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告示:労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針

 

労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針

制 定 平成十八年十月十一日厚生労働省告示第六百十四号

最終改正 平成二十五年十二月二十四日厚生労働省告示第三百八十二号

 

雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)第十条第一項の規定に基づき、労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針を次のように定め、平成十九年四月一日から適用することとしたので、同条第二項において準用する同法第四条第五項の規定に基づき、告示する。

なお、募集及び採用並びに配置、昇進及び教育訓練について事業主が適切に対処するための指針(平成十年労働省告示第十九号)は、平成十九年三月三十一日限り廃止する。

 

労働者に対する性別を理由とする差別の禁止等に関する規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処するための指針

 

第1 はじめに

この指針は、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(以下「法」という。)第10条第1項の規定に基づき、法第5条から第7条まで及び第9条第1項から第3項までの規定に定める事項に関し、事業主が適切に対処することができるよう、これらの規定により禁止される措置として具体的に明らかにする必要があると認められるものについて定めたものである。

 

第2 直接差別

1 雇用管理区分

第2において、「雇用管理区分」とは、職種、資格、雇用形態、就業形態等の区分その他の労働者についての区分であって、当該区分に属している労働者について他の区分に属している労働者と異なる雇用管理を行うことを予定して設定しているものをいう。雇用管理区分が同一か否かについては、当該区分に属する労働者の従事する職務の内容、転勤を含めた人事異動の幅や頻度等について、同一区分に属さない労働者との間に、客観的・合理的な違いが存在しているか否かにより判断されるものであり、その判断に当たっては、単なる形式ではなく、企業の雇用管理の実態に即して行う必要がある。

例えば、採用に際しては異なる職種として採用していても、入社後は、同一企業内の労働者全体について、営業や事務など様々な職務を経験させたり同一の基準で人事異動を行うなど特に取扱いを区別することなく配置等を行っているような場合には、企業全体で一つの雇用管理区分と判断することとなる。

2 募集及び採用(法第5条関係)

(1) 法第5条の「募集」とは、労働者を雇用しようとする者が、自ら又は他人に委託して、労働者となろうとする者に対し、その被用者となることを勧誘することをいう。

なお、労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(昭和60年法律第88号)第2条第1号に規定する労働者派遣のうち、いわゆる登録型派遣を行う事業主(同法第5条第1項の許可を受けた者をいう。)が、派遣労働者になろうとする者に対し登録を呼びかける行為及びこれに応じた者を労働契約の締結に至るまでの過程で登録させる行為は、募集に該当する。

法第5条の「採用」とは、労働契約を締結することをいい、応募の受付、採用のための選考等募集を除く労働契約の締結に至る一連の手続を含む。

(2) 募集及び採用に関し、一の雇用管理区分において、例えば、次に掲げる措置を講ずることは、法第5条により禁止されるものである。ただし、14の(1)のポジティブ・アクションを講ずる場合については、この限りではない。

イ 募集又は採用に当たって、その対象から男女のいずれかを排除すること。

(排除していると認められる例)

① 一定の職種(いわゆる「総合職」、「一般職」等を含む。)や一定の雇用形態(いわゆる「正社員」、「パートタイム労働者」等を含む。)について、募集又は採用の対象を男女のいずれかのみとすること。

② 募集又は採用に当たって、男女のいずれかを表す職種の名称を用い(対象を男女のいずれかのみとしないことが明らかである場合を除く。)、又は「男性歓迎」、「女性向きの職種」等の表示を行うこと。

③ 男女をともに募集の対象としているにもかかわらず、応募の受付や採用の対象を男女のいずれかのみとすること。

④ 派遣元事業主が、一定の職種について派遣労働者になろうとする者を登録させるに当たって、その対象を男女のいずれかのみとすること。

ロ 募集又は採用に当たっての条件を男女で異なるものとすること。

(異なるものとしていると認められる例)

募集又は採用に当たって、女性についてのみ、未婚者であること、子を有していないこと、自宅から通勤すること等を条件とし、又はこれらの条件を満たす者を優先すること。

ハ 採用選考において、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

① 募集又は採用に当たって実施する筆記試験や面接試験の合格基準を男女で異なるものとすること。

② 男女で異なる採用試験を実施すること。

③ 男女のいずれかについてのみ、採用試験を実施すること。

④ 採用面接に際して、結婚の予定の有無、子供が生まれた場合の継続就労の希望の有無等一定の事項について女性に対してのみ質問すること。

ニ 募集又は採用に当たって男女のいずれかを優先すること。

(男女のいずれかを優先していると認められる例)

① 採用選考に当たって、採用の基準を満たす者の中から男女のいずれかを優先して採用すること。

② 男女別の採用予定人数を設定し、これを明示して、募集すること。又は、設定した人数に従って採用すること。

③ 男女のいずれかについて採用する最低の人数を設定して募集すること。

④ 男性の選考を終了した後で女性を選考すること。

ホ 求人の内容の説明等募集又は採用に係る情報の提供について、男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

① 会社の概要等に関する資料を送付する対象を男女のいずれかのみとし、又は資料の内容、送付時期等を男女で異なるものとすること。

② 求人の内容等に関する説明会を実施するに当たって、その対象を男女のいずれかのみとし、又は説明会を実施する時期を男女で異なるものとすること。

3 配置(業務の配分及び権限の付与を含む。)(法第6条第1号関係)

(1) 法第6条第1号の「配置」とは、労働者を一定の職務に就けること又は就いている状態をいい、従事すべき職務における業務の内容及び就業の場所を主要な要素とするものである。

なお、配置には、業務の配分及び権限の付与が含まれる。また、派遣元事業主が、労働者派遣契約に基づき、その雇用する派遣労働者に係る労働者派遣をすることも、配置に該当する。

法第6条第1号の「業務の配分」とは、特定の労働者に対し、ある部門、ラインなどが所掌している複数の業務のうち一定の業務を割り当てることをいい、日常的な業務指示は含まれない。

