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告示:短時間・有期雇用労働者対策基本方針

 

短時間・有期雇用労働者対策基本方針

制 定 令和二年三月二十七日厚生労働省告示第百二十二号

 

短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年法律第七十六号)第五条第一項の規定に基づき、短時間・有期雇用労働者対策基本方針を次のように定め、令和二年四月一日から適用することとしたので、同条第五項の規定に基づき、告示する。なお、短時間労働者対策基本方針(平成二十七年厚生労働省告示第百四十二号)は、令和二年三月三十一日限り廃止する。

 

短時間・有期雇用労働者対策基本方針

 

はじめに

短時間労働者の雇用管理の改善等に関しては、平成5年に短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成5年法律第76号。以下「短時間労働者法」という。)を制定し、短時間労働を労使双方にとって重要な就業形態として位置付け、短時間労働者がその有する能力を有効に発揮することができるような条件整備を図る等によりその福祉の増進を図ってきたところである。

特に、平成19年の短時間労働者法の改正において、通常の労働者と同視すべき短時間労働者について差別的取扱いを禁止する等の均等・均衡待遇の確保の規定を設けるとともに、通常の労働者への転換推進措置の導入等に関する規定を設け、それらの履行確保を図ってきたところである。

さらに、平成26年の短時間労働者法の改正において、短時間労働者の待遇の原則の新設、差別的取扱いの禁止の対象となる通常の労働者と同視すべき短時間労働者の範囲の拡大等により均等・均衡待遇の確保を進めるとともに、雇入れ時の短時間労働者への雇用管理の改善等の措置の内容の説明義務の新設等により、短時間労働者の納得性の向上等をより一層推進するための措置を講じたところである。

また、有期雇用労働者の雇用管理等に関しては、平成19年に制定した労働契約法(平成19年法律第128号)の平成24年の改正において、同一の使用者との間の通算契約期間が5年を超える有期雇用労働者について、期間の定めのない労働契約への転換を可能とする規定や、期間の定めがあることを理由とした不合理な労働条件の相違を禁止する規定等を設けることにより、有期雇用労働者の雇用の安定や労働条件の改善を図ってきたところである。

さらに、平成30年には、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号。以下「働き方改革関連法」という。)により、短時間労働者法及び労働契約法を一体的に改正し、短時間労働者法を短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「法」という。)に改め、短時間労働者及び有期雇用労働者(以下「短時間・有期雇用労働者」という。)について、通常の労働者との間の不合理な待遇差を解消するための規定の整備や、短時間・有期雇用労働者に対する待遇に関する説明義務の強化、行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続の整備等を行った。

もとより、短時間・有期雇用労働者の福祉の増進は、法の施行等によって確保されるだけでなく、他の関係法令に基づく施策等広範多岐にわたるものにより実現されるものである。これらを円滑かつ効果的に実施していくためには、その職業生活の動向を的確に把握した上で短時間・有期雇用労働者対策の総合的かつ計画的な展開の方向を労使を始めとする国民全体に示し、これに沿って対策を講ずる必要があるため、法は短時間・有期雇用労働者対策基本方針を定めることとしている。

この基本方針は、国が、短時間・有期雇用労働者の職業生活の動向についての現状と課題の分析を行い、その福祉の増進を図るため、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等を促進し、並びにその職業能力の開発及び向上を図るために講じようとする施策等の基本となるべき事項を示すものである。

本方針の運営期間は、令和2年度から令和6年度までの5年間とする。

 

第1 短時間・有期雇用労働者の職業生活の動向

1 短時間・有期雇用労働者を取り巻く経済社会の動向等

我が国の人口は、少子高齢化の進行に伴い、平成20年をピークに減少傾向にある。経済成長と労働参加が適切に進まず、労働力人口が大幅に減少することとなれば、経済成長の供給側の制約要因となるとともに、需要面で見ても経済成長にマイナスの影響を与えるおそれがある。このように、今後、ますます労働力供給が制約される日本では、全員参加の社会の実現に向け、若者、女性、高齢者、障害者を始め就労を希望する者が意欲と能力を生かしてそれぞれのライフスタイルに応じた働き方を通じて能力を発揮できるよう、多様な働き方を実現するための環境整備を進めていくことが重要である。

