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男女雇用機会均等対策基本方針
制 定 平成二十九年三月十四日厚生労働省告示第七十二号
<編注:本告示は令和五年六月二七日厚生労働省告示第二一七号にて廃止されました>
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)第四条第一項の規定に基づき、男女雇用機会均等対策基本方針を次のように定め、平成二十九年四月一日から適用することとしたので、同条第五項の規定に基づき告示する。
男女雇用機会均等対策基本方針
目次
はじめに
第1 男性労働者及び女性労働者のそれぞれの職業生活の動向
1 男女労働者を取り巻く経済社会の動向
2 男女労働者の職業の動向
第2 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等について講じようとする施策の基本となるべき事項
1 施策についての基本的考え方
2 具体的施策
はじめに
我が国は、急速に少子高齢化が進み、人口減少社会を迎えている。我が国の持続的成長を実現し、社会の活力を維持していくためには、国民一人ひとりがその個性に応じた多様な能力を発揮でき、特に女性が積極的に社会参加できる社会の構築が不可欠である。そうした中で、現在、女性の活躍推進が政府の最重要課題の一つとして位置付けられており、成長戦略の一環として経済界を始め各界各層を広く巻き込んだ取組が急速に進展してきている。
本基本方針の根拠法である雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和47年法律第113号。以下「均等法」という。)は昭和61年の施行から30年が経過した。平成9年、平成18年の2度の改正以降、平成18年改正法施行5年後見直しを受けた雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則(昭和61年労働省令第2号。以下「均等法施行規則」という。)の改正や平成28年改正など、法制度上は男女の均等な機会及び待遇の確保は大きな進展を見ている。
これに加え、平成27年8月には、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律(平成27年法律第64号。以下「女性活躍推進法」という。)が成立し、平成28年4月から全面施行された。これにより、労働者を雇用する事業主に対し、自社における女性の活躍に関する状況の把握、課題分析を行い、その課題に基づいた目標設定などを記載する行動計画を定めることを義務付ける等、女性の活躍の推進が図られている。
この男女雇用機会均等対策基本方針は、均等法第4条の規定に基づき策定される方針であり、本方針においては、男女労働者のそれぞれの職業生活の動向に関する事項を明らかにするとともに、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等について講じようとする施策の基本となるべき事項を示すこととする。
本方針の運営期間は平成29年度から概ね5年間とする。ただし、現在、政府において、働き方改革について広く議論が進められており、その議論は、当該見直しが本基本方針に規定する内容に広く影響を与える可能性がある。このため、今後の議論を注視しつつ、機動的に対応することとする。
第1 男性労働者及び女性労働者のそれぞれの職業生活の動向
1 男女労働者を取り巻く経済社会の動向
我が国の経済状況を見ると、実質GDP成長率は平成20年に、リーマンショックの影響により、大幅に落ち込んでいるが、その後は緩やかな伸びとなっている。これを背景に有効求人倍率も平成21年度を底に上昇するなど雇用情勢は改善している。
一方、人口は平成16年をピークとして減少に転じ、我が国は人口減少社会となっている。平成26年の合計特殊出生率は1.42と前年に比べ上昇したものの、依然として低い水準にある。平成24年に発表された「日本の将来推計人口(平成24年1月推計)」(国立社会保障・人口問題研究所)によると、現在の傾向が続けば、平成72年には日本の人口は9,000万人を割り込み、高齢化率は40%近い水準になるという見通しが示されている。また、少子化の影響により、人口が減少するなど、我が国の経済社会は大きな転換点を迎えている。
こうした中、我が国の経済が持続的に発展し、ひいては国民全体が豊かで質の高い生活を享受するために、労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあっては妊娠、出産、育児等を経ても継続就業し、キャリアを形成しながら充実した職業生活を送ることができるような環境を早急に整備することが求められている。
2 男女労働者の職業生活の動向
(1) 雇用の動向
ア 労働力の量的変化
労働力人口の動向を見ると、男性は長期的に見ると減少傾向が続いており、平成28年は3,765万人となっている。女性の労働力人口は増加傾向が続き、平成28年は2,883万人となっており、女性の労働力率は4年連続の上昇となっている。全体としては、概ね横ばいで推移している。
女性の年齢階級別労働力率のM字型カーブについては、世界ではあまり見られないものであるが、全体が上方にシフトし、窪みも浅くなってきている。配偶関係別に女性の労働力率を見ると、有配偶者の労働力率は特に25~39歳層の上昇幅が近年大きくなっている。一方、未婚者の労働力率に大きな変化はないことから、近年のM字型カーブの上方シフトや窪みの改善は、有配偶者の労働力率の上昇が大きく影響していると考えられる。
就業者数を従業上の地位別に見ると、男女とも自営業主及び家族従業者は減少傾向にある。
雇用者数については、男性は概ね横ばいで推移しており、平成28年は3,197万人となっている。他方、女性は増加傾向が続いており、平成28年は2,531万人となっている。また、雇用者総数に占める女性の割合は、上昇傾向が続いており、平成28年では44.2%となっている。
イ 労働力の質的変化
男性の勤続年数は、ほぼ横ばいで推移する一方、女性の勤続年数は緩やかに伸長しており、男女の勤続年数の差は徐々に縮小傾向にある。
また、雇用形態別雇用者数については、男性は、「正規の職員・従業員」の数がやや減少傾向にある一方で、女性は横ばいで推移している。他方、「パート・アルバイト、労働者派遣事業の派遣社員、契約社員、嘱託」については、男女とも概ね増加傾向にある。また、平成27年において、男性の多くが「正規の職員・従業員」である一方で、女性の「正規の職員・従業員」の割合は約4割に留まっている。
職業別の雇用者については、男性は様々な職業に広く従事しているのに対して、女性では、従事している職業には偏りが見られる。職業別雇用者数では、男性は「生産工程従事者」が最も多く、女性では「事務従事者」が最も多くなっている。