また、法第6条第1号の「権限の付与」とは、労働者に対し、一定の業務を遂行するに当たって必要な権限を委任することをいう。

(2) 配置に関し、一の雇用管理区分において、例えば、次に掲げる措置を講ずることは、法第6条第1号により禁止されるものである。ただし、14の(1)のポジティブ・アクションを講ずる場合については、この限りではない。

イ 一定の職務への配置に当たって、その対象から男女のいずれかを排除すること。

(排除していると認められる例)

① 営業の職務、秘書の職務、企画立案業務を内容とする職務、定型的な事務処理業務を内容とする職務、海外で勤務する職務等一定の職務への配置に当たって、その対象を男女のいずれかのみとすること。

② 時間外労働や深夜業の多い職務への配置に当たって、その対象を男性労働者のみとすること。

③ 派遣元事業主が、一定の労働者派遣契約に基づく労働者派遣について、その対象を男女のいずれかのみとすること。

④ 一定の職務への配置の資格についての試験について、その受験資格を男女のいずれかに対してのみ与えること。

ロ 一定の職務への配置に当たっての条件を男女で異なるものとすること。

(異なるものとしていると認められる例)

① 女性労働者についてのみ、婚姻したこと、一定の年齢に達したこと又は子を有していることを理由として、企画立案業務を内容とする職務への配置の対象から排除すること。

② 男性労働者については、一定数の支店の勤務を経た場合に本社の経営企画部門に配置するが、女性労働者については、当該一定数を上回る数の支店の勤務を経なければ配置しないこと。

③ 一定の職務への配置に当たって、女性労働者についてのみ、一定の国家資格の取得や研修の実績を条件とすること。

④ 営業部門について、男性労働者については全員配置の対象とするが、女性労働者については希望者のみを配置の対象とすること。

ハ 一定の職務への配置に当たって、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

① 一定の職務への配置に当たり、人事考課を考慮する場合において、男性労働者は平均的な評価がなされている場合にはその対象とするが、女性労働者は特に優秀という評価がなされている場合にのみその対象とすること。

② 一定の職務への配置の資格についての試験の合格基準を、男女で異なるものとすること。

③ 一定の職務への配置の資格についての試験の受験を男女のいずれかに対してのみ奨励すること。

ニ 一定の職務への配置に当たって、男女のいずれかを優先すること。

(優先していると認められる例)

営業部門への配置の基準を満たす労働者が複数いる場合に、男性労働者を優先して配置すること。

ホ 配置における業務の配分に当たって、男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

① 営業部門において、男性労働者には外勤業務に従事させるが、女性労働者については当該業務から排除し、内勤業務のみに従事させること。

② 男性労働者には通常の業務のみに従事させるが、女性労働者については通常の業務に加え、会議の庶務、お茶くみ、そうじ当番等の雑務を行わせること。

ヘ 配置における権限の付与に当たって、男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

① 男性労働者には一定金額まで自己の責任で買い付けできる権限を与えるが、女性労働者には当該金額よりも低い金額までの権限しか与えないこと。

② 営業部門において、男性労働者には新規に顧客の開拓や商品の提案をする権限を与えるが、女性労働者にはこれらの権限を与えず、既存の顧客や商品の販売をする権限しか与えないこと。

ト 配置転換に当たって、男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

① 経営の合理化に際し、女性労働者についてのみ出向の対象とすること。

② 一定の年齢以上の女性労働者のみを出向の対象とすること。

③ 女性労働者についてのみ、婚姻又は子を有していることを理由として、通勤が不便な事業場に配置転換すること。

④ 工場を閉鎖する場合において、男性労働者については近隣の工場に配置するが、女性労働者については通勤が不便な遠隔地の工場に配置すること。

⑤ 男性労働者については、複数の部門に配置するが、女性労働者については当初に配置した部門から他部門に配置転換しないこと。

4 昇進(法第6条第1号関係)

(1) 法第6条第1号の「昇進」とは、企業内での労働者の位置付けについて下位の職階から上位の職階への移動を行うことをいう。昇進には、職制上の地位の上方移動を伴わないいわゆる「昇格」も含まれる。

(2) 昇進に関し、一の雇用管理区分において、例えば、次に掲げる措置を講ずることは、法第6条第1号により禁止されるものである。ただし、14の(1)のポジティブ・アクションを講ずる場合については、この限りではない。

イ 一定の役職への昇進に当たって、その対象から男女のいずれかを排除すること。

(排除していると認められる例)

① 女性労働者についてのみ、役職への昇進の機会を与えない、又は一定の役職までしか昇進できないものとすること。

② 一定の役職に昇進するための試験について、その受験資格を男女のいずれかに対してのみ与えること。

ロ 一定の役職への昇進に当たっての条件を男女で異なるものとすること。

(異なるものとしていると認められる例)

① 女性労働者についてのみ、婚姻したこと、一定の年齢に達したこと又は子を有していることを理由として、昇格できない、又は一定の役職までしか昇進できないものとすること。

② 課長への昇進に当たり、女性労働者については課長補佐を経ることを要するものとする一方、男性労働者については課長補佐を経ることなく課長に昇進できるものとすること。

③ 男性労働者については出勤率が一定の率以上である場合又は一定の勤続年数を経た場合に昇格させるが、女性労働者についてはこれらを超える出勤率又は勤続年数がなければ昇格できないものとすること。

④ 一定の役職に昇進するための試験について、女性労働者についてのみ上司の推薦を受けることを受験の条件とすること。

ハ 一定の役職への昇進に当たって、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

① 課長に昇進するための試験の合格基準を、男女で異なるものとすること。

② 男性労働者については人事考課において平均的な評価がなされている場合には昇進させるが、女性労働者については特に優秀という評価がなされている場合にのみその対象とすること。

③ AからEまでの5段階の人事考課制度を設けている場合において、男性労働者については最低の評価であってもCランクとする一方、女性労働者については最高の評価であってもCランクとする運用を行うこと。