短時間労働及び有期雇用労働(以下「短時間・有期雇用労働」という。)は、育児や介護等様々な事情により就業時間に制約のある者を始め、多様なニーズや事情等を抱えた労働者が従事しやすい働き方である一方で、就職氷河期世代を含め、正社員としての就職機会を得ることができず、非自発的に短時間・有期雇用労働に就く者(以下「不本意非正規雇用労働者」という。)も一定程度存在する。また、現状においては、必ずしも働き・貢献に見合った待遇が確保されてはいない。

このため、短時間・有期雇用労働者の均等・均衡待遇の確保や正社員への転換等、短時間・有期雇用労働者が公正な待遇を受けるとともに能力を十分に発揮できるような条件を整備することは、女性や高齢者等が活躍するためにも重要である。

2 短時間・有期雇用労働者の増加と属性の多様性

短時間・有期雇用労働者の数は長期的には増加傾向にある。「労働力調査」(総務省統計局)において、非農林業短時間雇用者(週間就業時間が35時間未満の者)を見ると、令和元年には1,849万人となり雇用者総数の31.9%を占めており、有期雇用労働者を見ると、令和元年には1,416万人となり雇用者総数の24.4%を占めている(非農林業短時間雇用者かつ有期雇用労働者である者は730万人で、雇用者総数の12.6%)。それぞれの内訳について見ると、女性が短時間労働者の約7割、有期雇用労働者の約6割を占め、55歳以上の高年齢者が、短時間労働者と有期雇用労働者それぞれの3割超を占めている。一方、若年者や就職氷河期世代、世帯主である者等も一定の割合で存在しており、その態様は多様なものとなっている。

3 短時間・有期雇用労働者を雇用する理由

「「パートタイム」や「有期雇用」の労働者の活用状況等に関する調査」及び「働き方等に関する調査」(令和元年独立行政法人労働政策研究・研修機構。以下これらを総称して「働き方等調査」という。)においては、企業が「パートタイム」労働者を「活用している理由」(複数回答)は、「パートタイム」労働者を雇用している企業のうち、「労働者自身が(正社員・正職員とは異なる働き方を)希望したため」と回答した企業が52.6%、「簡単な内容の仕事や責任が軽い仕事のため」と回答した企業が36.4%、「人件費が割安なため(労務コストの効率化)」と回答した企業が28.6%となっている。「有期雇用」労働者については、「有期雇用」労働者を雇用している企業のうち、「定年退職者の再雇用のため」と回答した企業が49.8%と最も多く、「経験や知識、技能のある人を活用するため」と回答した企業が30.0%、「労働者自身が(正社員・正職員とは異なる働き方を)希望したため」と回答した企業が27.2%となっている。

(注)働き方等調査における企業割合については、「パートタイム」、「有期雇用」及び「正社員・正職員」で、それぞれ集計対象となる企業が一部異なっている。

4 短時間・有期雇用労働者の待遇の状況

(1) 短時間・有期雇用労働者の職務、労働条件の状況

イ 短時間・有期雇用労働者の職場における役割を見ると、定型的で軽易な職務に従事する者だけでなく、基幹的役割を担う短時間・有期雇用労働者も一定数存在する。働き方等調査において、「業務の内容のみ同じ正社員がいる(責任の程度は異なっている)」と回答した者の割合は、「パートタイム」労働者では18.9%、「有期雇用」労働者では20.5%であり、さらに「業務の内容も責任の程度も同じ正社員がいる」と回答した者の割合は、「パートタイム」労働者では10.7%、「有期雇用」労働者では17.3%となっている。また、「パートタイム」や「有期雇用」の労働者を「役職に登用している」と回答した企業は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では6.9%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では17.3%で、そのうち「部長相当職かそれ以上のレベルまで登用している」と回答した企業は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では14.2%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では37.8%となっている。

ロ 賃金について、「賃金構造基本統計調査」(厚生労働省)により、1時間当たり所定内給与額(平成30年)を見ると、雇用期間の定めのない一般労働者(短時間労働者以外の者)と比較して、雇用期間の定めのない短時間労働者は58.8%、雇用期間の定めのある短時間労働者は57.8%、雇用期間の定めのある一般労働者は71.9%となっている。また、短時間・有期雇用労働者の1時間当たり所定内給与額は、年齢によって大きくは変わらない。

