イ 特定受託事業者からの申出を阻害すること。

(例)

① 申出に際して、膨大な書類を提出させる等の特定受託事業者にとって煩雑又は過重な負担となるような手続を設けること。

② 特定業務委託事業者の役員又は労働者が、申出を行うことは周囲に迷惑がかかるといった申出をためらう要因となるような言動をすること。

ロ 特定受託事業者が申出をしたこと又は配慮を受けたことのみを理由に契約の解除その他の不利益な取扱いを行うこと。

契約の解除その他の不利益な取扱いとなる行為には、特定受託事業者が申出をしたこと又は配慮を受けたことのみを理由として、例えば、次に掲げるものを行うことが該当する。

(例)

① 契約の解除を行うこと。

② 報酬を支払わないこと又は減額を行うこと。

③ 給付の内容を変更させること又は給付を受領した後に給付をやり直させること。

④ 取引の数量の削減

⑤ 取引の停止

⑥ 就業環境を害すること。

また、不利益な取扱いに該当するか否かについては、申出をしたこと又は配慮を受けたこととの間に因果関係がある行為であることを要し、不利益な取扱いに該当すると認められる事例及び該当しないと認められる事例は以下のとおりである。なお、これらは限定列挙ではないことに留意が必要である。

(不利益な取扱いに該当すると認められる例)

① 介護のため特定の曜日や時間の業務を行うことが難しくなったため、配慮の申出をした特定受託事業者について、別の曜日や時間は引き続き業務を行うことが可能であり、契約目的も達成できることが見込まれる中、配慮の申出をしたことを理由として、契約の解除を行うこと。

② 特定受託事業者が出産に関する配慮を受けたことを理由として、現に役務を提供しなかった業務量に相当する分を超えて報酬を減額すること。

③ 特定受託事業者が育児や介護に関する配慮を受けたことにより、特定業務委託事業者の労働者が繰り返し又は継続的に嫌がらせ的な言動を行い、当該特定受託事業者の能力発揮や業務の継続に悪影響を生じさせること。

(不利益な取扱いに該当しないと認められる例)

① 妊娠による体調の変化によりイベントへの出演ができなくなった特定受託事業者から、イベントの出演日を変更してほしいとの申出があったが、イベントの日程変更は困難であり、当初の契約目的が達成できないことが確実になったため、その旨を特定受託事業者と話合いの上、契約の解除を行うこと。

② 育児のためこれまでよりも短い時間で業務を行うこととなった特定受託事業者について、就業時間の短縮により減少した業務量に相当する報酬を減額すること。

③ 配慮の申出を受けて話合いをした結果、特定受託事業者が従来の数量の納品ができないことが分かったため、その分の取引の数量を削減すること。

なお、報酬の支払期日までに報酬を支払わなかった場合や、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに報酬の額を減ずること等があった場合には、ロの不利益な取扱いに該当する場合があるほか、別途、法第2章(特定受託事業者に係る取引の適正化)の第4条(報酬の支払期日等)又は第5条(特定業務委託事業者の遵守事項)の規定に違反し得る場合もあることに留意が必要である。

 

第4 業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関して講ずべき措置等

1 概要

(1) 特定業務委託事業者は、その行う業務委託に係る特定受託業務従事者に対し当該業務委託に関して行われる法第14条第1項各号に規定する言動により、当該各号に掲げる状況に至ること(以下「業務委託におけるハラスメント」という。)のないよう、その者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の必要な措置を講じなければならない(法第14条第1項)。

(2) 特定業務委託事業者は、特定受託業務従事者が法第14条第1項の相談を行ったこと又は特定業務委託事業者による当該相談への対応に協力した際に事実を述べたことを理由として、その者(その者が法第2条第1項第2号に掲げる法人の代表者である場合にあっては、当該法人)に対し、業務委託に係る契約の解除その他の不利益な取扱いをしてはならない(同条第2項)。

(3) 業務委託におけるハラスメントとは、次のイからハまでのものをいう。

イ 性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応によりその者(その者が法第2条第1項第2号に掲げる法人の代表者である場合にあっては、当該法人)に係る業務委託の条件について不利益を与え、又は性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境を害すること(以下「業務委託におけるセクシュアルハラスメント」という。)。

ロ 特定受託業務従事者の妊娠又は出産に関する事由であって厚生労働省令で定めるものに関する言動によりその者の就業環境を害すること(以下「業務委託における妊娠、出産等に関するハラスメント」という。)。