④ 一定年齢に達した男性労働者については全員役職に昇進できるように人事考課を行うものとするが、女性労働者についてはそのような取扱いをしないこと。

⑤ 一定の役職に昇進するための試験について、男女のいずれかについてのみその一部を免除すること。

⑥ 一定の役職に昇進するための試験の受験を男女のいずれかに対してのみ奨励すること。

ニ 一定の役職への昇進に当たり男女のいずれかを優先すること。

(優先していると認められる例)

一定の役職への昇進基準を満たす労働者が複数いる場合に、男性労働者を優先して昇進させること。

5 降格(法第6条第1号関係)

(1) 法第6条第1号の「降格」とは、企業内での労働者の位置付けについて上位の職階から下位の職階への移動を行うことをいい、昇進の反対の措置である場合と、昇格の反対の措置である場合の双方が含まれる。

(2) 降格に関し、一の雇用管理区分において、例えば、次に掲げる措置を講ずることは、法第6条第1号により禁止されるものである。

イ 降格に当たって、その対象を男女のいずれかのみとすること。

(男女のいずれかのみとしていると認められる例)

一定の役職を廃止するに際して、当該役職に就いていた男性労働者については同格の役職に配置転換をするが、女性労働者については降格させること。

ロ 降格に当たっての条件を男女で異なるものとすること。

(異なるものとしていると認められる例)

女性労働者についてのみ、婚姻又は子を有していることを理由として、降格の対象とすること。

ハ 降格に当たって、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

① 営業成績が悪い者について降格の対象とする旨の方針を定めている場合に、男性労働者については営業成績が最低の者のみを降格の対象とするが、女性労働者については営業成績が平均以下の者は降格の対象とすること。

② 一定の役職を廃止するに際して、降格の対象となる労働者を選定するに当たり、人事考課を考慮する場合に、男性労働者については最低の評価がなされている者のみ降格の対象とするが、女性労働者については特に優秀という評価がなされている者以外は降格の対象とすること。

ニ 降格に当たって、男女のいずれかを優先すること。

(優先していると認められる例)

一定の役職を廃止するに際して、降格の対象となる労働者を選定するに当たって、男性労働者よりも優先して、女性労働者を降格の対象とすること。

6 教育訓練(法第6条第1号関係)

(1) 法第6条第1号の「教育訓練」とは、事業主が、その雇用する労働者に対して、その労働者の業務の遂行の過程外(いわゆる「オフ・ザ・ジョブ・トレーニング」)において又は当該業務の遂行の過程内(いわゆる「オン・ザ・ジョブ・トレーニング」)において、現在及び将来の業務の遂行に必要な能力を付与するために行うものをいう。

(2) 教育訓練に関し、一の雇用管理区分において、例えば、次に掲げる措置を講ずることは、法第6条第1号により禁止されるものである。ただし、14の(1)のポジティブ・アクションを講ずる場合については、この限りではない。

イ 教育訓練に当たって、その対象から男女のいずれかを排除すること。

(排除していると認められる例)

① 一定の職務に従事する者を対象とする教育訓練を行うに当たって、その対象を男女のいずれかのみとすること。

② 工場実習や海外留学による研修を行うに当たって、その対象を男性労働者のみとすること。

③ 接遇訓練を行うに当たって、その対象を女性労働者のみとすること。

ロ 教育訓練を行うに当たっての条件を男女で異なるものとすること。

(異なるものとしていると認められる例)

① 女性労働者についてのみ、婚姻したこと、一定の年齢に達したこと又は子を有していることを理由として、将来従事する可能性のある職務に必要な知識を身につけるための教育訓練の対象から排除すること。

② 教育訓練の対象者について、男女で異なる勤続年数を条件とすること。

③ 女性労働者についてのみ、上司の推薦がなければ教育訓練の対象としないこと。

④ 男性労働者については全員を教育訓練の対象とするが、女性労働者については希望者のみを対象とすること。

ハ 教育訓練の内容について、男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

教育訓練の期間や課程を男女で異なるものとすること。

7 福利厚生(法第6条第2号・均等則第1条各号関係)

(1) (2)において、「福利厚生の措置」とは、法第6条第2号の規定及び雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律施行規則(昭和61年労働省令第2号。以下「均等則」という。)第1条各号に掲げる以下のものをいう。

(法第6条第2号及び均等則第1条各号に掲げる措置)

イ 住宅資金の貸付け(法第6条第2号)

ロ 生活資金、教育資金その他労働者の福祉の増進のために行われる資金の貸付け(均等則第1条第1号)

ハ 労働者の福祉の増進のために定期的に行われる金銭の給付(均等則第1条第2号)

ニ 労働者の資産形成のために行われる金銭の給付(均等則第1条第3号)

ホ 住宅の貸与(均等則第1条第4号)

(2) 福利厚生の措置に関し、一の雇用管理区分において、例えば、次に掲げる措置を講ずることは、法第6条第2号により禁止されるものである。

イ 福利厚生の措置の実施に当たって、その対象から男女のいずれかを排除すること。

(排除していると認められる例)

男性労働者についてのみ、社宅を貸与すること。

ロ 福利厚生の措置の実施に当たっての条件を男女で異なるものとすること。

(異なるものとしていると認められる例)

① 女性労働者についてのみ、婚姻を理由として、社宅の貸与の対象から排除すること。

② 住宅資金の貸付けに当たって、女性労働者に対してのみ、配偶者の所得額に関する資料の提出を求めること。

③ 社宅の貸与に当たり、世帯主であることを条件とする場合において、男性労働者については本人の申請のみで貸与するが、女性労働者に対しては本人の申請に加え、住民票の提出を求め、又は配偶者に一定以上の所得がないことを条件とすること。

8 職種の変更(法第6条第3号関係)

(1) 法第6条第3号の「職種」とは、職務や職責の類似性に着目して分類されるものであり、「営業職」・「技術職」の別や、「総合職」・「一般職」の別などがある。

(2) 職種の変更に関し、一の雇用管理区分(職種の変更によって雇用管理区分が異なることとなる場合には、変更前の一の雇用管理区分をいう。)において、例えば、次に掲げる措置を講ずることは、法第6条第3号により禁止されるものである。ただし、14の(1)のポジティブ・アクションを講ずる場合については、この限りではない。