働き方等調査において、「パートタイム」や「有期雇用」の労働者を雇用している企業における「基本的な賃金の決定に当たり考慮した算定要素」(複数回答)を見ると、「パートタイム」労働者と「有期雇用」労働者ともに「能力、経験」が最も多く、「パートタイム」労働者を雇用している企業では58.5%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では63.0%、次いで「職務(業務の内容や責任の程度)」が「パートタイム」労働者を雇用している企業では56.1%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では59.9%となっている。

その他に考慮されている算定要素としては、「パートタイム」労働者を雇用している企業では「地域での賃金相場」が36.6%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では「業績、成果」が32.9%となっている。一方、「正社員・正職員」については、「職務(業務の内容や責任の程度)」が83.3%、「能力、経験」が78.8%、「業績、成果」が60.4%、「勤続年数」が58.6%の順となっている。

また、働き方等調査により、「正社員・正職員と職務が同じ」労働者がいる企業における「基本的な賃金」の算定方法を見ると、「正社員・正職員と同様の算定方法(制度・基準)に基づいている」、「正社員・正職員の算定方法(制度・基準)とは異なるが、算定要素を合わせている」と回答した企業が、「パートタイム」労働者を雇用している企業ではそれぞれ26.2%、21.7%、「有期雇用」労働者を雇用している企業ではそれぞれ32.6%、26.5%となっている。一方、「正社員・正職員とは、算定方法(制度・基準)も算定要素も異なる」と回答した企業は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では25.3%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では25.8%となっている。

「正社員・正職員と職務かつ人材活用の仕組みが同じ」労働者がいる企業における「基本的な賃金」の算定方法を見ると、「正社員・正職員と同様の算定方法(制度・基準)に基づいている」、「正社員・正職員の算定方法(制度・基準)とは異なるが、算定要素を合わせている」と回答した企業が、「パートタイム」労働者を雇用している企業ではそれぞれ37.5%、21.9%、「有期雇用」労働者を雇用している企業ではそれぞれ51.3%、14.9%となっている一方、「正社員・正職員とは、算定方法(制度・基準)も算定要素も異なる」と回答した企業は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では14.2%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では17.1%となっている。

さらに、働き方等調査において、「正社員・正職員と職務が同じ」労働者がいる企業における「基本的な賃金の水準」(時給換算)を見ると、「正社員・正職員より高い」又は「正社員・正職員と同じ」と回答した企業を合算した割合は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では37.7%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では40.3%となる一方、正社員・正職員の「6割以上8割未満」、「4割以上6割未満」又は「4割未満」と回答した企業を合算した割合は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では18.2%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では23.0%となっている。

また、「正社員・正職員と職務かつ人材活用の仕組みが同じ」労働者がいる企業における「基本的な賃金の水準」(時給換算)について、「正社員・正職員より高い」又は「正社員・正職員と同じ」と回答した企業を合算した割合は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では45.8%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では53.2%となっている一方、正社員・正職員の「6割以上8割未満」、「4割以上6割未満」又は「4割未満」と回答した企業を合算した割合は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では12.1%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では11.9%となっている。

ハ 諸手当、賞与及び退職金について見ると、働き方等調査において、「パートタイム」又は「有期雇用」の労働者に対して、「通勤手当」を支給している企業の割合は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では79.1%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では84.1%となっており、「正社員・正職員と同一の役職手当を支払っている」企業の割合は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では38.7%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では54.7%となっている。「精皆勤手当」又は「住宅手当」を支給している企業の割合は、総じて10%未満となっている。

また、「パートタイム」又は「有期雇用」の労働者に対して「賞与」を支給している企業の割合は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では41.9%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では47.4%となっており、「退職金」を支給している企業の割合は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では9.6%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では10.5%となっている。

(2) 教育訓練の実施状況、福利厚生施設の利用

働き方等調査において、「パートタイム」又は「有期雇用」の労働者に対して、「日常的な業務を通じた計画的な教育訓練(OJT)」を実施する企業の割合は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では53.1%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では57.7%(「正社員・正職員」に対しては62.0%)、「入職時のガイダンス(Off―JT)」を実施する企業の割合は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では48.8%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では53.6%(同57.7%)となっている。また、「職務の遂行に必要な能力を付与する教育訓練(Off―JT)」を実施する企業の割合は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では30.3%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では36.5%(同52.9%)、「将来のためのキャリアアップのための教育訓練(Off―JT)」を実施する企業の割合は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では9.7%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では12.8%(同33.7%)となっている。