ハ 取引上の優越的な関係を背景とした言動であって業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたものにより特定受託業務従事者の就業環境を害すること(以下「業務委託におけるパワーハラスメント」という。)。

(4) 業務委託におけるハラスメントは、特定業務委託事業者との間で業務委託に係る契約を締結した特定受託業務従事者に対して、当該業務委託に関して行われるものをいう。「業務委託に関して行われる」とは、特定受託業務従事者が当該業務委託に係る業務を遂行する場所又は場面で行われるものをいい、当該特定受託業務従事者が通常業務を遂行している場所以外の場所であっても、当該特定受託業務従事者が業務を遂行している場所については、含まれる。

(5) なお、報酬の支払期日までに報酬を支払わなかった場合や、特定受託事業者の責めに帰すべき事由がないのに報酬の額を減ずること等があった場合には、⑶イからハまでの言動を伴うときには業務委託におけるハラスメントに該当することがあるほか、別途、法第2章(特定受託事業者に係る取引の適正化)の第4条(報酬の支払期日等)又は第5条(特定業務委託事業者の遵守事項)の規定に違反し得る場合もあることに留意が必要である。

2 業務委託におけるセクシュアルハラスメントの内容

(1) 業務委託におけるセクシュアルハラスメントには、業務委託に関して行われる性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応により当該特定受託業務従事者がその業務委託の条件につき不利益を受けるもの(以下「対価型セクシュアルハラスメント」という。)と、当該性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境が害されるもの(以下「環境型セクシュアルハラスメント」という。)がある。なお、業務委託におけるセクシュアルハラスメントには、同性に対するものも含まれるものである。また、被害を受けた者の性的指向又は性自認にかかわらず、当該者に対する業務委託におけるセクシュアルハラスメントも、本指針の対象となるものである。

(2)「性的な言動」とは、性的な内容の発言及び性的な行動を指し、この「性的な内容の発言」には、性的な事実関係を尋ねること、性的な内容の情報を意図的に流布すること等が、「性的な行動」には、性的な関係を強要すること、必要なく身体に触ること、わいせつな図画を配布すること等が、それぞれ含まれる。当該言動を行う者には、特定業務委託事業者(その者が法人である場合にあってはその役員。以下同じ。)又はその雇用する労働者(以下「特定業務委託事業者等」という。)に限らず、業務委託に係る契約を遂行するに当たり関係性が発生する者(例えば、元委託事業者を含む特定業務委託事業者の取引先等の他の事業者(その者が法人である場合にあってはその役員。以下同じ。)又はその雇用する労働者、業務委託に係る契約上協力して業務を遂行することが想定されている他の個人事業者(以下「他の事業者等」という。)、顧客等)もなり得る。

(3) 「対価型セクシュアルハラスメント」とは、業務委託に関して行われる特定受託業務従事者の意に反する性的な言動に対する特定受託業務従事者の対応により、当該特定受託業務従事者が契約の解除、報酬の減額、取引数量の削減、取引の停止等の不利益を受けることであって、その状況は多様であるが、典型的な例として、次のようなものがある。

イ 特定業務委託事業者が特定受託業務従事者に対して性的な関係を要求したが、拒否されたため、当該特定受託業務従事者との契約を解除すること。

ロ 特定業務委託事業者の雇用する労働者が事業所内において日頃から特定受託業務従事者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、当該特定受託業務従事者の報酬を減額すること。

(4) 「環境型セクシュアルハラスメント」とは、業務委託に関して行われる特定受託業務従事者の意に反する性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることであって、その状況は多様であるが、典型的な例として、次のようなものがある。

イ 就業場所において特定業務委託事業者の雇用する労働者が特定受託業務従事者の腰、胸等に度々触ったため、当該特定受託業務従事者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること。

ロ 元委託事業者の雇用する労働者が当該元委託事業者の事業所において就業する特定受託業務従事者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該特定受託業務従事者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと。

3 業務委託における妊娠、出産等に関するハラスメントの内容

(1) 業務委託における妊娠、出産等に関するハラスメントとは、特定業務委託事業者等から行われる以下のものがある。なお、業務分担や安全配慮等の観点から、客観的にみて、業務上の必要性に基づく言動によるものについては、業務委託における妊娠、出産等に関するハラスメントには該当しない。