イ 職種の変更に当たって、その対象から男女のいずれかを排除すること。

(排除していると認められる例)

① 「一般職」から「総合職」への職種の変更について、その対象を男女のいずれかのみとすること。

② 「総合職」から「一般職」への職種の変更について、制度上は男女双方を対象としているが、男性労働者については職種の変更を認めない運用を行うこと。

③ 「一般職」から「総合職」への職種の変更のための試験について、その受験資格を男女のいずれかに対してのみ与えること。

④ 「一般職」の男性労働者については、いわゆる「準総合職」及び「総合職」への職種の変更の対象とするが、「一般職」の女性労働者については、「準総合職」のみを職種の変更の対象とすること。

ロ 職種の変更に当たっての条件を男女で異なるものとすること。

(異なるものとしていると認められる例)

① 女性労働者についてのみ、婚姻又は子を有していることを理由として、「一般職」から「総合職」への職種の変更の対象から排除すること。

② 「一般職」から「総合職」への職種の変更について、男女で異なる勤続年数を条件とすること。

③ 「一般職」から「総合職」への職種の変更について、男女のいずれかについてのみ、一定の国家資格の取得、研修の実績又は一定の試験に合格することを条件とすること。

④ 「一般職」から「総合職」への職種の変更のための試験について、女性労働者についてのみ上司の推薦を受けることを受験の条件とすること。

ハ 一定の職種への変更に当たって、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

① 「一般職」から「総合職」への職種の変更のための試験の合格基準を男女で異なるものとすること。

② 男性労働者については人事考課において平均的な評価がなされている場合には「一般職」から「総合職」への職種の変更の対象とするが、女性労働者については特に優秀という評価がなされている場合にのみその対象とすること。

③ 「一般職」から「総合職」への職種の変更のための試験について、その受験を男女のいずれかに対してのみ奨励すること。

④ 「一般職」から「総合職」への職種の変更のための試験について、男女いずれかについてのみその一部を免除すること。

ニ 職種の変更に当たって、男女のいずれかを優先すること。

(優先していると認められる例)

「一般職」から「総合職」への職種の変更の基準を満たす労働者の中から男女のいずれかを優先して職種の変更の対象とすること。

ホ 職種の変更について男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

① 経営の合理化に際して、女性労働者のみを、研究職から賃金その他の労働条件が劣る一般事務職への職種の変更の対象とすること。

② 女性労働者についてのみ、年齢を理由として、アナウンサー等の専門職から事務職への職種の変更の対象とすること。

9 雇用形態の変更(法第6条第3号関係)

(1) 法第6条第3号の「雇用形態」とは、労働契約の期間の定めの有無、所定労働時間の長さ等により分類されるものであり、いわゆる「正社員」、「パートタイム労働者」、「契約社員」などがある。

(2) 雇用形態の変更に関し、一の雇用管理区分(雇用形態の変更によって雇用管理区分が異なることとなる場合には、変更前の一の雇用管理区分をいう。)において、例えば、次に掲げる措置を講ずることは、法第6条第3号により禁止されるものである。ただし、14の(1)のポジティブ・アクションを講ずる場合については、この限りではない。

イ 雇用形態の変更に当たって、その対象から男女のいずれかを排除すること。

(排除していると認められる例)

① 有期契約労働者から正社員への雇用形態の変更の対象を男性労働者のみとすること。

② パートタイム労働者から正社員への雇用形態の変更のための試験について、その受験資格を男女のいずれかに対してのみ与えること。

ロ 雇用形態の変更に当たっての条件を男女で異なるものとすること。

(異なるものとしていると認められる例)

① 女性労働者についてのみ、婚姻又は子を有していることを理由として、有期契約労働者から正社員への雇用形態の変更の対象から排除すること。

② 有期契約労働者から正社員への雇用形態の変更について、男女で異なる勤続年数を条件とすること。

③ パートタイム労働者から正社員への雇用形態の変更について、男女のいずれかについてのみ、一定の国家資格の取得や研修の実績を条件とすること。

④ パートタイム労働者から正社員への雇用形態の変更のための試験について、女性労働者についてのみ上司の推薦を受けることを受験の条件とすること。

ハ 一定の雇用形態への変更に当たって、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

① 有期契約労働者から正社員への雇用形態の変更のための試験の合格基準を男女で異なるものとすること。

② 契約社員から正社員への雇用形態の変更について、男性労働者については、人事考課において平均的な評価がなされている場合には変更の対象とするが、女性労働者については、特に優秀という評価がなされている場合にのみその対象とすること。

③ パートタイム労働者から正社員への雇用形態の変更のための試験の受験について、男女のいずれかに対してのみ奨励すること。

④ 有期契約労働者から正社員への雇用形態の変更のための試験の受験について、男女のいずれかについてのみその一部を免除すること。

ニ 雇用形態の変更に当たって、男女のいずれかを優先すること。

(優先していると認められる例)

パートタイム労働者から正社員への雇用形態の変更の基準を満たす労働者の中から、男女のいずれかを優先して雇用形態の変更の対象とすること。

ホ 雇用形態の変更について、男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

① 経営の合理化に際して、女性労働者のみを、正社員から賃金その他の労働条件が劣る有期契約労働者への雇用形態の変更の勧奨の対象とすること。

② 女性労働者についてのみ、一定の年齢に達したこと、婚姻又は子を有していることを理由として、正社員から賃金その他の労働条件が劣るパートタイム労働者への雇用形態の変更の勧奨の対象とすること。

③ 経営の合理化に当たり、正社員の一部をパート労働者とする場合において、正社員である男性労働者は、正社員としてとどまるか、又はパートタイム労働者に雇用形態を変更するかについて選択できるものとするが、正社員である女性労働者については、一律パートタイム労働者への雇用形態の変更を強要すること。

10 退職の勧奨(法第6条第4号関係)