福利厚生施設について見ると、「パートタイム」又は「有期雇用」の労働者に対し、「給食施設や休憩室、更衣室の利用」を認めている企業の割合は、「パートタイム」労働者を雇用している企業では46.8%、「有期雇用」労働者を雇用している企業では53.2%(同48.9%)となっている。

5 短時間・有期雇用労働者の意識の動向

(1) 短時間・有期雇用労働を選択する理由

働き方等調査により、「パートタイム」労働者が「現在の所定労働時間を選択した理由」(複数回答)を見ると、「都合の良い時間帯(日)に働きたいから」が53.0%、「勤務時間・日数が短いから」が35.7%というように、自らの希望する時間に働ける働き方を求めて短時間労働が選択されている面がある。

また、「家事や育児、介護、その他(通学、本業・兼業等)があるから」が49.8%、「残業が少ない、転勤がない等、働き方が限定されているから」が14.3%というように、例えば、育児や介護等の家庭の事情、残業や転勤の有無等を考慮して、短時間労働を選択していると考えられる者もいる。

「正社員やフルタイムの働き口(募集)が、見つからなかったから(正社員やフルタイムとして採用されなかったからを含む)」とする者も6.9%おり、正社員としての就職機会を得ることができず、非自発的に短時間労働者となったと考えられる者も存在している。

「有期雇用」労働者が「「期間の定めのある契約(有期雇用)」で働くことを選択した理由」(複数回答)を見ると、「仕事や働き方(労働時間・日数等)、賃金・労働条件等が希望に合致したから(そうした求人が有期雇用だったからを含む)」が42.3%、「自身の都合で辞めやすいから(健康・体力的な問題を含む)」が16.5%となっている。

また、「正社員を定年退職した後に再雇用されたから」と回答した者も20.5%を占めている。

(一)方、「正社員や無期雇用としての働き口(募集)が、見つからなかったから(正社員や無期雇用として採用されなかったからを含む)」とする者も16.7%おり、非自発的に有期雇用労働者となったと考えられる者も存在している。

(2) 今後の働き方の希望

働き方等調査により、「今後の働き方についての希望」を見ると、「現在の契約のまま働きたい」と回答した者の割合は、「パートタイム」労働者では80.8%、「有期雇用」労働者では70.2%いる一方で、「正社員で働きたい」と回答した者の割合は、「パートタイム」労働者では13.3%、「有期雇用」労働者では22.4%おり、年齢階層別で見ると、特に若年層において「正社員で働きたい」と回答した者の割合が高くなっている。「正社員で働きたい」と回答した「パートタイム」労働者及び「有期雇用」労働者について、「正社員として働く際に働き方の限定ができるとしたら希望したい制度」(複数回答)を見ると、「所定労働時間・日数の限定」が、「パートタイム」労働者では59.9%、「有期雇用」労働者では42.2%と最も高く、次いで「勤務地の限定」が、「パートタイム」労働者では42.7%、「有期雇用」労働者では40.3%、「仕事(職種)の限定」が、「パートタイム」労働者では31.1%、「有期雇用」労働者では32.8%となっており、勤務地、職務の内容又は勤務時間が限定され、ライフスタイル等に応じた働き方が可能ないわゆる「多様な正社員」を希望する者が一定程度存在する。

(3) 仕事及び待遇等に対する意識

働き方等調査において、現在の勤務先や仕事について「満足している」又は「どちらかというと満足している」と回答した労働者を合算した割合は、「パートタイム」労働者では69.6%、「有期雇用」労働者では61.6%である一方、「不満である」又は「どちらかというと不満である」と回答した労働者を合算した割合は、「パートタイム」労働者では10.3%、「有期雇用」労働者では15.4%となっている。この「不満である」又は「どちらかというと不満である」と回答した労働者のうち、その理由について、「仕事や働きぶりに、賃金や労働条件が見合わない」と回答した者の割合は、「パートタイム」労働者では53.6%、「有期雇用」労働者では59.1%と最も高く、このほか「仕事の変化や勤続年数等が賃金に反映されない」と回答した者の割合は、「パートタイム」労働者では47.3%、「有期雇用」労働者では46.0%、「正社員に比べて、賃金や労働条件が低い」と回答した者の割合は、「パートタイム」労働者では40.1%、「有期雇用」労働者では49.8%となっている。