産業別雇用者数を見ると、男性では「製造業」が最も多く、女性では「医療、福祉」が最も多くなっている。とりわけ、男女ともに「医療、福祉」については、近年、大幅に増加している。
ウ 失業の状況
完全失業率は、男性は平成22年に5.4%、女性は平成21年に4.8%となって以降、景気の回復を背景に改善しており、有効求人倍率も1倍を超えて推移し、25年ぶりの高水準となっている。完全失業率の水準は、昭和60年以降概ね女性が男性を上回って推移していたが、平成9年以降は女性の水準が男性を下回っている。
エ 労働力需給の見通し
「雇用政策研究会報告書」(平成27年)における推計では、労働力人口は6,351万人から、経済成長と労働参加が適切に進まなかった場合、平成32年に6,046万人、平成42年には5,561万人に減少すると見込まれている一方、経済成長と労働参加が適切に進んだ場合には、平成32年に6,381万人、平成42年は6,169万人と、減少幅が縮小すると見込まれている。
オ 労働条件
男女の平均賃金の格差は、徐々に縮小傾向にあるものの、平成27年における男性の所定内給与額100に対する女性の割合は72.2と、依然として欧米諸国と比較すると大きな差がある。この格差については、主として、役職や勤続年数による影響が大きいと考えられるが、そのほかにも就業分野の違いなど様々な要因によるところもあるものと考えられる。
労働時間について見ると、平成27年の男性常用雇用者1人当たりの平均年間総実労働時間は1,900時間を超えている。また、女性常用雇用者1人当たりの平均年間総実労働時間は約1,500時間となっている。パートタイム労働者比率が高まったこと等から、当該労働時間は男女ともに減少傾向にあるが、パートタイム労働者以外の一般労働者の総実労働時間は2,000時間台で高止まりしており、また、依然として欧米諸国と比べると長時間労働者の割合は高いものとなっている。
(2) 企業の雇用管理
ア 均等法等の施行状況等
均等法が昭和61年に施行されて30年が経過し、平成28年4月には、女性活躍推進法も全面施行された。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」との意識については、反対が賛成を上回っており、若者を中心に固定的な性別役割分担意識の解消が徐々に進んでいる。企業内の雇用管理において制度面での男女の均等な取扱いは徐々に浸透しており、女性の職域も拡大が図られている。また、管理職に占める女性の割合についても上昇傾向が続いているが、国際的に見ると依然その水準は低くなっている。
また、セクシュアルハラスメント防止対策については、企業における取組が進展し、制度的な体制は整いつつあるが、常時雇用する労働者が1,000人以上の全ての企業が防止対策に取り組んでいる一方、常時雇用する労働者が10人~99人の企業においては防止対策の実施が約6割に留まっており、企業規模によりその取組の状況や抱えている課題には違いが見られる。母性健康管理措置については、規定を有している事業所割合は上昇しているものの、例えば勤務時間の短縮など妊娠中又は出産後の症状等に対応する措置の規定率を見ると、常時雇用する労働者が500人以上の企業においては約8割の事業所が規定している一方、常時雇用する労働者が5~29人の企業では約4割となっており、事業所規模が小さいほど規定率は低くなっている。
さらに、妊娠、出産、未就学児の育児を経験した女性労働者の妊娠等を理由とする不利益取扱い等の経験率は、2割を超えており、そのうち約半数の者が「休むなんて迷惑だ」「辞めたら?」など妊娠、出産、育児休業関連の権利を主張しづらくするような発言を受けている。近年は、妊娠、出産、育児休業等に関する不利益取扱いのみならず、上司・同僚による職場における妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントも大きな問題となってきていることを踏まえ、雇用保険法等の一部を改正する法律(平成28年法律第17号。以下「均等法等改正法」という。)による改正後の均等法(以下「改正均等法」という。)及び均等法等改正法による改正後の育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号。以下「育児・介護休業法」という。)(以下「改正育児・介護休業法」という。)により、妊娠、出産、育児休業等に関する言動により、労働者の就業環境が害されることのないよう、雇用管理上必要な措置を講じることが事業主に義務付けられた。
近年、採用を行った企業について、各職種において男女とも採用したとする割合は概ね上昇しており、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的とする措置(ポジティブ・アクション)に取り組んでいるとする企業も平成26年度において57.1%となっている。ポジティブ・アクションの取組状況を企業規模別にみると、規模が大きいほどその割合が高く、5,000人以上規模で82.7%となっている。加えて、女性活躍推進法が平成28年4月に施行されたことから、これを契機として、ポジティブ・アクションの取組みは一層進むものと思われる。
均等法等に係る都道府県労働局雇用環境・均等部(室)(ただし、平成27年度までは雇用均等室。以下「雇用環境・均等部(室)」という。)への相談は、年間2万件を超えて推移しており、その内容はセクシュアルハラスメントに関するものが最も多く約4割を占めており、次いで婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いに関するものが約2割、母性健康管理に関するものが約1割となっている。
労働局長による紛争解決の援助の申立受理件数は平成27年度で346件あり、セクシュアルハラスメントに関するものが172件、次いで婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いに関するものが157件となっている。また、機会均等調停会議による調停申請受理件数は平成27年度で58件であり、セクシュアルハラスメントに関するものが最も多く33件、次いで婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いに関するものが20件となっている。
イ 女性活躍推進法の施行状況等
女性活躍推進法は平成27年8月に成立し、平成28年4月1日から全面施行されている。
女性活躍推進法に基づく、一般事業主行動計画の策定・届出率は、行動計画の策定・届出が義務となっている常時雇用する労働者が300人を超える国及び地方公共団体以外の事業主(以下「一般事業主」という。)については平成28年12月末時点では99.8%となっており、制度の浸透・定着が見られる。一方、行動計画の策定・届出が努力義務である常時雇用する労働者が300人以下の一般事業主については、同時点で2,155社となっており、中小企業においても一定の取組はみられるものの、今後、一層の進展が期待される。