(1) 法第6条第4号の「退職の勧奨」とは、雇用する労働者に対し退職を促すことをいう。

(2) 退職の勧奨に関し、一の雇用管理区分において、例えば、次に掲げる措置を講ずることは、法第6条第4号により禁止されるものである。

イ 退職の勧奨に当たって、その対象を男女のいずれかのみとすること。

(男女のいずれかのみとしていると認められる例)

女性労働者に対してのみ、経営の合理化のための早期退職制度の利用を働きかけること。

ロ 退職の勧奨に当たっての条件を男女で異なるものとすること。

(異なるものとしていると認められる例)

① 女性労働者に対してのみ、子を有していることを理由として、退職の勧奨をすること。

② 経営の合理化に際して、既婚の女性労働者に対してのみ、退職の勧奨をすること。

ハ 退職の勧奨に当たって、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

経営合理化に伴い退職勧奨を実施するに当たり、人事考課を考慮する場合において、男性労働者については最低の評価がなされている者のみ退職の勧奨の対象とするが、女性労働者については特に優秀という評価がなされている者以外は退職の勧奨の対象とすること。

ニ 退職の勧奨に当たって、男女のいずれかを優先すること。

(優先していると認められる例)

① 男性労働者よりも優先して、女性労働者に対して退職の勧奨をすること。

② 退職の勧奨の対象とする年齢を女性労働者については45歳、男性労働者については50歳とするなど男女で差を設けること。

11 定年(法第6条第4号関係)

(1) 法第6条第4号の「定年」とは、労働者が一定年齢に達したことを雇用関係の終了事由とする制度をいう。

(2) 定年に関し、一の雇用管理区分において、例えば、次に掲げる措置を講ずることは、法第6条第4号により禁止されるものである。

定年の定めについて、男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

① 定年年齢の引上げを行うに際して、厚生年金の支給開始年齢に合わせて男女で異なる定年を定めること。

② 定年年齢の引上げを行うに際して、既婚の女性労働者についてのみ、異なる定年を定めること。

12 解雇(法第6条第4号関係)

(1) 法第6条第4号の「解雇」とは、労働契約を将来に向かって解約する事業主の一方的な意思表示をいい、労使の合意による退職は含まない。

(2) 解雇に関し、一の雇用管理区分において、例えば、次に掲げる措置を講ずることは、法第6条第4号により禁止されるものである。

イ 解雇に当たって、その対象を男女のいずれかのみとすること。

(男女のいずれかのみとしていると認められる例)

経営の合理化に際して、女性のみを解雇の対象とすること。

ロ 解雇の対象を一定の条件に該当する者とする場合において、当該条件を男女で異なるものとすること。

(異なるものとしていると認められる例)

① 経営の合理化に際して、既婚の女性労働者のみを解雇の対象とすること。

② 一定年齢以上の女性労働者のみを解雇の対象とすること。

ハ 解雇に当たって、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

経営合理化に伴う解雇に当たり、人事考課を考慮する場合において、男性労働者については最低の評価がなされている者のみ解雇の対象とするが、女性労働者については特に優秀という評価がなされている者以外は解雇の対象とすること。

ニ 解雇に当たって、男女のいずれかを優先すること。

(優先していると認められる例)

解雇の基準を満たす労働者の中で、男性労働者よりも優先して女性労働者を解雇の対象とすること。

13 労働契約の更新(法第6条第4号関係)

(1) 法第6条第4号の「労働契約の更新」とは、期間の定めのある労働契約について、期間の満了に際して、従前の契約と基本的な内容が同一である労働契約を締結することをいう。

(2) 労働契約の更新に関し、一の雇用管理区分において、例えば、次に掲げる措置を講ずることは、法第6条第4号により禁止されるものである。

イ 労働契約の更新に当たって、その対象から男女のいずれかを排除すること。

(排除していると認められる例)

経営の合理化に際して、男性労働者のみを、労働契約の更新の対象とし、女性労働者については、労働契約の更新をしない(いわゆる「雇止め」をする)こと。

ロ 労働契約の更新に当たっての条件を男女で異なるものとすること。

(異なるものとしていると認められる例)

① 経営の合理化に際して、既婚の女性労働者についてのみ、労働契約の更新をしない(いわゆる「雇止め」をする)こと。

② 女性労働者についてのみ、子を有していることを理由として、労働契約の更新をしない(いわゆる「雇止め」をする)こと。

③ 男女のいずれかについてのみ、労働契約の更新回数の上限を設けること。

ハ 労働契約の更新に当たって、能力及び資質の有無等を判断する場合に、その方法や基準について男女で異なる取扱いをすること。

(異なる取扱いをしていると認められる例)

労働契約の更新に当たって、男性労働者については平均的な営業成績である場合には労働契約の更新の対象とするが、女性労働者については、特に営業成績が良い場合にのみその対象とすること。

ニ 労働契約の更新に当たって男女のいずれかを優先すること。

(優先していると認められる例)

労働契約の更新の基準を満たす労働者の中から、男女のいずれかを優先して労働契約の更新の対象とすること。

14 法違反とならない場合

(1) 2から4まで、6、8及び9に関し、次に掲げる措置を講ずることは、法第8条に定める雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保の支障となっている事情を改善することを目的とする措置(ポジティブ・アクション)として、法第5条及び第6条の規定に違反することとはならない。

イ 女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない雇用管理区分における募集若しくは採用又は役職についての募集若しくは採用に当たって、当該募集又は採用に係る情報の提供について女性に有利な取扱いをすること、採用の基準を満たす者の中から男性より女性を優先して採用することその他男性と比較して女性に有利な取扱いをすること。

ロ 一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない職務に新たに労働者を配置する場合に、当該配置の資格についての試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、当該配置の基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して配置することその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。

ハ 一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない役職への昇進に当たって、当該昇進のための試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、当該昇進の基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して昇進させることその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。

ニ 一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない職務又は役職に従事するに当たって必要とされる能力を付与する教育訓練に当たって、その対象を女性労働者のみとすること、女性労働者に有利な条件を付すことその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。

ホ 一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない職種への変更について、当該職種の変更のための試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、当該職種の変更の基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して職種の変更の対象とすることその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。