また、「業務の内容等が同じ正社員がいる」と回答した「パートタイム」労働者及び「有期雇用」労働者のうち、正社員と「同等かそれ以上の賃金水準である」又は「正社員より賃金水準が低いが、納得している」と回答した労働者を合算した割合は、「パートタイム」労働者では40.8%、「有期雇用」労働者では38.8%となっている一方、「正社員より賃金水準が低く、納得していない」と回答した労働者は、「パートタイム」労働者では19.0%、「有期雇用」労働者では29.2%となっている。

 

第2 短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等を促進し、並びにその職業能力の開発及び向上その他短時間・有期雇用労働者の福祉の増進を図るために講じようとする施策の基本となるべき事項

1 短時間・有期雇用労働者をめぐる課題

第1で見たような動向の中で、賃金を始めとする均等・均衡待遇の確保や通常の労働者への転換等、次の6つの課題について、法の円滑な施行等に取り組み、短時間・有期雇用労働者が公正な待遇を受けるとともに能力を十分に発揮できるような条件を整備することが必要である。

(1) 働き・貢献に見合った公正な待遇の確保

短時間・有期雇用労働は、事業主及び労働者のニーズに応じて、労働時間や職務の内容等が様々であるが、必ずしも待遇が働き・貢献に見合ったものになっていない場合があるため、均等・均衡待遇のより一層の確保が必要である。

(2) 明確な労働条件等の設定・提示

短時間・有期雇用労働者の労働条件は個々の事情に応じて多様に設定されることが多いため、不明確になりやすく、労働条件等を短時間・有期雇用労働者が雇入れ時から正確に把握できるようにすることが必要である。

(3) 納得性の向上

短時間・有期雇用労働者の働き方は多様であり、通常の労働者と待遇が異なる理由が分からない場合もあると考えられる。短時間・有期雇用労働者の納得性が高まるよう、雇用管理の改善等について講ずる措置や、待遇の相違の内容や理由について、短時間・有期雇用労働者が事業主から適切に説明を受けられるようにするとともに、短時間・有期雇用労働者が待遇に係る疑問等について相談できる体制が事業所で整備されることが必要である。

(4) 通常の労働者への転換を始めとするキャリアアップ

不本意非正規雇用労働者も一定割合存在しており、通常の労働者への転換を希望する者については、転換の機会が与えられることが必要である。また、短時間・有期雇用労働者が職業生活を通じて職業能力の開発及び向上を図ることを促進する等により、希望に応じてキャリアアップが図られることが必要である。

(5) 法の履行確保

法違反を把握した場合については、都道府県労働局雇用環境・均等部室で、報告徴収並びに助言、指導及び勧告により是正を図る必要がある。短時間・有期雇用労働者の均等・均衡待遇が確保され、短時間・有期雇用労働を選択することによって不合理な取扱いを受けることのないよう、法の実効性をより一層確保することが必要である。

(6) その他労働関係法令の遵守

短時間・有期雇用労働者に特有の課題だけでなく、労働基準法(昭和22年法律第49号)等の基本的な労働に関する法令が遵守されていない場合も依然として見られるため、それらの法令遵守の徹底が必要である。

なお、(1)から(6)までの課題のほか、短時間労働者に対する被用者保険の適用拡大など、社会保障制度については働き方の選択に対して中立的な制度にしていくよう検討が進められている。

2 施策の方向性

1の課題に対する今後の施策の方向性は、次のとおりである。

通常の労働者との均等・均衡待遇の確保等を通じて、短時間・有期雇用労働者の待遇の改善を推進するとともに、不本意非正規雇用労働者に関しては、通常の労働者への転換等のための取組を一層進める。

このため、法、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律施行規則(平成5年労働省令第34号)、事業主が講ずべき短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する措置等についての指針(平成19年厚生労働省告示第326号)及び短時間・有期雇用労働者及び派遣労働者に対する不合理な待遇の禁止等に関する指針(平成30年厚生労働省告示第430号。以下「同一労働同一賃金ガイドライン」という。)(以下これらを総称して「法等」という。)により、職務の内容並びに当該職務の内容及び配置の変更範囲が通常の労働者と同じ短時間・有期雇用労働者に対しては、短時間・有期雇用労働者であることを理由とした差別的取扱いが禁止されることを徹底するとともに、それ以外の短時間・有期雇用労働者に対しては、職務の内容、当該職務の内容及び配置の変更範囲その他の事情に応じて通常の労働者との不合理な待遇差の解消を図る。