また、女性活躍推進法第9条に規定する認定(以下「えるぼし認定」という。)を取得した事業主は平成28年12月末時点で215社となっており、徐々に増加している。認定段階については、認定段階3を取得している事業主が約3分の2を占めており、残りの事業主は認定段階2を取得している。
加えて、平成28年2月には、女性活躍推進法に基づく各企業における女性の活躍状況に関する情報を一元的に集約したデータベースを開設しており、各企業が学生等に対して、自社の女性の活躍状況や、一般事業主行動計画の内容、えるぼし認定の取得状況等の女性活躍推進に関する取組を発信・アピールする場となっている。平成28年12月末時点では、当該データベースにおいて、6,908社が女性活躍推進法に基づく自社の情報を公表している。
ウ 育児・介護休業法の施行状況等
育児休業制度が義務化されてから20年を超える中、制度の規定を有している事業所割合は、平成27年度では事業所規模30人以上で91.9%となるなど、制度の定着が進んでいる。しかしながら、事業所規模が小さくなるほどその割合は低くなっている。
育児休業取得率は、女性では概ね横ばいで推移し、平成27年度では81.5%となっているなど制度の定着が見られるが、一方で男性では2.65%であり、近年上昇傾向にあるものの、男性の制度の活用は低水準に留まっている。
介護休業制度については、平成11年度から義務化されているが、制度の規定を有している事業所割合は、育児休業制度に比べるとやや低く、平成26年度では事業所規模30人以上で88.0%となっている。
介護をしている雇用者のうち、介護休業取得者の割合は、平成24年で3.2%となっている。介護休業取得者の男女別内訳を見ると、女性は52.8%、男性は47.2%と、全体の取得者のうち約半数は男性となっている。
エ 次世代育成支援対策推進法の施行状況等
次世代育成支援対策推進法(平成15年法律第120号)が施行されてから、10年を超える中、一般事業主行動計画の策定・届出を行っている事業主の割合は年々上昇し、平成28年12月末時点で一般事業主行動計画の策定・届出が義務である常時雇用する労働者の数が100人を超える一般事業主の策定・届出率は97.8%であり、一般事業主行動計画の策定・届出が努力義務である常時雇用する労働者の数が100人以下である一般事業主については、22,246社となるなど、制度の定着が進んでいる。
次世代育成支援対策推進法第13条に基づく認定(以下「くるみん認定」という。)を取得した企業数は年々増加しており、平成28年12月末時点で2,634社となっており、着実に取組が進んでいる。
また、平成27年4月より施行された次世代育成支援対策推進法第15条の2に基づく認定(以下「プラチナくるみん認定」という。)制度においても、平成28年12月末時点で108社が認定を取得している。
オ パートタイム労働者の雇用管理改善等の状況
パートタイム労働者は年々増加し全雇用者数の約3割を占めており、このうち約7割が女性であるが、近年、男性も大きく増加している。また、若年層や世帯主であるパートタイム労働者及び基幹的役割を担うパートタイム労働者も存在している。産業別に雇用者数に占めるパートタイム労働者数の割合を見ると、宿泊業・飲食サービス業で5割を超え、次いで生活関連サービス業・娯楽業で約4割と多くなっている。
勤続年数については、男女共に長期化の傾向が見られ、男女差が縮小している。
一方、パートタイム労働者の1か月の実労働日数は、男女ともに緩やかな短期化の傾向が見られ、平成27年においては、男性が15.6日、女性が16.8日となっている。
また、パートタイム労働者の1日当たり所定内実労働時間数は、男女ともにこの数年横ばいであり、平成27年においては、男性が5.5時間、女性が5.3時間となっている。
パートタイム労働者の時給は過去最高を更新しているが、男女間の時間当たり賃金の格差は、平成27年では男性を100とした場合に女性は91.1となっている。また、パートタイム労働者と一般労働者の時間当たり賃金の格差は、平成27年では一般労働者を100とした場合に女性は69.1、男性は55.8であり、女性よりも男性においてその格差は大きい。
カ 企業の雇用管理の変化
少子高齢化や人口減少、近年の緩やかな景気回復、団塊の世代の退職等により、労働市場においては人手不足が大きな問題となっている。そのような状況の中で、多様な働き方の導入が求められている。近年の動向としては、働き方の自由度を高めることで、労働力の確保に向けて力を入れており、例えば、労働時間や職務・勤務地を限定した限定正社員の採用等を行っている。こうした限定正社員を希望する労働者の割合は男女ともに2割以上となっており、特に女性ではその割合が3割を超えている。また、雇用形態別雇用者数では男女ともに「正規の職員・従業員」以外の割合は増えており、特に女性では概ね半分が「正規の職員・従業員」以外である。
このように働き方が多様化する一方、企業は年功型賃金や終身雇用を前提とした雇用慣行の見直しの必要性を感じている。
(3) 男女労働者の意識の変化と就業パターン
女性が職業を持つことについての意識を見ると、男女ともに「子どもができても、ずっと職業を続けるほうがよい」とする割合が最も高い。また、男性よりも女性においてその割合は高く、特に若い女性を中心に高くなっている。しかし、第1子の出産を機に離職する女性の割合は減少しているものの、いまだに女性の約2人に1人が離職している。
また、男女労働者ともに、仕事よりも、生活を優先したいと考える者の方が多くなっているほか、夫の平日の家事・育児時間が長いほど、妻の継続就業割合及び第2子以降の出生割合が高くもなっているが、6歳未満児のいる夫の家事・育児関連時間は平成25年で1日当たり約1時間と、国際的に見ると低水準となっている。
3 まとめ
均等法が昭和61年に施行されてから30年が経過した。平成9年、平成18年の2度の改正を経て、努力義務規定から禁止規定への強化、男女双方に対する差別の禁止など、均等法制定当時に指摘されていた法制上の課題については一定程度解決した。また、それらの課題に加え、平成25年の均等法施行規則等の改正等による、間接差別となり得る措置の範囲の拡大、性別による差別事例の追加、セクシュアルハラスメントの防止・事後対応の徹底、コース等別雇用管理についての指針の制定や、平成28年改正による妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントの防止措置の義務付けなど法制度上は男女の均等な機会及び待遇の確保は大きな進展を見た。
この間企業の雇用管理の男女均等な取扱いは改善されつつあるが、依然として、男性と比べて女性の勤続年数は短く、管理職に占める女性割合も国際的に見ると低水準となっている。また、これまでの間に改善は見られるものの、今なお、第1子の出産を機に約半数の女性が退職しており、その中には就業継続を希望していながら離職を余儀なくされた女性も一定程度存在しているなど、未だ実質的な機会均等が確保された状況とはなっていない。