ヘ 一の雇用管理区分における女性労働者が男性労働者と比較して相当程度少ない雇用形態への変更について、当該雇用形態の変更のための試験の受験を女性労働者のみに奨励すること、当該雇用形態の変更の基準を満たす労働者の中から男性労働者より女性労働者を優先して雇用形態の変更の対象とすることその他男性労働者と比較して女性労働者に有利な取扱いをすること。

(2) 次に掲げる場合において、2から4までにおいて掲げる措置を講ずることは、性別にかかわりなく均等な機会を与えていない、又は性別を理由とする差別的取扱いをしているとは解されず、法第5条及び第6条の規定に違反することとはならない。

イ 次に掲げる職務に従事する労働者に係る場合

① 芸術・芸能の分野における表現の真実性等の要請から男女のいずれかのみに従事させることが必要である職務

② 守衛、警備員等のうち防犯上の要請から男性に従事させることが必要である職務

③ ①及び②に掲げるもののほか、宗教上、風紀上、スポーツにおける競技の性質上その他の業務の性質上男女のいずれかのみに従事させることについてこれらと同程度の必要性があると認められる職務

ロ 労働基準法(昭和22年法律第49号)第61条第1項、第64条の2若しくは第64条の3第2項の規定により女性を就業させることができず、又は保健師助産師看護師法(昭和23年法律第203号)第3条の規定により男性を就業させることができないことから、通常の業務を遂行するために、労働者の性別にかかわりなく均等な機会を与え又は均等な取扱いをすることが困難であると認められる場合

ハ 風俗、風習等の相違により男女のいずれかが能力を発揮し難い海外での勤務が必要な場合その他特別の事情により労働者の性別にかかわりなく均等な機会を与え又は均等な取扱いをすることが困難であると認められる場合

 

第3 間接差別(法第7条関係)

1 雇用の分野における性別に関する間接差別

(1) 雇用の分野における性別に関する間接差別とは、①性別以外の事由を要件とする措置であって、②他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるものを、③合理的な理由がないときに講ずることをいう。

(2) (1)の①の「性別以外の事由を要件とする措置」とは、男性、女性という性別に基づく措置ではなく、外見上は性中立的な規定、基準、慣行等(以下第3において「基準等」という。)に基づく措置をいうものである。

(1)の②の「他の性の構成員と比較して、一方の性の構成員に相当程度の不利益を与えるもの」とは、当該基準等を満たすことができる者の比率が男女で相当程度異なるものをいう。

(1)の③の「合理的な理由」とは、具体的には、当該措置の対象となる業務の性質に照らして当該措置の実施が当該業務の遂行上特に必要である場合、事業の運営の状況に照らして当該措置の実施が雇用管理上特に必要であること等をいうものである。

(3) 法第7条は、募集、採用、配置、昇進、降格、教育訓練、福利厚生、職種及び雇用形態の変更、退職の勧奨、定年、解雇並びに労働契約の更新に関する措置であって、(1)の①及び②に該当するものを厚生労働省令で定め、(1)の③の合理的な理由がある場合でなければ、これを講じてはならないこととするものである。

厚生労働省令で定めている措置は、具体的には、次のとおりである。

(均等則第2条各号に掲げる措置)

イ 労働者の募集又は採用に当たって、労働者の身長、体重又は体力を要件とすること(均等則第2条第1号関係)。

ロ 労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること(均等則第2条第2号関係)。

ハ 労働者の昇進に当たり、転勤の経験があることを要件とすること(均等則第2条第3号関係)。

2 労働者の募集又は採用に当たって、労働者の身長、体重又は体力を要件とすること(法第7条・均等則第2条第1号関係)

(1) 均等則第2条第1号の「労働者の募集又は採用に関する措置であつて、労働者の身長、体重又は体力に関する事由を要件とするもの」とは、募集又は採用に当たって、身長若しくは体重が一定以上若しくは一定以下であること又は一定以上の筋力や運動能力があることなど一定以上の体力を有すること(以下「身長・体重・体力要件」という。)を選考基準とするすべての場合をいい、例えば、次に掲げるものが該当する。

(身長・体重・体力要件を選考基準としていると認められる例)

イ 募集又は採用に当たって、身長・体重・体力要件を満たしている者のみを対象とすること。

ロ 複数ある採用の基準の中に、身長・体重・体力要件が含まれていること。

ハ 身長・体重・体力要件を満たしている者については、採用選考において平均的な評価がなされている場合に採用するが、身長・体重・体力要件を満たしていない者については、特に優秀という評価がなされている場合にのみその対象とすること。

(2) 合理的な理由の有無については、個別具体的な事案ごとに、総合的に判断が行われるものであるが、合理的な理由がない場合としては、例えば、次のようなものが考えられる。

(合理的な理由がないと認められる例)

イ 荷物を運搬する業務を内容とする職務について、当該業務を行うために必要な筋力より強い筋力があることを要件とする場合

ロ 荷物を運搬する業務を内容とする職務ではあるが、運搬等するための設備、機械等が導入されており、通常の作業において筋力を要さない場合に、一定以上の筋力があることを要件とする場合

ハ 単なる受付、出入者のチェックのみを行う等防犯を本来の目的としていない警備員の職務について、身長又は体重が一定以上であることを要件とする場合

3 労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に当たって、転居を伴う転勤に応じることができることを要件とすること(法第7条・均等則第2条第2号関係)

(1) 均等則第2条第2号の「労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に関する措置であつて、労働者が住居の移転を伴う配置転換に応じることができることを要件とするもの」とは、労働者の募集若しくは採用、昇進又は職種の変更に当たって、転居を伴う転勤に応じることができること(以下「転勤要件」という。)を選考基準とするすべての場合をいい、例えば、次に掲げるものが該当する。

(転勤要件を選考基準としていると認められる例)

イ 募集若しくは採用又は昇進に当たって、転居を伴う転勤に応じることができる者のみを対象とすること又は複数ある採用又は昇進の基準の中に、転勤要件が含まれていること。