イ 特定受託業務従事者が、①妊娠したこと、②出産したこと、③妊娠又は出産に起因する症状により業務委託に係る業務を行えないこと若しくは行えなかったこと又は当該業務の能率が低下したこと(以下「妊娠したこと等」という。)に関する言動により就業環境が害されるもの(以下「状態への嫌がらせ型」という。)

ロ 特定受託業務従事者が、妊娠又は出産に関して法第13条第1項若しくは第2項の規定による配慮の申出(以下「配慮の申出」という。)をしたこと又はこれらの規定による配慮を受けたこと(以下「配慮を受けたこと」という。)に関する言動により就業環境が害されるもの(以下「配慮申出等への嫌がらせ型」という。)

(2) 「状態への嫌がらせ型」の典型的な例として、次に掲げるものがあるが、これらは限定列挙ではないことに留意が必要である。

(典型的な例)

イ 妊娠したこと等のみを理由として嫌がらせ等をするもの

客観的にみて、言動を受けた特定受託業務従事者の能力の発揮や継続就業に重大な悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるようなものが該当する。特定受託業務従事者が妊娠したこと等により、特定業務委託事業者等が当該特定受託業務従事者に対し、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等(嫌がらせ的な言動又は契約に定められた業務に従事させないことをいう。以下同じ。)をすること(当該特定受託業務従事者がその意に反することを当該特定業務委託事業者等に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む。)。

ロ 妊娠したこと等のみを理由として契約の解除その他の不利益な取扱いを示唆するもの

特定業務委託事業者等が当該特定受託業務従事者に対し、妊娠したこと等のみを理由として、業務委託に係る契約の解除、報酬の減額、取引数量の削減、取引の停止等の不利益な取扱いを示唆すること。

例えば、妊娠を報告しただけで、業務委託に係る契約の解除を示唆したり、報酬の減額を示唆したりすることは不利益な取扱いの示唆に該当するが、一方で、妊娠又は出産に起因する症状により役務の提供を休止した場合に、実際に役務の提供を休止した分の報酬の減額について話合いをすることはハラスメントには該当しない。

(3) 「配慮申出等への嫌がらせ型」の典型的な例として、次に掲げるものがあるが、これらは限定列挙ではないことに留意が必要である。

(典型的な例)

イ 配慮の申出を阻害するもの

客観的にみて、言動を受けた特定受託業務従事者の配慮の申出が阻害されるものが該当する。

① 特定受託業務従事者が配慮の申出をしたい旨を業務委託に係る契約担当者に相談したところ、当該申出をしないよう言うこと。

② 特定受託業務従事者が配慮の申出をしたところ、業務委託に係る契約担当者が、当該特定受託業務従事者に対し、当該申出を取り下げるよう言うこと。

③ 特定受託業務従事者が配慮の申出をしたい旨を特定業務委託事業者の雇用する労働者に伝えたところ、繰り返し又は継続的に申出をしないよう言うこと(当該特定受託業務従事者がその意に反することを当該労働者に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む。)。

④ 特定受託業務従事者が配慮の申出をしたところ、特定業務委託事業者の雇用する労働者が、繰り返し又は継続的に当該申出を取り下げるよう言うこと(当該特定受託業務従事者がその意に反することを当該労働者に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む。)。

ロ 配慮を受けたことにより嫌がらせ等をするもの

客観的にみて、言動を受けた特定受託業務従事者の能力の発揮や継続就業に重大な悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるようなものが該当する。

特定受託業務従事者が配慮を受けたことにより、特定業務委託事業者等が当該特定受託業務従事者に対し、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等をすること(当該特定受託業務従事者がその意に反することを当該特定業務委託事業者又はその雇用する労働者に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む。)。

ハ 配慮の申出等のみを理由として契約の解除その他の不利益な取扱いを示唆するもの

特定受託業務従事者が、配慮の申出をしたい旨を特定業務委託事業者に相談したこと、配慮の申出をしたこと、配慮を受けたことのみを理由として、特定業務委託事業者等が当該特定受託業務従事者に対し、業務委託に係る契約の解除、報酬の減額、取引数量の削減、取引の停止等の不利益な取扱いを示唆すること。

例えば、配慮を受けても業務量が変わらないにもかかわらず、報酬の減額を示唆することや、実際に業務量が減少した分以上の報酬を減額することを示唆することは、不利益な取扱いの示唆に該当するが、一方で、配慮を受けたことにより実際に業務量が減少した分の報酬の減額について話合いをすることはハラスメントには該当しない。