一方、男性労働者の約3割が育児休業の取得を望んでいるものの、職場が育児休業制度を取得しにくい雰囲気であることや、業務が繁忙であること等から育児休業の取得が進んでおらず、女性と比較し非常に低い水準に留まっている。
このように雇用の場において、男女労働者の間に事実上の格差が生じたままとなっている。
このような状況への対応として、ポジティブ・アクションの推進や仕事と生活の両立支援に向けた取組など官民をあげて多くの取組みが行われてきていることで、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)等の言葉の定着をはじめ、女性の継続就業支援、男性の育児等への意識は改善してきているほか、雇用の場における女性の活躍推進は、広く社会的関心事項となってきている。
第2 雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等について講じようとする施策の基本となるべき事項
1 施策についての基本的考え方
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する施策は、「労働者が性別により差別されることなく、また、女性労働者にあっては母性を尊重されつつ、充実した職業生活を営むことができるようにする」という均等法の基本的理念にのっとって推進されるべきものである。
過去2度の法改正を経て、努力義務規定から禁止規定への強化、男女双方に対する差別の禁止など、均等法制定当時に指摘されていた法制上の課題については一定程度解決し、また、それらの課題に加え、セクシュアルハラスメントの防止措置や、妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントの防止措置が事業主に義務付けられるなど均等法等の法制度の整備は大きく進展した。
しかしながら、第1で見たように、均等法施行後30年を経てもなお実態面での男女の格差は残っている状況にある。
こうした実態面での男女格差が解消されないことの背景には、就業継続を希望しながらも、保育サービス等の整備が十分ではない場合等もあり仕事と育児の両立の難しさ等から、離職を余儀なくされる場合を含め、妊娠、出産等により離職する女性が依然として多く、女性の継続的な職業キャリア形成が困難となっていること、長時間労働を前提とした働き方が見られること、こうした中で、労働者が家庭生活を営みながら就業を継続するに際して具体的な見通しを持ちにくくなっていることなどがあるものと考えられる。
一方、今後の少子化の進展に伴う労働力人口の減少が見込まれる中、女性の就業率の向上や労働者が安心して働き続けることのできる環境整備は喫緊の課題である。また、仕事と生活の関係の有様やこれらに対する考え方が多様化している中、男女労働者が共に性別にかかわらず主体的に働き方やキャリアを選択することができることが求められている。特に男性労働者においては、より一層育児・家事を行えるよう職場環境を見直していくことが重要である。
以上を踏まえると、当面5年程度の間に採るべき施策の基本的考え方としては、法制上の機会均等の確保の上に、今後は実質上の機会均等の確保を目指すという観点から、以下のように整理すべきものと考える。
まず、均等法に定められた性差別の禁止を始めとする規定の確実な履行確保を前提とした上で、妊娠、出産、育児等を経ても、職業人生における明確な展望を描きつつ働き続けることをより容易にすること、すなわち、働き続けることを希望する者が就業意欲を失うことなくその能力を伸長・発揮できる環境を整備することが必要である。
また、同時に、仕事上の責任を果たしつつ人生の各段階に応じた多様な希望を実現できること、すなわち、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を図るための条件整備を一層進めることが重要である。
さらに、これらの実現を図って行くには、法の履行確保のみならず、各企業における雇用管理制度及びその運用の見直しが不可欠である。こうした企業の取組は、男女間の事実上の格差の解消につながるものであり、女性活躍推進法のスキームを用いた各企業の取組の推進をはじめ、各企業の主体的なポジティブ・アクションの取組みを一層促進していくことが重要であり、長時間労働を前提とした働き方の是正とともに、男性労働者が積極的に育児・家事を行うことができるよう社会全体で促していくことが求められる。
他方、妊娠、出産等で2人に1人の女性が離職しているという現状においては、一旦就業を中断した者がそれまでの就業経験を生かしつつ再就職・再就業できることが可能となる環境を整えることも重要である。
なお、上記を推進するに当たっては、企業規模別等の実態に応じたきめ細かな対応を行っていくこと、また、近年、正規の職員・従業員以外の労働者が男女ともに増加していることから、これらの労働者に対しても均等法が適用されるものであることを十分に踏まえつつ対応することが必要である。
こうした考え方に立って、本方針においては、男女雇用機会均等確保対策を中心としつつ、仕事と育児・介護の両立支援、就業形態の多様化等への対策等を定め、国はこれらの対策の総合的な推進を図ることとする。
2 具体的施策
(1) 就業意欲を失うことなくその能力を伸長・発揮できるための環境整備
1の基本的考え方に基づき、公正な処遇の確保を始めとして、職業人生における明確な展望を描くことを可能にするため、働き続けることを希望する者が就業意欲を失うことなくその能力を伸長・発揮できるための環境の整備を進める。
特に、公正な処遇の確保は就業意欲を支える基本となるものであることから、均等法の着実な履行を中心とする均等確保対策に積極的に取り組むこととする。
ア 公正な処遇の確保
(ア) 均等法等の履行確保
均等法等に沿った雇用管理が行われるよう、あらゆる雇用管理の段階における性別を理由とする差別の禁止のほか、間接差別の禁止、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等の違反に対し厳正かつ的確な行政指導を行う。特に、事業主による妊娠、出産、育児休業等を理由とする不利益取扱い及び上司、同僚による職場における妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントについては、女性の就業継続の大きな阻害要因となる場合が多いことから、迅速な行政指導を行う。
なお、行政指導に当たっては、厚生労働省本省及び雇用環境・均等部(室)間での情報の蓄積及び共有化を図り、効果的な指導を実施する。
均等法に係る問題事案が発生した場合には、迅速に雇用環境・均等部(室)への相談につながるよう、都道府県労働局の総合労働相談コーナー、地方公共団体との連携等により雇用環境・均等部(室)へのスムーズな取次ぎを図る。