ロ 職種の変更に当たって、転居を伴う転勤に応じることができる者のみを対象とすること又は複数ある職種の変更の基準の中に、転勤要件が含まれていること。例えば、事業主が新たにコース別雇用管理(事業主が、その雇用する労働者について、労働者の職種、資格等に基づき複数のコースを設定し、コースごとに異なる雇用管理を行うものをいう。)を導入し、その雇用する労働者を総合職と一般職へ区分する場合に、総合職については、転居を伴う転勤に応じることができる者のみ対象とすること又は複数ある職種の変更の基準の中に転勤要件が含まれていることなどが考えられること。

(2) 合理的な理由の有無については、個別具体的な事案ごとに、総合的に判断が行われるものであるが、合理的な理由がない場合としては、例えば、次のようなものが考えられる。

(合理的な理由がないと認められる例)

イ 広域にわたり展開する支店、支社等がなく、かつ、支店、支社等を広域にわたり展開する計画等もない場合

ロ 広域にわたり展開する支店、支社等はあるが、長期間にわたり、家庭の事情その他の特別な事情により本人が転勤を希望した場合を除き、転居を伴う転勤の実態がほとんどない場合

ハ 広域にわたり展開する支店、支社等はあるが、異なる地域の支店、支社等での勤務経験を積むこと、生産現場の業務を経験すること、地域の特殊性を経験すること等が労働者の能力の育成・確保に特に必要であるとは認められず、かつ、組織運営上、転居を伴う転勤を含む人事ローテーションを行うことが特に必要であるとは認められない場合

4 労働者の昇進に当たり、転勤の経験があることを要件とすること(法第7条・均等則第2条第3号関係)

(1) 均等則第2条第3号の「労働者の昇進に関する措置であつて、労働者が勤務する事業場と異なる事業場に配置転換された経験があることを要件とするもの」とは、一定の役職への昇進に当たり、労働者に転勤の経験があること(以下「転勤経験要件」という。)を選考基準とするすべての場合をいい、例えば、次に掲げるものが該当する。

(転勤経験要件を選考基準としていると認められる例)

イ 一定の役職への昇進に当たって、転勤の経験がある者のみを対象とすること。

ロ 複数ある昇進の基準の中に、転勤経験要件が含まれていること。

ハ 転勤の経験がある者については、一定の役職への昇進の選考において平均的な評価がなされている場合に昇進の対象とするが、転勤の経験がない者については、特に優秀という評価がなされている場合にのみその対象とすること。

ニ 転勤の経験がある者についてのみ、昇進のための試験を全部又は一部免除すること。

(2) 合理的な理由の有無については、個別具体的な事案ごとに、総合的に判断が行われるものであるが、合理的な理由がない場合としては、例えば、次のようなものが考えられる。

(合理的な理由がないと認められる例)

イ 広域にわたり展開する支店、支社がある企業において、本社の課長に昇進するに当たって、本社の課長の業務を遂行する上で、異なる地域の支店、支社における勤務経験が特に必要であるとは認められず、かつ、転居を伴う転勤を含む人事ローテーションを行うことが特に必要であるとは認められない場合に、転居を伴う転勤の経験があることを要件とする場合

ロ 特定の支店の管理職としての職務を遂行する上で、異なる支店での経験が特に必要とは認められない場合において、当該支店の管理職に昇進するに際し、異なる支店における勤務経験を要件とする場合

 

第4 婚姻・妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止(法第9条関係)

1 婚姻・妊娠・出産を退職理由として予定する定め(法第9条第1項関係)

女性労働者が婚姻したこと、妊娠したこと、又は出産したことを退職理由として予定する定めをすることは、法第9条第1項により禁止されるものである。

法第9条第1項の「予定する定め」とは、女性労働者が婚姻、妊娠又は出産した場合には退職する旨をあらかじめ労働協約、就業規則又は労働契約に定めることをいうほか、労働契約の締結に際し労働者がいわゆる念書を提出する場合や、婚姻、妊娠又は出産した場合の退職慣行について、事業主が事実上退職制度として運用しているような実態がある場合も含まれる。

2 婚姻したことを理由とする解雇(法第9条第2項関係)

女性労働者が婚姻したことを理由として解雇することは、法第9条第2項により禁止されるものである。

3 妊娠・出産等を理由とする解雇その他不利益な取扱い(法第9条第3項関係)

(1) その雇用する女性労働者が妊娠したことその他の妊娠又は出産に関する事由であって均等則第2条の2各号で定めるもの(以下「妊娠・出産等」という。)を理由として、解雇その他不利益な取扱いをすることは、法第9条第3項(労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律第47条の2の規定により適用することとされる場合を含む。)により禁止されるものである。

法第9条第3項の「理由として」とは、妊娠・出産等と、解雇その他不利益な取扱いとの間に因果関係があることをいう。

均等則第2条の2各号においては、具体的に次のような事由を定めている。

(均等則第2条の2各号に掲げる事由)

イ 妊娠したこと(均等則第2条の2第1号関係)。

ロ 出産したこと(均等則第2条の2第2号関係)。

ハ 妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置(母性健康管理措置)を求め、又は当該措置を受けたこと(均等則第2条の2第3号関係)。

ニ 坑内業務の就業制限若しくは危険有害業務の就業制限の規定により業務に就くことができないこと、坑内業務に従事しない旨の申出若しくは就業制限の業務に従事しない旨の申出をしたこと又はこれらの業務に従事しなかったこと(均等則第2条の2第4号関係)。

ホ 産前休業を請求し、若しくは産前休業をしたこと又は産後の就業制限の規定により就業できず、若しくは産後休業をしたこと(均等則第2条の2第5号関係)。

ヘ 軽易な業務への転換を請求し、又は軽易な業務に転換したこと(均等則第2条の2第6号関係)。

ト 事業場において変形労働時間制がとられる場合において1週間又は1日について法定労働時間を超える時間について労働しないことを請求したこと、時間外若しくは休日について労働しないことを請求したこと、深夜業をしないことを請求したこと又はこれらの労働をしなかったこと(均等則第2条の2第7号関係)。