4 業務委託におけるパワーハラスメントの内容

(1) 業務委託におけるパワーハラスメントは、業務委託に関して行われる①取引上の優越的な関係を背景とした言動であって、②業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③特定受託業務従事者の就業環境が害されるものであり、①から③までの要素を全て満たすものをいう。

なお、客観的にみて、業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲で行われる適正な指示及び通常の取引行為としての交渉の範囲内の話合いについては、業務委託におけるパワーハラスメントには該当しない。

(2) 「取引上の優越的な関係を背景とした」言動とは、業務委託に係る業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける特定受託業務従事者が当該言動の行為者とされる者(以下この4において「行為者」という。)に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるものを指し、例えば、以下のもの等が含まれる。

・特定業務委託事業者による言動

・業務委託に係る契約担当者、事業担当者又は業務委託に係る成果物の確認若しくは検収を行う者による言動

・特定業務委託事業者の雇用する労働者による言動であって、当該者の協力を得なければ業務の円滑な遂行を行うことが困難であるもの

・特定業務委託事業者の雇用する労働者からの集団による行為で、これに抵抗又は拒絶することが困難であるもの

(3) 「業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは、社会通念に照らし、当該言動が明らかに特定業務委託事業者の業務委託に係る業務を遂行する上で必要性がない、又はその態様が相当でないものを指し、例えば、以下のもの等が含まれる。

・業務の遂行上明らかに必要性のない言動

・業務の目的を大きく逸脱した言動

・業務を遂行するための手段として不適当な言動

・当該行為の回数、行為者の数等、その態様や手段が社会通念に照らして許容される範囲を超える言動

この判断に当たっては、様々な要素(当該言動の目的、当該言動を受けた特定受託業務従事者の責めに帰すべき事由の有無や内容・程度を含む当該言動が行われた経緯や状況、業種・業態、業務の内容・性質、当該言動の態様・頻度・継続性、行為者との関係性、通常の取引行為と照らした当該言動の妥当性等)を総合的に考慮することが適当である。

(4) 「就業環境を害する」とは、当該言動により特定受託業務従事者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、特定受託業務従事者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指す。

この判断に当たっては、「平均的な特定受託業務従事者の感じ方」、すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の特定受託業務従事者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当である。

(5) 業務委託におけるパワーハラスメントは、(1)の①から③までの要素を全て満たすものをいい(客観的にみて、業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲で行われる適正な指示及び通常の取引行為としての交渉の範囲内の話合いについては、業務委託におけるパワーハラスメントには該当しない。)、個別の事案についてその該当性を判断するに当たっては、(3)で総合的に考慮することとした事項のほか、当該言動により特定受託業務従事者が受ける身体的又は精神的な苦痛の程度等を総合的に考慮して判断することが必要である。

このため、個別の事案の判断に際しては、相談窓口の担当者等がこうした事項に十分留意し、相談を行った特定受託業務従事者及び行為者の双方から丁寧に事実確認等を行い、それらを十分踏まえて、予防から再発防止に至る一連の措置を適切に講ずることが必要である。

業務委託におけるパワーハラスメントの状況は多様であるが、代表的な言動の類型としては以下のイからヘまでのものがあり、当該言動の類型ごとに、典型的に業務委託におけるパワーハラスメントに該当し、又は該当しないと考えられる例としては、次のようなものがある。

ただし、個別の事案の状況等によって判断が異なる場合もあり得ること、次の例は限定列挙ではないことに十分留意することが必要である。

なお、業務委託におけるパワーハラスメントに該当すると考えられる以下の例については、行為者と当該言動を受ける特定受託業務従事者の関係性を個別に記載していないが、取引上の優越的な関係を背景として行われたものであることが前提である。

イ 身体的な攻撃(暴行・傷害)

(該当すると考えられる例)

① 殴打・足蹴りを行うこと。

② 相手に物を投げつけること。

(該当しないと考えられる例)

① 誤ってぶつかること。

ロ 精神的な攻撃(脅迫・名誉棄損・侮辱・ひどい暴言・執拗しつような嫌がらせ)

(該当すると考えられる例)

① 人格を否定するような言動を行うこと(相手の性的指向・性自認に関する侮辱的な言動を行うことを含む。)。

② 業務の遂行に関する必要以上に長時間にわたる厳しい叱責を繰り返し行うこと。

③ 他の労働者や事業者の面前における大声での威圧的な叱責を繰り返し行うこと。

④ 相手の能力を否定し、罵倒するような内容の電子メール等を当該相手を含む複数の関係者宛てに送信すること。

⑤ 契約内容に基づき成果物を納品したにもかかわらず正当な理由なく報酬を支払わないこと又は減額することを、度を超して繰り返し示唆する又は威圧的に迫ること。

(該当しないと考えられる例)