調停については、都道府県労働局長による紛争解決の援助に比べると利用が進んでいないことを踏まえ、特に雇用環境・均等部(室)等へ相談した事業主や労働者に対し、調停制度の周知、解決事例の紹介等により、制度の利用を促すとともに、調停の被申立人に対しても、調停制度の趣旨・メリットを説明し、理解を図る。
また、法施行に当たっては、事業主及び労働者に法令等の求めるところが正しく理解されるよう、厚生労働省ホームページの活用や都道府県労働局におけるパンフレット等の配布等による情報発信により、効率的かつ効果的な周知啓発を行う。
また、均等法に係る相談を受け付けることのできる窓口として雇用環境・均等部(室)の存在が広く知られるよう、事業主及び労働者に対し引き続き周知を行う。
さらに、改正均等法及び改正育児・介護休業法により職場における妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントの防止措置が事業主に義務付けられたことから、当該雇用管理上必要な措置が事業主により適正に講じられるよう事業主を対象とした説明会の開催や、改正内容の周知・啓発など、事業主の取組支援を積極的に行う。
また、近年増加しているパートタイム労働者、派遣労働者等についても均等法は適用されるものであることから、これらの労働者に対し制度の周知徹底を図るとともに、これらの者を雇用する事業主や、派遣労働については派遣先の事業主についても、均等法に則した雇用管理がなされるよう行政指導を行う。
間接差別については、平成25年に均等法施行規則を改正し、間接差別となり得る措置の範囲の見直しを行ったところであるが、引き続き、施行状況や裁判例等、実態把握を進め、対象事項として追加すべき間接差別の有無について検討する。
(イ) 男女間賃金格差の縮小
男女間の平均賃金格差は縮小傾向にはあるが、欧米諸国と比較すると依然として大きいものとなっている。
その要因としては、男女間では勤続年数と管理職比率の差異が大きく、その背景には女性が出産などを契機に就労を中断すること等もあると考えられる。そのため、妊娠・出産・育児と、仕事を両立しやすくすることにより女性の勤続年数を延ばすとともに、女性管理職への登用を推進することで、男女間の賃金格差は相当程度解消すると見込まれる。
また、常時雇用する労働者が300人を超える事業主に対し、勤続年数の男女差や管理職の女性比率等を把握・分析し、数値目標を含めた行動計画の策定を義務付けている女性活躍推進法を着実に施行していくことにより、男女賃金格差の解消に努める。あわせて「男女間賃金格差解消に向けた労使の取組支援のためのガイドライン」の普及・啓発を行い、労使による自主的な賃金格差縮小の取組を促す。
(ウ) ポジティブ・アクションの推進
男女の均等な機会を確保するためには、企業の制度や方針において、労働者に対する性別を理由とする差別の禁止に関する規定を遵守することに加えて、過去の性差別的な雇用管理や職場に根強く残る固定的な男女の役割分担意識により、企業において男女労働者の間に事実上生じている格差に着目し、このような格差の解消を目指して企業が積極的かつ自主的に雇用管理の改善に取り組むことが望ましい。また、こうした取組を行うことにより、男女問わず能力が発揮されることは、企業にとっても持てる人材の有効活用につながることとなり、生産性の向上に資することとなる。
こうした取組みは、ポジティブ・アクションとして、平成9年の均等法改正で新たに規定が導入され、以降、事業主の自主性を促す形で、取組の必要性の啓発や取組事例の紹介等によりその普及を図ってきたが、平成28年4月には女性活躍推進法が施行され、常時雇用する労働者の数が300人を超える一般事業主については、自社の女性の活躍状況に応じ、女性の職業生活における活躍推進の取組に関する計画の策定等が法律上の義務として課されることとなった。事業主のポジティブ・アクションの取組みに関する意識の高まりは大きなうねりとなっており、社会的機運が盛り上がっている。
こうした機運を好機と捉え、企業のポジティブ・アクションを、一層、普及・促進していくことが重要である。
また、ポジティブ・アクションは、その手法においては女性のみを対象とする又は女性を有利に取り扱う取組のみならず、評価基準の明確化や透明化など、男女双方を対象にした雇用管理改善の取組も含まれ、その目的も、究極的には男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することでなければならない。具体的な取組においては、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現や、労働時間短縮のための業務改革や業務遂行管理の改善等を目的とした取組もポジティブ・アクションの一環として位置付けられるものである。
このため、女性活躍推進法を踏まえ各企業のポジティブ・アクションの取組を一層促進する。
(エ) コース別雇用管理の適正な運用の促進
平成25年の均等法施行規則の改正により、全ての労働者の募集・採用、昇進、職種の変更に当たって、合理的な理由なく転勤要件を設けることは間接差別として均等法に違反することとされた。
また、それまでコース別雇用管理区分の適正な運用については、雇用均等・児童家庭局長通達において示していたが、当該改正に併せ、「コース等で区分した雇用管理を行うに当たって事業主が留意すべき事項に関する指針」(平成25年厚生労働省告示第384号)を新たに制定した。当該指針では、事業主がコース等で区分した雇用管理を行うに当たり、その適正かつ円滑な運用に資するよう、コース等の新設、変更又は廃止、コース等別雇用管理における労働者の募集又は採用及びコース等別雇用管理における配置、昇進、教育訓練、職種の変更等に当たって留意すべき事項を示している。
この均等法施行規則の改正及び当該指針の内容について事業主に対し周知徹底及びこれに基づく行政指導を行う。
(オ) 妊娠、出産、育児休業等を理由とする不利益取扱い行為の防止対策の推進
雇用環境・均等部(室)への妊娠、出産、育児休業等に関する不利益取扱いの相談件数は増加傾向にあり、中には解雇に至った事案も少なくない。均等法及び育児・介護休業法において、妊娠、出産、育児休業等に対する解雇等の不利益な取扱いは禁じられているところであり、そのような不利益取扱いが起こらないよう周知徹底に努め、不利益取扱い事案については迅速に行政指導を行う。また、行政指導に従わない悪質な事業主については、企業名の公表を含め厳格に対応する。
(カ) 母性健康管理対策の推進
職場において女性が母性を尊重され、働きながら安心して子どもを産むことができる環境を整備することは、女性の能力発揮の促進に加え、少子化への対応、さらには生涯を通じた女性の健康確保の観点からも極めて重要な課題である。