チ 育児時間の請求をし、又は育児時間を取得したこと(均等則第2条の2第8号関係)。

リ 妊娠又は出産に起因する症状により労務の提供ができないこと若しくはできなかったこと又は労働能率が低下したこと(均等則第2条の2第9号関係)。

なお、リの「妊娠又は出産に起因する症状」とは、つわり、妊娠悪阻、切迫流産、出産後の回復不全等、妊娠又は出産をしたことに起因して妊産婦に生じる症状をいう。

(2) 法第9条第3項により禁止される「解雇その他不利益な取扱い」とは、例えば、次に掲げるものが該当する。

イ 解雇すること。

ロ 期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと。

ハ あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること。

ニ 退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと。

ホ 降格させること。

ヘ 就業環境を害すること。

ト 不利益な自宅待機を命ずること。

チ 減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと。

リ 昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと。

ヌ 不利益な配置の変更を行うこと。

ル 派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る労働者派遣の役務の提供を拒むこと。

(3) 妊娠・出産等を理由として(2)のイからヘまでに掲げる取扱いを行うことは、直ちに不利益な取扱いに該当すると判断されるものであるが、これらに該当するか否か、また、これ以外の取扱いが(2)のトからルまでに掲げる不利益な取扱いに該当するか否かについては、次の事項を勘案して判断すること。

イ 勧奨退職や正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更は、労働者の表面上の同意を得ていたとしても、これが労働者の真意に基づくものでないと認められる場合には、(2)のニの「退職又は正社員をパートタイム労働者等の非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと」に該当すること。

ロ 業務に従事させない、専ら雑務に従事させる等の行為は、(2)のヘの「就業環境を害すること」に該当すること。

ハ 事業主が、産前産後休業の休業終了予定日を超えて休業すること又は医師の指導に基づく休業の措置の期間を超えて休業することを労働者に強要することは、(2)のトの「不利益な自宅待機を命ずること」に該当すること。

なお、女性労働者が労働基準法第65条第3項の規定により軽易な業務への転換の請求をした場合において、女性労働者が転換すべき業務を指定せず、かつ、客観的にみても他に転換すべき軽易な業務がない場合、女性労働者がやむを得ず休業する場合には、(2)のトの「不利益な自宅待機を命ずること」には該当しないこと。

ニ 次に掲げる場合には、(2)のチの「減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと」に該当すること。

① 実際には労務の不提供や労働能率の低下が生じていないにもかかわらず、女性労働者が、妊娠し、出産し、又は労働基準法に基づく産前休業の請求等をしたことのみをもって、賃金又は賞与若しくは退職金を減額すること。

② 賃金について、妊娠・出産等に係る就労しなかった又はできなかった期間(以下「不就労期間」という。)分を超えて不支給とすること。

③ 賞与又は退職金の支給額の算定に当たり、不就労期間や労働能率の低下を考慮の対象とする場合において、同じ期間休業した疾病等や同程度労働能率が低下した疾病等と比較して、妊娠・出産等による休業や妊娠・出産等による労働能率の低下について不利に取り扱うこと。

④ 賞与又は退職金の支給額の算定に当たり、不就労期間や労働能率の低下を考慮の対象とする場合において、現に妊娠・出産等により休業した期間や労働能率が低下した割合を超えて、休業した、又は労働能率が低下したものとして取り扱うこと。

ホ 次に掲げる場合には、(2)のリの「昇進・昇格の人事考課において不利益な評価を行うこと」に該当すること。

① 実際には労務の不提供や労働能率の低下が生じていないにもかかわらず、女性労働者が、妊娠し、出産し、又は労働基準法に基づく産前休業の請求等をしたことのみをもって、人事考課において、妊娠をしていない者よりも不利に取り扱うこと。

② 人事考課において、不就労期間や労働能率の低下を考慮の対象とする場合において、同じ期間休業した疾病等や同程度労働能率が低下した疾病等と比較して、妊娠・出産等による休業や妊娠・出産等による労働能率の低下について不利に取り扱うこと。

ヘ 配置の変更が不利益な取扱いに該当するか否かについては、配置の変更の必要性、配置の変更前後の賃金その他の労働条件、通勤事情、労働者の将来に及ぼす影響等諸般の事情について総合的に比較考量の上、判断すべきものであるが、例えば、通常の人事異動のルールからは十分に説明できない職務又は就業の場所の変更を行うことにより、当該労働者に相当程度経済的又は精神的な不利益を生じさせることは、(2)のヌの「不利益な配置の変更を行うこと」に該当すること。

例えば、次に掲げる場合には、人事ローテーションなど通常の人事異動のルールからは十分に説明できず、「不利益な配置の変更を行うこと」に該当すること。

① 妊娠した女性労働者が、その従事する職務において業務を遂行する能力があるにもかかわらず、賃金その他の労働条件、通勤事情等が劣ることとなる配置の変更を行うこと。

② 妊娠・出産等に伴いその従事する職務において業務を遂行することが困難であり配置を変更する必要がある場合において、他に当該労働者を従事させることができる適当な職務があるにもかかわらず、特別な理由もなく当該職務と比較して、賃金その他の労働条件、通勤事情等が劣ることとなる配置の変更を行うこと。

③ 産前産後休業からの復帰に当たって、原職又は原職相当職に就けないこと。

ト 次に掲げる場合には、(2)のルの「派遣労働者として就業する者について、派遣先が当該派遣労働者に係る派遣の役務の提供を拒むこと」に該当すること。

① 妊娠した派遣労働者が、派遣契約に定められた役務の提供ができると認められるにもかかわらず、派遣先が派遣元事業主に対し、派遣労働者の交替を求めること。

② 妊娠した派遣労働者が、派遣契約に定められた役務の提供ができると認められるにもかかわらず、派遣先が派遣元事業主に対し、当該派遣労働者の派遣を拒むこと。

 

改正文(平成二四年九月二七日厚生労働省告示第五一八号 抄)

 平成二十四年十月一日から適用する。

 

改正文(平成二五年一二月二四日厚生労働省告示第三八二号 抄)

 平成二十六年七月一日から適用する。