① 業務委託に係る契約に定める内容が適切に実施されず、再三注意してもそれが改善されない特定受託業務従事者に対して一定程度強く注意をすること。

② 業務委託に係る契約の内容や性質等に照らして重大な問題行動を行った特定受託業務従事者に対して、一定程度強く注意をすること。

③ 事業者間の通常の取引行為の一環として、取引条件の変更について協議を行うこと。

ハ 人間関係からの切り離し(隔離・仲間外し・無視)

(該当すると考えられる例)

①一人の特定受託業務従事者に対して、特定業務委託事業者の雇用する労働者が集団で無視をし、事業所で孤立させること。

(該当しないと考えられる例)

① 通常、他の特定受託事業者と同じ場所で業務を遂行する特定受託業務従事者に対し、業務委託に係る契約を適切に遂行できるよう短期間集中的に別室で当該業務委託の内容に関する研修等を実施すること。

ニ 過大な要求(業務委託に係る契約上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制・仕事の妨害)

(該当すると考えられる例)

① 業務委託に係る契約上予定されていない肉体的・精神的負荷の高い作業を強要すること。

② 特定受託業務従事者に業務委託に係る業務とは関係のない私的な雑用の処理を強制的に行わせること。

③ 明確な検収基準を示さずに嫌がらせのために特定受託事業者の給付の受領を何度も拒み、やり直しを強要すること。

(該当しないと考えられる例)

① 業務の繁忙期に、業務委託に係る契約の範囲内で、通常時よりも一定程度多い業務の処理を行わせること。

② 検収基準を明らかにして指示しているにもかかわらず、当該基準に達しない給付を行う特定受託業務従事者に対し、当該基準に達しない部分を示してやり直しを指示すること。

ホ 過小な要求(合理的な理由なく契約内容とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと)

(該当すると考えられる例)

① 気に入らない特定受託業務従事者に対して嫌がらせのために業務委託に係る契約上予定されていた業務や役割を与えないこと。

(該当しないと考えられる例)

① 当初予定していた成果物の発注数が減少したため、業務委託に係る契約の範囲内で、特定受託業務従事者に依頼する業務量を減らすこと。

ヘ 個の侵害(私的なことに過度に立ち入ること)

(該当すると考えられる例)

① 特定受託業務従事者を事業所外でも継続的に監視したり、私物の写真撮影をしたりすること。

②特定受託業務従事者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、当該特定受託業務従事者の了解を得ずに他の労働者に暴露すること。

(該当しないと考えられる例)

① 特定受託業務従事者への育児介護等の配慮を目的として、特定受託業務従事者の家族の状況等についてヒアリングを行うこと。

② 特定受託業務従事者の了解を得て、当該特定受託業務従事者の性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報について、必要な範囲で業務委託に係る契約を遂行する上で関係する者に伝達し、配慮を促すこと。

なお、プライバシー保護の観点から、機微な個人情報を暴露することのないよう、労働者に周知・啓発する等の措置を講ずることが必要である。

5 特定業務委託事業者が業務委託に関して行われる言動に起因する問題に関し講ずべき措置の内容

特定業務委託事業者は、業務委託におけるハラスメントを防止するため、次の措置を講じなければならない。

(1) 特定業務委託事業者の方針等の明確化及びその周知・啓発

特定業務委託事業者は、業務委託におけるハラスメントに対する方針の明確化、労働者に対するその方針の周知・啓発として、イ及びロの措置を講じなければならない。

なお、周知・啓発をするに当たっては、業務委託におけるハラスメントの防止の効果を高めるため、その発生の原因や背景について、関係者の理解を深めることが重要である。その際、以下について留意することが必要である。

・業務委託におけるセクシュアルハラスメントの発生の原因や背景には、性別役割分担意識に基づく言動もあると考えられ、こうした言動をなくしていくことがセクシュアルハラスメントの防止の効果を高める上で重要であること。