このため、労働基準法(昭和22年法律第49号)及び均等法に基づく女性労働者の母性保護及び母性健康管理について、市町村等と連携して引き続きその周知徹底を図るとともに、母性健康管理体制の整備に対する支援、相談、情報提供等を行う。
また、均等法で求められている措置を講じない事業主に対しては、企業名の公表を行うことも含め、行政指導により確実な法の遵守を求めるとともに、母性健康管理措置等に係る規定の整備を促進する。
さらに、平成29年1月より妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止に加えて、職場における妊娠・出産等に関するハラスメントの防止措置が義務付けられていることから、これまでの母性健康管理措置の義務違反及び母性健康管理措置の請求等を理由とする不利益取扱いの禁止違反のみならず、当該ハラスメントの防止措置義務違反の可能性も視野に入れながら行政指導を行う。
なお、母性健康管理対策については、問題事案が生じた場合には、特に迅速な解決が求められるものであることから、相談から紛争解決までの迅速な処理に努める。
イ ハラスメント対策の推進
(ア) 妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントの防止対策の推進
改正均等法及び改正育児・介護休業法により、職場における妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントの防止措置を講じることが、事業主に対し新たに義務付けられることとなった。育児休業等に関するハラスメントについては男性労働者も対象となること等を含め、当該改正について周知徹底していくとともに、均等法及び育児・介護休業法で求められている措置を講じない事業主に対しては、企業名の公表を行うことも含め、行政指導により確実な措置の実施を求めていく。
(イ) セクシュアルハラスメント防止対策の推進
雇用環境・均等部(室)に寄せられる相談ではセクシュアルハラスメントに係るものが依然として最も多く、中には離職に至る深刻な事案も少なくない。平成25年には、事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)が改正され、職場におけるセクシュアルハラスメントには同性に対することも含まれていることや、セクシュアルハラスメントの発生の原因や背景に、性別役割分担意識に基づく言動があることも考えられること等が明示された。職場におけるセクシュアルハラスメント防止対策については、事業主の措置義務となっており、均等法で求められている措置を講じていない事業主に対しては、企業名の公表を行うことも含め、行政指導により確実な措置の実施を求めていく。特に企業規模が小さいほどセクシュアルハラスメントの防止に取り組む企業割合が低くなっていることから、中小企業に対しきめ細かい情報提供を行っていく。
(ウ) 総合的なハラスメント対策の推進
職場における妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントやセクシュアルハラスメントは、パワーハラスメントなどその他のハラスメントとも複合的に生じるケースが多いことから、企業における防止対策については、一元的に相談に応じることのできる体制を整備することが望ましいことから、周知、啓発を行う。
また、都道府県労働局においては、これらのハラスメントへの一体的対応も見据え、平成28年4月に雇用環境・均等部(室)への改組を行った。雇用環境・均等部(室)では、妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメントや、セクシュアルハラスメント、パワーハラスメント等についての事業主や労働者からの相談への一体的な対応や、当該ハラスメント等の未然防止対策の一体的な推進、事業主を対象とした説明会の開催、事業主や労働者などが相談できる窓口の開設等、総合的なハラスメント対策を実施する。
ウ 女性活躍推進法の着実な施行
(ア) 一般事業主行動計画策定の促進
女性活躍推進法は、労働者を雇用する事業主に対し、自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析を行い、その課題を解決するのにふさわしい、自社の状況に合わせた数値目標と取組を盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表及び自社の女性の活躍に関する情報の公表を義務付けることにより、自社の女性の活躍状況に応じた各事業主の取組を促進し、女性の職業生活における活躍の推進を図るものである。同法に基づき、事業主が、自社における女性活躍に関する状況を把握、課題分析した上で、数値目標を含む行動計画を策定し、その取組状況を点検、評価するサイクルを確立することや、自社の状況を公表すること等、女性の活躍に向けた取組を進めることが重要である。平成28年12月末時点において、常時雇用する労働者の数が300人を超える一般事業主の届出率は99.8%であり、また、常時雇用する労働者が300人以下の一般事業主の届出数は2,155社となっている。常時雇用する労働者が300人を超える一般事業主の届出率を100%とし、また、常時雇用する労働者が300人以下の一般事業主の届出数を向上させるため、一般事業主行動計画を策定するための支援や行政指導を行っていく必要がある。
具体的には、事業主に対して、行動計画策定の手順や方法、好事例などをパンフレット等を通じて周知したり、行動計画策定支援ツールを提供したりするなど、積極的な支援を行う。
また、常時雇用する労働者の数が300人を超える一般事業主において、一般事業主行動計画の策定・届出が行われていない場合には、行政指導も含めた積極的な働きかけを行う。常時雇用する労働者が300人以下の一般事業主も含め、一般事業主行動計画に基づいた取組が着実に進むよう、必要な助言等を実施していく。
(イ) 女性の活躍状況に関する情報の公表の促進
女性活躍推進法に基づき、常時雇用する労働者の数が300人を超える一般事業主は、女性の活躍に関する情報について、採用、就業継続・働き方改革、評価・登用、再チャレンジの項目から少なくとも1つを公表しなければならないこととされている。女性の活躍に関する情報を公表することは、就職活動中の学生など求職者の企業選択に資するとともに、女性が活躍しやすい企業にとっては、優秀な人材の確保や競争力の強化につながることが期待できる。
これらを踏まえ、事業主に対して、情報公表の方法等についてパンフレット等を通じて周知したり、女性の活躍推進企業データベースの活用の促進を図るとともに、女性・若者といった個別分野毎に提供されている企業の職場情報を総合的に提供するための総合的職場情報提供サイト(仮称)の構築に向けた検討を進めるなど、利用者の利便性の向上を図る。
(ウ) えるぼし認定取得の支援