また、法等に基づく短時間・有期雇用労働者と通常の労働者との間の待遇の相違等に関する説明義務等を通じて、短時間・有期雇用労働者の納得性の向上を図る。

こうした法等の内容について周知徹底を図り、事業主・労働者からの相談等に適切に対応するとともに、労働者に対して一般的に適用される基本的な労働に関する法令の履行確保を徹底する。

さらに、法等の遵守の徹底や事業主に対する助成金の支給等により、事業主が通常の労働者への転換を推進するための措置を講ずるようにするとともに、キャリアアップのための支援を行う。

現状においては、短時間・有期雇用労働者から通常の労働者への転換等を図ろうとしても、通常の労働者の働き方がフルタイムで職務や勤務地の限定がない働き方が中心であるために、時間や勤務地の制約等があって短時間・有期雇用労働者として就業している場合には実質的に転換を選択できない場合も見られる。このため、事業主及び短時間・有期雇用労働者のニーズを踏まえ、短時間正社員や勤務地限定正社員等、短時間・有期雇用労働者がより転換しやすい「多様な正社員」の普及及び定着に向けた取組を行う。

これらの取組により、短時間・有期雇用労働者の福祉の増進が図られるだけでなく、現在は就業していない者又は様々な事情からやむなく短時間・有期雇用労働に就いている者にとっても魅力的な働き方の選択肢が提供されるようになるが、これは労働力人口減少に対する一つの対応策としても重要なものである。

国は、この方向性に沿って、短時間・有期雇用労働者の就業の実態を十分に踏まえつつ、その福祉の一層の増進を図るための施策を総合的に推進するものとする。

3 具体的施策

(1) 均等・均衡待遇の確保等

イ 法等の周知による均等・均衡待遇の確保等

短時間・有期雇用労働者について、同一企業における通常の労働者との均等・均衡待遇の確保、納得性の向上を図るためには、まず法等の内容が事業主及び短時間・有期雇用労働者双方に十分に理解され、遵守されることが必要であることから、パンフレット等の配付、説明会の実施等により事業主及び短時間・有期雇用労働者双方に対して積極的な周知を図る。特に、短時間・有期雇用労働を選択することによって不合理な取扱いを受けることがないよう、法に基づく均等・均衡待遇の趣旨が適切に理解され、当該趣旨に沿った雇用管理の改善が図られるよう促す。その際、労使の取組や裁判例の動向等について情報収集を行いつつ、同一労働同一賃金ガイドラインにおいて示している均等・均衡待遇の基本的な考え方及び具体例に基づき、どのような待遇差が不合理なものであり、どのような待遇差が不合理なものでないのか等について、適切な周知に努める。

その他、労働者に対する待遇に関する説明義務の強化(説明の求めをしたことによる不利益取扱いの禁止を含む。)や、行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続の整備等、法の改正内容に重点を置いて周知を図り、事業主に必要な措置を講ずるように促す。なお、周知に当たっては、都道府県労働局において法等の施行を担当する雇用環境・均等部室のみならず、労働基準監督署、公共職業安定所の窓口等や、厚生労働省ホームページ、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する情報をワンストップで提供するインターネットサイト(パート・有期労働ポータルサイト)等、多様な手段を活用する。

ロ 的確な行政指導の実施

法第18条第1項の規定においては、法等で定めている事業主が講ずべき措置について、厚生労働大臣又は都道府県労働局長は、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等を図るため必要があると認めるときは、短時間・有期雇用労働者を雇用する事業主に対して、報告を求め、又は助言、指導若しくは勧告をすることができるとともに、同条第2項の規定により厚生労働大臣は、事業主が同条第1項の規定による勧告に従わなかった場合にはその旨を公表できることとされており、法等の実効性を高め、その履行確保に向けて、これらに基づく的確な対応を行う。

ハ 均等・均衡待遇の更なる確保等に向けた取組

法等に基づく均等・均衡待遇の確保等を図る事業主の取組を支援するため、雇用環境・均等部室に配置する事業所の雇用管理の専門家である雇用均等指導員の活用、各都道府県に設置した働き方改革推進支援センターにおける相談窓口の設置や説明会の開催、人事労務管理の専門家の派遣等により、法等の周知や、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の先進的な事例の情報提供等に加え、個々の企業の実情に応じた雇用管理の改善等に関する相談、助言、情報提供等、きめ細やかな支援を行う。