・業務委託における妊娠、出産等に関するハラスメントの発生の原因や背景には、(ⅰ)妊娠、出産等に関する否定的な言動(不妊治療に対する否定的な言動を含め、他の労働者や特定受託業務従事者の妊娠、出産等の否定につながる言動(当該者に直接行わない言動も含む。)をいい、単なる自らの意思の表明を除く。以下同じ。)が頻繁に行われるなど、配慮の申出がしにくい就業場所の雰囲気や、(ⅱ)配慮の申出ができることに関する関係者への周知が不十分であること等も考えられる。このため、これらを解消していくことが業務委託における妊娠、出産等に関するハラスメントの防止の効果を高める上で重要であること。

・業務委託におけるパワーハラスメントの発生の原因や背景には、特定受託事業者が取引の構造上弱い立場にあること等を背景として、通常の取引行為から逸脱した言動が行われやすい状況もあると考えられ、そうした状況を解消していくことが業務委託におけるパワーハラスメントの防止の効果を高める上で重要であること。

イ 業務委託におけるハラスメントの内容及び業務委託におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、業務委託に係る契約担当者・事業担当者、成果物の確認・検収を行う者、特定受託業務従事者と協力して業務を行う者を含め、労働者に周知・啓発すること。

(特定業務委託事業者の方針等を明確化し、労働者に周知・啓発していると認められる例)

① 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、業務委託におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針を規定し、当該規定と併せて、業務委託におけるハラスメントの内容を労働者に周知・啓発すること。

② 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に業務委託におけるハラスメントの内容及び業務委託におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針について記載し、配布等すること。

③ 業務委託におけるハラスメントの内容及び業務委託におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。

ロ 業務委託におけるハラスメントに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、業務委託に係る契約担当者・事業担当者、成果物の確認・検収を行う者、特定受託業務従事者と協力して業務を行う者を含め、労働者に周知・啓発すること。

(対処方針を定め、労働者に周知・啓発していると認められる例)

① 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、業務委託におけるハラスメントに係る言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。

② 業務委託におけるハラスメントに係る言動を行った者は、現行の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓発すること。

(2) 相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

特定業務委託事業者は、特定受託業務従事者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、イ及びロの措置を講じなければならない。

イ 相談への対応のための窓口(以下「相談窓口」という。)をあらかじめ定め、特定受託業務従事者に周知すること(新たに業務委託におけるハラスメントの専用の窓口を定める場合に加えて、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号)第11条第1項から第3項までに規定する職場におけるセクシュアルハラスメント、同法第11条の3第1項及び第2項に規定する職場における妊娠、出産等に関するハラスメント又は労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律(昭和41年法律第132号)第30条の2第1項及び第2項に規定する職場におけるパワーハラスメントに係る相談窓口を業務委託におけるハラスメントについても活用可能とする場合も含む。)。

(相談窓口をあらかじめ定めていると認められる例)

① 外部の機関に相談への対応を委託すること。

② 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること。

③ 相談に対応するための制度を設けること。

なお、専用アプリやメール等の対面以外の方法により相談を受け付ける場合には、相談を行った特定受託業務従事者にとって、当該相談が受け付けられたことを確実に認識できる仕組みとすることが必要である。

(相談窓口を特定受託業務従事者に周知していると認められる例)

① 業務委託契約に係る書面やメール等に業務委託におけるハラスメントの相談窓口の連絡先を記載すること。

② 特定受託業務従事者が定期的に閲覧するイントラネット等において業務委託におけるハラスメントの相談窓口について掲載すること。

ロ イの相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。

また、相談窓口においては、被害を受けた特定受託業務従事者(以下「被害者」という。)が萎縮するなどして相談を 躊躇 ちゅうちょ する例もあること等を踏まえ、業務委託におけるハラスメントが現実に生じている場合だけではなく、その発生のおそれがある場合や、業務委託におけるハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。例えば、放置すれば就業環境を害するおそれがある場合等が考えられる。

(相談窓口の担当者が適切に対応することができるようにしていると認められる例)

① 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門や契約担当部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。

② 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。

③ 相談窓口の担当者に対し、相談を受けた場合の対応についての研修を行うこと。

(3) 業務委託におけるハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

特定業務委託事業者は、業務委託におけるハラスメントに係る相談の申出があった場合において、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処として、イからニまでの措置を講じなければならない。

イ 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に把握すること。

なお、業務委託におけるセクシュアルハラスメントについては、性的な言動の行為者とされる者が、他の事業者等である場合には、必要に応じて、他の事業者等に事実関係の確認への協力を求めることも含まれる。

(事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認していると認められる例)

① 相談窓口の担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談を行った特定受託業務従事者(以下「相談者」という。)及び業務委託におけるハラスメントに係る言動の行為者とされる者(以下「行為者」という。)の双方から事実関係を確認すること。