行動計画の策定や策定した旨の届出を行った事業主のうち、女性の活躍推進に関する取組の実施状況等が優良な事業主はえるぼし認定を取得できる。したがって、えるぼし認定の取得支援を行うことにより、女性が活躍できる環境整備がより一層進展すると考えられる。
また、えるぼし認定を取得すると、女性活躍推進法第10条に定める表示(以下「えるぼしマーク」という。)を商品や広告などに付すことができるようになり、えるぼしマークによって、女性活躍推進に取り組む企業であることをアピールできる等の事業主にとっての認定取得のメリットがある。こういったメリットや、認定基準等を事業主に対して周知するほか、えるぼし認定を取得した事業主を公共調達で優遇するなど、認定取得に向けた取組を促進していく。
また学生等に対しては、就職活動等において企業選択の際活用できるよう、えるぼしマークや女性の活躍推進企業データベースの周知を行っていく。
エ ライフステージに応じた能力向上のための支援
(ア) 学生に対する支援
仕事と生活の有様やこれらに対する考え方が多様化する中で、若年者が就職活動に当たり職業生活と私的生活の将来設計を描きつつ職業選択に臨むことが重要である。また、女性の就業分野は広がりつつあるが、男性と比較すると依然として事務的な職種に集中しており、今後は、理系、技術系等、より広い分野でより多くの女性の活躍が望まれる。
このため、関係機関と連携を図りつつ、男女双方の学生について、固定的な男女の役割分担意識に捕らわれることなく、個人の適性及び能力にあった進路選択・職業選択が適切になされるとともに、人生における職業生活のビジョンの形成に資するよう、就職活動を始める前の自己分析、職業生活と私的生活の将来設計、適切な進路選択等を始め、就職・就業に関する様々な情報提供を行う等の支援を行う。
また、女性の活躍推進企業データベースや、両立支援のひろばにおいては、各企業の女性活躍に関する情報や、家庭と仕事の両立支援に関する情報、女性活躍推進法又は次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画が公表されており、業界内・地域内での企業の位置付けを知ることができ、学生等の職業選択の手助けとなるため積極的な周知を行う。
さらに、「知って役立つ労働法」を全国の大学や都道府県労働局に毎年配布するなど、学生に対して、働くときに知っておきたい基本的な知識の普及啓発を行う。
(イ) 女性労働者等のキャリア形成に対する支援
女性の勤続年数については緩やかに伸長しており、妊娠、出産を経ても就業を継続する女性が徐々に増加している。この点、妊娠、出産等のライフイベントを経ても就業を継続し、キャリアを形成しながら充実した職業生活を送ることができるよう、一層の環境整備を進めていく。
また、女性労働者のキャリア形成に資するよう、労働者の選択に応じた職業能力開発機会の確保、キャリアコンサルティングの普及促進、女性のキャリアアップに資する教育訓練プログラムの開発等の支援を行う。
あわせて、子育て・介護等との両立が可能な職業訓練(公的職業訓練における短時間訓練コースや訓練受講の際の託児サービス支援の推進)の実施や、労働者のキャリアアップに資する教育訓練プログラムの開発等を行うとともに、労働者の主体的な職業能力の開発及び向上を促進し、再就職時の職業能力に基づいた評価にも資するよう、業界共通の職業能力評価の物差しとなる技能検定を始め、企業と労働者双方に活用される職業能力評価制度の整備、ジョブ・カードを活用した職業能力の見える化を推進する。
(2) 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現に向けた取組
男女にかかわらず仕事上の責任を果たしつつ人生の各段階に応じた多様な希望を実現できるよう仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を図ることのできる条件整備がなされることが必要である。また、この実現は、女性の活躍促進に資するとともに、日本経済の活力の維持という観点からも必要不可欠となっている。
特に、男性に長時間労働が多い実態、男女の固定的な役割分担意識の存在は、様々なニーズを抱える労働者にとって働き方の選択肢を狭め、仕事と生活の両立を阻む要因となっている。また、介護を理由とした離職は、年間10万人にも上っており、仕事と介護の両立ができる環境整備も課題となっている。
こうしたことを踏まえ、社会全体において、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を実現するための取組を推進することとし、特に育児・介護期には仕事と家庭の両立が困難であることから、育児・介護期における仕事と家庭の両立支援対策を推進する。
なお、こうした支援に当たっては、労使団体、地方公共団体等との緊密な連携に特に留意する。
ア 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現に向けた取組
男女双方の仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の実現のため、働き方の改革に向けた事業主の取組を支援するとともに、社会的気運の醸成を図る。
イ 仕事と育児の両立を図るための制度の着実な実施
男女労働者ともに、育児休業や短時間勤務などの仕事と子育ての両立支援制度を安心して利用できる職場環境の整備が重要であることから、これらの普及・定着を図る。
特に平成29年1月1日より施行された改正育児・介護休業法について、周知・指導を行い、改正内容の確実な履行確保を図る。
さらに、企業における次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・実施に向けた取組の促進を図るとともに、くるみん認定及びプラチナくるみん認定の取得促進を図る。
ウ 仕事と介護の両立を図るための制度の着実な実施
総人口に占める65歳以上人口の割合(高齢化率)は増加の一途を辿っており、今後も高齢化率の上昇が見込まれる。
このような中、家族の介護を理由とする離職者数は、年間10万人にも上っていることから、仕事と介護の両立は重要な課題となっている。
このため、平成29年1月1日より施行された改正育児・介護休業法に基づく介護休業の分割取得や、新設された所定外労働の免除など、仕事と介護の両立支援制度の周知徹底を行い、その定着を図る。
エ 長時間労働の是正
長時間労働は、仕事と子育てなどの家庭生活の両立を困難にするとともに、少子化の原因や、女性のキャリア形成を阻む原因、男性の家庭への参画を阻む原因となっている。労働の質を高め、長時間労働を是正することにより、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)を実現できるとともに、生産性の向上も可能となる。