また、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善に向けた自主的な取組を支援するため、事業主が、短時間・有期雇用労働者の雇用管理や通常の労働者との均等・均衡待遇の確保の取組状況及び課題を把握することのできるよう、インターネットサイト上のツール等の活用を促進する。

さらに、短時間・有期雇用労働者の雇用管理や活躍推進についての取組内容や特徴等の宣言を行う仕組みのほか、不合理な待遇差の解消に向けて自社の取組の点検や検討を行うための取組手順書やマニュアル等の活用促進、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善に向けた具体的な取組事例の収集・提供等を通じ、できる限りわかりやすく丁寧な周知に努めることにより、法等の趣旨に沿った事業主の取組を推進する。

また、基本給の決定に当たり、短時間・有期雇用労働者と通常の労働者の職務の内容の異同を把握し、職務の内容の大きさを測って相対的に評価する職務分析・職務評価の導入等を支援する取組を進める。

このほか、助成金の支給等により、通常の労働者との均衡のとれた待遇の確保等を推進する事業主等を支援する。

事業主と労働者との間で均等・均衡待遇等に係る紛争が生じ、当事者の双方又は一方から求めがあった場合には、法等に基づき、都道府県労働局長による助言、指導等や紛争調整委員会による調停により、紛争の解決の援助を行う。

(2) 労働者に適用される基本的な法令の履行確保

事業主が短時間・有期雇用労働者に対して適用がある、次のイからホまでの内容を中心に、基本的な労働に関する法令を遵守することについて周知徹底を図る。

イ 短時間・有期雇用労働者の適正な労働条件の確保に関しては、労働契約法の規定を踏まえ合理的な労働条件を設定すること、労働基準関係法令に従って雇入れ時の労働条件の明示、年次有給休暇の付与、就業規則の整備及び最低賃金額以上の賃金の支払についての規定を遵守することについて、周知徹底を図る。また、賃金、労働時間等主要な労働条件を明らかにした「労働条件通知書」についてその普及促進を図る。

ロ 有期雇用労働者については、労働契約法、労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)及び有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準(平成15年厚生労働省告示第357号)で定めるところにより適正な措置を講ずべきことについて、周知徹底を図る。特に、労働契約法においては、有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超えた場合に、労働者の申込みにより無期労働契約に転換できることとされているほか、一定の場合には使用者による雇止めが認められないことになるいわゆる「雇止め法理」が定められている。事業主に対し、これらの規定の趣旨を踏まえた取組を行うよう周知・啓発を図る。

ハ 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)により、短時間・有期雇用労働者に対して、1週間の所定労働時間等に応じて一般健康診断等の実施義務があることや実施が望ましいとされている場合があることを踏まえ、短時間・有期雇用労働者に対する健康管理が適切に実施されるよう事業主に対し周知徹底を図る。また、雇入れ時等の安全衛生教育の実施義務について、周知徹底を図る。

ニ 事業主は育児や介護等様々な事情により就業時間に制約のある短時間・有期雇用労働者について、育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)で定めるところにより、仕事と育児・介護の両立に関する制度の整備その他必要な措置を講ずる必要があることや、次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)に基づく事業主行動計画の策定を通じ、短時間・有期雇用労働者を含め仕事と育児の両立のための環境整備を行うべきことについて、周知徹底を図ること等により、ワーク・ライフ・バランスの実現を図る。

ホ 雇用保険及び社会保険の適用については、それぞれ雇用保険法(昭和49年法律第116号)、健康保険法(大正11年法律第70号)及び厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)で定めるところにより、被保険者となる短時間・有期雇用労働者について必要な手続を取らなければならないものであることについて、事業主に対し周知徹底を図る。

また、平成28年10月から、従業員の総数(公的年金制度の財政基盤及び最低保障機能の強化等のための国民年金法等の一部を改正する法律(平成24年法律第62号)附則第17条第12項に規定する特定労働者の総数をいう。以下このホにおいて同じ。)が常時500人を超える企業において、一定の要件を満たす短時間労働者に厚生年金保険及び健康保険の適用範囲が拡大され、平成29年4月からは、従業員の総数が常時500人以下の企業において、労使の合意に基づき、企業単位で、短時間労働者に厚生年金保険及び健康保険の適用を図ることが可能となっている。短時間労働者に対する厚生年金保険及び健康保険の更なる適用拡大についての検討結果も踏まえ、事業主及び短時間労働者に対し必要な周知を図る。