また、相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずること。事実関係の確認の状況について、共有することが適切な場合には、伝達可能な範囲で相談者に共有すること。

② 事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、中立な第三者機関に紛争処理を委ねること。

ロ イにより、業務委託におけるハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、速やかに被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。

(措置を適正に行っていると認められる例)

① 事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための被害者の就業場所の変更又は行為者の配置転換、行為者の謝罪、被害者の取引条件上の不利益の回復、事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること。

② 中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対して講ずること。

ハ イにより、業務委託におけるハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと。

(措置を適正に行っていると認められる例)

① 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における業務委託におけるハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。あわせて、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための被害者の就業場所の変更又は行為者の配置転換、行為者の謝罪等の措置を講ずること。

② 中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対して講ずること。

ニ 改めて業務委託におけるハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。

また、業務委託におけるハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること。

なお、業務委託におけるセクシュアルハラスメントについては、性的な言動の行為者とされる者が他の事業者等である場合には、必要に応じて、他の事業者等に再発防止に向けた措置への協力を求めることも含まれる。

(再発防止に向けた措置を講じていると認められる例)

① 業務委託におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針及び業務委託におけるハラスメントに係る言動を行った者について厳正に対処する旨の方針を、社内報、パンフレット、社内ホームページ、特定受託業務従事者が閲覧するイントラネット等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等すること。

② 業務委託における妊娠、出産等に関するハラスメントについて、法第13条の配慮の申出ができる旨を、社内報、パンフレット、社内ホームページ、特定受託業務従事者が閲覧するイントラネット等広報又は啓発のための資料に改めて掲載し、配布等すること。

③ 特定業務委託事業者の雇用する労働者に対して業務委託におけるハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施すること。

(4) (1)から(3)までの措置と併せて講ずべき措置

(1)から(3)までの措置を講ずるに際しては、併せてイ及びロの措置を講じなければならない。

イ業務委託におけるハラスメントに係る相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又は当該ハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者及び特定受託業務従事者に対して周知すること。なお、相談者・行為者等のプライバシーには、性的指向・性自認や病歴、不妊治療等の機微な個人情報も含まれるものであること。

(相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていると認められる例)

① 相談窓口においては相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、特定受託業務従事者に対する業務委託に係る契約の内容を記した書面やメール等(以下「業務委託契約に係る書面やメール等」という。)において記載すること、特定受託業務従事者が定期的に閲覧するイントラネット等において掲載すること、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に掲載し、配布等すること。

② 相談者・行為者等のプライバシーの保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、当該マニュアルに基づき対応するものとすること。

③ 相談者・行為者等のプライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うこと。

ロ 法第14条第2項及び第17条第1項の規定を踏まえ、特定受託業務従事者が業務委託におけるハラスメントに関する相談をしたこと又は事実関係の確認等の特定業務委託事業者の講ずべき措置に協力したこと、厚生労働大臣(都道府県労働局)に対して申出をし、適当な措置をとるべきことを求めたこと(以下「業務委託におけるハラスメントの相談等」という。)を理由として、業務委託に係る契約の解除その他の不利益な取扱いをされない旨を定め、特定受託業務従事者に周知・啓発すること。

(不利益な取扱いをされない旨を定め、特定受託業務従事者にその周知・啓発することについて措置を講じていると認められる例)

① 業務委託契約に係る書面やメール等において、業務委託におけるハラスメントの相談等を理由として、特定受託業務従事者が契約の解除等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、特定受託業務従事者に周知・啓発をすること。

② 特定受託業務従事者が定期的に閲覧するイントラネット等に業務委託におけるハラスメントの相談等を理由として、特定受託業務従事者が契約の解除等の不利益な取扱いをされない旨を掲載すること。

6 業務委託に係る契約交渉中の者に対する言動に関し特定業務委託事業者が行うことが望ましい取組の内容

特定業務委託事業者は、5(1)イの業務委託におけるハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化等を行う際に、その行う業務委託に係る特定受託業務従事者に対する言動のみならず、当該業務委託に係る契約交渉中の者(当該業務委託に係る具体的な取引条件の交渉を現に行っている者、当該業務委託に係る業務を受託するために特定業務委託事業者に接触した者及び特定業務委託事業者が当該業務委託をするために接触した者をいう。)に対する特定業務委託事業者等による言動についても、同様の方針を併せて示すことが望ましい。