このため、仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)の推進及び男性労働者が一層育児・家事を行うことを可能とする職場環境を整備する観点からも、長時間労働の是正に向けた取組強化を図るとともに、企業風土の改善に向けて積極的な啓発を進めること等を通じて、企業の意識改革を促進する。
オ 両立しやすい職場環境づくりの促進
イ~エの施策のほか、仕事と育児・介護の両立が図られるためには、男女がともに育児・介護休業その他の両立支援制度を安心して利用でき、就労しながら育児・介護を行いやすい職場環境づくりの促進が必要である。このため、男性の育児休業取得等に関する社会的な気運を醸成するとともに、各種助成措置を効果的に活用すること等により、仕事と育児・介護の両立に向けた労使の取組を支援する。
とりわけ、日本の男性の育児・家事時間は欧米諸国に比べて短く、育児休業取得率も低い状況にあることから、官民をあげて、男性の育児休業取得等を促進するための環境を整備するよう努める。
また、仕事と育児・介護が両立できる職場環境の整備を促進するため、企業における具体的取組方法を示したモデルの構築・普及や、企業へのコンサルティングを行い、仕事と育児・介護の両立支援に取り組む事業主を支援する。
カ 地域等における支援サービスの充実
(ア) 子育て支援の充実
労働者が仕事と育児との両立を図っていくためには、企業における取組の促進のみならず、地域においてニーズに応じた多様な支援サービスが整備されることが重要である。
このため、関係機関と連携を取って、保育所等の受入児童数の拡大や、延長保育、休日保育、病児保育、夜間保育等の多様な保育ニーズへの対応など保育サービスの充実、放課後児童クラブの設置促進など地域における子育て支援の推進等に取り組んでいく。また、子育て中の労働者や主婦等が互いに保育所等への子どもの送迎や放課後の預かり等を行うファミリー・サポート・センター事業を推進する。
(イ) 介護サービスの充実
介護は社会全体で支えるものであること、また、労働者が一人で介護を抱えると結果として離職につながりかねないことから、介護に関する両立支援制度は、介護サービスを円滑に利用する目的のほか、要介護者の状態が大きく変化してサービスを切り替える等家族が介護に対応しなければならない場合等に利用すべき制度である。その前提を踏まえると、仕事と介護の両立を図っていくためには、企業における取組の促進のみならず、地域においてニーズに応じた多様な支援サービスが整備されることが重要である(地域包括ケアシステムの構築)。
このため、必要な介護サービスの確保や働く環境改善・家族支援の観点から、在宅・施設サービス等の整備の充実・加速化や介護サービスを支える介護人材の確保、働く家族等に対する相談・支援の充実を行う。
(3) 多様な就業形態に対する支援
妊娠、出産等を機に約5割の女性が離職しているという現状においては、一旦就業を中断したとしても、それまでの就業経験を生かしつつ再就職・再就業できるよう環境整備を進めることが特に重要である。また、労働者一人ひとりの仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)と、企業による優秀な人材の確保や定着を同時に図るため、職務、勤務地、労働時間を限定した「多様な正社員」の普及を図ることが重要である。
こうした中で、これらの多様な就業形態を良好な就業機会とするための条件整備が以前にも増して重要となってきている。
ア パートタイム労働対策
平成27年4月から施行された短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律(平成26年法律第27号)については、その内容・趣旨について事業主に周知徹底し、パートタイム労働者について、通常の労働者との均衡待遇等が確保されるよう行政指導を行っていく。
また、パートタイム労働者に係る均衡待遇の確保の推進のため、職務分析・職務評価について、セミナーによる周知や、コンサルティングを通じた個別企業への導入支援を行っていく。
さらに、短時間正社員制度が一層普及・定着するように努める。
イ テレワーク・在宅就業対策
特に育児期・介護期の雇用型テレワークについては、制度の普及状況や適切な労務管理が必要であることを踏まえ、好事例を積み重ねつつ、その在り方について必要な検討を行う。また、自営型在宅ワークについては、「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」の周知・啓発を行う。
ウ 再就職支援
出産・子育て等で離職した女性が、出産後の復職・再就職や仕事と子育ての両立に関する知識が得られるよう、「仕事と育児カムバック支援サイト」を通じた情報提供や相談支援を行うとともに、その希望や状況に応じて早期に再就職できるよう、子ども連れで来所しやすい環境を整備したマザーズハローワーク及びマザーズコーナーにおいて、担当者制・予約制によるきめ細かな職業相談・職業紹介と併せ、再就職に資する各種セミナーの実施、仕事と子育てが両立しやすい求人の確保等を行うとともに、地方公共団体等との連携による保育サービス関連情報の提供等により、総合的かつ一貫した支援を実施する。特に、母子家庭の母については、その就業による自立と生活の向上が図られるよう、福祉事務所とハローワーク等の連携の下、就業相談、職業能力開発、常用雇用の促進等個々の母子家庭の実情に応じたきめ細かな就業支援を推進する。
(4) 関係者・関係機関との連携
個々の企業において均等法の趣旨に沿った雇用管理を進めていくには、労使が共に企業内の雇用管理制度及びその運用の見直しに取り組んでいくことが重要である。このため、労働者団体及び使用者団体と緊密に連携し、企業における取組の促進を図る。また、情報通信技術等を活用し、機会均等推進責任者に対し的確な情報提供を行い、その活動の活性化を促す。
さらに、個人の働き方の選択に大きな関わりを持つ税制や社会保障制度等について、様々な世帯形態間の公平性等を勘案しつつ、その影響をできる限り働き方の選択に対して中立的なものとするよう、関係者、関係機関による検討を促す。
また、地方公共団体の労働担当部局、男女共同参画担当部局、福祉担当部局等との協力関係を深め、地方公共団体が行う関係施策との連携を図りつつ、雇用均等行政をより効果的に推進する。
(5) 行政推進体制の充実、強化
都道府県労働局においては、平成28年4月に、雇用均等行政と労働基準行政、職業安定行政がより一層の連携を図れるよう、雇用均等室に労働基準部及び職業安定部の一部の機能を移管し、新たに雇用環境・均等部(室)として改組している。厚生労働省においても、雇用均等・児童家庭局等の組織改編が予定されている。当該部(室)等において、労働相談の対応を一体的に実施することや、個別の労働紛争の未然防止と解決を一体的に実施することとあわせて、これらの業務実施体制の整備・強化・効率化に努める。また、関係法令等の周知、実施等に当たっては、情報通信技術を積極的に活用する等、行政サービスの質的向上に努めるとともに、業務効率化を図る。