(3) 短時間・有期雇用労働者の希望に応じた通常の労働者への転換を始めとするキャリアアップの推進等

イ 通常の労働者への転換の推進等

(1)イ及びロにより法第13条に基づく通常の労働者への転換の推進に関する措置義務の履行確保を図るとともに、各企業における当該措置義務の履行によって、短時間・有期雇用労働者の通常の労働者への転換が推進されるように、好事例の収集・周知等に取り組む。特に、有期雇用労働者については、労働契約法第18条の規定に基づく無期転換ルールへの対応が円滑に行われるよう、都道府県労働局等における周知徹底や相談支援等を行う。また、就職氷河期世代を含め、不本意非正規雇用労働者が通常の労働者として就業することができるよう、実際に通常の労働者への転換を行う事業主に対しては、助成金の支給等により支援を行う。

ロ 「多様な正社員」の普及等

短時間正社員は、期間の定めのない労働契約を締結しており、時間当たりの基本給及び賞与、退職金等の算定方法が同種のフルタイムの正社員と同等であるため、通常の労働者との均等待遇が確保されるとともに、就業できる時間に制約のある短時間労働者であっても転換が図りやすい。また、勤務地限定正社員は、育児、介護等の事情により転勤が困難な者や地元に定着した就業を希望する者にとって、就業機会の付与及びその継続並びに能力の発揮を可能とする働き方として活用が期待される。

このため、インターネットサイト等の活用により、事業所における短時間正社員制度の導入事例や導入・運用に際してのノウハウ等についての情報を提供すること等により、その一層の普及・定着に努める。

また、短時間・有期雇用労働者がライフスタイル等に応じた働き方を通じて能力発揮ができるよう、「多様な正社員」の普及・促進等を図り、事業所において労使双方にとって望ましい多様な働き方が提供される環境の整備を進める。

ハ 能力開発、職業紹介の充実等

通常の労働者への転換を目指す者を含め、短時間・有期雇用労働者や短時間・有期雇用労働者になろうとする者がその職業能力の開発及び向上を図ることを促進するため、これらの者の多様な訓練ニーズに応じ、公共職業能力開発施設における職業訓練や民間教育訓練機関等を活用した多様な職業訓練を実施するとともに、事業主による能力開発の取組に対し助成金の支給等により支援を行う。

また、通常の労働者への転換を目指す者については、公共職業安定所において、正社員就職に向けた担当者制等による求職者の希望や経験等を踏まえたきめ細やかな相談支援を通じてマッチング強化に取り組む。

さらに、短時間・有期雇用労働者になろうとする者については、きめ細やかな配慮をすることが必要とされる者が多いことから、公共職業安定所においては、短時間・有期雇用労働を希望する者のニーズを踏まえた雇用情報の提供やきめ細やかな職業相談・職業紹介を行う等、官民相まった適正な需給調整機能の充実を図る。

ニ 短時間・有期雇用労働者のキャリアアップのための情報提供等

短時間・有期雇用労働者の就労意欲を高め、その能力を十分発揮し活躍の場を広げることを支援するとともに、事業所における職場の活性化等の相乗効果を促進するため、インターネットサイト等を活用し、短時間・有期雇用労働者がキャリアアップを図るために必要な情報を提供する等の支援を行う。

(4) 行政体制の整備等

イ 行政体制の整備

近年、働き方改革関連法の公布等、短時間・有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関係する様々な施策が講じられていることから、法等の施行を中心とする一連の施策の実施については、都道府県労働局雇用環境・均等部室を中心に、都道府県労働局内での緊密な連携を図る。また、都道府県労働局雇用環境・均等部室に企業の雇用管理の専門家を雇用均等指導員として配置しており、その活用を図るとともに、引き続き行政体制の整備に努める。

さらに、短時間・有期雇用労働者と事業主の紛争等については、法第8条(不合理な待遇の禁止)及び第9条(通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止)についても、都道府県労働局長による紛争解決援助や紛争調整委員会による調停の対象となるほか、法第23条に規定する紛争以外の紛争は個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)が適用されることも踏まえ、関係法令の適切な運用を図る。

ロ 関係機関との連携

短時間・有期雇用労働者対策については、国が実施するだけでなく、都道府県等の関係行政機関及び独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構等の関係機関の協力も必要であることから、その実施に当たっては関係行政機関及び関係機関との連携を図る。