また、当該業務委託に係る契約交渉中の者から業務委託におけるハラスメントに類すると考えられる相談があった場合には、その内容を踏まえて、5の措置も参考にしつつ、必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましい。

7 他の事業者等からの特定受託業務従事者へのハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し特定業務委託事業者が行うことが望ましい取組の内容

(1) 他の事業者等からのハラスメント(パワーハラスメント、妊娠、出産等に関するハラスメントに限る。)や顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容

特定業務委託事業者は、他の事業者等からのパワーハラスメントや妊娠、出産等に関するハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)により、特定受託業務従事者が就業環境を害されることのないよう、例えば、イ及びロの取組を行うことが望ましい。また、ハのような取組を行うことも、特定受託業務従事者が被害を受けることを防止する上で有効と考えられる。

イ 相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

特定業務委託事業者は、他の事業者等からのパワーハラスメントや妊娠、出産等に関するハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為に関する特定受託業務従事者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、5(2)イ及びロの例も参考にしつつ、次の取組を行うことが望ましい。

また、あわせて、特定受託業務従事者が当該相談をしたことを理由として、契約の解除その他の不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、特定受託業務従事者に周知・啓発することが望ましい。

① 相談先(業務委託に係る契約を遂行する上で特定受託業務従事者に指示等を行う立場にある者、相談担当者等)をあらかじめ定め、これを特定受託業務従事者に周知すること。

② 相談を受けた者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。

ロ 被害者への配慮のための取組

特定業務委託事業者は、相談者から事実関係を確認し、他の事業者等からのパワーハラスメントや妊娠、出産等に関するハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為が認められた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための取組を行うことが望ましい。

(被害者への配慮のための取組例)

① 事案の内容や状況に応じ、被害者のメンタルヘルス不調への相談対応、著しい迷惑行為を行った者に対する対応が必要な場合に一人で対応させない等の取組を行うこと。

② 元委託事業者の雇用する労働者が当該元委託事業者の事業所において就業する特定受託業務従事者に対しパワーハラスメントや妊娠、出産等に関するハラスメントを行っている場合、当該元委託事業者に対し、事実確認やハラスメントの防止の申入れを行ったり、同様の条件の他の業務委託に切り替えをしたりすること。

ハ 他の事業主等からのパワーハラスメントや妊娠、出産等に関するハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為による被害を防止するための取組

イ及びロの取組のほか、他の事業者等からのパワーハラスメントや妊娠、出産等に関するハラスメント、顧客等からの著しい迷惑行為から特定受託業務従事者が被害を受けることを防止する上では、特定業務委託事業者が、こうした行為への対応に関するマニュアルの作成や研修の実施等の取組を行うことも有効と考えられる。また、業種・業態等によりその被害の実態や必要な対応も異なると考えられることから、業種・業態等における被害の実態や業務の特性等を踏まえて、それぞれの状況に応じた必要な取組を進めることも、被害の防止に当たっては効果的と考えられる。

(2) 他の事業者等からのハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し元委託事業者等との関係において行うことが望ましい取組の内容

特定受託業務従事者が、業務委託に係る契約を遂行するに当たって、例えば、元委託事業者の事業所で就業する場合や、特定の現場において他の事業者の雇用する労働者や他の個人事業者等と協力して業務を遂行する場合など、特定業務委託事業者等以外の者と関係性が生じる場合がある。このような場合においては、元委託事業者等においても特定受託業務従事者に対するハラスメント対策が重要であることの理解を求めるとともに、当該元委託事業者等と連携してハラスメント対策を行うことが効果的であり、特定業務委託事業者は、例えば、以下のような特定受託業務従事者に対するハラスメント対策を行うことが望ましい。

(元委託事業者等との関係における取組例)

① 特定受託業務従事者が元委託事業者の事業所で就業する場合において、特定業務委託事業者と元委託事業者との間の契約において、元委託事業者も特定受託業務従事者に対するハラスメント対策(ハラスメント防止に関する措置やハラスメントが発生した場合の連絡窓口の設定、事実確認等の協力等)を行う旨を規定しておくこと。

② 重層的な業務委託に係る契約であって多数の契約当事者が存在する場合において、特定受託業務従事者が就業する場所において特定受託業務従事者に対するハラスメント対策を効果的に行うことができると認められる事業者に対し、直接的又は間接的に協力を求めること(契約や覚書においてハラスメント対策に係る内容を盛り込むことを含む。)。